二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016明治安田生命J2リーグ第38節 京都vs岡山

2016-10-31 | 蹴球

  京都サンガF.C.2-0●ファジアーノ岡山
3'エスクデロ競飛王
 (↑イヨンジェ)
84'矢島卓郎
 (↑アンドレイ)

[警告・退場]
・京都
90'+3エスクデロ競飛王(C2ラフプレー)
・岡山
なし


【全体の印象】
 立ち上がりは互いにバタつき気味。京都は、スローインから藤本に浴びた至近距離シュートを菅野がストップ。逆にカウンターからイヨンジェが運び、クロスにエスクデロが飛び込んで先制した。その勢いのまま京都の攻勢は続いたが、次第に岡山の時間帯が増えると押谷や藤本に隙を衝かれて決定機を作られたが、これも守護神・菅野が阻止。後半になると再び京都のコンビネーションが冴え、3人、4人が絡んでボールを動かしたり、長いボールを使うスピーディなカウンターが炸裂。対する岡山はロングボール・裏狙い頼み一辺倒になったが、高橋・菅沼・吉野ら守備陣が高い集中力と粘り強さでしのぎきる。77分に矢島卓郎を投入すると、7分後にアンドレイのスルーに呼応してJ2初ゴール。京都の攻守にわたる積極性、モチベーションの高さが目立ち、(決定機は作られたものの)GKの活躍を含め、現状持つチーム力を発揮できた一戦となった。


【雑感】
■深さvs高さ
 前回対戦時でもそうだったように、岡山はタテにボール動かして好機を生み出すチーム。戦術の初手としてタテへのクサビを入れ、ディフェンスラインを下げさせて自分たちが使いたいスペースを作る(&マークをズラす)。これとほぼ同じ攻撃パターンを持つ松本山雅に手痛くひねられたのは記憶に新しい。いわゆるタテへの「深さ」のある攻撃を仕掛けてくる相手に、この日の京都は高くて強気な最終ラインで応酬。ロングボールには高橋祐治が制空権を掌握し、2CBvs3トップで発生する布陣のズレにも菅沼駿哉や吉野恭平が適宜対応。ラインの高さで深さのある攻撃を封じた。
 ラインを高く設定すれば、当然裏に大きなスペースが生まれる。岡山には矢島慎也という配球の名手がおり、実際前回対戦時は豊川雄太を使って裏を衝かれたし、このゲームでも押谷祐樹の決定的なピンチを作られた。ただ、そこは割り切ってGK菅野孝憲の守備範囲の広さや菅沼・本多勇喜の機動力で埋めたのは、プラン通りだったか。リスクを背負ってでも強気のラインを保った守備陣の奮闘は、単に失点を許さない「堅守」とはまた違う、チーム全体の積極性の意志表示ともいえるだろう。

■復調気配
 このゲームでも保持したボールは早く動かす、という基本線は継続。早いタイミングで前に蹴ってミスになる場面も目に付いたが、その積極性は敵陣へと向かうメンタリティを示していた。とりわけ後半、50分ごろから65分あたりまで岡山を押し込んだ攻勢は目をみはる。人が複数で動く場面と、ボールを速くダイナミックに動かす場面が交互に連続。攻撃陣に復調気配がうかがえる。クロスを跳ね返されてもアンドレイが拾ってミドル、など攻撃の枚数面でも厚みが増した。この攻撃の上昇傾向は間違いなく積極的な守備の上に成り立っていて、たとえばボランチ吉野は「あと1歩」という場面で必ずその「あと1歩」を出してボールを奪い、そのまま攻撃に繋げるスイッチとなった。
 攻撃の課題は、最後に決めるだけ。このまま今やっているサッカーに自信を深めれていけば、もっと余裕も持てるだろうし、決定機での落ち着きも出てくるはず。そしてついにベールを脱いだ秘密兵器・矢島卓郎の存在が、攻撃陣のさらになる奮起材料となれば。今節の結果を受け、プレーオフ進出はほぼ確実。プレーオフに向け、離脱者も徐々に復帰し、疲れが見えていたセルや堀米勇輝の調子も戻りつつある。次の清水戦では、勝負に徹するより何よりも、現状の実力、自分たちの良さをそのままぶつけて「昇格への壁の高さ」を測りたい。まだまだチャレンジャーなのだから。






2016明治安田生命J2リーグ第37節 水戸vs京都

2016-10-24 | 蹴球

水戸ホーリーホック△1-1京都サンガF.C.
76'宮本拓弥
 (――)
             90+6'アンドレイ
               (PK)


[警告・退場]
・水戸
37'田向泰輝(C1反スポーツ的行為)
90+4'細川淳矢(C1反スポーツ的行為)
・京都
53'石櫃洋祐(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
 ピッチコンディションの悪さに適応できない京都は、ボールタッチにミスが目立ち、次第に加速度を落としながら積極性も欠いていった。この出方に水戸の出足鋭いプレスがハマり、水戸が主導権を握った。後半は立ち上がりから水戸の仕掛けがさらに積極的になり、完全に水戸の攻勢を受ける形に。どうにか凌いで1枚目の交代で3-5-2に陣形を変え、流れを引き戻したかにみえたところで、水戸・宮本に中央からきれいに決められ失点。水戸にゲームの流れまで掌握される中、敵も味方も予測不能な“パルプンテ”キロス大作戦に打って出たが、枠に行くシュートは打てず。敗色濃厚なアディショナルタイム、こぼれ球目掛けて突っ込んだ石櫃が細川に倒されPKを奪取。内容的は完敗だったが、勝ち点1を拾う「幸運」に恵まれた。

【雑感】
■実質完敗
 千葉戦以降、ボールを速く動かす、攻守の切り替えを早く、という戦い方は継続している。ただしピッチが悪いと、沼地に騎馬隊を入れるようなもので、思い通りに進退することもままならない。実質完敗とも言えるこのゲームに関しては、そういうコンディションの中でボールをうまくコントロールできなかったということに尽きる。
 足元が不安定なところで1人1人が少しずつ思い切りを欠くようになり、その総和が水戸との積極性の差になって表れた格好。失点シーンが象徴的で、誰も激しく当たることなく、宮本に持ち上がられてシュートを打たせてしまった。京都側で思い切りの良いプレーを見せていたのはダニエルロビーニョで、19分にダニロビが奪ってエスクデロがふんわりパス→堀米が呼応してエリア内に侵入→落としはイヨンジェに合わず…という場面は、非常に良いシーンだった。
 あるいはミスが目立ち覇気もなかったセルを早めに交代させ、ダニロビを前線に据えても面白かったかもしれない。このゲーム、交代策もパッとしなかった。多分に「今後を見据えたテスト感」もあったけれども。

■ラスト5試合
 この1試合の勝ち負けだけを考えれば、ピッチコンディションに応じた戦い方を選択すべきだった。例えば早い時間からキロスを使って地上戦→空中戦にシフトするとか。がしかし、千葉戦で得た好感触をどうにか継続しようとしたことは評価したい。残り試合数も少なくなり、上とも下とも勝ち点が開いた今は、自分たちのサッカーの基本形をアジャストしながら突き詰めていくチャンスでもあるのだから。大局を見据えれば、その場しのぎの戦い方は血肉とならない。

ということでちょっと現在の順位を確認。

 78 1位札幌
 77
 76
 75
 74
 73
 72 2位松本
 71
 70
 69 3位清水
 68 4位C大阪
 67
 66
 65
 64
 63 5位岡山
 62
 61
 60 6位京都
 59
 58
 57
 56
 55 7位町田
 54
 53
 52 8位横浜

 残り5試合(最大勝ち点15)で自動昇格圏内まで12差。←これはもう無理。
プレーオフのホーム開催権のある4位まで8差。←これもちと厳しい。
すぐ上の5位までは3差、すぐ下の7位までは5差。
現実的には、岡山と5位6位を争うという展開だろうか。(プレーオフは5位でも6位でも大勢に影響はない)。もし下に追いつかれるならば、こちら側も相当崩れてしまうということ。そうなった時はそれまでのチームだということで論外。

 現状をきちんとわきまえれば、今後とるべき戦い方はおのずと見えてくる。

・上も下も、他のチームの結果を気にする必要はない。
 大事なのは自分たちがいかに戦うか


・絶対に勝たなければいけない!何が何でも勝ち点3!
 そういう悲愴感や気負いは不要。むしろマイナス。


・自分たちの目指すサッカーを突き詰めること。
 精度や連携を上げていくことの方が重要


・自分たちの持てる力を100%発揮できるようにすること。
 気負いすぎず、できればのびのびとプレーすること。


・ただし、どうしても負けたくない試合が2つだけある。

〈残り試合の相手〉
第38節 岡山(Home)前半戦は△
第39節 清水(Away)前半戦は○
第40節 熊本(Away)前半戦は△
第41節 愛媛(Home)前半戦は○
第42節 長崎(Away)前半戦は△

 どうしても負けたくない2つの試合は、もちろん岡山と清水。プレーオフに進出すれば(おそらく)2/3の確率で当たることになるチーム。この2つは松本山雅ほど決定的な相性の悪さもまだなく、結果次第では「相性が良いチーム」まで持っていくこともできる。絶対に勝てとは言わない。そういう相手に対して「京都は簡単なチームじゃない」「京都は嫌なチーム」という印象を植え付けることが重要。大袈裟に例えれば、徳川家康が終生「真田嫌だな~」と思ってたのと同じこと。一発勝負の短期決戦では、最終順位よりも相性の善し悪しや苦手意識が勝負を左右するファクターとなる。

 思えば31節の松本山雅戦で相手に合わせた戦いを演じてしまい、自動昇格への“天王山”を失った。同じ轍を踏んではいけない。残り5試合の“ヤマ場”は、次節と次々節。結果よりも、いかに気合の入った戦いぶりができるか、相手よりも死力を尽くせるかどうか。そして水戸相手に気合負けしてしまった反省を糧として、再び挑戦者の心に火を灯すしかない。




2016明治安田生命J2リーグ第36節 京都vs岐阜

2016-10-17 | 蹴球

  京都サンガF.C.1-0●FC岐阜
90+6'アンドレイ
  (PK)

[警告・退場]
・京都
なし
・岐阜
54'レオミネイロ(C2ラフプレー)
60'野垣内俊(C1反スポーツ的行為)
90+5'鈴木潤(C3異議)


【全体の印象】
 序盤から京都がスピーディにボールを動かして岐阜陣内に攻め込むも、岐阜は素早いプレスで囲い込んで前向きな防戦。イヨンジェ・エスクデロへの厳しいマークを徹底し、前線にアバウトなボールを入れてレオミネイロを走らせる「岐阜の狙い通りの流れ」になった。岐阜は後半運動量が落ちるとバイタルエリアを固めてリトリート気味に防戦。京都は途中交代の内田と石櫃を攻撃的両翼に上げて攻め込んだがなかなかこじ開けられず、最後はキロス大作戦。なりふり構わず攻めたアディショナルタイム、吉野の速攻FKリスタートからアンドレイのシュートがこぼれ球になり、諦めずに詰めた石櫃に対し、即席DFの瀧谷の足が出てPK。これをアンドレイが決めた瞬間にタイムアップという、劇的ながらも幸運な勝ち点3を拾った。


【雑感】
■封じられた縦
「精度よりも速い縦パス」―前節はボールを縦に速く動かすことで千葉を凌駕することができた。今節も同様の出方から岐阜を押し込んでみせたが、次第に岐阜のイヨンジェ潰しが機能しはじめ、縦への攻撃の糸口を失った。鳥栖尹晶煥監督の元でコーチを務めた吉田監督率いる岐阜は、特に自陣中央の球際の強さが際立っていた。かつての鳥栖を彷彿とする激しいプレスの前にヨンジェ、セルがいい形で受けられなくなると、京都の組み立てはサイドへ。ボランチからの横パスが増えることで前節よりも一手二手、手数の多い(遅い)攻めになっただろうか。
 そもそも相手がいる競技である以上、前節のような注文通りの展開になることは希。一方でボールの動かし方も無限にあるのもサッカーの面白さだ。そこは相手をよく見て、適宜判断するしかない。中央が封じられているならサイド、という考え方は決して間違いではないし、パスの長・短含め、あの手この手でこじあけようとした京都の戦いぶりは自体は悪くはなかった。悪くはないのだが、どの攻撃パターンも、もう一段階物足りない。サイドから中央に折り返した時にあと1人入ってくれば…とか。そこは練習から意識して突き詰めていくしかない。


■ラストピース?
 8月19日に左膝半月板の手術をしていた石櫃がこのゲームで復帰。怪我上がりとは思えぬ運動量で右サイドを上下動し、推進力をもたらした。90分以上走り続けた後にさらにひと踏ん張り駆けてPKを得た積極性など、フィジカル面、意識面では充実ぶりを見せつけたが、気になったのは判断面、試合勘の部分。駆け上がって敵陣深くまで進出はできるのだが、そこから先がクロスなのか、味方に預けるのか、モタつくシーンも見受けられた。
 もちろんこれは受け手側の動きの質もある。復帰戦ということでまだ外(石櫃)と中の感覚のズレもあったが、クロスへの入り方やサポートの動きを改善していき、石櫃が迷いなくガンガンクロスを上げられるようになれば、待望の「右の砲台」が復活する。圧倒的なストライカー不在のチームが敵ゴールを陥れるための近道は、とにかくチャンスの数を増やすこと。右の攻撃的砲台から放たれるチャンスメイクが、このチームに足りなかった“ラストピース”になれるか。いや、ラストピースに、俺はなる!と信じている。




2016明治安田生命J2リーグ第35節 千葉vs京都

2016-10-09 | 蹴球

ジェフユナイテッド千葉●0-3京都サンガF.C.
               2'堀米勇輝
               (↑エスクデロ競飛王)
               24'イヨンジェ
               (――)
               65'ダニエルロビーニョ
               (PK)


[警告・退場]
・千葉
19'エウトン(C4繰り返しの違反)
64'イジュヨン(C1反スポーツ的行為)
71'菅嶋弘希(C2ラフプレー)
・京都
11'アンドレイ(C2ラフプレー)
67'イヨンジェ(C4繰り返しの違反)
71'菅沼駿哉(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
 深刻な得点力不足に陥っていた京都は、前節から大きくメンバーを入れ替え、立ち上がりから前への積極性を見せる。高橋が相手スローインをカットすると、吉野→イヨンジェ→エスクデロと素早く前線にボール動かして堀米が先制。その後も前向きに奪う守備→素早い展開という守攻の切り替えの速さで千葉を圧倒。イヨンジェがアランダのバックパスへのチャレンジから追加点を奪い、後半にはエスクデロが得たPKをダニエルロビーニョが決めて3得点。守備面もアグレッシブで、高さ勝負や球際勝負にも怯まず、特に相手に後手を踏ませ続けたたボランチ2枚の動きは出色だった。攻守に畳みかけるように調子を手繰り寄せ、停滞感を払拭する完勝となった。


【雑感】
■先んずれば制す
 千葉の視点からみれば「3得点とも自分たちのミスや甘さを衝かれたつまらない失点」ということになるだろう。しかしそれらのミスや混乱を引き起こしたのは、京都が前へのチャレンジを怠らなかったからに他ならない。石丸監督が「今日はミスもあったけれど前への推進力もありました。それが上手く得点に結びついたのは良かった」と語る通り、前節まで失われていた前への推進力が段違いに向上した。実は戦術的には何も難しいことはしておらず、全力でボール奪いにかかって、奪ったら迷う前に前線に動かしイヨンジェorエスクデロを走らせるというだけ。いつになく速めのタイミングでボールを動かしたため、パスはミスになることもあったが、アバウトなボールでもイヨンジェが長槍のように敵陣に突っ込むことで千葉の守備陣は(ポジションも意識も)下がり気味になった。多少粗はあってもとにかく相手より先手先手を京都が打ち、後手に回った千葉は余裕をなくしてエラーを起こし、それを衝いた、という兵法書のお手本になりそうな展開。あんなに噛み合わなかった歯車が、あっさりと元に戻った。

■再船出
 イヨンジェが槍のような突破・裏狙いで相手を退かせる嚆矢(こうし)となると、それに呼応して後ろから布陣全体を前に前に押し上げたのが新たなボランチコンビ、アンドレイ&吉野だった。これまで片方が前目、片方が後ろ目ということの多かったボランチ2枚が、ハンドルを握る両手のように揃ったまま強気な位置取りを保つ。さらにその後ろ(高橋、菅沼)も強気に最終ラインをコントロールし、コンパクトな陣形を保持。侵入してくる敵を絡め取る絶妙な距離感を維持した。ちょうどそれは、天皇杯2回戦でセレッソを凌駕した時のコンパクトな守備網の再現のようだった。
 前節の戦評で「チームが4節あたりまで逆戻りした」と酷評したが、わずか1週間でチームが最も良い出来にあった天皇杯2回戦のところまで戻してきた。これまで積み重ねたものが無駄ではなかったという安堵とともに、ここにきてアンドレイ&吉野という新しい可能性が登場したことは素直に喜びたい。特に吉野の走力と危機察知能力、パス展開力、判断力の速さ、そしてある種の大胆さはこれまでになかった武器。吉野がここまでできるのなら、アンドレイも無理して上がることもなく、潰し能力を発揮しやすい。つまり「相棒」として相性が抜群に良い。右サイドで起用したダニエルロビーニョの守備面での献身性も含め、“新たな発見”を得て、この内容を目指すべき針路とし、石丸丸は再び航海へと船出する。…って、石丸丸って語呂が悪いなぁ。


2016明治安田生命J2リーグ第34節 京都vs金沢

2016-10-03 | 蹴球

京都サンガF.C.0-0△ツエーゲン金沢


[警告・退場]
・京都
22'山瀬功治(C1反スポーツ的行為)
50'染谷悠太(C1反スポーツ的行為)
88'吉野恭平(C2ラフプレー)
・金沢
65'山藤健太(C2ラフプレー)


【全体の印象】
 10月ながら飲水タイム付きという酷暑のデーゲーム。互いに4-4-2の陣形同士で、オーソドックスなサイド攻撃などボールの運び方、奪いどころなども似ていたが、より組織的で勇敢だったのは現時点で最下位の金沢。京都はボールは保持するが、穴を見つけられず、崩しにかかる“攻撃のスイッチ”は半押し状態。前半の有田、後半のエスクデロに決定機はあったものの、前に人数をかけられないまま終盤にはキロス電柱作戦にチェンジしたが、シュートは枠に飛ばず。逆にダビを投入した金沢の力強いカウンターにゴールを脅かされた。終わってみれば勝点1を拾った印象。試合後思わずつぶやいたひとことは「これはあきませんなぁ」。


【雑感】
■歌を忘れたカナリア
 バドゥ監督の時に、「ボールをどう動かしていいか曖昧で、選手が迷って遅くなる」と指摘したことがある。今現在の京都もボールを持った選手が次を探している状態。そんなはずはない! 天皇杯2回戦セレッソ戦(前半)などは、パスの出し手も受け手も意図を通じ合い、半ばオートマチックに人とボールが動いて相手を翻弄していたのに…。
 石丸監督のチームは、確かにシーズン序盤こそ上手く行かなかったが、トライアル&エラーを繰り返しながら迷わずパスを回して敵陣に攻め込むチームになったはずだ。それが、松本戦を境にできなくなっている。昨日まで飛べていた7段の跳び箱が、突然怖くなって6段すら飛べなくなったような感覚。要因は怪我や疲労の蓄積などもあるだろうが、もはや意識付けの問題としか思えない。兵たちに余計なことを考えさせず一心不乱に走らせることは、優れた大将の資質のひとつ。今は選手個々に「俺がどうにかしなきゃいけない」という気負いも見えて、そういう個々の思いが歯車を狂わせている。
 ちょっと気になるコメントがあった。「外してしまったけど、ゴメ(堀米 勇輝)からのクロスに合わせたシーンも、自分たちでしかタイミングが合わなかったと思う」(有田光希)。これはA→Bだけの関係だけで崩せるという自負であるとともに、A-BにCやD(3人目、4人目)を加えて攻撃していく意識の欠落ともとれる。複数が絡みながらスピードアップした唯一の場面は75分、染谷のビルドアップをダニエルロビーニョが受け→エスクデロを経由→駆け上がった下畠がクロス、というシーン。天皇杯までは、こういう攻めをごく普通に繰り出せていたのだ。今はもう、歌を忘れたカナリアになってしまっている。


■見失ったスタイル
 攻撃時になかなかトップギアに入らない点について、3月の第4節の時点で書いたことがある。歌うことを忘れ、積み上げてきたものを見失い、そのあたりまで逆戻りしてしまった。石丸監督は「今日はポジションを固定し、ある程度「こういうふうにやっていこう」というのがあったのですが、もう少し流動的にやることも必要」「今はもう少し頭を柔軟にしながら発想を転換することが必要」と言うが、そのさじ加減を誤れば、発想力頼みで出し所を迷って停滞する「バドゥ化」への道も。今必要なのは、自分たちが目指すサッカーをもう一度整理すること。点を取りたい=フィニッシュにこだわりすぎて、見失っているものはないか。大きな道筋を指揮官がハッキリと示し、そのためにならば無駄走りや犠牲になるプレーが出てくるようにならないと、もはや上を目指すことは難しい。

 ここでもう一度、シーズン前に山中社長が掲げたチームコンセプトを思い出してみたい。

 闘争心を持ち
 フェアプレーに徹し
 最後まで全力でプレーする


 果たしてそういうチームになれているだろうか。最後まで全力でプレーするのは選手の仕事だ。だが最後まで全力を出し切らせるのは監督やチームスタッフの仕事。結果ばかりを欲し、急に電柱作戦をはじめてダニロビやイヨンジェは不完全燃焼にはなっていないか?オクトーバーにもなってバックパスが第一選択肢の臆病ばーになっていないか? もう一度自分たちが目指す「スタイル」を見つめ直したい。全力で闘える集団にならなければ、仮に運良く6位に滑り込めても意味はない。もちろん、全力を出し切れないチームが勝てるほどプレーオフも甘くはない。