言葉による音楽的な日々のスケッチ

作曲講座受講日記と、言葉による音楽的日々のスケッチを記録

奇妙な孤独

2006-01-10 00:06:59 | ART
2006年1月8日 日曜日

<遠い国に住む人からの伝言>

今年最初のアート体験は現在フィンランドに
お住まいのアーティスト三田村光土里さんによる
限定人数招待制の展覧会へ、
中村ケンゴさん
と(美術作家で彼女の友人でもある)
広尾にある「古書一路」という古本店へ向かう。

『遠い国からの伝言』は現在記録展開催中~2006/4/9。
詳細は現在こちらに掲載されています。
ReatTokyo『小崎哲哉氏のコラム』


行くまで、何を見て、何がそこに有って
何が起きるのか全く想像がつかないミステリアスな展覧会。
アーティストご本人とのやりとりを経て鑑賞を決めたので
いろいろな想像力がかきたてられわくわくする。


広尾に着いた時は既に日が暮れ始めて居た。
道に迷いつつも、現場に着く。
事前に現在フィンランドに住む三田村さんご本人から
丁寧な文面の手紙を頂き(手書きの地図まで付いていて)
寒い異国に居て孤独でありながら創作をする境地と
真摯さを感じながら手紙を受け取った。
その手紙にあったある言葉を、店主にお伝えするのが決めごと。

会場に行くと作家本人が店主に託した或るものを、
鑑賞者は手渡される。それごと全てが作品なのだ。
参加者(鑑賞者)全てに別々の作品が手渡される、とのこと。
作品を受け取って、とても豊かな気持ちにさせられた。
鑑賞にいたるまでの経緯を含め
別な所にあった別々な幾つかの大切にしていた
好きな物事が繋がったかの様な不思議な出来事となった。

作品を含め詳細については未見の
ほかの鑑賞者の方々もいらっしゃるので
ここで今は公表出来ないけれど、ご本人からの言葉通り
鑑賞した人のみにしか味わえない作品でした。
(3月に再び同じ場所で展覧会を行う予定だそうです)

そんな風にアーティストご本人から直接与えられた
「機会」そのものが素晴らしいと
感じざるを得ないような出来事が起きた。
とても個人的で小さな幸福なのだけど私にはとても重要な出来事。

ある完全なタイミングでしか
その未知の対象と出会えない、という状況がある。

今から4年程前、ある決意から
これまでやろうとしてやっていなかった
好きなあらゆることを少しでも専門的に学習しようと
まず最初にフランス語を始めた時、

学院の図書館で背表紙のタイトルに心を掴まれて
ある1冊の本と出会った。

タイトルに惹かれたとおり内容は
その時の特殊な状況による孤独の心情とシンクロし
これまでに一度も触れられた事のないような部分にある感情を
これまでにはないやり方で揺さぶられたような文章だった。

その本は30年以上も前に出版されたもので
詳細を調べたら絶版になっていて
記憶と手元に留めておきたい文章だったため
始まりの魅力的な数ページの文を
パソコンに打って保存してあった。

この作家は今では大御所的存在だけど
これは2作目で、今とは全く文体が違っていて
多少大仰だけど、とても瑞々しく情熱的。
何故日本で出版されないのかわからない。
(オリジナルの本はこんなに素敵な装丁)




そして今回の展覧会の会場である古書一路にて
店主に挨拶をしてお茶を頂くべく席に着いて
本棚に目をやって絶句。
(人は喜びにちょっと驚いた時にも絶句するらしい…)
目の前に探していて諦めていたその本が
微笑みかけるように並んでた。


見慣れた装丁だったのですぐに気がつき、
経緯もあったので今ここで出会った事に感銘する。

店主の本に対する愛情を感じるように
古書にも関わらずコンディションが良いのにも感激。
信頼出来る古本店を見つけられた事も
とても嬉しい発見だった。

このような作品と機会を創作し、提供してくれた
三田村光土里さんに深い感謝と敬意を表します。

<小さな偶然>

森美術館で開催され終わり迄あと2日に迫っていた
「杉本博司」展に行こうという事になっていた。
そんな話をしたらチケットをたまたま持っていらした
店主に頂いてしまう…初めて訪れたというのに何て有り難い。
感謝の言葉もありません。

<杉本博司展@森美術館>

美しい光と影、モノトーンの世界。
数理模型の作品は数字という明確な答えがあるものが持つ
独得の美しさを放っていて
割り切れるものの明澄さに惹かれ、美しいと思う。

「フーガの技法」の静謐な明晰さの事が思い出された。

そして作家による強烈に印象的な言葉。

・芸術的野心のないものにも芸術は宿る
・どんな虚像でも一度写真に撮ってしまえば実像になるのだ




観賞後は恒例の夜景観賞。

正月明け間もない東京の空気は冬の冷気と共に澄んでいたらしく
夜景はまるで「大停電の夜に」状態



夜景とハーフムーンがあんまり綺麗だし
気分が良いのでカフェでジントニックを一杯。





アートによるコミュニケーションの力と
語る言葉を持たないほどの
静謐な作品の美を堪能した休日だった。














<BODY>

<script type="text/javascript" src="http://www.research-artisan.com/userjs/?user_id=20060529000243138"></script><noscript>

</noscript>

</BODY>