たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

常布の滝は多少のヤブこぎを厭わなければ「上級者」でなくとも見に行ける滝だった。「初級者・単独」はよした方がよかろう。

2021年10月28日 | 近所じゃない群馬県の山
◎2021年10月24日(日)

スキー場駐車場(9:00)……芳ケ平歩道入口(9:05)……蟻の塔渡り標識(9:28)……滝展望所(9:41)……常布の滝入口ゲート(9:48~9:51)……常布の滝(10:38~10:56)……滝下温泉(11:21)……滝入口ゲート(11:52~12:08)……毒水(12:33)……湿原分岐(12:49)……大平湿原(13:00~13:05)……湿原分岐(13:16)……毒水・休憩(13:28~13:41)……立入禁止入口(14:13)……駐車場(14:47)

 重い腰をようやく上げたといったところだろうか。自分には、草津町にある常布の滝を間近に見るのは無理だと思っていた。現に、去年の6月に芳ケ平にワタスゲを見に行った帰路で滝入口のゲートを越えたものの、ひどいササヤブに閉口してそそくさと戻り、嫗仙の滝見で茶を濁した。その記事にいただいた瀑泉さんのコメントには、13年前(今からすれば14年前か)には整備された道があって、どうも自分が行こうとしたルートとは違ったところを歩かれたようだ。それはともかく、ネット記事を参考にする限りは、ルートは一本しかなく、背丈のササヤブ続き、たまにクサリやロープが残り、古いテープもあるようだ。危ういところも何か所かあるらしく、そう簡単には行けない印象が伝わってくる。入口にはご丁寧にも「このコースは上級者向コースです。岩場が多く滑りやすく危険な為、登山に自信のない方はご遠慮ください」と記された看板が置かれている。こんな看板を見てしまえば、好奇心と少しの心得さえあれば、上級者でなくとも見に行きたくなるものだ。去年の失敗があったため、なおさらに行きたくなってもいた。秋になれば、多少はヤブもおとなしくなるだろうと、晩秋の頃にでもとねらっていたが、考えてみれば、背丈の密なササが枯れたり、静かになるわけもなく、雨後のびしょ濡れだけを警戒し、雨の金曜日の翌日の土曜日ではなく日曜日に行くことにした。
 これに先んじる16日に草津に向かった際には、東吾妻町に入って雨が本降りになって家に戻ったが、今日は冷え込んではいるものの青空の出ている行楽日和。一般道でもいつもよりも車は多い。ここで道路情報の電光掲示板を見てがっかり。「志賀草津道路 凍結 通行止」と出ている。それを見たからか、前を走っていた車が路肩に寄せてUターンして戻って行った。オレも残念だった。滝見の後は渋峠まで車で行き、峠から芳ケ平の紅葉を眺めるつもりでいたからだ。楽しみが一つ消えた。

(駐車場からは青い空)


(草津白根は冠雪のようだ。山肌を見る限り、紅葉はこれからなのか、このままなのかはわからない。橋から)


 スキー場側の駐車場は空いていて、むしろ<西の河原露天風呂>側の駐車場が混んでいた。この温泉には思い出がある。高木がらみだから、ロクな話ではない。高木が風呂ではなく山側に登って行くから、どこに行くのかと思って付いて行ったら、林の中に長い平地があり、そこにカメラマンがずらりと望遠レンズを構え、見たり、撮ったりしていた。15人はいたと記憶する。真下には木立ち越しに女露天風呂があった。後ろを歩いて行くと、カメラマンに静かに歩けとたしなめられた。確認もしていないが、今は有刺鉄線でも巡らされているだろう。そんなことを知らずにカメラも持たずに手ぶらで行ったから、損をした気分になった。その時、肝心の露天風呂に入ったかどうかはまったく記憶にない。

(ハイキングコース入口)


(色づきは確かにある。見頃には遠い)


(濃ければきれいだろう。蟻の塔渡りから)


(常布の滝方面。同じく蟻の塔渡りから)


(やはり雪がかぶっている)


 スキー場の駐車場脇の道を車で奥まで入れば、芳ケ平に続く遊歩道にショートカットで行けるらしいが、その道は知らないから、前回同様に谷沢川にかかる橋を渡り、遊歩道の入口から入った。車が一台置かれていた。この日出会ったハイカーは一人歩きと二人連れの三人だけ。いずれも、常布の滝を終えて先に向かう途中のことで、三人にとっては芳ケ平からの帰路でのことだったろう。芳ケ平は紅葉のスポットとしては人気がないようだ。やはり、渋峠からの眺めに尽きるのかもしれない。
 長々と道中模様を記しても意味がない。すでに記事にもしている。特記もない。違いといえば、秋の気配、つまりは紅葉となるわけだが、道沿いの色づきは淡いもの。途中、左から道が入り込み、「立入禁止」とあるところ、どこに出るかは知らないが、もしかすれば、これがショートカットの合流かと、帰路はここを下ってみようかと思ったことくらいのことだ。この時点で、眼中には滝のことしかなく、その後のことは何も考えていなかった。芳ケ平まで足を延ばして紅葉を見ようとしても、おそらくは滝見で体力を使い果たしているはずだろうし、今はまるで先を考える気持ちの余裕はない。

(展望所から常布の滝。滝は探さないとわからない。昨年はすぐにわかったが)


(アップで)


 展望所から見た常布の滝は、去年見た時に比べてこじんまりしていて、ちょっと意外な感じがした。滝よりも周囲の岩盤むき出しの崩壊地の方が目立ち、間違って、そちらを滝と勘違いして撮ってしまう始末だった。水量だろうか。その後に大きな滝をいくつも見たからだろうか。拍子抜けしたことは確かだ。

(とうとう来てしまった)


(カーブしてどんどん下る形になる。ボケた。かなり緊張している)


(テープを見失わないように注意しないと)


(ササヤブ下の道。かつての遊歩道跡がこうきれいに残っているところは珍しい。上からでは見えづらい)


 入口ゲートで意気込んだままに簡単な準備をする。滑り止め用に今日はスパイク地下タビを履いて来ている。熊がいるようなことを記したネット記事もあったから、ヘルメットをかぶる。あくまでも護身用だ。そしてスズを2個付けた。目の前のササヤブは乾いているようだ。では入ろう。足が勝手に震え出す。
 か細い踏み跡が続いている。少し直進し、大きく逆戻りするように下る。傾斜は緩い。ササが繁茂している地形では、幅広の溝状の中の踏み跡を歩く形になる。ササは胸高。古い色落ちのテープもこれに加わる。前回はここで手ごわいと感じてあっさり戻った。今日はそういうわけにはいかない。

(トラバース。寝たササで結構滑る)


 不思議な物で、ササはどんどん密になって高くなっていくが、むしろその分、踏み跡は明瞭になっていく。これを見失わないように歩くことがキーポイントになりそうだ。踏み跡を見る限り、結構、歩く人も多いように見受けられる。
 ここで誤解のないように敢えて記すが、「踏み跡」とはいっても、大方はササが踏まれて倒れたり寝ている跡といったもので、決して土が露出した明瞭な踏み跡ということではない。場所によってはそんなところもあるがごく稀だ。
 下る傾斜はきつくなる。大丈夫だろかと気になってくるが、沢に出ない限りは滝が見えないわけだから、これはあたりまえ。それだけ沢との標高差があるのだろう。直進から徐々に左・北側に寄って行く。この辺から困ったことに、ササが大量に寝てしまっているところが出てくる。これで滑っては転ぶ回数が増えた。スパ地下でこうだから、普通の登山靴ではさらに滑るだろう。

(おそらく遊歩道のチェーン)


(そしてロープ)


(まだまだ下る)


 トラバースが続くようになると、ササの丈は次第に低くなり、まばらになる。そのためなのか、かつてあったらしい「整備された道」に備え付けられたらしきチェーンが顔を出してきた。大方は横になっている。錆びていないところからして鉄製ではない。支えの杭も同じだ。チェーンとともに、ロープも出てくる。変色した細いロープだ。頼っていいものやら、とりあえずは支えというか、つかみどころにする。ササがある限りは滑る。チェーンもロープも連続しているわけではなく気まぐれに残っているといったもので、むしろ、間隔が短くなって付けられたテープの方が役に立つ。ササがまばらになると、踏み跡も一方向ではなくなってくる。ましてケモノの類も加わるだろう。踏み跡は登ったり、下ったり、トラバースしたり、あちらに向きを変えたりと変化し続けるから、テープを常に確認しながら歩くことが第二のポイントとでもなろうか。一度、これを軽視して危うい思いをした。テープに合わせて下に向かったら。沢に向かって切れたかなりヤバそうな足場の悪い斜面の上に出てしまい、これをどうやって下るのかと、ふと見上げると、テープが上に付いていた。明瞭な尾根に間断なくテープをヒラヒラさせる愚か者ハイカーもいるが、左は断崖、右は高い沢となれば、普通の歩きもできず、テープに頼らざるを得ない。ところで、この間の写真をいろいろ紹介したいが、やはり気が半分動転した歩きをしていたせいか、残念ながらほとんどがピンボケになっていた。汗もかなりかいた。その半分以上は冷や汗に違いない。

(ササヤブが薄くなった)


(横倒しの巨木。常布の滝下温泉への目印だ。沢はすぐそこなのに)


(再びササが出てきて、上に向かう)


 ササヤブが消えた。ほっとした。さらに続けば気がおかしくなったかもしれない。ただ、安心ができない。むしろ、足場の悪いトラバースが続いた。もう下に沢が見えている高さにはなっている。このまま沢に降りるわけでもなく、ここからテープは上に誘う。狭隘な谷間を横切っているといった感じだ。
 右に巨木が横出しになっていて、そこに沢下に向かうテープが何本かあった。ここは要注意。このテープは、常布の滝下温泉に案内するテープで、温泉の存在を知らなければ、常布の滝までここから沢歩きになるのかなと思ってしまう。沢までの高さはさほどにない。温泉の脇には3~4mほどの滝もあり、沢歩きで滝に行くには結構、難儀らしい。滝から温泉まで下るのに苦労した記事もしっかりとチェックした。温泉見物は後回しだ。
 巨木の先にロープが見えた。沢に下るどころかまた登りになっている。素直に従った。ササが切れた分、しっかりと残存が続いている。まだかまだかとロープ沿いに登ると、またササヤブが復活。がっくりとなったが、普通の山道で出会うササヤブと同じで低く、踏み跡は明瞭。ただ、ササヤブがまばらなところは迷いやすいので、先のテープを確認しながらの歩きが必要。早いとこ沢に降りたいが、ここは我慢する。沢への斜面は決して緩くはなく、ササで隠れてはいるが、すんなりと下れそうにはない。

(ここで常布の滝が見えてくる。手前にあるむき出しの斜面が気になった。もしかして、あそこを渡るのか?)


(やはりザレ場だった。ここを横切らないといけない)


 やがて常布の滝の音が間近に聞こえ、姿が見え出すと、ササは消え、左に高い岩壁。その下は急なザレ地で沢まで押し寄せている。ここのザレを横切らないと滝までは行けない。足元はかなり不安定というか崩れている。ザレは急斜面。かすかに踏み跡らしきものは残っているが、そのザレにどうやって下るものか。ザレに降りるまで2m以上はありそうだし、ザレに乗ってもそのまま沢には下れそうにはなく、そもそもザレ地の先に沢が見えていない。正面の台地に上がるしかない。横切りは何とかできたとしても、その前段階のザレに下るのがかなりしんどい。転んだらかなりヤバそうだ。ロープでもあれば難のないことだが、持参の細引き5mでは頼りない。ここで落ち着き、上に登れば、幾分楽にザレに降りられたかもしれないが、混乱している頭ではそんな落ち着いた思考もできない。もっとも、上巻きは、後で写真を見て気づいたことだ。

(左からザレに降り、途中で見上げてみた)


(滝はそこ。これもザレ場から。左に薄く、歩いた跡がある。これを見る限り、滝の高さでトラバースし、先で滝下に下るといった歩きになるだろうか)


(ここまで来れば、もう安心。安全に滝に降りられる)


(滝を背にして撮った。あそこから出て来た)


 崩壊で根が剥き出しに垂れた樹の根をつかんで下ってみた。足が地に届かなかった。続いて脇の立木の根をつかんだ。しっかりしていた。10cmほど足りなかったが、何とかかろうじてザレ斜面に着地。あとはそろりそろりと横切って向かいの木の繁る高台に出た。ひどい動悸がした。自分には、今回のルートの最大の難関だった。一回体験してしまうと、帰路は次の第二の難関にはならなかったし、おそらくもう来ることはないとは思うが、難関と感じるほどのものではなくなっていると想像する。

(常布の滝。この高台からでは滝つぼが隠れてしまう。さらに下ってみる)


(滝の全景。岩肌はかなり異形だ)


(滝つぼの虹)


 後は楽勝で、繁みをくぐると滝の前に出た。第一印象。落差がさほどにない。瀑泉さんは30mとしてあったが、自分には微妙に28m。『ぐんま滝めぐり90選』には70mとあった。ネット記事には40mというのもある。70mは極端に思えるが、常布の滝をドローン撮影し、これをYouTubeにアップしている方がいた。それにはどうやって計ったのかは知らぬが「実測30m」とある。このドローン画像だが、滝の上には4~5段ほどの連瀑があり、それを含めれば、確かに70mはないにしても60mはあるだろう。落差はともかく、それほどイメージしていたほどの巨瀑ではなかったことに少しがっかりした。滝つぼには虹が出ているから水勢はすごいのだが、幅に物足りなさを感じる。
 しかし、この直瀑は好みのタイプである。美しさはないが無骨そのものだ。それにしても、この周囲の岩壁はなんだろう。鍾乳石がそのまま貼りついたかのようだし、柱状節理状になっている。当然、火山性のものだろう。こういう景観の滝も珍しい。大沢川にある滝ではあるが、上流で毒水沢を加える。いずれも草津白根山から流れている。聞きかじりの知識はここまでにしておこう。

(足元に、滝の右岸側からのチョロチョロが流れている。何となく気色は悪いが、滑ることはなかった。さわりはしなかったが)


(白い岩肌でわかりづらいが、滝の左岸側巻き込みの岩には細い滝が落ちていた)


(アップしてみた)


(常布の滝の落ち口)


(胴体部。やはり、勢いはあるものの水が少ないような気がする。普段こんなものなのだろうか)


(滝つぼを再び。浅い)


(20分ほどながらもゆっくりした。おさらばとしよう。左岸側からは撮らなかったが、狭い谷間の滝ゆえ、おそらくは同じ風景だろうと移動もしなかった)


 沢靴は持って来ていたが、敢えて沢に入らずともに楽しめる。履き替えはしなかった。周辺をうろうろし、アイコスを吸いながら、滝をずっと眺めていた。しかしながらここの地形はすさまじい。崩壊がかなり進んでいる証拠でもある。周囲の高い岩壁を見ているとおそろしくなる。熊がいるらしいと前述したが、ササヤブ続きで、沢水は飲めそうもない。ましてここに至っては岩場だ。熊がいるとは思えない。
 ゆっくりしたところで切り上げる。この滝ももう来ることはあるまい。ファンはいるようで、毎年のように来る人もいるようだが、自分には一回で結構。その理由は、ここに至るまでの道程だ。45分程度で着いたが、2時間近くかかった気分だ。

(ササヤブに復帰)


(滑りまくった。そういえば、今回は一度も顔への跳ね返りはなかった)


 問題はあのザレ地の横断だ。大回りもせず同じところを戻った。どうもそれしか選択肢がないように思われた。足場を固めて、木の根を信じ、別の木の根に移動して這い上がった。往路時に比べて、さほどの冷や汗はかかなかった。後は踏み跡に従った上り下り、トラバースの繰り返しになる。楽勝…とはいかなかった。ここでもテープを見落とし、谷底に転げ落ちるところだった。見上げると、テープはさらに上にあった。ここも踏み跡になっていた。同じミスをだれでもやってしまうようだ。このコースは「同じところを戻るのだから、あとは安心だ」という思いは禁物だ。これが三つ目のポイントということになる。

(ヤブが薄くなって)


(例の倒木。沢に下る)


(手前の大石に腹ばいになって撮った。温泉はここからでは見えない。大石の陰、小滝の左端の筋滝の裏側というか奥にある)


(洞窟のような、チョコレート色が温泉。身体が汚れそうで入る気は起きない。体温くらいらしい)


 巨木の倒木のところにやって来た。沢に下る。危険な下りではない。緩い斜面の下の沢は大石がゴロゴロしていて、左に3mほどの滝があり、右下にも小滝がある。この辺の流れは急で膝越えの深さはある。この左の滝の陰に天然の「常布の滝下温泉」があるのは知っている。別に温泉に入るつもりはないから、沢靴には履き替えず、岩の上から温泉を覗くだけのことにした。大きな丸い岩に乗ったらタビのスパイクで滑った。このまま岩の上を先に行くのは危険なので、限界のところまで腹ばいで行き、滝の脇にちらりと見える温泉場を撮った。畳一枚あるかどうか分の広さの丸みのある湯船。湯の色は茶色。これを確認するだけで精一杯。温度は体温ほどらしい。湯に浸かるつもりなら、沢靴に替えて滝の水をかぶって入り込む方がむしろ安全だ。

(ガードが倒れかけてはいるが、明瞭に遊歩道の跡形とわかる)


(ヤブこぎ再開。ラストのトラバース上りだ)


(尾根型が左上に出ているところでカーブしてハイキングコース復帰ということになる)


(ハイキングコースが見えてきて)


(疲れたわ)


 風呂も見たし、これで常布の滝に関わる課題は終了だ。あとはササヤブ歩き。こちらの方は、一回通っているから、意外と楽で、ササの間の踏み跡も小径に見えてくる。ただ、気を張って歩かないと、泥で滑って転んだり、寝たササに足がもつれたりする。
 ハイキングコースの平地が上に見えてくると、カーブにさしかかる。ようやく終点だ。ゲートを越えて腐った木の株に腰をおろした。ほっとした。ようやく終わった。ヘルメットは外し、汗をぬぐって帽子に替えた。ズボンはかなり泥んこになっている。落ち着き、菓子パンを食べて一服。だれかに常布の滝に行ったことを話したかった。だが、通るハイカーはいない。ここで、スズを一つ外そうとしたら、二個のうち一個のスズが無くなっていた。スズの本体だけ外れてしまったようだ。高いスズだっただけに惜しいことをした。そう思いながらも、ここを往復している間で、スズの音を気にかけることはなかった。そんな余裕もなかったのだろう。
 12時の時報が遠くから聞こえる。このまま帰るのでは早いし、さりとて芳ケ平まで行って往復する時間と体力はない。1時まで歩いてみようか。どの辺まで行けるか知らないが、せめて、5月にチャツボミゴケ公園に行った際に行きはぐれた大平湿原くらいまでは行けるかもしれない。あわよくば、カラマツ紅葉くらいは楽しめるかも。

(歩きやすい道。ヤブこぎとは雲泥の差がある)


(大岩)


(遠くから見ている分には、やはりこれからといった感じだ)


(雪が残っている)


 さすがに緩いハイキングコースは歩きやすい。ササで滑って転ぶこともない。「大周り」、「大岩」とスポット標識が続く。目立つ紅葉はちっとも現れない。少しは期待しているからこちらに足を向けた。ただ歩くだけかとアホくさくなりかけているところで、くすんだ赤茶の色付きを見かけた。こんなのが少しでもなければ面白くはない。ただ、この先に期待はできそうにもない。
 前回も思ったものだが「一本松」。この松がどれを指すのかわからない。やせた松なら何本かある。このコイキングコース、石仏もあるから、上州と信州を結ぶ古道だったのだろう。おそらくは往時の休憩スポットで、大きな松でもあったのかと思う。この辺から、道端には雪が出てくるようになる。たいした雪ではない。数日前に降ったのが草にかぶっているくらいのものだ。

(カラマツはきれいな色づきになっている)


(毒水沢)


(毒水で)


 「毒水」の橋を渡る。なぜかナナカマドの真っ赤な実が目立つ。ここの毒水沢だが、いつか遡行したいと思っている。滝もあり、天然温泉もあちこちにあるらしく、草津白根と芳ケ平を結ぶ登山道に出られるようだ。毒水沢は酸性が強く、ずっと浸かったままで歩いたり、長風呂したりしてしまうと、帰りに皮膚がピリピリするとネット記事で読んだことがある。人それぞれの体質だろうが。

(横笹。標識にその名はない。直進が芳ケ平。ここは右の「大平を経て花敷」に折れる)


(足跡はない)


(川を渉る。緑色のコケはチャツボミゴケだろうか)


(笹の原に出る。良い眺めだ)


(振り返ると)


(ここもカラマツ紅葉)


(ここが大平湿原だった)


(カラマツ以外の紅葉はない)


(八石山まで行けばチャッボミゴケ公園までつながるが、もういいか)


(カラマツを見ながら戻る)


 大平湿原の分岐「横笹」に出た。標識には芳ケ平まで1.8kmとある。距離的にはせいぜい30分だろうが、芳ケ平までは地味な傾斜が加わる。散策マップ看板には1時間とある。どうしようか迷ったが、当初の予定どおりに1時までの歩きとして大平湿原に向かう。湿原までの距離は500mとあった。
 雪道の上にはだれの足跡もない。川を渡るとササの原っぱが広がっていた。白根山方面もきれいに見える。湿原とはいっても、湿原状のものは見えない。ササの下が湿原なのだろうか。ちょっと行くと標識が置かれ、ここが大平湿原だった。1時ちょうどの到着。予定通りに歩けた。カラマツがずっと先まで続いている。ちょっと煤けた色に感じるが、渋峠から見下ろせば、光の関係できれいに見えるのかもしれない。黄赤の色彩は無く、晩秋の景色に近く、特別な感慨も出てこないので立ち休みをしただけで横笹に戻る。

(石仏)


(毒水でしばらく休む)


(帰路で)


(同じく帰路で)


(展望所にもう一度。今度来る時は素通りして毒水沢か)


 横笹に戻ると、さっき気づかなかった弁財天の石仏が置かれていた。これに会いたかったが、さっきは、まだこの先だろうと注意もしなかった。実は、ここに来るまでにもう一体の石仏があったのだが、そのことはすでに忘れていて、往復ともに見ることはなかった。
 この先は割愛する。去年の6月と同じ歩き。少しでも紅葉がきれいなら帰路の展開も違ったろうが、違わなかった。もう一度、展望所から滝を眺め、件の「立入禁止」のゲートのある所まで来た。

(ここから入ってみる)


(かなり崩れている)


(歩く人もあまりいないようだ)


(岩壁にこんな穴が)


(大雨後の数日は歩かない方がいいだろう)


(ここの紅葉もぱっとしない)


 ここがスキー場へのショートカットかどうかはわからない。地形図では、おそらくここは1394m標高点辺りかと思う。ここから実線が続き、やがては谷沢川にかかる橋の手前から車道になって、自分が車を置いたスキー場の、第何駐車場かは覚えてもいないが、東端にある駐車場に行けるはず。ただ、GPSで確認する限りは、マップにはここから実線はおろか破線すらなかった。こだわることもあるまい。おかしな方向に行くようなら戻ればいい。
 普通の道だったが、やはり廃道化しつつあるのか荒れている。落石も多い。入ったばかりの付近は、以前は車も通っていたのかと思うほどの道幅があったものの、次第に細くなっていき、やがて草に覆われた道になった。確実に自然に戻ろうとしている。そのうちに右下に沢が見えるようになった。
 別に立入禁止にせずとも普通に歩けるのにと思っていたら、左手にフェンスが現れ、見上げると崩れかかっている。なるほど、これで立入禁止にしたようだ。岩壁には穿った跡も見られ、この辺には採石場か鉱山でもあったのだろうか。

(橋を渡る)


(水がほとばしっていた)


(これなら車も通れるかと思ったが)


(こんなのがあったり)


(落石が目の前までせり出していたりして、車の通行は無理)


(向こうからやって来た。ここまでは車も入れるようだ)


 橋が見えて来ると、断続的にシュー、ザワザワといった音が聞こえ、つい身構えてしまったが、橋下を通る給水菅に穴が開いていて、そこから水が10mほど噴き出しているだけのことだった。
 橋を渡ると、車も通れる普通の林道になった。山側には石積みが続く。だが、長くは続かず、倒木が横倒しになって道をふさぎ、落石が迫って防御の金網を破ろうとしているシーンも出てくる。これでは車は通れまい。おそらくは、工事なり作業用の林道として使われ、用済みになってそのままといったところだろうか。間もなく、立入禁止のゲートが置かれていた。つまりここまでは車で入れるということだが、ここからショートカットしたところで、大きな短縮にはならないだろう。万一でも落石を受けるより、ハイキングコースからまともに入った方が無難と思う。ただ、車道歩きが嫌とか、入口間もなくに出てくるでこぼこのハイキングコースを歩くのが嫌いな方にはこちら歩きがいいかもしれない。

(たいしてきれいでもないが)


(やがて舗装道に合流し)


(そのまま駐車場に到着)


(皮肉なものだが、駐車場の片隅にあったモミジがこの日の一番だったかも。車が写ってしまうので、それを避けたら、半端な写真になった)


 林道を歩いて行くと、右に舗装道が並行し、その先は駐車場になっているようだ。舗装道に入るゲートは締まっている。林道は先で舗装道に合流して、右手に駐車場があった。やはりそういうことだったのかと納得。
 もう3時近い。芳ケ平まで行っていたら、当然、探索もするだろうから、4時半過ぎにはなっていたはず。物足りないが、大平湿原で正解だったかもしれない。
 帰りの道は草津からずっと渋滞が続いた。往復ともに高速は使わなかったが、往路で2時間半だったのが、帰路では3時間半かけて帰宅した。関東の標高の低い観光地はこれから紅葉シーズンに入る。11月からは高速道路の割引も復活するらしい。しばらくはどこもかしこも混雑だろう。早い時間帯の出発を心がけたいものだ。

 行くのに危うそうだったがゆえに念願でもあった常布の滝。ようやく今回行けた。期待していた滝の姿には少々遠かったが一応は満足した。これで、群馬県内の見たい滝の大方は世立八滝の一部を除いて見たつもりでいる。これからどうしようか。紅葉のうちはそれを楽しみたいが、混んでいるところもなぁ…。

(今回の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」

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