[映画紹介]
「キングダム・オブ・アーク」という邦題は、
日本でつけたもので、
原題は「The Ten Comandment」。
つまり、「十戒」。
(アークとは、モーセが神から授かった
十戒を刻んだ石板を納めた箱のこと。
聖櫃(せいひつ)という。)
旧約聖書「出エジプト記」にある
モーゼに率いられたヘブライ人(イスラエル民族)の
エジプト脱出を描いた作品。
既に「十戒」(セシル・B・デミル監督 1923, 1956)、
別な「十戒」(1995)、
アニメ「プリンス・オブ・エジプト」(1998)、
アニメ「プリンス・オブ・アーク」(2007)
「エクソダス:神と王」(リドリー・スコット監督 2014)
トラマ「神と交わした約束:モーセの物語」など、
複数の作品があり、
これは2005年製作のテレビ用作品。
監督は「アンネフランク」のロバート・ドーンヘルム、
主演は「エニグマ」のダグレイ・スコット、
オマー・シャリフがモーゼの義父役で出演している。
2時間56分の長尺。
やりつくされた感のある再映画化だが、
今回取り上げる気になったのは、
他の作品と一味違うから。
というのは、紅海が割れる奇跡までが半分で、
後半は、ヘブライ人の荒野での放浪生活が
かなりていねいに長く描かれているからだ。
奴隷の身とはいいながら、
衣食住を保証されたエジプトでの生活から
荒野での流浪の生活への転換は、
様々な不平を生む。
なにしろ、モーゼ自身がどこに向かったらいいのか分からないのだ。
その上、荒野では、何万人を養う食料と水を得ることが出来ない。
当然不満は指導者であるモーゼに向かう。
旅の途中、アマレク人など、
先住民族と戦争をしなければならない。
そのための武器の装備と軍事訓練。
戦闘では多数の犠牲を生む。
視点を変えれば、
先住民にととっては、
ヘブライ人は侵略者なのだ。
そして、ヘブライ人同士の様々な争いを裁かなければならない。
モーゼは指導者だけでなく、
司令官と裁判官もする立場になる。
不倫を犯した男女の殺人事件が起こり、
見過ごせば、正義が問われるため、
厳しい判決が迫られる。
しかも、犯人は、かつてモーゼがエジプトで助けた男だった。
このような様々な事情で
戒律が必要になり、
それを求めてホレブ山に登ったモーゼを待つ間に、
偶像崇拝が復活し、
十戒の石板を持って帰って来たモーゼは、
信仰上の闘争に巻き込まれる。
ヘブライ人同士での内部抗争にまで発展するのだ。
ここまで描いたモーゼものは初めて見る。
特に、ヘブライ人同士の殺し合いの描写は凄惨を極める。
神の声が聞こえないモーゼの苦悩もたっぷり描かれる。
モーゼは何度もこの役目から外してくれと神に訴える。
エジプト脱出の快挙だけでなく、
荒野での苦労まで詳細に描いた。
そういう意味で画期的な作品と言えよう。
ドラマ用とはいいながら、
結構金がかかっており、
豪華なセットを作り、
群衆シーンも沢山の人を動員するなど、
手を抜いていない。
ツタヤディスカスから借りたDVD2巻組で鑑賞。
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