報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

カトリーナとイラク

2005年09月08日 20時12分47秒 | ■時事・評論
ハリケーン・カトリーナで被災した40万という人々は、いつか我が家に帰ることができるのだろうか。

彼らが、我が家に帰る日はこないと思う。
被災したのは大部分が貧困層であり、義援金や一時金など、数ヶ月も持たないだろう。今後仕事につける見込みも非常に少ない。家屋に保険をかけていた貧困家庭もまずない。つまり、水没した家屋を補修したり、家を建て直せる人などほとんどいないということだ。

では、何十万人分の水没家屋や土地は、今後どうなるのだろうか。
おそらくライフラインの復旧は、市中心部と富裕層の居住エリアに限られ、貧困層の居住地域は放置されるのではないか。排水され消毒が終了したとしても、ライフラインがなければ生活はできない。

結局、収入のない被災者は、土地を二束三文で買い取られることになるのだと思う。すでに、土地を担保に、被災者にカネを貸している業者もいるという情報もある(未確認)。借りたお金を返せる人は少ないだろう。したがって、いずれ土地は金融業者のものになる。そこから不動産業に転売される。

ニューオリンズは、大手土地開発業者の手によって再開発され、数年でまったくあたらしい別の街に生まれ変わるかも知れない。あらたなニューオリンズの住人となるのは、豊かな人たちであることは間違いない。

もとの貧しい住民はどこでどのような暮らしをすることになるのかは、いまのところまったくわからない。しかし、10代後半から30代の男性の行き場としてひとつ頭に浮かぶ場所がある。イラクだ。

イラクでの、米軍の死傷者が増えるに従って、米軍の新兵募集人数も激減している。正規軍では足りずに、州兵まで借り出してイラクに送り込んでいる。それでも、交代要員もなく、休暇も与えられず、兵士はひたすらイラクに釘付けになっている。兵士は疲弊し、ブッシュとその汚い戦争を憎み始めている。すべてを失い、行き場もない被災者を追い込んでいけば、最後に残る選択は軍隊しかないように思う。今イラクにいる兵士のほとんどは、貧乏人ばかりだ。

未曾有の大災害に対して無策といえるほどの米政府の対応は、ブッシュが単なるマヌケで無能な大統領だからではないように思う。
「カトリーナ」はブッシュ大統領にとって、災いよりも、女神に見えたのかもしれない。