ライオンミドリ la cantine du lionmidori

気の利いたつまみ、おいしいナチュラルワイン、ちょっと珍しいお酒、幸せなチーズ、明日も頑張れる気持ちになるデザート。

ミドリさんのブログ 13

2021-01-20 09:11:49 | ミドリさんのブログ
この間、三谷幸喜監督の「記憶にございません!」を観てしまいました。
居ても立ってもいられない気持ちになってしまったので、ちょっとだけ。

「なんであんなセリフを笑いもせずに言えるのか?
もうそれだけで感動してしまう、とんでもない映画でした。」
この2行だけで全て、という気持ちなんですが、もう少し書いてみます。

凌ぎを削ってお仕事されてきた錚々たる俳優さん達が出演しています。
名前を読み上げるだけで笑っちゃうくらい、すごい並びです。
出てるんだか出てないんだかわからないくらいこっそり出ている方もいらっしゃって、大爆笑です。
三谷作品についてよく言われる「仕掛けがあちこちに散りばめられている」。
俳優さん達がその仕掛けを何てことなく次々に処理していくんですね。
もうその様子だけで、心が温まっていく。
何ていうか…愛が感じられて。
監督への、作品への、仕事への。そして自分の人生への。
素敵な大人がいっぱいいる。そう思える事は何よりも私を元気にします。
子どもたちが元気に走り回っている、その光景だけに頼るな、大人!オレらが頑張らなきゃ!
という気持ち。本気で仕事をしている人からしかもらえない、大切なものです。

今ある状況を何とかしたい、ちゃんと向き合わなければ。
と思った時に観ると、とってもいい戦い方が浮かんでくるような映画、そんな気がしました。
三谷作品はいつもそうなんですよね。
コメディなんだけど、おとぎ話なんだけど、でも違うんですよね。
リアリティがきちんと散りばめられていて、だから元気になれる。

さてさて、ご挨拶が遅くなりました。
皆様、明けましておめでとうございます。ずいぶんご無沙汰してしまいました。
私といえば、去年の夏はとにかくベランダでよく飲みました。
息子を寝かしつけた後、グラス片手によいしょとベランダに出て、赤でも白でも何でも飲みました。
昨年はワインの生産者さんにとっても本当に大変な一年、でもワイン業界挙げてみんなで頑張ったな、そんな事を考えていたらボッ、、とフランスまで飛んで行けるような気持ちになりました。
きっと外で飲んでいるせいですね。
小学校の緑がさわさわと揺れて、夜風が本当に気持ちよくて、夏の夜ってそういえばこんな感じだったなぁと夜遊びしていた学生の頃を思い出したりしました。

こんなよくあるベランダでも、不思議なもので、どこまででも行けそうな気持ちになれる。
そんな気持ちを大切に、2021年、頑張っていけたらと思っております。
いつもライオンミドリを応援してくださっている皆様、本当にありがとうございます。
飲食店がこのような状況の中、皆様からの温かいお言葉、本当に嬉しく思っております。
どうぞ今年も、ライオンミドリをよろしくお願いいたします。

本文とは全く関係ないパリの写真です。


14号線のクール・サンテミリオン駅近くで撮った、朝の空。
おそらくオルリー空港発の、朝の便の飛行機雲。
この感じで朝9時過ぎ。
パリの切ない冬の空。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

沖縄県から緊急事態宣言が発出されましたので、
2月7日までは、19時50分に営業終了、20時閉店となります。
尚、酒類の提供は19時までとなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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ミドリさんのブログ 12 

2018-08-30 11:32:38 | ミドリさんのブログ
ライオンミドリの壁に鎮座する、いつもここで「大きいポスター」と紹介しているポスター。
160㎝×120㎝、実際に見ると「こんな大きなポスターがあるんですか?」と驚かれる方もしばしば、そんな大きさのポスターです。

これは、フランスの地下鉄の駅に掲示されるサイズのもので、
業界では「メトロサイズ」というなんとも素敵な名前がついています。

主人とパリに行った時、地下鉄の駅で隣に歩いていたはずの主人の姿がいきなり見当たらない。
驚いて見回すと、後ろの方で、脚立で作業をしているお兄さんと何やら話している。
なんと、ポスターを張り替えているお兄さんに、その剥がしたポスターをもらえないかと交渉していたのです。

最初は怪訝な顔をしていたお兄さんも、
にっこり笑って、くるくるっとポスターを丸めて渡してくれました。

私はフランス語が全く聞き取れないので後で聞いてみると、
「僕はこの映画が本当に好きなんだ、ぜひ日本に持って帰りたい。」
と言って子犬のような目をするよう心掛けた、との事。

あの慣れた感じは初犯じゃないな・・・

ほとんどのポスターは、パリのヴィンテージポスター屋さん、のような所で入手していますが、
時々こんな風に、駅構内や街中の映画館で手に入れる事もあります。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、このメトロサイズのポスター、ほとんどのものに折り目がついています。
フランスではこのように折ってポスターなどを保管する事が多いらしく最初はびっくりしましたが、
日本よりもこういった紙媒体がアートとしてとても大事にされており、大量の紙製品を効率よく保管するためにそうなったのでないか、と言われているそうです。

時々、折り目のついていないものに出会う事もあり、少々割高ですが探していたものだったりすると迷わず購入します。
しかし、丸めて筒に入れて持ち帰ろうと思っても、機内に持ち込めるサイズ規定から外れてしまうので、結局折りたたんで持ち帰って来ていました。

ところがある年、試しに筒に入れて持ち帰ってみようと試みた主人。
日本の手荷物検査の人とは違って、イカツい検査員が構えているシャルル・ド・ゴールの手荷物検査場。
見るからにサイズ規定外の荷物なので、当然「これは何?」と聞かれ、
主人は「ポスターです、映画のポスター!」と、また子犬の目で訴えてみたそうです。
そうしたら、「しょうがねぇな。」という顔をして通してくれた。

映画に弱く、紙に優しいフランス人!

でも、私は何となく、この折り目も素敵だなぁなんて思っています。
基本的には「折れてたって、ちょっとくらい破けてたって、別に気にしない、素敵なものは素敵。」
フランス人のその感覚。
高級な漆器を何気なく普段使いしている輪島の人とか、大島紬の着物をあちこち縫い直して何十年も着ているおばあちゃんの映像を観た時の感じ。
かっこいいなぁ、こういうのが本物って感じがするなぁ、と思います。

気に入っちゃったから、毎日手の届くところに。目の届く所に。
そうやってアートと言われるようなものも自分の生活の中に溶け込ませている。
大事にしすぎず、一緒に、思い出を刻む。
そして子供たちもまたそれらを見て、そのフォルムを、色彩を、目に焼きつけて、時々ビリビリに破いたり壊したりして、その感性を引き継いでいく。
日常が、楽しくて、豊かで、伸びやかだなぁ!
なんて事を思ったりします。

ライオンミドリのポスターをご覧になる時は、
あぁ、この折り目のついた子、フランス人がよいしょ、と迷いもなく折ったんだ、
そしてここのシェフに見初められてフランスからわざわざやって来たんだ、
おっ、この子は無事にシャルル・ド・ゴールを通過したんだ!
と思って、ほんの少し楽しんで頂けたらと思います。



反対側のホームのポスターを物色している様子。



今年のカンヌ映画祭の公式ポスター。『気狂いピエロ』のワンシーン。折り目付き。

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ミドリさんのブログ 11

2018-05-15 14:23:13 | ミドリさんのブログ
お久しぶりです。ミドリさんです。

ライオンミドリにはお一人で飲みに来るお客様が多くいらっしゃいます。
それはなぜか、沖縄市のサバニカフェ、プラザハウス時代からずっとで、私たちはそれをとても嬉しく思っております。

一応経理を担当しているので、日報で一日の報告を受けていますが、
その中に○組○名、と書く欄があります。
時々、8組8名、10組10名、と書かれていて、いらして下さったお客様全員がお一人でご来店という日があります。
私はそれを見ると本当に嬉しくなります。
店をやっている幸せを実感する、と言ってもいいほどです。

私は東京に住んでいた頃に1人でふらっと飲みに行く、という事を覚えました。
仕事の帰りに足がクタクタで、どこかで座ってから帰ろう、とカフェか何かを探していた時。
一見カフェに見えましたが、カウンターがあり、まだ外は明るいのにグラスでビールを飲んでいるOLさんや、文庫本を片手にカクテルらしきものを飲んでいる人の姿が。
渋谷だったので色んなお店がごったになって並んでいる中で、何だか目について入ってみました。

私も迷わずビールを注文。

ビールってきれいな色してるな、なんて思いながら味わって飲みました。
本当においしかった。
ガラス越しに見える渋谷の雑踏も、1人で考え事をするOLさんの横顔も、お店の人のグラスを拭く姿も、なぜか眩しく目に映り、ふー、と肩の力が抜けていくのを感じていました。

15年経ってしまった今も、くっきりと残る思い出の日となっています。
それからは、本当に今日はがんばって働いた、という日を選んで行くようになりました。
「思い立った時にすぐ行くのがポイント」、「誰にも言わない方が勝ち、という感じがする」をテーマに掲げて。
今思うと、本当に贅沢な、豊かな時間でした。

30代に入ってからは、仕事の一環でパリに行くようになりました。
東京でちょっとだけ感じていた、罪悪感のようなもの。
最高に楽しいけど、女子が1人でこんな風にしていて本当に幸せといえるのか?みたいな、うっすらと私を覆っていたものが、一気に吹っ飛びました。

パリはすごかった。
白髪のおばあちゃんがデパートのフードコートで待ち合わせしている間にワインを飲んでいるし、仕事の合間に1人でランチを取りながらも、商談中でさえも、さらっとワインを傾けている。
そしてみんな、リラックスしていて、楽しそうに見える。
お酒を飲むという事、そして食べるという事の概念が国まるごと違うんだと、思い知らされました。あんな都会なのに。都会ならではの嫌な事もいっぱいあるだろうに。どうしてみんな幸せそうに食べたり飲んだりしている?
その理由が知りたくて、またパリに行きたくなってしまうのです。

よし、私もこんな感じで沖縄でも生きていこう!と思う根性はありませんが、ほんの少しの後ろめたさがなくなっただけで、人生の楽しみをまた一つ、温めているよう気がしています。

そんなパリの空気をほんのちょっとだけ。
私達はそんな気持ちでお店をやっています。
ふと思い立った時に1人で飲みに来たお客様も、幸せなひと時を過ごせますように。


マレ地区にある、スウェーデン文化会館に隣接するカフェ。
一人でぼーっとするのに、よく利用させて頂いていました。


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ミドリさんのブログ10

2017-08-10 11:24:34 | ミドリさんのブログ
この間、主人が久しぶりにぱりっとした声で電話しているので何だろうと思って聞いてみると、東京にいた頃にお世話になっていたお肉屋さんに電話している様子。
懐かしい担当者の方の名前も聞こえてきました。

「お肉?何か作るの?」
と聞くと、

「ムサカ作りたくなって。ナバランも考えたけど、やっぱりムサカかなと思って。」

ムサカ? …ナバラン?

私には何の事だか分からなかったので聞いてみると、色々な意味でうちのシェフらしいな、と思うところがありましたので、ちょっと書いてみようと思いました。
長文になりますが、よろしければお付き合い下さい。

ムサカは、羊のひき肉とナス、ベシャメルソース(ホワイトソース)などを重ねて焼いたグラタンのようなもの。
想像だけでおいしいとわかっちゃうような料理!
ギリシャの料理で中東でよく食べられているらしいのですが、フランスでの歴史も長く、フランス人も大好きだそう。
ビストロなどの日替わりの昼ごはんで出てきたり、量り売りのお総菜屋さんで売られているような、すっかり馴れ親しまれた定番の料理だそうです。

最近は日本でも知られるようになり、何とかパットなどでもレシピが紹介されたり、テレビのお料理番組でも紹介されたりしているようですね。
私はその辺にうとく、全然知りませんでした…

ナバラン… こちらも羊料理ですが、ナバランは正真正銘、王道のフランス料理。
羊と野菜がゴロゴロ煮込まれたシチューのようなもので、シチュー皿やココットに盛られて出てくる事が多い料理です。

近年、そのナバランを星付きのレストランのシェフ達がメニューに載せるようになっているそうです。
例えば、お皿に大きな羊の肉の塊、そして考え抜いたトマトベースのソースがあしらわれ、選び抜かれたガルニ(つけ合わせ)が添えられ… といったように、シェフ達が自分の個性を存分に表現し、伝統料理であるナバランを一つ二つ高い所へ昇華させている動きがあります。

料理をしている方なら想像がつくそうですが、ムサカと比べたらナバランの方が、自分の個性を出しやすい、より複雑な味の組み合わせが表現しやすい、ビジュアル的にも華やかさを出しやすい、
・・・そうです。

それもふまえて、うちのシェフは
「やっぱりおいらはムサカかな。」
という結論に至り、羊の発注の電話をしていたわけです。

「ナバランの方が高く売れるんじゃないか、作れば?」
と言う妻に対し、
「そういう波がきたら作る、今はムサカを作らせてくれ。」
との事。

主人の古くからのご友人で青山でガストロパブをやっている方がいらっしゃいます。
その方もやはりフランスに精通なさっており、
「今年、行きました?」
「はい、そちらは?」
と毎回ニヤニヤで楽しく情報交換しているようです。

今年その方のお店にお邪魔した時、メニューにムサカがあったそうです。
「やっぱり時々、無性に食べたくなりますよね。」
「いいですよね~、ムサカ。」
しみじみと話したそうで、フランスをよく知る人にとって、なんとも言えない味があるもののようです。

ムサカはムサカ以上にはなれない感じが、どんなにいじってみてもやっぱり普通のがおいしいよね、という感じが、がつがつテレビ観ながら食べられる感じが、たまらなくかわいいんだそうです。
「フランス料理やってる男子は、みんな好きだと思いますよ、ムサカ。」
うちのシェフはにこにこで言っておりました。

ライオンミドリのムサカ、期待していいと思います!
準備が出来次第、またご紹介させていただきます。
ナバランも!!という方、ぜひ清きご一票を(?)



こちらは、去年パリでお散歩していて見つけた「ル・キガワ」というお店のナバラン。ミシュランガイドにも掲載されたお店だそうですよ。


ル・キガワの帰りにそう言えば、と思い出して行ったアルジア教会。
サンジェルマンデプレ教会やサンシュルピス教会(ダヴィンチコードに出ちゃった!)は何となく・・・敷居が高いような気がしちゃいますが、こちらは昔ながらの素朴な味わいのあるいい教会だそうですよ。
観光客がいないのである意味こっちの方が敷居が高いという声もあります!

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ミドリさんのブログ 9

2016-11-13 05:19:40 | ミドリさんのブログ
ボジョレーヌーヴォー・・・
今年もこの季節がやってきました。

ボジョレーは、フランス南東部、ブルゴーニュ地方の一画にある丘陵地帯です。
訪れた事はなく映像などでしか見たことはありませんが、ぶどう畑が一面に広がり、かわいい小さな家々がポツポツと建つのどかなワインの名産地です。

はるか遠いフランスのその村から、11月の第3木曜日に間に合うように今年一番のワインが世界中に向けて出荷されます。

1800年代から始まった、この新物ワインの生産。
ボジョレー・ヌーヴォー 、Beaujolais (ボジョレー地区の)nouveau(新物)。
諸説ありますが、ぶどうの豊作を願う感謝祭的な意味合いや、その年のブドウの出来栄えをチェックする事を目的として作られ、地元住民の間で親しまれていたものがパリでブームになり、それが今こうやって世界中に広がりました。

私なりの解釈ですが、、
最近の日本で言うと恵方巻?
ある地域で行われてきた伝統行事が急に全国的なものになり、そして世界へ・・・
ボジョレーの人もびっくり!!だったんじゃないかと。

ぶどうの種類によっても様々ですが、一般的に赤ワインに使われる黒ぶどうの収穫は9月~11月、そこからぶどうを破砕して熟成に1年~1年半、濾過して瓶詰めにしてから、高級赤ワインとなると瓶熟成に2年ほど、そして出荷となります。

それに比べボジョレーヌーヴォーは、9月にぶどうの収穫、11月の第3木曜には世界中のお店に並ぶわけですから、どんだけ大急ぎか!
なので、「うすい」「思ったよりおいしくない」と感じられてしまうのはやむを得ない・・・のかもしれません。

元々の意味は次第に薄れ、今では商業的な目的だけでこの新物を作る生産者がほとんどかもしれません。
「ヌーヴォーなんだからしょうがない」と、とにかく出荷する事を目的として品質にこだわらない業者もたくさんいるでしょう。
でもなんとなく、「まぁ、いいか。」と思わせてくれるのがこのボジョレーヌーヴォーのすごいところ。

今年もまたおいしいフランスのワインを飲むことができるのも、生産者さんたちが汗水流していい仕事をしてくれているからこそ。
そしてこんな遠くの小さな島の小さなお店に11月17日の木曜日にちゃんとワインが届く奇跡に、感謝。
すごい時代だ。
私たちは毎年、営業終了後に2人で「カンパーイ!フランスへ届け~!merci!」
がばーーっと飲んで、寝ます。最高にしあわせです。

ライオンミドリでは、ヌーヴォーだからといって手を抜いたりしない生産者さんを毎年一生懸命探しています。
醸造期間が短い分、その年のぶどうの出来に左右されやすく誤魔化しもききにくいヌーヴォーですが、その中でも芝の目を読むように緻密なワイン造りをしている生産者さんもたくさんいらっしゃいます。
そのような方々に、敬意をこめて。
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。


写真は、、すいません、ボジョレー地区では全然なく、私がシャンパーヌ地方へ行った時の写真です。
同じワインの生産地という事もあり、なんとなく、雰囲気はつかんでいると思います(笑)
許してくださ~い。






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