Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

家で聴くオペラ (1) ランメルモールのルチア 追記

2007-07-10 | 家で聴くオペラ
7月7日のバレエ、『シンデレラ』の公演の後、お友達とメトのギフト・ショップへ。
マンハッタン中のタワーレコードが閉店してしまい、
Virgin Recordsは全くクラシック部門にやる気が見られない今、
オペラのCDやDVDを購入するとき私が唯一頼りにしているのが、このショップ。
欲しいと思ったらすぐ聴きたい!という私なので、ウェブでオーダーするよりも、
店頭買いが好きなのです。

お友達が買い物をしている間、”今日は見るだけ”だったつもりでチェックし始めたオペラのCD&DVDコーナー。
前から聴きたかった/見たかったデヴィーアのルチアのスカラ座ライブを発見。
即買い。
その他気が付けばバレエのDVDだの、ばらの騎士のDVDだの、どっさり大人買い。
見るだけ、が、なぜ??!!

さて、帰宅して、やっぱり最初に見てしまうのは、ルチア。
このルチアのDVDがですね、素晴らしすぎて、
私はこのDVDを紹介しなければ天罰が下るのではないかと怖くなってきてしまったので、
ここに紹介させていただきます。

デヴィーアといえば、1996年のフィレンツェ歌劇場の来日公演で
このルチアをエディタ・グルベローヴァとのダブル・キャストで歌った時、
真のベル・カントの技術を堪能するなら、グルベローヴァよりもデヴィーア!という前評判にもかかわらず、
グルベローヴァの方を選んでしまった私。。
今考えれば、オペラヘッドとして失格者の烙印を額のど真ん中に押されても何も言えますまい。
今の私なら、間違いなく両方観にいくか、仮にどちらかを選ばなければならないとしたらデヴィーアを観にいったでしょう。
ああ、後悔

それも、これも、当時まだ青かった私は、知名度の高いグルベローヴァになびいてしまったから。
デヴィーアはものすごい実力なのに、レコード会社等の契約に恵まれず、
はっきり言って、今NYの店頭にはデヴィーアのCDなんて売ってません。
グルベローヴァはその点、ちゃっかりもので、自分のレコード会社なんか持ったりしちゃっている。
当時の私はデヴィーアって誰?というのりだったのです。ああ、無知とはかくもおそろしい!

今でも、やたらCDやらDVDやらが続々と発売されている、
ゲオルギュー、ネトレプコ、フレミングといったルックスの良い歌手たちの影で、
彼女たちを凌ぐ素晴らしい歌唱を実際のオペラハウスで聴かせてくれるのに、
見た目で損しているとしか思えない歌手たちが本当にたくさんいます。
私、今後は、このような素晴らしい歌手たちの布教活動をしながら殉死することにいたします。

と、そういうわけなので、このデヴィーアというソプラノは、見た目は女優のようではありません。
しかも、プロフィールに使っている写真が、これ、80年代に撮ったでしょ?というのりのヘア・スタイルでさらにいけてない。
私は、あまりにこのプロフィール写真のイメージが強くて、
”確かに、このルックスでは注目されなくても文句いえないか。。”
と、失礼千万なことを昔は思っていたのですが、
DVDで見ると、写真で見るほど冴えてなくありません。
意外と、舞台では綺麗に見える。(だけど、上の3人とは間違っても比べないよう。。)

でも、そんなことはどうでもよい!!!

私は、このDVDを見て、こんな公演が1993年のスカラ座で行われているうえに、
DVDとして記録まで残っているのに、
人々が、”現代の歌手のレベルは落ちた”と嘆いているのが信じられない。
このDVDは、第一回本編で紹介したマリア・カラスのライブCDをある意味超えるすごい演奏です!!!
こんな演奏を聞き逃しておいて、カラスの時代はよかった、などといって嘆くとはなんたる怠慢。
(↑私だ、私。深く反省!!)

彼女のその歌唱技術の完成度の高さ、細かい部分まで神経の届いた歌いっぷり、
的確なディクション等、何をとってもすごすぎます。

幕が開くと、オケの演奏のトロさに、まじかよー!としばらくじりじりしてしまうのですが、
おそろしい。まるで麻薬か何かのようにじわじわと後効きしてくるのですよ、このテンポが。
ステファノ・ランザーニという、今どこで何をしているのか知らないこの指揮者。
最初は交通整理系の指揮者かと思いきや、(伴奏だけしてる、という。。)
いつの間にかすっかり彼のペースに巻き込まれているのです。
第三幕などは、オーケストラが、歌手と一緒に歌っている。。。素晴らしい。
気分がのった時のスカラ座オケの持ち味全開。
そして、またコーラスがなんともいえずいい響きを生み出してます。

これは、演奏にかかわっている全てのひとが、
この公演が特別なものであることを理解している、そういう類の演奏なのです。

まわりをかためるブルゾン、コロンバーラが素晴らしいのはいわずもがな。
あの、実演ではいつも失望させられることの多かったラ・スコーラも、
デヴィーアに触発されてか、
”あれ、こんなに歌えるの?”(一箇所、声がひっくりかえりそうになる場面があるとはいえ。。)
という頑張りよう。

もう、一幕のアリア、三幕の狂乱の場、どこをとっても非の打ち所がないのですが、
その狂乱の場の、”とうとう、あなたは私のもの、そして私はあなたのもの”
(家同士が敵対関係にあることから、無理やり兄によって意中の彼エドガルドとの仲を引き裂かれたうえに、別の男性と結婚させられたために、その男性を殺してしまったルチア。
すでに正気を失いながら、エドガルドとの結婚を幻想に見て、このフレーズを歌う。)
ここは特に超絶技巧も何もないところなのですが、
その魂の入りようには、心が動かされます。
このような何気ないフレーズをこんな風に歌える、こういう歌手をもっとこの先聴いていきたい!!

1996年といえば、このDVDの公演からたった3年後。
きっと日本公演では、このDVDに近いトップ・フォームで、
素晴らしい歌唱を聴かせてくださったのだろうと思うと、
本当に自分の愚かさを呪ってしまう。。
(グルベローヴァはグルベローヴァで、
本当に鈴のような声+機械のように正確な音程ですごかったのですが。)

Opus Arteというイギリスの会社と思しきメーカーから発売されています。
リージョン・フリー。

セットも重厚で絵画のよう。美しいです。さすがスカラ座。

Renato Bruson (Lord Enrico Ashton)
Mariella Devia (Miss Lucia)
Vincenzo La Scola (Sir Edgardo di Ravenswood)
Marco Berti (Lord Arturo Bucklaw)
Carlo Colombara (Raimondo Bidebent)
Orchestra and Chorus of Teatro alla Scala
Conductor: Stefano Ranzani


CAT NO: OA LS3003 D
FORMAT: All Formats
REGIONS: All Regions
PICTURE FORMAT: 4:3
LENGTH: 143 MINS
SOUND: DOLBY STEREO
SUBTITLES: EN
RELEASED: 01/06/2004
NO OF DISCS: 1

***ドニゼッティ ランメルモールのルチア Donizetti Lucia di Lammermoor***