変化を受け入れることと経緯を大切にすること。バランスとアンバランスの境界線。仕事と趣味と社会と個人。
あいつとおいらはジョージとレニー




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二人で過ごした初めてのクリスマスから1年が経った頃、再び恋人色に
染まった街並みの中で、彼はプロポーズすることに決めた。

未だ早いか。
延ばす理由もない。

断られることを彼は想像すらしなかった。二人で寝食をともにして約1年。
冬には、スキー場ではしゃいだ。ともに上手くはなかったし寒さは苦手な
方だったが、二人で滑っている時間が輝いて見えた。宿で見た湯上りの
彼女の美しさは、魅惑という言葉すら陳腐に思えた。
春に仲間と出かけたキャンプで、皆にカノジョとして紹介した。たったそれ
だけでご満悦な自分に酔った。
夏の海辺では、ちょっと大胆なビキニの水着にドギマキした。二人で買い
に行ったのだから、予め知っていたのに。
お盆には休みをとって、両親に彼女を紹介した。そのとても素敵な容姿と
立ち居振る舞いが、言いようも無く誇らしく感じたものだ。
そして秋、夕日に染まったハワイの海辺でのキスは、人生で最良の思い
出となった。
彼は、普段の日々の営みに彼女を求めていた。それだけでは飽き足らぬ
思いが、四季を通した大袈裟なイベントを彼に催させたのである。
そして今、2年目のクリスマスには、プロポーズという花が添えられようと
していた。

彼にとって、結婚ということがそんなに大事な訳ではない。世間体や経済
面、あるいは自分の立ち位置、そんなものが有利になることは理解してい
る。だが、彼の結婚への動機はそんなところにはない。
自分と彼女を結びつけるもの、それがどんな種類の証であれ、全てを実践
しておきたいのだ。結婚という行為からは、戸籍上の証、血縁からの承諾、
知人友人への周知、その他多くの要素が、二人の結び付きを強めてくれる
気がする。そして、そういった効果に見合うだけの演出をしたいとも思った。

彼が彼女に贈れる指輪は知れたものかもしれないが、それでも彼はとても
真剣に、そして時間をかけて選んだ。多くの男性と同様、ダイヤモンドの品
質を量る基準は、この時に知った。知ってしまえば、なるべくいい物が欲しく
なるのも、人並みと云えよう。結局、一面に突出するよりも、まずはデザイン
を優先し、あとはクラスとクラリティとカラットとカラーのバランスを重視した。
手にとった指輪の美しさは、彼の一途な思いを伴って、彼女の可憐な指を、
そして全体の艶やかさを見事に飾ることだろう。

いよいよその日は明日。言いようのない緊張感と高揚が、彼を包んでいた。

そんな彼のオーラに彼女の第6感も反応したのだろうか。ある種の予感が
彼女にもあった。

<続く>

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