ライオンミドリ la cantine du lionmidori

気の利いたつまみ、おいしいナチュラルワイン、ちょっと珍しいお酒、幸せなチーズ、明日も頑張れる気持ちになるデザート。

ミドリさんのブログ 6

2013-06-22 20:24:47 | ミドリさんのブログ

先日、久しぶりに東京に行きました。

3年半ぶりになるでしょうか。


東京には、今の私があるのに欠かせない大切な友達がいます。

高校の同級生で、東京で服飾関係のデザイナーをしている友人です。


私は大学生だったころ、とにかく東京が好きでした。

お金と時間を見つけては東京に遊びに行っていたのです。

彼女の家に泊まらせてもらい、その頃既に働いていた彼女が仕事に行っている間、ひたすら一人で街を歩き回ったものです。


ある日二人で恵比寿で映画を観た後、晩ご飯は家で何か適当に作って食べようという事になり、彼女は「酒買ってかえろう、酒。」と言ってさらっとワイン屋さんに入りました。

さらに彼女は「隣のパン屋のいちじくのパンも買ってかえろう。」と言って高そうなショーケースが並ぶパン屋さんに入って行きました。

あの当時(ひぃ、なんともう15年前)沖縄で、さらっとワイン屋に入る大学生は一人もいませんでした(たぶん)。

メロンパンとかソーセージパンとか全く置いていないパン屋さんで「いちじくのパン、適当にカットしてもらってもいいですか?」と言ってパンを買う大学生も一回も見たことありませんでした(ないない)。

ただ黙って後ろをついて行った私。


「い、いちじくのパンって、何パン?」と思いながら食べたそれは、私の「おいしいもの」の概念をがらりと変えてくれるようなものでした。

今となれば、小麦粉の味がしっかりしている、いちじくの自然な甘さが絶妙、などと感想を並べる事もできるのでしょうが、当時ただただ感じたのは、「いいものってほんとにいいんだ」という素直な感覚。

すいすい口に運んでしまう。まさに体が歓迎しているという感覚でした。とにかくおいしかった!


その感動はその後の私の人生に静かに息づいています。

雑誌などで「ここのパンは食べてみるべし!」と書いてあるのを見て行っても、こうはならなかったと思います。

東京で必死で頑張っている同級生が、「腹へった、早くかえろう」とちょっとだるそうに言いながら買ってくれて、ワインを開けてくれて、トマトを切って出してくれて、お肉も焼いてくれて、「あ、そうそうこれも」と言って出してくれたものだったからこそ。彼女の部屋の優しいオレンジ色の光と共に、あの感動は生きています。


東京で久しぶりに彼女に会いました。

この話をすると、「あれ、ロブションだったんだよ。」と一言。

な、なにーーー!!

ロブションと言えばあの、ジョエル・ロブション。恵比寿に最高峰のレストランを構える、フランスで有数の三ツ星レストランのシェフ。今の私にとっては、神のような人です。

そういえば地下に降りていったような・・・あのお城のようなレストラン、地下にパンやケーキも売っているはず・・・


私が生涯初めて食べたいちじくのパンは、ジョエル・ロブションのパンでした。

そりゃおいしいはずだわ。

なんだかわからないけどとても幸せな気分になり、とにかく彼女に感謝、感謝。

「ありがとう~!かんぱーい!!」

例のごとく、二人で飲んだくれたのでした。

Photo
写真は無関係ですが、パリで通るたびに立ち止まってしまう、素敵な路地。

ちょうど仲のよさそうな素敵なお二人が。

皆幸せな帰る家がありますようにと思わず祈りたくなる、そんな風景です。


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