空飛ぶ自由人・2

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映画『イニシェリン島の精霊』

2023年02月07日 23時00分00秒 | 映画関係

3泊4日の日程で、ソウルに行っていた娘が、昨日帰って来た。
1日目と4日目は飛行機での移動日、
2日目に、「ベートーベン」「ロビン」
3日目に、「ムーラン・ルージュ」「ウエストサイドストーリー」(2回目)と、
ソウル市内の劇場から劇場に移動しての
ミュージカル三昧の日程。
私も昔、ニューヨークやロンドンに出かけて、
6~8本くらいまとめて観ていたが、
そのDNAは、
見事に娘に引き継がれたようだ。

 

[映画紹介]

1923年、アイルランドのイニシェリン島。
島民全員が知り合いであるような、小さく平和な島。
パードリックは長年の親友であるコルムから突然絶縁されてしまう。
徒歩圏内に家があり、
午後には、連れたってパブでビールを飲み、
馬鹿話に花を咲かせるような毎日だったのに、
突然、「もう友人じゃない」と言われる。


理由を尋ねると、
「お前を嫌いになった。
お前は退屈だ。
つまらない話に付き合う時間が耐えられない」
という。
人格の全面否定
これからは作曲をして、充実した生活をしたいのだという。
パードックは、冗談のつもりだろうと、接触を試みるが、
「これ以上関わり合って来たら、指を切って送りつける」
と脅され、実際、実行される。
最後は片手の指全部を切って、パードックの家のドアに叩きつけ、
パードックが可愛がっていたロバが
それを食べて喉を詰まらせて死んでしまう。
パードックは、
「明日の2時、お前の家を燃やす」と脅すが・・・

これに、知識人で、
島から抜け出そうとするパードックの妹シボーンや
暴力をふるう警官、
その息子の知恵遅れの青年ドミニク、
予言をする不気味な老女たちがからむ。
告解者と喧嘩をする神父など、初めて見た。
島には、本土で戦う内戦の砲撃の音が遠く聞こえる。

閉鎖的な村での友情破綻の人間ドラマ、
かと思ったら、
ゴールデングローブ賞では、
ミュージカル・コメディ部門にノミネートされ、
作品賞を取ってしまった。
部門への出品は製作会社の申告だから、
どうやら、この映画はコメディとして作ったらしい。

確かに描かれる題材は喜劇的だし、
展開も喜劇っぽい。
コルムの主張は一方的だし、
パードックの反応も滑稽だ。
そもそもコルムは「音楽は残る」と言うが、
孤島の素人が作曲した音楽が残る可能性はない。
まして、指を切ったら、
ヴァイオリンさえ弾けなくなるではないか。

と、素材はまさしく喜劇だが、
しかし、喜劇には思えなかった。
私が日本人だからだろうか。
陰鬱なアイルランドの孤島の描写が、喜劇に見せないのか。
これがイタリアが舞台だったら、
まぎれもない喜劇になっただろう。

二人の諍いは、内戦を示唆しているという説もあるが、
とてもそうは思えない。
だとしたら、何だというのか。
何らかのメタファー(隠喩)だとしても伝達されなければ、何にもならない。

というわけで、
???が多く残る、納得感の無い作品。
面白いが、楽しくはない
ただ、アイルランドの島の描写は素晴らしい。
石積みに挟まれた道路も素敵だ。

撮影、編集が光る

監督は、アイルランド出身の劇作家であり、映画監督でもある
「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー
パードックにはコリン・ファレルが、
コルムにはブレンダン・グリーソンが扮し、
両者好演。


妹シボーンにはケリー・コンドン
ドミニクにはバリー・コーガンら。
ベネチア国際映画祭で最優秀男優賞と最優秀脚本賞を獲得した。
アカデミー賞では、作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞(2人)・
助演女優賞・オリジナル脚本賞・編集賞・オリジナル音楽賞など
8部門9ノミネート

5段階評価の「4」

拡大上映中。

 

 



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