二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2015明治安田生命J2リーグ第42節 京都vs水戸

2015-11-24 | 蹴球

京都サンガF.C.○2-1●水戸ホーリーホック
           25'岩尾憲
           (↑船谷圭祐)
52'駒井善成
(↑石櫃洋祐)
90+1'大黒将志
(↑CK原川力)

[警告・退場]
・京都
56'菅沼駿哉(C1)
・水戸
66'船谷圭祐(C2)
77'田向泰輝(S1


【全体の印象】
中山博貴の引退試合。京都は選手ごとのテンションや集中力にバラつきがあり、攻守に足並みが揃わない。水戸は高い位置からのプレスでボールを奪いはじめ、京都の不揃いな守備を崩して先制。京都も後半、有田を中心にボールをしっかり追えるようになるとプレーの連続性が増し、石櫃の高速クロスに駒井が飛び込んで同点弾。その後膠着したが77分田向の退場により水戸は自陣を固め、京都は攻めあぐむ。アディショナルタイムについに中山投入。雰囲気が一変し、大黒の劇的ゴールで決着した。


【雑感】
■前線プレス
 基本的に水戸ペースだったこのゲーム。京都が戦況を変えたポイントは2度あった。1つめは駒井の同点弾の直前、スローインを奪ったプレー。バックパスを受けた今瀬に対して、有田が前線から、石櫃が後ろから寄せてサンド。今瀬はタッチに逃れ、そのスローインの流れから駒井のゴールが生まれた。
 というのも、前半はまったくプレスが連動せず、単独で当たりに行っては躱されていた。後半からは有田が追い込みをかける動きに周囲が距離を縮めて奪う場面も増え、「いい守備=いい攻撃」の図式が成り立つようになった。このゲームでも目立ったが、京都はロングパスでボールを動かすことがものすごく下手。長いパスは大抵ズレたり、大きくなったり。逆に短く繋いで加速するプレーには強みがある。だから高い位置で奪うことが、重要なのだ。

■スタジアム
 2つ目は中山博貴の投入。今季限りでの引退を表明した中山が入った瞬間、スタジアムの雰囲気は一変した。スタジアムの声援がプレーの流れを明確に変えてしまうシーンは、日常的に起こることではない(特に箱として欠陥のある西京極においては)。もちろん、得点そのものは大黒将志の“どんな体制でもゴールを狙う嗅覚”と“引きの強さ”で奪ったものであるが、スタジアムの声援が点を取らせたとしか思えないほどに、誰もが「あと1点」を欲していた。パグ京都サンガにサッカー人生を捧げた中山博貴のラストゲームであるから…。
 中山博貴が投入され、駒井がキャプテンマークを外して中山の腕に巻きに行った瞬間から、選手たちの目の色が変わった。スタジアムの声援の質が変わった。それが京都には扶翼になる一方で水戸には圧力になり、多少なりとも浮き足立ったように見受けられた。スタジアムの一瞬の雰囲気で、メンタルがプラス側とマイナス側に振れて勝負が決してしまう。だからサッカーは面白いし、場の雰囲気を作り出せるスタジアムは重要だ。

 中山博貴選手。京都のために戦い抜いてくれてありがとう。そして、お疲れさまでした。


※ ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
〈蛇足〉
■石丸監督について
 今季の総括については、後日書くかもしれないし、書かないかもしれない。ひとつだけ今書いておきたいのは、石丸監督のこと。
 石丸監督就任後の成績を見てみると、4敗はしているもののすべて1点差負け。さらに勝敗にかかわらず、3失点以上は磐田戦(3△3)の1度だけ。去年~今年前半にしばしば見られた「崩れ癖」はなくなった。勝負に対してキレることがなくなった。内容的にも、大宮や磐田、福岡、セレッソといった上位相手とも互角に渡り合えており、前半戦のような「どうやっても歯が立たないゲーム」はほぼなかった。もちろん、讃岐の北野監督や愛媛の木山監督との知恵比べで完敗することもあったが、無計画で無秩序なチームを途中就任ながらここまでしっかり戦えるチームに建て直した手腕は高く評価したい。
 個人的には石丸監督が来季も続投することに何の不満もないし、むしろ期待をしたい部分もある。戦力の方向性やバランスを整えた上で、石丸サッカーの次の段階を見たい。ただし、後任?として名前が挙がってる人がワンランク~ツーランク実績が違う人なので当惑気味。走力主体でチョウ高速サッカーを目指すってことなら、それはそれで今やってる路線から大きくズレてる訳でもなく…。(でも、わざわざJ1の立場捨ててまでJ2に来ないじぇ?)
 とりあえず今年(の後半)が無駄になることだけは、ご勘弁被りたいのでござりまする。



2015明治安田生命J2リーグ第41節 栃木vs京都

2015-11-15 | 蹴球

栃木SC●0-1○京都サンガF.C.
       23'金南一
       (↑FK山瀬功治)


[警告・退場]
・栃木
26'山形辰徳(C1)
44'松村亮(C2)
・京都
45+2'下畠翔吾(C1)


【全体の印象】
序盤から攻勢に出たのは、J2残留の崖っぷちに立たされている栃木だった。しかし京都がフリーキックのワンチャンスをモノにして先制。失点後栃木には隙も出ていたが、京都は攻め手を欠く。後半は栃木ペース。京都は前線にボールが収まらず、栃木に容易にボールを動かされ、裏を衝かれて攻勢を浴び続けたが、菅沼、バヤリッツァの個の能力とGK清水の奮闘で牙城を死守。攻撃面は伊藤の単騎突破が効いていたがゴールは脅かせず。出来は悪かったが、勝ち点3を得て今季の15位~19位が決まった。


【雑感】
■作れない攻撃の時間
 守備に回る時間の多かったこのゲーム。全体的に運動量が少なく、プレスもかからず、相手の攻撃に晒されるうちに陣形も間延びしていった。そうなってくると奪い所も定まらず、後ろ、後ろでの対応となる。表裏一体なのが、自分たちの攻撃の時間を上手く作れなかった点。石丸監督就任以降、良い時には敵陣にボールを運んでは高い位置である程度ボールを保持し、最終ラインがしっかり押し上げることで陣形を縦に圧縮し“奪う守備”を実現していたのだが、前線で時間が作れなくなると途端に、後ろで対応する守備になってしまう。そして、こうした状況が頻繁に起こるのは、前線で身体を張るタイプではない大黒を1トップで起用する時。それは当然だ。大黒は敵に身を晒して犠牲になる選手ではない。最前線で漂って敵から瞬時に消えて、呼び込んだボールを点で合わせることに最大の特徴があるのだから…。

■訣別の時
 大黒に点を取らせるサッカーは、去年の時点で限界が見えていた。もちろん、大黒の動き出しの鋭さや得点感覚に疑いはない。しかしフィニッシュワークに特化したストライカーの存在は、えてして攻撃パターンの選択肢を狭め、良くも悪くもフィニッシュに入ってしまうためプレーの連続性を奪い、攻守の連動においてチーム全体の活力を低下させた。
 去年~今年と2年連続で低迷したチームが今後変わっていくために、最初に手を付けるべきことは、大黒との訣別だ。実際、石丸監督就任以降はスタメンから大黒を外すことで、駒井、宮吉、有田、伊藤らの連動性は格段に高まり、攻守に切れ目のない連続プレーを発揮できたゲームも多くあった。魔境J2を勝ち抜くために必要なのは、チーム全体の走力であり、運動力であり、献身性。絶対的エースにボールを集めるだけでは勝てないことは、他ならぬ京都サンガというチームが2年にわたる長編の低迷により証明した。今後目指すべき方向性は明々白々。2年間の大低迷時代に君臨したエースと訣別し、この迷走に「けり」を付けたい。










2015明治安田生命J2リーグ第40節 京都vs愛媛

2015-11-09 | 蹴球

京都サンガF.C.●0-1○愛媛FC
           81'白井康介
           (↑こぼれ)


[警告・退場]
・京都
13'菅沼駿哉(C1)
42'石櫃洋祐(C4)
・愛媛
なし


【全体の印象】
ボールが止まるほど水が溜まったピッチ状態に苦しみながらも陸上戦で押し込もうとする京都に対し、愛媛は5バック気味に守ってから瀬沼へロングボールを当てセカンドボールを拾う戦術。決定機は両者1度ずつあったものの決めきれず。ところが後半、石丸監督が切った宮吉→山口の交代策により京都は完全に受け身に。すると抜け出した瀬沼のシュートのこぼれ球から失点。それなりに前線の基点になっていた有田も宮吉も下げていた京都には石櫃のアーリークロスくらいしか攻め手がなく、反撃もままならないまま敗戦。両監督の手腕の差が結果に直結した。


【雑感】
■軽兵による陸上戦
 ショートパスのボールが走らず、ドリブルすれば途中で止まる。いかにも陸上戦には分が悪いコンディションにも関わらず、京都は伊藤・駒井という陸上戦を得意とする軽兵でボールを運ぼうとする攻撃スタイルを変えずに臨んだ。それでも前半は不利なコンディションながらも有田が身体を張ったこともあり、それなりに相手を脅かすことはできた。
 もしかするとそれは木山監督の仕掛けた罠だったのかもしれない。アクシデントの起こりやすいピッチ状態で無理をせず、相手を自陣に招き寄せた上で、瀬沼目がけて縦に放り込んで空中戦のこぼれを機動力のある軽兵に拾わせるというリスクの少ない戦術。もちろん、京都側も潰し所はハッキリしていたため、菅沼、バヤリッツァもきっちり対応できていた。
 ところが後半早々有田がダイビングヘッドで肩から落下してしまうなど何度も傷み、貴重な空中戦要員をあきらめることになったのは誤算だったか。これまた陸上戦型な大黒に空中戦役を強いることになった時点で、悪芝での攻撃性能は著しく低下した。


■指揮官の失策
 攻撃の可能性を見いだせなくなった状態で、FW宮吉を下げてDF山口を入れたのはどのように理解すべきだろうか。「(3バックにして)攻撃的になったところもあったが、そのあたりが全体的に伝わらなかったのかな」と監督は語るが、意図を伝えられなかったのは指揮官の失策。この交代で意識が受け身になってしまい、相手のロングボールを後手後手で対応するという状態に陥った。リードもしてないのに守勢に回った上での失点。挽回しようにも、前線で身体を張れる、エアバトルできる手駒はもう不在。控えメンバーを見渡しても、重馬場が得意そうな選手もおらず(せめてそこそこ基点を作れる宮吉を残していれば)。最終的にバヤリッツァが最前線に上がったが、それも中途半端だった。
 ピッチコンディションに合わせられなかった戦術プランも、リザーブのエントリーも、交代策も、いくつも判断ミスを重ねて喫した敗戦。タイムアップの瞬間に、石丸イズムを体現できるはずの元愛媛勢が1人もピッチに立っていなかったのが、どこか皮肉めいていた。






2015明治安田生命J2リーグ第39節 北九州vs京都

2015-11-02 | 蹴球

ギラヴァンツ北九州●1-2○京都サンガF.C.
             5'有田光希
             (↑金南一)
             29'伊藤優汰
             (直接FK)
68'小松塁
(↑渡大生)


[警告・退場]
・北九州
28'前田和哉(C1)
82'西嶋弘之(C1)
90+1'加藤弘堅(C1)
・京都
47'宮吉拓実(C1)


【全体の印象】
序盤から積極的に仕掛けた京都が押し込み、前線が互いに連動しながら北九州エリア内に何度も侵入。押し込み続けた流れから、有田が先制。さらに有田はいい守備からそのまま突破をかけてフリーキックを獲得し、それを伊藤が直接突き刺して追加点。前半は京都が圧倒した。後半になると徐々に北九州がペースを掴み、自陣内でクリアしきれないうちに星原に拾われ、そのクロスから失点。京都はなかなか主導権を取り返せなかったが、最終盤に駒井が驚異的な走力をみせてチームを鼓舞。流れを失いつつも待望の勝利を手にした。


【雑感】
■前半の連動
 前半の京都はまさに“ハマった”状態。キーマンになったのは、金南一。互いの布陣を対比させてみると、京都の前3枚・宮吉有田伊藤に対して北九州のDF4枚がゾーンを作って対応、駒井山瀬には風間加藤が対峙、一方北九州の前4枚には京都のDF4枚がゾーンで対応。金南一だけが浮いたような状態になり、フリーマンとしてセカンドボールを回収し、プレスの発動点となり、攻撃の起点となって押し込み続けることができた。
 さらに前半の京都は、奪う→ボールを前に送る→人が追い越す→陣地を前に進めるという作業が有機的に連動。特に駒井・宮吉・有田のコンビネーションが良く、彼らが連携して追い越す攻撃に、ゾーンを作って待ち構える守備の北九州は対応しきれなかった。注目したいのは中盤から配球するとすぐに動き直して前線に飛び出してきた駒井の動き。守勢に回った時にはきちんとアンカーの脇を固める。4-1-4-1のインサイドハーフとしては理想的なプレースタイルをすっかり体得している駒井の「本職」を再考してもいいくらい。五輪代表を目指す原川に求められるのは、こういうプレーである。

■後半の問題点
 後半、相手にペースを渡してしまったひとつの要因は、前半浮いていた金南一の両脇のスペースに北九州のサイドMF(特に小手川)が入ってきて数的優位が崩れはじめたこと。察知した石丸監督は田森を入れて2ボランチにするのだが、守備的+守備的の中盤構成は明らかに前への活力を削ぎ落とすことになってしまった。さらに攻撃の翼をもいだのが、この日前線の基点役&ハイプレスの先鋒としてあまりにも効いていた有田から大黒への交代。宮吉・有田という前である程度攻めの時間を稼げる選手がいなくなると、前向きに人が人を追い越すという「強み」が出せなくなった。追い上げられて、どうにか突き放したいというのはわかるが、交代カードを切るごとに勢いを失ってしまったのは気になるところ。
 人を代えて戦術を〈ハイテンション→落ち着き〉へとシフトしながら勝ちきるor逃げ切る采配はまだまだ改善の余地はありそうだが、そうこうしているうちに今シーズンももう残り3試合。早く来季を見据えたゲームに向かえればいいのだが。