Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

メトのオーストリアっ子

2008-07-18 | お知らせ・その他
ABTのメト・シーズンが先週土曜日に終了しましたが、
この後、オペラの新シーズンのリハーサルまで、他団体も含め、
何の公演の予定も入っていないようなので、
あのスペースを空けておくとはもったいない、、と思っていたところ、
”私、全然暇なわけじゃなくってよ!”という
メトの主張が聞こえてくるようなNYタイムズの記事を見つけました。
(原文:Bright Lights of the Met Opera Lobby Are Put Out for Repair)

メトのシンボルともなっている、お花状のシャンデリア。



以前から、これはいつ誰が綺麗にしているのだろう?
ちゃんと取り付けられているか、定期的に確認しているのだろうか?と思っていたのですが、
このメンテがこんなに大変な作業だったとは知りませんでした。

ロビーに11個、オーディトリアム内に21個あるこのシャンデリアは、
1966年、ブロードウェイの39~40丁目にあった旧メトから
現在のリンカーン・センターに場所が移った最初の公演で初お目見えとなったわけですが、
開演間際に天井に向かって登っていくオーディトリアム内のシャンデリアの様子に、
観客から大きな歓声が湧いたといいます。
観る側の公演への期待感と見事に呼応した素晴らしいアイディア、
実際私も、おそらく多くの他のメトの観客の方たち同様、
今でもこのシャンデリアが上がっていく瞬間が大好きです。

このシャンデリアをデザインしたのは、ウィーンにある
J.&L.ロブマイヤというシャンデリア製造会社のハンス・ハラルド・ラスという方だそうですが、
代々、同社がこのシャンデリアのメンテにあたっており、
今年はハンス氏の孫で、マネージング・パートナーであるヨハネス氏(若干31歳!)
率いるチームが、シャンデリアの解体に挑むため、NYに滞在。
ロビーにあるシャンデリアだけでも数日を要した模様です。
クリスタルとそれを支えているロッド(放射線状に生えている金属)
を取り外された、花の芯にあたる、木材と金属で構成されている部分は”スプートニク”と呼ばれるそうですが、
このスプートニクたちは、NYからウィーンに三台の航空機で空輸され、
現地で補修された後、またメトに帰ってくるそうです。

また、49,000個(!)におよぶクリスタルについては、
またまたオーストリアの会社であるスワロフスキ製の新品に取り替えられるそうです。
メトのシャンデリアはオーストリアっ子だった!

さて、ハンス氏は、メトの1966年のオープニング・ナイトを観客の一人としてご覧になったそうですが、
なんと孫のヨハネス氏は、自らが手がけるシャンデリアが輝くメトで一度もオペラを見た事がなく、
ウィーン国立歌劇場やザルツブルク音楽祭などで仕事をしながらも、
”オペラは特に自分の趣味じゃない”と言い放ってらっしゃるそうです。
なんと、まあ、オペラヘッドにとっては脳震盪を起しそうなコメントですが、気を取り直して。

クリーニングは毎夏定期的に入っているそうですが、ここまで徹底した、
解体をともなうリファービッシング作業は、
なんと、シャンデリアが初めて設置された時以来だそう。



というのも、想像はつきますが、膨大なコストに対応できなかったからだそうで、
今年のこの作業は、スワロフスキが全クリスタルを無償で提供し、
しかもロブマイヤ社が行う補修作業のコストを全て肩代わりしてくれているそうです。
コストは何と、百万ドル以上(!)だそうで、ちなみにオリジナルのシャンデリアは、
オーストリア政府からメトに贈与されたものだそうです。
来夏には、オーディトリアム内のシャンデリアに同様の解体およびクリスタルの取替え作業が必要か、
ラス氏が点検、決定されるそうです。

さて、スワロフスキにコストを肩代わりさせたうえに、まだまだ商魂たくましいメトは、
オリジナルのシャンデリアについていたクリスタルを、秋に再オープン予定のギフト・ショップで、
我々観客およびメト・ファンに売りつけるつもりだそうです。
本当にちゃっかりしてます。

ちなみに、今回埋め込まれる新しいクリスタルは、正確さを求めて機械で製造されたものを使用しますが、
オリジナルのシャンデリアのクリスタルは、手でカットされたもの。

さて、お花状と最初に書きましたが、実はこのシャンデリア、星が輝く様子をデザインしたもので、
おじいさん(ハンス)・ラス氏に、建築家のウォラス・K・ハリソンが手渡した
ビッグ・バン説の本の中からヒントを得たのだそうです。

何十年に一度の大補修作業。2008-9年シーズンの公演をメトでご覧になる方は、
ロビーのシャンデリアのクリスタルの新品度もお楽しみください。

(NYタイムズの記事に作業の様子をおさめたスライドショーもあります。)

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この写真で見ると (チャッピー)
2008-07-20 07:39:17
METのシャンデリア、線香花火のようだ。
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そんなこと言って、、 (yol)
2008-07-21 22:22:46
次回、秘密のオペラ御殿「マト」に行ったら、あなた、ちゃっかりお部屋にクリスタルが飾ってあるんぢゃなくって?
返信する
確かに/ど、どうして、、? (Madokakip)
2008-07-22 13:35:47
 チャッピーさん、

確かに!このバーが飛び出してるところとか、まさにですね。
デザインは星がイメージらしいのですが、花火の方が近い気がします。

 yol嬢、

ちょ、ちょっと!なんでわかったの、、
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