[書籍紹介]
先日紹介した「あこがれは上海クルーズ」と同じ
1984年に刊行された、
佐々木譲初期の作品。
レポート作成のため、
北信濃の高原のペンション「タンネンバウム」を訪れた
大学院生の小泉を迎えたのは、
初音という中学生の少女とエンジェルという名のシェパードだった。
少女は、もうペンションはしていないので、
他のペンションに移ってくれと言う。
今からでは困るとごねて、小泉が宿泊すると、
ペンションが置かれた状況が次第に明らかになって来る。
というのは、2週間前に経営者の両親が交通事故で亡くなり、
ペンションを売却して、
初音は横浜の伯父のところに身を寄せる準備をしているというのだ。
3年前、東京から引っ越して来た初音は、
田舎の学校には異質で、
孤立した存在だった。
居心地がいいので、ペンションに留まった小泉と
初音の間に次第に共感が生まれる。
しかし、周辺に不審な出来事が生ずる。
立て続けに人が死んでいるのだ。
初音を中学校でいじめていたリーダーの少女、
両親を騙してペンション経営に向かわせた役場の職員、
両親に融資し、次の客にペンション売却を進める銀行員。
10日あまりの間に次々と交通事故で死んでいる。
彼らは、両親を口車に乗せて、
ペンション経営に導いたにもかかわらず、
ペンション村計画を果たさず、
経営破綻させた人物だ。
もしかして、初音がそれに関与しているのではないか。
小泉は疑念を持つが・・・
という、ホラーあるいはサスペンス。
初音は魔性の少女なのか、
エンジェルが果たした役割は・・・
ある初冬の土曜日から木曜日までの
わずか6日間の物語。
ひねりはないが、すらすらと読めた。
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