快速車両、止まるはずのない場所でブレーキをかければ、それはおかしなこと。先端の車両にいて、アナウンスを聞く。人身事故あり、と。立つ者殆どなく、ほぼ全席に乗客が腰を下ろすなか、ひとつの声も上がらず、それに触れて話す声も聞こえず、ただそれにより待たされる現実の生じたこと、各人が呑み込まざるを得なくなったという事実のみが、そこでの生のものらしい空気。事故現場の現実模様は、限りなくかなたの絵空事めいて、運転席向こうには、線路以外には何も見えない。外からの声もなし。なにも分からないままに、時間は過ぎる。ほどなく起きたことの証しのように近づいてきた、救急車のsiren。