The collection of MARIBAR 

マリバール 文集・ギャラリー

2 朝

2005-05-26 14:55:14 | 小説 フィフティーン
 幸子の母親は帰ってこなかった。玲子は、大きな窓のカーテンを開けた。もうすっかり日は昇っていて、今日も暑くなりそうだ。キッチンでは幸子が朝食を作ってくれていた。メニューはトーストと紅茶にハムエッグだ。2人ともテーブルについた。
「今日はどうすんの。家かえんなくていいの?」
と幸子は玲子に尋ねた。
「夜は帰ると思うよ。ねぇ幸子、昨日のお金で洋服買いたいんだけど、つきあってくれない?」

 玲子は、そう言いながら、昨日の男を思い出して胸がムカついた。あの男のことを話題にしたくないと思った。
「今ごろ、皆勉強してのかなァ」
「そうだね。塾とか行ったりしてね。玲子の親は何て言ってんの?」
「あたし?塾なんて行かないよ。母親がさ、家庭教師つけてやるとか言ってんだけどね。幸子は卒業したらどうすんの」
「高校行かないって言ったら親に泣かれちゃったけど、働くか、専門学校だよ、多分」

 玲子も幸子も地元の中学の3年生で来年は卒業と同時に、それぞれの道に分かれていく。
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