報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

ココナツ

2005年08月16日 20時52分32秒 | 写真:アフガニスタン
ココナツ : カブール


バザールでは、
思い思いの商品を並べる無数の人々がいる。
しかし、多品種を並べた商店でも、
売れ行きは芳しくない。
露天や屋台となるとなおさらだ。
商品を並べることと、忍耐強く待つことが、
いまのところ仕事のすべてかもしれない。

ISAF

2005年08月15日 20時13分21秒 | 写真:アフガニスタン
ISAF : カブール


ISAF(アイサッフ)
International Security Assistance Force
国際治安支援部隊
NATOを中心に36ヶ国が参加。
人員、約9000。
しかし、カブール市街でISAF部隊を見ることはほとんどない。
ISAFは、どこで何をしているのか、市民は知らない。
市街でたまに見かけるISAFの装甲車は、
車や人を問答無用で押しのけていた。

雑貨屋

2005年08月14日 19時37分17秒 | 写真:アフガニスタン
雑貨屋 : カブール


カブール郊外の、ささやかな雑貨店。
市中心部には、大きなバザールや商店が並び、
さまざまな外国製品であふれている。
バザールは人でひしめき合っているが、
その中で「消費者」は果たしてどのくらいいるだろうか。
麻薬経済による莫大な資金が無秩序な輸入にむかっている。
アフガニスタンには、まだ「消費者」は登場していないように見える。
郊外の、ささやかな雑貨店のほうが、
消費能力の実情を物語っているように思う。


「郵政民営化」とメディア(9)

2005年08月13日 16時44分20秒 | □郵政民営化


http://news.ft.com/cms/s/ae844de4-0834-11da-97a6-00000e2511c8.html

 8月8日、FINANCIAL TIMES.COMがこのような報を出していたようです。
 上段の最後の行に、
”The global finance industry will have to wait a little longer to get its hands on that $3,000bn of Japanese savings. ”
「国際金融業は、3兆ドルの日本の預貯金を手にするのに、もうほんの少しだけ待たなければならない」
 とある。
 
 まるで天気予報のようだ。
 ちょっと曇りましたが、すぐ晴れます。傘は必要ありません。
 そんな感じだ。
 我々の350兆円だ。

 米国メディアは、国際金融資本が、郵貯・簡保の350兆円を手にするのは、一点の曇りもない既成事実であると確信していることがうかがえる。
 当の国際金融資本は言うに及ばないだろう。
 海の向こうでは、こんな記事が平然と書かれている。

見物

2005年08月12日 18時55分11秒 | 写真:アフガニスタン
見物 : カンダハール


カンダハールの街を撮り歩いていると、
なにやら式典らしきものの準備がされていた。
新たな区間で舗装工事が開始されるらしい。
カンダハールの道路整備は、
すべて、日本の無償援助だ。
カンダハール州知事がテープを切った。
式典のまわりには、近所の人々が見物に来た。
子供も家から出てきた。
カメラはそちらに吸い寄せられた。


かき氷

2005年08月11日 16時39分55秒 | 写真:アフガニスタン
かき氷 : カンダハール


日中の暑さの盛り、
雑貨屋さんの軒先で涼をとらせてもらう。
ざぶとんのような布の中から、
氷の塊を取り出し、水の中にくぐらす。
ガリガリと氷をかき、
まあ、食べなさい、と差し出してくれる。
とても、懐かしい味。
いくらですか、と訊くと、静かに首を横に振る。
アフガニスタンは世界最貧国だが、
とても豊かだ。

「郵政民営化」とメディア(8)

2005年08月10日 00時16分48秒 | □郵政民営化
<メディアによる小泉大応援合戦>

これから、911の選挙にむけてメディアの小泉純一郎大応援合戦がはじまりそうだ。いや、すでにはじまっているか。今後、ますますメディアの応援はエスカレートしていくだろう。しかし、小泉自民党は負ける、と僕は予想している。

小泉氏は、単なるパフォーマーにすぎない。中身は何もない。「小泉死して語録を残す」程度のものしか、日本政界史に残さないだろう。小泉語録は、冷静に見れば、国民をバカにしたものでしかない。国会で、自身の年金問題を追及されたとき、「人生いろいろ。会社もいろいろ。社員もいろいろ」と答弁した。たいした国家元首である。こんな言葉に喝采をおくり、批判もしないメディアも国民をバカしている。確かに、小泉氏は一流のパフォーマーだ。国民の眉目を引くツボを心得ている。ある意味では、中身がないから、パフォーマンスで誤魔化すしかないのだ。

「小さな政府」「官から民へ」「改革には痛みをともなう」と聞こえのいいことばかりを言っているが、それは単なるスローガンにすぎない。小泉氏は将来に対する現実的な展望は一切示していない。漠然と、良くなるというイメージを与えているにすぎない。国民は、何を目標に我慢すればいいのかわからない。我慢は現実的な目標があってはじめてできるものだ。

世界中の開発途上国のひとびとは、「改革には痛みをともなう」という言葉を聞かされ続けてきた。しかし、彼らの生活がよくなった例を知らない。「小さな政府」=緊縮財政、「官から民へ」=民営化についても同じだ。それを実行した国の国民生活が向上した例を知らない。”民営化に成功例なし”と言いきる人もいる。

小泉政権になってから、日本はどうなったかを見れば、小泉改革の実態が露呈する。小泉政権のこの4年ちょっと、日本国民の生活はまったく向上していない。増税、福祉予算カット、失業率の増加、地方の切捨て・・・。明らかに生活は苦しくなっている。そして将来に対する期待感もない。その反面、小泉政権は2003年には約30兆円もの巨費を為替市場に投入している。アメリカの赤字を支えるためだ。

何のビジョンもなく、国民にただ我慢だけを押し付けるパフォーマー小泉氏を、それでも支持しようという人が体勢を占めるとは、到底考えられない。特に、小泉政権によって、とことん痛めつけられてきた金融機関、中小企業、そして地方自治体が小泉自民党を支持することはないだろう。メディアがその総力をもって、小泉氏を応援し、除名自民党議員と民主党を袋叩きにしたところで、国民の生活が良くなるわけではない。

この総選挙で、マスメディアとアメリカ政府の強力なバックアップを得られるとしても、やはり小泉氏には勝ち目はない。小泉氏とマスメディアにできることは、中身のないパフォーマンスを繰り返すことだけだ。いつまでも通用する手口ではない。あくまで投票するのは日本国民だ。メディアでもなければ、アメリカ政府でもない。そこのところを、小泉氏は理解していない。

「郵政民営化」とメディア(7)

2005年08月08日 16時51分14秒 | □郵政民営化
<「郵政民営化」法案 否決>

参院本会議「郵政民営化」法案決議。
自民党議員から投票は始まった。積み上げられていく白票(賛成票)。青票(反対票)を手にする自民党議員はそれほど多くないように見えた。自民党議員が投票を終えるころには、青票も少し積まれたが、何票あるかはよくわからない。公明党は全員白票。野党は全員青票。淡々と投票は進んだが、個人的にはちょっとしたスペクタクルを見る思いだった。結果は。

賛成:108
反対:125

17票差で、「郵政民営化」法案は否決された。予想外の大差だ。
自民党から22人の反対票が投じられた。投票の前に、議場を出る自民党議員もちらほらいた。欠席・棄権した自民党議員は8名。

裁決後、国会はただちに閉会。竹中平蔵郵政民営化担当大臣は、無表情だった。小泉純一郎首相は、衆議院を解散し、総選挙に入る意向を示した。野党は、受けて立つと表明。CNNは「日本の政治が劇的に変わるだろう」と速報を出した。

小泉首相は、衆院で反対票、欠席・棄権した51名の自民党議員を公認しない。この51名は、新党を結成して選挙を戦うだろう。小泉首相は、この51名に合わせて、にわか公認候補を立てることになる。しかし、小泉首相は選挙で勝てる気でいるとは思えない。公明党は、解散・総選挙を避けたい意向だ。負けが見えているからだろう。解散・総選挙は、小泉首相の断末魔の悪あがきでしかない。来年秋には、自民党総裁の任期も切れる。どうころんでも、彼は終わった。おそらく、アメリカからも捨てられるだろう。竹中平蔵氏もアメリカに錦を飾れなくなった。ウォール街も、否決のニュースに落胆していることだろう。

「郵政民営化」法案が否決されたからといって、安心はしていられない。大きな流れが変わったわけではない。日米関係の、富の移転の構造そのものは変わっていない。「構造改革」が必要なことは事実である。輸出主導という日本の経済構造は、アメリカにモノを買ってもらわないと成り立たない。この構造がある限り、日本は永遠に富を奪われ続ける。小泉首相の「構造改革」は、日本の富を効率よくアメリカに移転するための改革でしかない。その本丸「郵政民営化」法案が自民党自身の手によって、潰されたことは歴史的出来事であると言える。

真の構造改革とは、日本の輸出主導という経済構造を改革すること以外にない。

「郵政民営化」とメディア(6)

2005年08月07日 21時58分21秒 | □郵政民営化
明日、参院本会議で「郵政民営化」の採決が行われる。
どういう結果が出るかは、まったく分からない。
メディアは、「政局」報道ばかりに終始し、国民から「郵政民営化」問題の本質を遠ざけ続けている。

マスメディアは、はじめに「郵政民営化」ありきで、最初から最後まで、「郵政民営化」の本質に触れることを避けてきた。そして反対派を断罪することに終始してきた。メディアが検事と判事の役割を演じてきた。メディアが勝手に物事の判断をするべきではない。メディアの役割とは、あくまで国民に広範で正確な情報を提供することにある。判断を下すのは国民だ。

第二次大戦時、メディアがどのような役割を果たし、その結果どうなったか。小泉政権の「応援団」と化したメディアは、歴史から何も学んでいないようだ。60年後の現在、メディアは同じ愚を平気で犯している。このような、メディアは早く歴史から去るべきだろう。営利団体であるメディアは、所詮権力の従者にすぎない。これからは、市民自らが正確な情報を発信し、広げていく時代にならなければならない。

もはや、マスメディアの本質は、十分に露呈した。もちろん、どこの国でも事情は同じことだ。日本だけの現象ではない。911報道を振り返って、CNNの記者は「自国が攻撃されている時に、公正な報道などできない」と言い切った。戦時下では、政府に迎合した誤った報道をしてもいいということらしい。まさに「大本営発表」の世界だ。メディアというのは、結局のところそういうものなのだ。平時には、公正中立、不偏不党などと言っているが、お家の大事となれば、そういう建前はかなぐり捨てて、権力の従者になる。それが、世界のメディアの本質だ。

イラク報道で良質の報道を続けていたアル・ジャジーラのバクダッド支局には、米軍機により誘導爆弾が投下された。一人の特派員が命を落とした。BBCは国営放送でありながら、英国政府のイラク参戦へのまやかしを暴いた。その結果、英国政府にその信念を叩き潰された。アル・ジャジーラとBBCは健闘したと思う。しかし、既製メディアには、やはり限界がある。国家から、独立した中立で不可侵なメディアはない。国営であれ、民営であれ、国家の呪縛からは逃れられない。英国は、ほとんどアメリカの「属国」状態であり、その英国の国営放送局がアメリカのイラク政策を阻害するような報道は許されない、ということだ。

日本はどうだろうか。「大量破壊兵器」の存在を確信したとしてイラク派兵を強行し、またアメリカ政府の「年次改革要望書」を忠実に実行している小泉首相や竹中大臣は、アメリカ政府の「パペット」でしかない。日本のメディアも、そんなことは当然知っている。同時に、この二人に逆らうことは、アメリカに逆らうことであることも理解している。つまり、アル・ジャジーラとBBCと同じ運命が待っているということだ。しかし、アル・ジャジーラとBBCは、刀折れ矢尽きるまで戦った。日本のメディアは戦う努力もせず、さっさと権力に迎合した。

メディアの誘導に乗らないことが、懸命な人生を生きる第一歩だろう。

「郵政民営化」とメディア(5)

2005年08月04日 20時17分42秒 | □郵政民営化
<タブー:年次改革要望書>

「年次改革要望書(規制改革要望書)」というものの存在は、まだあまり知られていないようだ。今回取材に出る前に『拒否できない日本』(関岡英之著、文春新書)という本を読むまで、僕もその存在をまったく知らなかった。

8月2日の国会で、民主党の櫻井議員は、「年次改革要望書」について言及し、”民営化というのは米国の意向を受けた改正なのではないのか”と小泉首相に質問した。それに対して首相は、「私は米国が言いだす前から民営化を説いてきた!あんまり、島国根性は持たない方がいい!」と少し興奮したが、「年次改革要望書」につてはいっさい言及しなかった。

 桜井議員は、竹中大臣にも質問したようだが、そこは中継を見ていなかった。竹中大臣は、「年次改革要望書など見たこともない」と答弁したようだ。郵政民営化・経済担当相が知らないということはありえない。「年次改革要望書」の仮訳は、在日アメリカ大使館のサイトでも公開されている。そもそも、この要望書は日米双方が、毎年交換し合う公式文書だ。それを、竹中大臣が知らないとは考えにくい。

 政府は「年次改革要望書」の存在を知られたくないのだろう。
 マスメディアの間でも「タブー」だ。ここでも、マスメディアは国民の知る権利を無視している。
「郵政民営化」に関する「年次改革要望書」の歴史をざっと見てみてみたい。

1996年11月15日 『日本政府に対する米国政府の要望書』
米国政府は、日本政府が以下のような規制緩和及び競争促進のための措置を取るべきであると信じる。
・郵政省のような政府機関が、民間保険会社と直接競合する保険業務に関わることを禁止する。
・政府系企業への外国保険会社の参入が構成、透明、被差別的かつ競争的な環境の下で行えるようにする。
1999年10月6日『規制改革要望書』
米国は日本に対し、民間保険会社が提供している商品と競合する簡易保険(簡保)を含む政府及び準公共保険制度を拡大する考えをすべて中止し、現存の制度を削減または廃止すべきかどうかを検討することを強く求める。
http://www.kobachan.jp/katudouhoukoku/sekioka.htm
2003年10月24日『年次改革要望書』
・米国は日本に対し、郵便金融機関と民間の競合会社間の公正な競争確保のため、郵便金融機関に民間と同一の法律、税金、セーフティーネットのコスト負担、責任準備金条件、基準および規制監視を適用することを提言する。
・米国は日本に対し、郵便金融機関(簡保と郵貯)は、民間が提供できるいかなる新規の保険商品の引き受け、あるいは新規の元本無保証の投資商品を提供することを、上記にあるように公正な競争が確保されるまでは、禁ずることを求める。
・米国政府は、2007年4月の郵政民営化を目標に、小泉首相が竹中経済財政・金融担当大臣に簡保、郵貯を含む郵政3事業の民営化プランを、2004年秋までに作成するよう指示したことを特筆する。
http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20031024d1.html
2004年10月14日『年次改革要望書』
・保険、銀行、宅配便分野において、日本郵政公社に付与されている民間競合社と比べた優遇面を全面的に撤廃する。民営化の結果、歪められていない競争を市場にもたらすと保証する。
・日本郵政公社の保険および貯金事業においては、真に同一の競争条件が整うまで、新規または変更された商品およびサービスの導入を停止する。これらの事業に、民間企業と同一の納税条件、法律、規制、責任準備金条件、基準、および規制監督を適用するよう確保する。
・ 宅配便サービスの公正な競争:郵便業務の規制当局は日本郵政公社から独立しかつ完全に切り離された機関であることを確実にし、民間部門と競合するビジネス分野における競争を歪曲するような政府の特別な恩恵を日本郵政公社の郵便事業が受けることを禁止する。
・ 相互補助の防止:日本郵政公社の保険および銀行事業と公社の非金融事業の間で相互補助が行われないよう十分な方策を取る。競争的なサービス(すなわち、宅配便サービス)が、日本郵政公社が全国共通の郵便事業で得た利益から相互補助を受けるのを防止するため、管理を導入する。
http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041020-50.html

 アメリカ政府は実に細かく「要望」している。独立国に対する要望にしては、少し具体的すぎるのではないだろうか。「要望」というより、内政干渉と言った方が妥当なような気がする。小泉首相の「郵政民営化」が、この「年次改革要望書」とまったく関係ないと言えるだろうか。
 小泉首相は、”米国が言いだす前から民営化を説いてきた”と言うが、だとすれば、自民党内において、たいした基盤もない弱小派閥の長だった小泉氏が、首相の座につけたということも理解しやすい。米国が小泉氏に白羽の矢を当てた、ということだ。

 この「年次改革要望書」の中身は、民営化にとどまらない。
電気通信、情報技術(IT)、エネルギー 、医療機器・医薬品、金融サービス、競争政策、透明性およびその他の政府慣行、法務制度改革、商法、流通、と多岐にわたっている。現在、小泉首相が進めているほとんどの改革が、この米国による「要望書」の中に見出されるはずだ。ただ、僕がこの中身をすべて検証し、紹介するには、時間も能力も足りない。個人的には、随時検証していくつもりだが、紹介できるかはこころもとない。すでに関岡英之氏のすぐれた著作もある。各専門分野の方は、あるいは各項目に興味のある方は、一度アメリカ大使館のサイトを覗いていただきたい。

「独立国」に対して、ここまで多岐にわたり、細かい「要望」をするのは、常軌を逸しているように思う。アメリカ政府は、日本を「独立国」とは思っていないのではないだろうか。形式上、「要望書」は相互交換ということになっているが、アメリカ政府が日本の要望を実行するかは、はなはだ疑問だ。これは、アメリカ側からの一方的要望だと考えるのが妥当だろう。

 確かに、日本はとっくの昔に制度疲労を起こしている。「構造改革」が必要なことは事実だ。しかし、それは日本国民の利益になるというのが大前提だ。アメリカ政府は、日本国民の利益のために改革を「要望」しているのだろうか。アフガニスタンやイラク市民の頭上に平気で爆弾を降り注ぐアメリカ政府が、日本国民のことをおもんぱかっているとは考えにくい。「年次改革要望書」の内容は、明らかにアメリカの利益のための改革を要望していると考えるのが妥当だ。そして小泉首相は、この「年次改革要望書」を忠実に実行しようとしている。その「本丸」が「郵政民営化」だ。

 インターネットの中では、「年次改革要望書」は頻繁に取り上げられているが、既製メディアが取り上げることはまずない。従って国民の大部分は、その存在など知らない。竹中平蔵大臣でさえ、見たことがないそうだ。しかし、奇しくも情報公開大国アメリカの在外公館自身が公開しているのは、何とも皮肉としか言いようがない。

「郵政民営化」とメディア(4)

2005年08月02日 13時45分18秒 | □郵政民営化
<「郵政民営化」とは日本の貧困化だ>

 「郵政民営化」をめぐる議論は、どれも建前をめぐる議論でしかない。「郵政民営化」の本質に関する議論は、公の場では一切なされていない。もちろんマスメディアが伝えることはない。メディアは積極的な小泉応援団でしかない。


「郵政民営化」に関する政府の主張を確認してみよう。

① 郵政民営化が実現すれば、350兆円もの膨大な資金が官でなく民間で有効に活用されるようになる。

② 全国に津々浦々に存在する郵便局のネットワークは、民営化すれば、民間の知恵と工夫で新しい事業を始めることが可能になる。

③ 郵政民営化が実現すれば、国家公務員全体の約3割をも占める郵政職員が民間人になる。

④ 郵政公社は、これまで法人税も法人事業税も固定資産税も支払っていないが、民営化され税金を払うようになれば国や地方の財政に貢献するようになる。また、政府が保有する株式が売却されれば、これも国庫を潤し財政再建にも貢献する。将来増税の必要が生じても、増税の幅は小さなものになる。

 つまり、350兆円が民間で活用され、郵便事業が便利になり、公務員が減り、納税がふえる、という夢のような改革だ。

 はたして、そうだろうか。

 小泉改革を、簡単に表現すれば、政府の支出を抑える「緊縮財政」と国営企業の「民営化」、そして「市場の自由化」だ。
 まったく同じ政策を、IMF(国際通貨基金)と世界銀行は開発途上国に強制してきた。その結果、何が起こっただろうか。開発途上国経済の崩壊だ。農業の衰退、教育を受ける機会の減少、医療衛生環境の悪化、失業の増加、治安の悪化などだ。IMFと世界銀行が支援した国の経済状態が好転した例などほとんどない。「緊縮財政」「民営化」「自由市場」というのは、国民生活を破壊する結果しか残していない(くわしくは、カテゴリー内の「IMF&世界銀行」を参照されたい)。

 小泉首相は「改革には痛みをともなう」と主張しているが、その言葉は、IMFと世界銀行が開発途上国に対して発した言葉そのものだ。途上国の人々は耐え続けたが、「緊縮財政」で浮いたお金は、外国債権者への返済に回され、自国民のためには使われなかった。「民営化」によって、国営企業は外国資本に乗っ取られ、電気、水道など公共料金が上昇し市民生活を圧迫した。「自由市場」によって、外国製品が流入し、国内産業は崩壊した。

 ようするに「緊縮財政」「民営化」「自由市場」によって得をしたのは外国企業と外国資本だけだ。途上国の現状は、ここで説明するまでもない。すべてこの三つの政策の結果だ。まったく同じことが、いま日本で進行している。その「本丸」が「郵政民営化」だ。

「郵政民営化」が実現すれば、郵貯・簡保の350兆円は日本国民のために使われることはない。アメリカの双子の赤字を補填し、アメリカの戦争を支え、外国資本と外国企業を潤す結果となる。もちろん、国内のごく一部の企業は潤うだろう。

 小泉改革とは、日本国民の富を外国に明け渡すことにほかならない。その結果、当然、日本は貧困化する。日本国民の富は、外国資本と国内のごく一部の富裕層が独占し、中産階級は没落し、大多数の国民は貧困層を形成するようになる。

 これが、小泉政権が描く、バラ色の「郵政民営化」の正体だ。
「郵政民営化」とは、「日本の貧困」化以外の何ものでもない。