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映画『ファンタジア』

2023年09月25日 23時00分00秒 | 映画関係

[旧作を観る]

舞浜のシネマイクスピアリに、↓のチラシがあった。


ディズニー創立100年を記念しての回顧上映。
その最終日、10月29日に「ファンタジア」が上映されるという。


観にいこうか、と思ったが、
考えてみれば、2008年の回顧上映の時も行っている。
なにより、ディズニープラスで何時でも観ることが出来る。

で、ディズニープラスで観てしまった。
久しぶりだったが、堪能した。
つくづく本当に素晴らしい。

ディズニー1940年の作品。
「白雪姫」「ピノキオ」の次の長編3作目で、
こんなものすごい映画を作った。
クラシックの名曲をアニメーションでイメージ化するという、
斬新なアイデアを
83年も前に実行した、このすごさ。
しかも、史上初のステレオ音声方式だ。

音楽演奏は、レオポルド・ストコフスキー指揮
フィラデルフィア管弦楽団。

オーケストラによるクラシック音楽をバックとした、
アニメーションによる、
次の8編の物語集。

1.バッハ「トッカータとフーガ」(9分22秒)

音楽を聴いてアニメーターが自由に発想した映像。

2.チャイコフスキー「くるみ割り人形」(14分12秒)

森の中の様々な草花や妖精によるダンス。
最初の2曲はカットされ、


曲の順序も一部入れ替わっている。
金平糖の踊り→トレパーク→アラビアの踊り→中国の踊り→葦笛の踊り→花のワルツ
が、映画では、
金平糖の踊り→中国の踊り→葦笛の踊り→アラビアの踊り→トレパーク→花のワルツ
もうこの「くるみ割り人形時」の部分で魂が抜かれる。

3.デュカス「魔法使いの弟子」(9分17秒)

ミッキー・マウスが師匠の魔法使いの魔術を悪用して叱られる話。
一篇の短編映画としても楽しめる。

4.ストラヴィンスキー「春の祭典」(22分28秒)

地球創世期~生命誕生~原生動物から多細胞生物の誕生、魚類、上陸
などの後、恐竜の登場と異常乾燥による絶滅までが描かれる。
原曲の一部がカットされた上、順番が一部入れ替えられている。

5.ベートーヴェン「田園交響曲」(22分00秒)

ギリシャ神話のオリンポスの神々のたわむれ。


第4楽章以外は短縮されている。

6.ポンキエッリ「時の踊り」(12分13秒)

カバや象、ワニや鳥による滑稽なダンス。

7.ムソルグスキー「はげ山の一夜」(7分25秒)

夜、悪魔の出現で人々の魂が奪われる。
しかし、教会の鐘の音で救われる。

8.シューベルト「アヴェ・マリア」(6分27秒)

教会へ向かう人々の行列を美しいイメージで描く。
歌詞は、本来ドイツ語のものを英語に直している。

11人の監督、120人以上のアニメーター、103人編成のオーケストラなど、
投入されたスタッフはのべ1000人、
描き上げられた原画100万枚、
録音テープ(光学録音フィルム)の長さ42万フィート
(そのうち映画の中で実際に使用されたのは1万8千フィート)、
制作期間3年、と前例のないスケールでの製作となった。

1940年11月13日にニューヨークの
ブロードウェイ・シアターで封切されたが、
評価は微妙なところだった。
「田園」と「春の祭典」に対しては
「作品の本来のイメージとはかけ離れている」という批判が集中した。
従来からのディズニー映画のファンですら
作品に戸惑いを見せたという。
さらに、この作品を上映するのに必要な音響装置にかかる費用が膨大だったため、
上映できる映画館が限られていたこともあり、
始めから収益面では期待できず、
莫大な制作費を掛けたものの
全く採算が合わずに大赤字となった。
もっとも、ウォルトは「タイム」のインタビューで
「これは私が死んでからもずっと楽しんでもらえる作品だ」
とコメントしている。
事実、ウォルトが亡くなって3年後の1969年に再上映されて以来、
ようやく商業的にも成功した作品となった。
公開当時は戸惑いをもって受け止められたが、
やがてディズニーの財産となり、
リバイバル上映、ビデオ化で莫大な利益をもたらした。
なお、ウォルトはこの「ファンタジア」を
公開するたびに曲を入れ替える「演奏会形式」を目指していたが、
これは実現できなかった。

日本公開は大戦後の1955年9月23日。
戦争のために、
日本の観客は15年も待たされたのだ。

私が初めて観たのは、
1961年3月29日。
中学1年生の春休み。
場所は新宿松竹名画座。
今の新宿ピカデリーの場所にあった小さな地下劇場。
入場料は60円(学生料金) 。

当時、中学生が繁華街でうろうろしていると補導の対象になったので、
母に連れて行ってもらった。
名画座だから2本立てで、
併映は「黒いオルフェ」
(マルセル・カミユ監督。1959年度アカデミー外国語映画賞受賞) 


というのだから、
思えば私の親は良い教育をしてくれたものです。

なにしろ、クラシック音楽など
「乙女の祈り」と「魔王」しか知らない中2のガキ。
オーケストラなんか聴いたこともない。
交響曲という種類の音楽があるなど、存在も知らない。
そういう子供に音の洪水とイメージの洪水。
カルチャー・ショックでした。
私のクラシック音楽の原点となった。
特に「くるみ割り人形」の美しさ、
「春の祭典」の地球の生命の歴史、
「田園」の牧歌的楽しさ、
「はげ山の一夜」の不気味さなどが、
子供心に残った。

私が松竹名画座で観た時は
変わった上映方法をしており、
当時開発されていた「スーパースコープ」という方式を使って、
一部をワイド画面で上映
たとえば、「春の祭典」の
地殻変動が起こるシーンで、
突然画面は左右に広がる。
画面は歪むが、スケール感が出た。
1962年9月30日に渋谷の東急名画座で観た時も
同じだったから、
当時は、そういう上映方式で統一していたようだ。
映写技師は大変だったろう。

本来の方式ではないので、
その後のリバイバル上映では
その形では見られなくなった。

この話は、Wikipedia にも載っていない。

その後、ディズニーは録音し直してデジタル化。
ストコフスキーの指揮ではなくなったが、
聴きやすくなった。

35年ほど前に舞浜のNKホールで生演奏で上映したことがあった。
指揮者はイヤホーンで原音を聴きながら
画面とオーケストラをシンクロさせた。
これには家族で出かけた。
山本一力夫妻も一緒だった。

ビデオ化された時、真っ先に買ったのはいうまでもない。

今度久しぶりに観て、
隅々まで記憶にあったので、驚いた。
本当に歴史に残る名作とは、そういうものだ。

 



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