報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

互いに理解し合うこと

2005年09月15日 17時16分37秒 | □郵政民営化
この数日間、日本人は混乱していた。もちろん、僕もそうだ。みな、何が起こったのかを理解するのに必死だったのだと思う。その証拠に、この数日間は当ブログへのアクセスが急増した。他のブログも同じなのではないだろうか。多くの人がブログを駆け巡っていたことが察せられる。僕も駆け巡った。たった数日間だが、この間に得たものはとても大きいと思う。

表面的には、自民党の圧勝という形で選挙は幕を閉じたが、実際の有権者の投票行動自体は、極端なものではなかった。投票数には、それほど極端な差はなかった。いわば、二分する形だ。議席数の多さに幻惑されたが、有権者の投票行動はごく健康的なものだったといえる。議論が分かれるのは、ごく自然なことだ。それが議席数に反映されなかったのは、小選挙区と比例代表の併設という選挙区制の問題だった。

考え方や方向性が違っても、少しでも日本と日本人の生活を良くしたいという気持ちは皆同じだ。真剣に物事を考えれば、意見が分かれるのは人間の普通の営みだと思っている。特に今回は非常に重要な案件だっただけになおさらだ。選挙が近づくにつれ、ブログ界でも議論は沸騰した。だからこそ結果は、ほぼ二つに分かれたということなのだと思う。

ブログを見渡してみると、今回、マスメディアに対して、両陣営ともが批判していることは特筆に価する。メディアは、信頼にたる機関ではないことを双方が感じている。メディアが信用できなければ、自分自身を信じて行動するしかない。誰もが、メディアに依らず自分自身で真実のよりどころを求めたということになる。インターネットというものが、それぞれの考えの熟成に大きな効用があったのではないだろうか。とりわけブログの存在は大きかったと思っている。

いま、我々に必要なのは、我々が求めているものは、同じだということを理解することではないだろうか。日本を良くしたいという気持ちはみな同じなのだから。相手を支配したいと思っている人はいないはずだ。相手の富を奪いたいと思っている人もいないはずだ。誰もが、少しでも安心して住める日本にしたいと思っているはずだ。

意見は分かれても、我々の志は同じだということを、互いに理解し合うことが、いまもっとも必要な時期ではないだろうか。

ブログのよりよき発展をこころから願いつつ。

アパッチ

2005年09月14日 23時57分03秒 | 写真:アフガニスタン
アパッチ : カブール

ムジャヒディン勝利式典上空を、
警戒飛行する米軍の攻撃ヘリコプター・アパッチ。
カブール市内上空を飛行することもあるが、
そういう場合は撮影できない。
式典の時だけ、例外的に自由に撮影できた。

アフガニスタン戦争やイラク戦争で、
アパッチがどのような任務につき、
どのような「成果」をあげたのかは、
ほとんど公表されていない。

いま、何が必要か

2005年09月14日 01時26分40秒 | □郵政民営化
いま、我々が陥ってはいけないことは、落胆したり、諦めたりすることだ。それは、”知的衰弱”どころか”思考停止”を意味する。

今回の事態が、日本人の”知的衰弱”の結果だとしても、投票総数の半分の有権者は、政府とマスメディアの情報操作に惑わされなかったのだ。”民は愚かに保て”というのが国家統治の大前提だ。しかし我々は、そうした愚民政策に足をとられなかった。そうした国民が何千万人もいるのだ。まだまだこのままでは終わらないと感じる。これからも眼を見開いて、日本と世界の現実を冷静に見つめ続けよう。ただし、それが一番難しい。


かつて、ベトナム戦争を終わらせたのは、世界の反戦の声だった。世界中で反戦という”戦い”が展開された。日本でも、同様だった。でも、それが日本や世界に何を残しただろうか。何もない。もし、それが何かを後に残すようなものだったら、湾岸戦争やアフガニスタン戦争、イラク戦争もなかったはずだ。

世界はなぜベトナムと同じ愚を、この21世紀に許したのか。確かに世界のベトナム反戦運動は、ベトナム戦争を終わらせた。しかし、反戦活動家は、以後何をしただろうか。何もしていない。後に”ミーイズム(個人主義)”と呼ばれる現象をおこしただけだ。政治に無関心になり、自分の殻の中に閉じこもり、自分の幸せだけを追求した。国家への不信や厭戦気運は、ただの思考停止へと変わってしまった。この思考停止が、後の湾岸戦争を可能にした。

湾岸戦争の勝利式典で、シュワルツコフ将軍は、「われわれは、ついにベトナムの悪夢を払拭した!」と高らかに宣言した。それは、戦争を可能にする環境が、再び誕生したことを祝福する宣言だった。ベトナム戦争による厭戦気運が、ミーイズムという思考停止を経て、国家への警戒心の欠如にいたり、そして、いまのイラク戦争がある。ベトナム反戦運動の巨大な渦は、何の教訓も残さなかった。結局、”戦い”には、知性は必要なく、知性を育むこともなかった。ミーイズムという居心地の良い思考停止を生んだだけだ。


これから我々の目の前で、最低の歴史が展開される。見たくもない、聞きたくもない、語りたくもない歴史が。ただ、それを避けて通ることはいとも簡単だ。ミーイズムを受け入れればいいのだ。居心地の良い楽園が待っている。それは、セルフ・マインド・コントロールとも言うべきものかもしれない。だったら最初からマインド・コントロールを受け入れればいいのだ。

我々には到底受け入れがたい歴史がこれから始まる。しかし、眼を見開いて見つめ続けよう。我々はけっして、落胆や諦めという思考停止に陥ってはいけない。安直な”戦い”など試みてもいけない。それこそ、思う壺だ。いままで同様、冷静なこころと眼で、日本と世界の現実を見つめ続けよう。ただし、それが最も困難で苦しい作業なのだ。

裏切られる改革への渇望

2005年09月12日 23時10分31秒 | □郵政民営化
今回の小泉戦略とは、プチ・マインド・コントロールだったのかなと思う。わかり易く、短いセンテンスを、とにかく繰り返す。内容そのものはない。ない方がいいのだ。しかし、センテンスを連呼するだけで、民衆をコントロールすることなどできない。一定の前提がなければならない。その前提があったということだ。

僕は常々、日本人は極度のフラストレーション状態にあると感じている。海外では、貧しくとも、のんびりした大らかな空気に包まれ、とても居心地よく感じる。でも、日本に帰ってくると、豊かなのに、何か日本人はいつも不満を抱いているように感じる。この十数年来、常にそう感じてきた。数字では、世界一豊かなはずなのに、まったく豊かさ感がない国。犯罪は増加し、凶悪化、低年齢化している。海外の犯罪は単純明快だ。貧しくて食べられない、だから盗る。日本の犯罪には、ときおり理由の解らない不気味さを感じる。日本全体にドロドロとした不満の塊があるように感じる。

そんな状況の中で、日本人は、何かを変えたいと感じているのだと思う。何でもいいから、少しでもいいから、この窒息しそうな日本を変えて欲しい。変革を実感したいという渇望が、冷静な判断を阻害している。それを”知的衰弱”と言ってもいいのかもしれない。

そんな日本人に、小泉首相は、改革、改革とバカに見えるほど連呼した。中身がないから連呼するだけと思ったのは、浅はかだった。今になって思えば、計画的な戦略だったと感じる。たまたま思いついたのではない。どこかの学者か専門家が分析し戦略を立てたのかもしれない。本人もマスメディアもびっくりするほどの効果を発揮してしまった。選挙区制のマジックもあるが。

加えて、民主党の戦略のなさも追い風だった。民主党は、政権を獲りたいという、はしたないエゴを隠そうとしなかった。これは日本人には受けない。

小泉自民は、ぐつぐつと沸騰する日本人の変革への渇望を実にうまく利用したと言える。しかし、変革への渇望は、言うまでもなく満たされることはない。これから、どんどん悪くなるのだから。煮えたぎる渇望が裏切られたと知ったとき、日本人はどういう反応をするのだろうか。

小泉首相は、大勝利にもかかわらず来年9月の任期で辞めると宣言している。いずれ自身にふりかかる国民の非難を理解しているのか。保身には抜かりのない男だ。

自民、歴史的圧勝がもたらすもの

2005年09月12日 01時15分50秒 | □郵政民営化
「郵政民営化」の危険性について警鐘をならしてきた多くの人が、国民はこの4年で、小泉改革の何たるかを理解している、と判断していた。選挙において国民は適切な判断を下すはずだ、と。たとえマスメディアの力によって勝つにしても、圧勝はないと見ていた。ところが結果は、小泉大応援をしてきたマスメディアも予想しなかった圧勝だ。誰もが驚く結果だ。もちろん、僕もだ。

しかし、こうした事態を早くから、現代日本人の精神的特性から、予測していた人もいる(引用の引用で申し訳ないが、時間がないので許していただきたい)。

──「彼の二項対立は実に分かりやすく、『小泉=改革=善』対『抵抗勢力=旧守=悪』という『善対悪』の価値評価の図式は、今も暗黙のうちに人々に影響を及ぼしている。これは、小泉首相のレトリックの力にもよるだろうが、一方で、日本社会の側に、複雑な思考に堪ええなくなっており、ひたすら『わかりやすさ』を求めているという知的衰弱があるのではないか。昔は、あまりにも単純なスローガンに対しては、もっと意地の悪い猜疑の目が向けられていたように思うのだが。『誘導されやすさ』が現代人の最も顕著な精神的特徴となっているのではあるまいか」──
(『世界』九月号、「小泉支持率にみる知的衰弱」一九七頁。八幡洋:八幡心理教育研究所所長、臨床心理士、作家)

この分析の正しさを、ある程度認めざるを得ない。日本人は疑うことを止め、この4年間で日本がどうなったかさえ理解できていない。マイケル・ムーア監督は、自国民を”Stupid White Men”と揶揄したが、日本人は”知的衰弱国民”と呼ばなければならないのか。

今回の結果を受けて、小泉首相は今まで以上に、爆走することになるだろう。それが意味するものは、アメリカの財政赤字と戦争、減税のファイナンス以外の何ものでもない。アメリカのイラク戦争の戦費は、現在137兆2000億円。最終的には、300兆円に達するとも予想されている。アメリカの財政はとっくの昔に破綻している。この戦費を自国で賄うことはできない。外国にファイナンスしてもらわなければならない。これだけの巨費をファイナンスできるのは、日本以外にない。ブッシュ政権は、日本のお金を当てにして、アフガニスタンとイラクを侵略し、大勢の市民を殺戮してきた。これで、アメリカの軍事力と日本の金融資産が合体することになる。

今回、日本国民はとんでもない選択をしたことになる。
自分たちの生活を犠牲にして、アメリカの戦争を支え、アメリカの金持ちの生活に奉仕するのだから。

マスメディアは、そのことを知った上で小泉自民を大応援した。今回の、”ありえない歴史的圧勝”は、政府とマスメディアの常軌を逸した連合が起こしたものだ。マスメディアは、やってはならないことを、やってしまった。これは、国民への裏切り行為だ。いずれ引き起こされる結果に、政府もマスメディアも責任を負わなくてはならない。そういう意味で、小泉首相もマスメディアも、大きなミスを犯してしまった。これだけ露骨なことをして、あとから咎めがないと思ったら大間違いだ。小泉首相は、来年9月にさっさと逃げるつもりでいるようだが。

日本国民は、自分たちが信任した小泉改革の正体を、いずれ身を持って思い知らされることになる。今後、国民生活が良くなることは絶対にない。いくら”知的衰弱”といわれても、生活が苦しくなる一方なら嫌でも眼を覚ます日が来る。ブッシュを信任した”Stupid White Men”もいま、ブッシュにNOの声を上げ始めている。

当選した方からも一言。
「明日は、たいへんなことになりますよ」亀井静香氏
「(自民に票を投じた有権者は)あとから、”しまった!”と思うのじゃないかしら」田中真紀子氏

中間報告

2005年09月11日 20時45分02秒 | 軽い読み物
8時45分現在。
すごいことになっている。
投票が締め切られた瞬間に、もうテレビでは、自民圧勝。300議席以上と。
小泉大応援を展開してきたマスメディア自身ですら、ここまでとは予想していなかったようだ。
ひとまず、最終結果が出るまで注視したい。

土壇場

2005年09月10日 08時32分23秒 | □郵政民営化
これまで、「郵政民営化」に関して、いろいろなサイトを参考にしてきた。一部はリンクしてあるが、リンクしていないものもある。リンクしていないものは、たいへん参考にはなるのだが、最終的にどういう人物かよくわからないので、人様に紹介して問題がないだろうかと若干の不安があった。

そういう参考サイトのひとつが、最新の更新で、遠まわしだが「投票は小泉自民しかない」という意味以外に受け取りようのない内容だった。それまでは、『郵政民営化法案はアメリカの国益のためのアメリカの法案である』『世界一安全な日本経済、国民の貯金箱、世界一安心な保険をアメリカのために崩壊させていいのか』と明言していた。

ただ、この方は「郵政民営化」反対ではなかった。
『私の見解は「特に持株会社に4社株放出後一定の買戻し権を持たせる」ことを条件に郵政民営化賛成である。』『貯金会社と(簡易)保険会社が外資のM&Aに対抗できるよう持株会社の4社株買戻し権だけは温存すべきである。』
という条件付での賛成だった。

その考え自体は、たいへん理にかなったもので、間違ってはいない。しかし、小泉首相は、そうした法案修正など口にしていないのに、なぜ小泉自民への投票呼びかけになるのだろうか。別にこの方を非難するつもりは毛頭ない。深い考えあってのことなのだろう。相当頭の切れる人であることは間違いない。投資の世界ではかなり名の知れた人のようだ。肩書きは、国際金融アナリスト。政財界に幅広い人脈もありそうだ。サイトの読者は100万とおっしゃっている。だとすると、発言の影響力はかなり大きい。

この方の書くものは、多少用心して読んではいたが、国際情勢の分析はユニークで、おもしろい。あまりの強気の発言に、そこまで言い切って、もし外れたらどうするのかな、と心配したりもした。そう思いながらも、たいへん参考にさせてもらった。そもそも国際情勢など流動的で本来予測できるものではない。それを言い切る気風のよさがなかなか豪快で好きだった。

投票をまじかに控え、各方面にはかなりの圧力がかかっているに違いない。たとえばサイトをリンクしている森田実氏は、テレビ出演がほとんどなくなったようだ。経済的には大打撃に違いない。選挙後も同じ状況が続くだろう。それでも筆法は衰えない。ちょっとハラハラする表現もあるくらいだ。

最新のニュースでは、「郵政民営化」に反対票を投じた自民の参院議員二人が賛成に転じるようだ。棄権・欠席の8人もほぼ賛成にまわる。反対派参院議員からあと3人が賛成に転じれば、小泉首相は郵政法案を成立させることができる。小泉首相の恫喝もこれから本格的になるだろう。

土壇場になってみないと、人間とはわからない。
そういう意味では、いろいろなものの真価がはっきり見える好機なのかもしれない。

大統領

2005年09月09日 21時57分17秒 | 写真:アフガニスタン
大統領 : カブール

ハミド・カルザイ大統領
「ムジャヒディン勝利式典」にて

いまのところ、カルザイ大統領の人気は高く、求心力がある。
軍閥に属さず、多数派民族のパシュトゥン人であることが主な理由だろう。
ただ、カルザイ大統領の経歴は、さもありなんという気はする。

Hamid Karzai
1957年12月24日生
アフガニスタン、ウルズガン州出身
1996年11月、タリバーン政権の国連大使となるが、
すぐにタリバーンから離脱、アメリカに渡る。
米大手石油会社ユノカルの最高顧問となり、
タリバーン政権とパイプライン建設の交渉を行う。
クリントン政権は、タリバーン幹部をアメリカに招待。
しかし98年、クリントン大統領はアフガニスタンを爆撃。
パイプライン交渉は頓挫する

2001年、アフガニスタン暫定行政機構議長に就任。
2002年5月、カルザイ議長はトルクメニスタン、パキスタンとパイプライン建設に調印。
2002年6月、アフガニスタン大統領に就任。

カトリーナとイラク

2005年09月08日 20時12分47秒 | ■時事・評論
ハリケーン・カトリーナで被災した40万という人々は、いつか我が家に帰ることができるのだろうか。

彼らが、我が家に帰る日はこないと思う。
被災したのは大部分が貧困層であり、義援金や一時金など、数ヶ月も持たないだろう。今後仕事につける見込みも非常に少ない。家屋に保険をかけていた貧困家庭もまずない。つまり、水没した家屋を補修したり、家を建て直せる人などほとんどいないということだ。

では、何十万人分の水没家屋や土地は、今後どうなるのだろうか。
おそらくライフラインの復旧は、市中心部と富裕層の居住エリアに限られ、貧困層の居住地域は放置されるのではないか。排水され消毒が終了したとしても、ライフラインがなければ生活はできない。

結局、収入のない被災者は、土地を二束三文で買い取られることになるのだと思う。すでに、土地を担保に、被災者にカネを貸している業者もいるという情報もある(未確認)。借りたお金を返せる人は少ないだろう。したがって、いずれ土地は金融業者のものになる。そこから不動産業に転売される。

ニューオリンズは、大手土地開発業者の手によって再開発され、数年でまったくあたらしい別の街に生まれ変わるかも知れない。あらたなニューオリンズの住人となるのは、豊かな人たちであることは間違いない。

もとの貧しい住民はどこでどのような暮らしをすることになるのかは、いまのところまったくわからない。しかし、10代後半から30代の男性の行き場としてひとつ頭に浮かぶ場所がある。イラクだ。

イラクでの、米軍の死傷者が増えるに従って、米軍の新兵募集人数も激減している。正規軍では足りずに、州兵まで借り出してイラクに送り込んでいる。それでも、交代要員もなく、休暇も与えられず、兵士はひたすらイラクに釘付けになっている。兵士は疲弊し、ブッシュとその汚い戦争を憎み始めている。すべてを失い、行き場もない被災者を追い込んでいけば、最後に残る選択は軍隊しかないように思う。今イラクにいる兵士のほとんどは、貧乏人ばかりだ。

未曾有の大災害に対して無策といえるほどの米政府の対応は、ブッシュが単なるマヌケで無能な大統領だからではないように思う。
「カトリーナ」はブッシュ大統領にとって、災いよりも、女神に見えたのかもしれない。

ジャパン・バッシングから構造改革へ

2005年09月06日 20時16分43秒 | □年次改革要望書
我々の住む日本が、いまどのような状態にあるかを知りたければ、どうしてもアメリカと日本、アメリカと世界という視点から見る必要がある。日本の国内問題と見えるものが、すべからくアメリカの国益問題でもある。


アメリカ政府は常に、日本をアメリカの国益のために利用しようとしてきた。一昔前は、言うことを聞かない日本に、「バッシング」を行った。しかし「ジャパン・バッシング」を繰り返してもほとんど効果はなかった。たいていの国はそれで屈服するのに。なぜか日本にはバッシングの効果がなかった。

当然、アメリカ政府はその原因を徹底的に研究した。その結果、アメリカ政府は、日本のおどろくべき実態を知る。日本の首相は権力の頂点ではなかったのだ。では、権力の中枢はどこにあるのか。実は、日本には権力の中枢などなかった。そんなものは、日本のどこにもみあたらない。首相でも議会でも官界でも財界でもない。またこれらが全体として権力を形作ることもない。バラバラなのだ。バッシングも、脅しもすかしも通用しないのは、最初からバラバラで命令を下す者がいないからだった。

アメリカ政府は、日本を民主主義国であり、資本主義経済国だと見誤っていたのだ。つまり、自分たちと同じシステムの国と思い込んで対処していた。しかしながら日本とは、中世的ムラ社会であり、共産主義的な統制経済国家なのだ。まさか「同盟国」に、そんな国家が存在するとは、アメリカ政府は夢にも思っていなかった。しかも、自分たちが一度占領し、近代国家としての基礎を築いてやった国が、だ。

かくして、アメリカの頭脳は日本の正体を解明した。ジャパン・バッシングが鳴りを潜めたのはそのためだ。一部の議員の間にはいまだに名残があるかもしれないが、政策としてはもはやない。では、ジャパン・バッシングのかわりに、アメリカ政府があらたに執った政策とは何か。

「構造改革」だ。
日本の構造をアメリカとまったく同じシステムに造り替えることだ。
政治や経済、社会のシステム、そして文化までもアメリカ型にしてしまえば、もはや日本においてアメリカ国内と同じように展開すればいいだけだ。アメリカに都合の悪いあらゆる規制を撤廃させ、あらゆる市場を開放させる。もちろん制度そのものも造りかえる。

その改造計画書が「年次改革要望書」だ。日本のあらゆる分野に「要望」を突きつけている。どこからどうみても、内政干渉だ。したがって、これを突きつけただけでは、今まで同様日本が動くわけがない。1994年以来、歴代首相はアメリカの圧力により「金融ビッグバン」など少しずつ実行はしてきた。

しかし、「年次改革要望書」に沿って日本をすばやく改造するためには、日本国内にもっと忠実な協力者が必要になる。まず何よりも、権力の中枢が存在しなかった日本に、強権を発動する首相を据えなければならない。そこで弱小派閥の長だった小泉純一郎氏に白羽の矢があたった。小泉首相は、中身はまるでないが、決まったフレーズを繰り返して猪突する強引さと冷酷さがある。独裁政治の長には、そういう人物が最適だ。ただ、複雑な政策を忠実に実行するには、もっと頭のいい男が必要になる。竹中平蔵氏だ。その経歴は実に輝かしい。小泉首相自身は、ただ叫ぶだけで、実務はすべて竹中大臣に丸投げしている。

小泉首相を、ヒットラーになぞらえる人もいるが、それは妥当ではない。ヒットラーはアメリカに奉仕などしていない。小泉首相は、朴正煕、スハルト、モブツ・セセ・セコ、フェルディナンド・エドラリン・マルコスらと肩を並ぶべき人物だ。みな、自国民の生活を踏み潰し、自己とアメリカの国益にだけ奉仕してきた人物だ。そして、その末路もみな同じだ。

小泉首相の言う「構造改革」とは、アメリカの国益のための日本改造以外の何物でもない。

セキュリティ

2005年09月04日 22時10分00秒 | 写真:アフガニスタン
セキュリティ : カンダハール

援助機関の宿舎を警備するセキュリティ。
ものものしいが、決して過剰ではない。
援助機関にとって安全とは、
自分たちのためだけではない。
もし、万が一のことがあり、
援助機関が撤退するような事態になれば、
援助を必要とする多くの人々の、
生活と命を危険に晒すことになる。

情報統制がまねいた惨事

2005年09月03日 23時53分34秒 | ●アフガニスタン05
今回のアフガニスタンの取材の過程で、日本の外務省は、アフガニスタンの情報が日本で流れることを嫌っているという印象を受けた。アフガニスタンに関する情報や写真が一般的に流通すると、アフガニスタンに行ってみたいという人が増える、と考えているようだ。

現在のアフガニスタンの状況で、旅行者が増えれば、事件に巻き込まれる可能性は高くなる。もし、事件が頻発すれば、日本の行っている復興援助を中止し撤退せざる負えない事態も生じる。したがって外務省としては、できるだけアフガニスタンの情報を制限し、日本国民の目に触れないようにしておきたい。

外務省の方針は、まったく逆効果ではないのだろうか。行くな、と言えば人は行きたくなるものだ。情報がなければ、知りたくなるものだ。情報がなければ、”それは安全ということだ”と解釈する人もいるはずだ。本当はアフガニスタンの状況を正確に伝えるべきなのだ。正確な情報こそが、的確な判断をうながす。

また、アフガニスタン政府としては、アフガニスタンはもはや戦場ではない普通の状態であるという印象を海外に与えたい。いつまでも、戦闘状態であれば、政権の国家統治能力を疑われてしまう。平常であることを、装うために観光客の入国を制限しないということは考えられる。現実的には、アフガニスタンの観光ビザは乱発されてはいない。しかし、取得可能であることは事実だ。

『アフガニスタンの治安問題』で述べたように、現在のアフガニスタンは無法状態だ。観光などできる状態ではない。米軍、国際治安支援部隊、アフガン軍は、反政府勢力しか眼中にない。アフガニスタンの警察は犯罪組織を本気で取り締まることはない。タリバーン政権を倒した軍閥は、そのまま武装犯罪集団へと移行した。その軍閥はアフガニスタン全土に国家内国家を形成している。中央政府の権力は、カブール周辺までしか及んではいない。全土に存在する無法武装集団=軍閥を取り締まるものなどいないのだ。

米占領軍、国際治安組織、国連機関、援助国は公式にはこの事実を認めようとしない。復興の進捗状況や武装解除の成果ばかりを強調すれば、誰でも安全になったと勘違いしてしまう。復興は進むけれども、治安は悪化する一方だ。その原因は軍閥だ。国際機関は、この事実をはっきりと認めるべきだ。

今回の痛ましい事件は、不必要に情報を制限する日本外務省の方針と、アフガニスタンは平常だと見せかけたい政府、そしてアフガニスタンの根本的問題を認めない国際機関によって引き起こされた事件だと考えている。

重ねて強調するが、現在のアフガニスタンは無法状態なのだ。
アフガニスタンへの渡航を考えておられる方がいれば、中止することを強くお勧めする。

ラインダンス

2005年09月02日 23時16分37秒 | □年次改革要望書
Googleのニュース検索で「年次改革要望書」を検索するとたった三件しかでてこない。

asahi.comの福岡・北九州版8月23日
(政治評論家森田実氏へのインタビュー)
中央日報8月28日
(韓国の新聞の電子版)
JANJAN7月31日
(市民メディア)
マスメディアは朝日たったひとつだ。

その他のメディアの個別サイトでは、
YOMIURI ONLINE なし
NIKKEI NET なし
Sankei Web なし
Mainichi Interractive7月31日
(平沼赳夫前経産相へのインタビュー記事)

合わせて四つ。マスは二つだけだ。

マスメディアはアメリカ政府による「年次改革要望書」など語るに値しないと思っているのだろうか。小泉首相が進めている改革のほとんどがこの「年次改革要望書」の中に見い出せるというのに。普通にウェブで検索すれば、それこそ無数と言えるほど言及されている。国会でも何度か取り上げられた。関岡英之氏の『拒否できない日本』(文春新書)というすぐれた著書もある(紀伊国屋書店BookWebでは定価の735円で買えるが、amazon.co.jpではなぜか新品がなく、ユーズドが1500円以上でしか売られていない。倍の値段で古本を誰が買うのか)。

マスメディアは頑なに「年次改革要望書」に触れることを避けているようにしか思えない。「年次改革要望書」など取るに足らない公式文書だからマスメディアは無視しているのだろうか。取るに足るか足らないかは、メディアが判断することではない。多くの議論がなされている対象を取り上げないということは、国民から隠蔽したいか、無能かのどちらかだ。

日本のマスメディアは、小泉「構造改革」の前に、横一線に並んで、足を高々と上げてラインダンスを踊ることしか能がないようだ。

在日アメリカ大使館公式HP経済通商関連ページ

2005年09月01日 22時04分18秒 | 写真:アフガニスタン
髭 : カンダハール

アフガニスタンで撮った30本のポジ・フィルムと、
無数のデジタル画像を見ていると、
撮ったという記憶のないものがある。
これも、そんな一枚。
まったく、思い出せない。
しかし、なぜ撮ったのか、
そのときの自身の心理はよくわかる。