[書籍紹介]
吉田篤弘の3部作「流星シネマ」「屋根裏のチェリー」「鯨オーケストラ」の
2番目の作品。
今度の主人公は、
町の崖の上にある古アパートの屋根裏部屋で
ひっそり暮らしている20代半ばの女性・岡小百合。
以前に町の「鯨オーケストラ」のオーボエ奏者だったが、
団長が失踪して、解散して以来、引き籠もり状態。
収入は、親の遺産のおんぼろアパートからの家賃収入。
6部屋あるうちの3部屋しか埋まっていないから、経済的には厳しい。
社会と隔絶した、代わり映えのない毎日で、
唯一の友だちは、チェリーという女の子。
実は、サユリの頭の中の存在で、
人には見えない。
不規則に現れては、サユリと会話を交わす。
チェリーという名前は、
「チム・チム・チェリー」を上手に歌うからだという。
一生こんなままだと思っていたサユリに変化が訪れる。
以前インタビューされた「流星新聞」の太郎との交流、
定食屋「あおい」を再開しようとするミユキとの出会い、
そして、200年前の鯨の骨が発見されたことで、
つぶれたチョコレート工場がオーケストラの稽古場になる可能性。
こうして、オーケストラの再建と食堂の開店へと動き出していく。
3作目の「鯨オーケストラ」で出て来た
「土曜日のハンバーガー」が生まれた秘話も披露される。
誰かに出会うことが、
その先の誰かに出会うことにつながっている。
今度も、小さな町での人と人の出会い、
交流と広がりがユーモアたっぷりに描かれ、
世界が人と人のつながりで成り立っていることが感じられて、
表情が緩んだままでの読書体験。
このシリーズは、まだ続くようだが、
どこかのテレビ局でドラマ化してもらえないだろうか。
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