ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

かしわ演劇祭2011、柏に演劇は根付くのか

2011年12月18日 | 演劇
演劇不毛の地・柏に演劇は根付くのか――かしわ演劇祭2011~冬の演日~が行われた。全12チームが各15分の演目を準備し、スケジュールに応じて一回の公演で7~8演目を上演するという形式。

さすがに学生の街・京都の演劇祭なんかとは比べようがないのは仕方がないとして、それでもこの柏の地にこれだけ劇団や役者がいるのかということにまずは驚き。まずは「スタート」したことに意義がある。関係者の方、お疲れ様でした。

今後、このイベントが定期的に続いていくかどうかはわからないけれど、やり続けないことには「根付く」ことはない。試行錯誤をしながらでも何とか頑張って欲しいと思う。

ただ課題も多い。

今回の出演者の中には普段から劇団として活動しているユニットもあれば、昔演劇をやっていた仲間が集まった素人に近いユニットもある。それが15分交代で順々に見せられるため、ちょっと食傷気味。レベルも違うし、それぞれはぞれぞれで真剣なのだろうが、いろんなメインディッシュを並べられても困るといった感じか。

そもそもこの演劇祭のコンセプトはどこにあったのだろう。

僕がまだ京都にいた時に、京都の「まち」全体を劇場、美術館にみたてて行った芸術祭があったのだけれど、そこには演劇部門もあって、同じタイミングで京都のセミプロの劇団が同じ時期にそれぞれ公演を打ったり、プロジェクトを組んで1つの芝居に取り組んだりしていたことがある(今も総合芸術祭としてやってるようだ)。

そこでは当然、演劇というものを盛り上げようということはあるのだけれど、演じ手達が質の高い作品を提供するために切磋琢磨する姿があった。他の劇団と触れ合うことで刺激を受けつつ、同時にその劇団の代表としてその実力を示すといったそんな感じだ。確か松田正隆が読売演劇大賞を受けた「月の岬」はこのイベントの一貫として、平田オリザが演出、京都の役者陣が参加して創り上げた舞台だったと思う。

それに対して今回の「かしわ演劇祭」はどうだったのだろう。「一般の方が参加する」ところに力点を置くのであれば、一つの芝居を市民みんなで創り上げるといったやり方だってあっただろうし、もっといろいろなユニットの参加を求めるのだとしたら、柏まつりのスタンドのようにもっと手軽に見に来れるようにしないといけないだろう。一部の有志が参加しましたではちょっと寂しい。

かといって、セミプロの劇団がその実力を発揮するためのイベントだったかというとそうでもない。あるいは他の劇団と横断的にプロジュース公演を行ったかといえば、そういう面もあるかもしれないが、15分の芝居でどれだけ新しい触発を受けることができたのだろう。こちらも今ひとつといったところ。結局のところ関係者の「縁日」としては面白かったかもしれないが、それ以上にはなれなかった気がする。

柏という街で演劇を根付かせるためには演じる側の「実力」も不足しているし、観る側の「目」もまだまだ肥えていない。文化として根付くためにはそれぞれの能力を高めていく必要がある。観客席が関係者やその知り合いで埋まっているようではまだまだで、この人/劇団が出ているなら、あるいはこのイベントであれば見てみたいと思うような「お客さん」を育てていかねばならない。そのためには当然、劇団の実力が求められる。どのアプローチでいくかはあるけれど、今回のはまだまだ内輪でのイベント感が抜けていなかった気がする。

そんな中でも面白い演目もあった。

ユニット「今が旬」は平均年令60歳の演劇OBたちによる朗読劇だったが、セリフ回しはしっかりしていたので、もっと朗読劇らしい「間」や「テンポ」、会話の「流れ」、「空気感」がでればもっとよくなっただろうし、CoTiKの「その花は」は静か系の芝居としてよくまとまっていた。限界突破・男組の無駄なテンションの高さとバカバカしさは南河内万歳一座の(恒例の)裸ネタっぽくていい味が出ていたし、あ、もっともネタの完成度はいまいちだったけど。

「君は薔薇より刺々しい」は何というか、最初から最後まであの調子である必要がないのになぁという感じでちょっと残念。日常の中で隠れている「闇」が垣間見えるからこそのドラマであって、そんな最初から全開でやられても…。裏方ガーディアンズは普段、裏方やってるはずなのに、一番会話として関係性が成り立っていた感じがして、これが最後というのがちょっともったいない。

そして何よりも今回、一番面白かったのが即興パフォーマンス「6-dim+(ロクディム)」。事前に観客に適当な言葉を紙に書かせて、それをセリフに使いながら即興演劇を創り上げていくというパフォーマンスなんだけれど、いやー面白かった。ストーリーを創り上げなければならないという緊張感と、そこに挟み込まれる意味不明な「セリフ」、そのセッションの様はもう最高。

大学受験に合格した息子にお父さんが言葉をかけるシーン。「おめでとう」に続く言葉をかけようとして、セリフの書かれた紙を拾い読み上げると、「…おっぱいの大きい女には気をつけろ」。こんな破綻寸前のストーリーを何とか組み立てていく様が面白くて仕方がない。役者陣3人のバランスもいいし、こんなことならもっとハードル高いセリフを書くべきだった。

 ロクディムWEBサイト

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まぁ、第1回目ということで、まずはスタートしたということが1番の意義だろう。今後とも続いて欲しい。


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