咲き始めたアーモンド
暖冬のマドリードは1月に近所の公園のアーモンドの木に蕾をつけました。2月に入り蕾に色が付き始めただけなのに先週の春陽気で開花してしまいました。でも今週になり本格的な冬になったので、アーモンドの花は開いたまま震えています。天気も不安定ならスペインの社会も不安定です。
さて前回のブログに書いたように1957年から1977年の間に生まれたスペイン人を「スペインの団塊世代」と呼びます。その21年間の平均出産者数は665,854人/年でした。それは1400万人のベビーブーマーを生みました。昔は酪農と農業が主な産業でしたのでスペイン社会は大家族でした。しかし人口の大都市集中は始まっており、都会で生まれ育った若い夫婦のメンタリティーでは子供は一人か二人です。少子化が都会生活の条件になった結果が1977年のベビーブームの終焉でした。嘘のようにこの年を境に“ガクッ”と出産数が減り始めました。さらに女性の目覚ましい社会進出(大都市の家庭は共働きが普通です)は女性の出産年齢を遅らせたので新生児数は減少を続けました。
スペイン女性一人の出産数は1,19人と45年前の半数で、今の出産数は34%減の437,173人/年です。その程度の減少ですんでいるのは同じスペイン語圏の中南米人の移民者のお陰もありますが、隣のモロッコ人移民者も多数です。外国移民者の赤ちゃんはスペインの新生児の32,4%です。言い換えれば三人に一人は外国人の子供です。このような現状では移民者の三世世代(国籍はスペイン人です)が次の時代の人口増加の担い手になると言う訳です(顕著なのはイスラム人の移民三世)。
島国日本では考えられない人口構成と多様化文化の話になりそうなので、本題のスペイン団塊世代の人々が2023年から年金受給者(ペンシオニスタ/pensionista)になる話を始めます。今年65歳(毎年少しずつ上がり2027年は67歳です)になって37年9か月間社会保険料を払っていた人は満額の年金を受け取れます。66歳と4か月の人もその社会保険料支払い年月に満たなくても希望すれば受け取りを始められます。反対にまだ65歳になってないが37年9か月間の社会保険料支払い義務を済ませた人も受け取りを始められます。
それでなくても労働は罪と思っている早期退職者が多いのもスペイン人です。つまり今年から年金者数がどんどん増え続けます。スペインの年金は日本で言う国民年金だけです。今年の年金支給額の上限は月3,058ユーロ(1ユーロ130円で換算すると約40万円)、下は732ユーロ(約9万5000円)です。平均は1,365ユーロ(ほぼ18万円)です。年間14回支給されます(夏ボーナスとクリスマスボーナスの2回がプラスされます)。最低賃金が1000ユーロ(13万円)なので、持ち家に住んでいる老夫婦ならその平均額で生活には困りません。
多くの年金者が1000ユーロ以下です。反対に3000ユーロの裕福年金者は45~46万人居ます。年金者は年に数回格安旅行がありますが、去年からエネルギー代(ガス代電気代)が2倍から3倍に値上がったのでそれどころではありません。最低必要食料品(ジャガイモ、卵、オイル、小麦粉など)が少なくとも50%、いや倍になったもの(パンのバゲット)もあります(ワインも、トホホ)。
おっと話はこの先も大丈夫か?年金?でした。2011年から収入の社会保険料と支出の年金のバランスはマイナスです。でも政府補助金のお陰で社会保険準備預金庫には2021年までは僅かながらも貯蓄はありました。が今は完全にマイナスです。欧州中央銀行に借金をするしかありませんが借りるにはそれなりの年金システムの改善が要求されます。去年までは4人の勤労者が2人の年金者を支えていましたがこれからそれが3人になります。年金でも生活ができるように社会インフラを充実させ物価を安定させないと若い世代の労働者たちは外国へ出てしまいます。
自分たちの親ほどの年金を望むのはスペインでは無理、と現実をクールに受け止めた彼ら/彼女らはすでに給料の良い外国に出てしまいました。欧州連合内の国なら支払った社会保険は定年退職してスペインへ戻った時点で年金として受け取れます。ノープロブレムです。益々スペイン人は減少して移民三世四世が増えていきます。グローバル化は良いと思いますがその国の歴史、文化は残ってほしいと思います。