二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2014 J2第42節 京都vs岐阜

2014-11-23 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△FC岐阜


■消化試合とクラブの未来
消化試合にしない。最後だから普段出ていない人や若い人を使うということはおかしい。スタンスは変えない」と、退任が決まった監督が事前に述べた通り、だいたいいつも通りの面々で臨み、だいたいいつも通りの内容で、だいだいいつも通りの結果に終わった。攻撃の噛み合わなさも今年よく見てきた光景そのもの。「工藤浩平のラストパスで何とか…」「石櫃洋祐のクロスに誰か合わせて…」「伊藤優汰の単騎突破でどうにか…」など、点火すれども導線が繋がっていないような攻撃ばかり。ドカンと一撃頼みの綱・大黒将志もこの試合では好機を生かせなかった。爆発できないまま火が消えて萎んでいったこの内容、文字通りの消“火”試合ではないか。
 一方、関西ステップアップリーグではセレッソ、ガンバを立て続けに破るなど、出番のなかった若手が活躍した。イキが良い新規兵を投入して戦況を活性化することが消化試合だというなら、そっちの方がよほどおかしい。ましてやクラブの将来を担うべき“クラブの宝”である。リーグ戦の実戦経験を1試合でも多く積ませることは、彼らの未来、ひいてはクラブの未来につながるんじゃないのだろか。
 前述の試合で活躍した石田雅俊は、この試合ベンチ入りするも出番なし。交代枠は2つを余しながら、何の“サプライズ”も起こすことなく、今季があっさりと終わった。このクラブの未来は、どっちに向いているのだろう?


〈京右衛門的採点〉
杉本 6.5 …最初の飛び出しはあわやPKも、果敢な守りで決定機を幾度も防ぐ。
石櫃 6.0 …精度はマチマチながら山ほどクロスを送る。守備でもよく身体を寄せた。
酒井 5.5 …よいカバーも見せたが、スコンと一発で抜かれてピンチに陥った場面も。
バヤリッツァ 6.0 …ナザリトには当たり負け気味も、ニの手で判断の良さと強さを発揮。
比嘉 5.5 …全体的に安定感はなかったが、事なきを得た。駆け上がりより前線裏への配球に見所。
田森 5.5 …中盤を省略気味にナザリトに当ててきた岐阜相手にあまり存在感見せられず。無難。
駒井 5.5 …アジリティを活かしたプレスをみせるも、やや空回り。遠目から狙う意識もあったが…。
ドウグラス 5.5 …最後まで「使う側」での起用。迫力ある寄せや突破もあったが不完全燃焼。
工藤 5.5 …どうにか攻撃を組み立てようとパスを出し続けたが、ミスやオフサイドで崩せず。
伊藤 6.0 …単騎または比嘉とのコンピから左を崩しかかるが、シュートは枠に飛ばず。
大黒 5.0 …石櫃からの絶好機を外すなど、シュートが枠に飛ばず。得点王として画竜点睛を欠く。
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三平 ――
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川勝監督 4.5…煮え切らない攻撃、変化のない起用など、ワクワク感ゼロ。


2014京都サンガ所感~総括あるいは総喝~

2014-11-16 | 蹴球

■エレベーター故障中
「このエレベーター、故障してませんかー!?誰かー!修理してー!」。かれこれ4年間J2に閉じ込められたまま、エレベーターは動いてくれませぬ。そして来季は5年目のJ2を迎えることに。とりわけ4年目の故障っぷりは、そりゃもう酷いもので。ひとことで総括すると「設計ミス」。今年のチームは根本的な設計図(プランニング)の時点で狂っておりました。

(エレベーターの話がレストランの話に代わって申し訳ないのだけど)飲食店の出店に例えれば、「どんな店構えで」「どういう食材を集めて」「どんな料理人を連れてきて」「どんなレシピで」…って以前に、この店がフレンチなのかイタリアンなのか中華なのか家庭料理なのかファストフードなのかさえも判然としていなかった。

 レストランの話ではないのです。京都サンガのお話です。そもそも、2014年の京都は、どんなサッカーがしたかったのか? チーム編成をみれば、大木前監督の残したレシピを元に味付けしていくんだろうな…とは考えたものの、キャンプ直前に「大黒将志加入」というリリースに接し、それも何だか怪しくなった。フタを開けてみれば、【個人能力任せ】の無策サッカー。バドゥ前監督については以前いろいろと書いたので、細かいことは省きまする。省くけど、要は明確なスタイルがないまま迷走したのです。

 好意的に受け止めれば、バドゥが目指した「自主性の伸張」は、大木氏が最後の最後でぶち当たったテーマでもあり、その1点においては(問題意識の)継続性があったように思います。ただしバドゥはあまりにも放漫で、掲げた理想に近づくための手段も具体性も持ち合わせていなかった。集団競技なのに個々がバラバラに戦っていた。それでも第18節までに26の勝ち点を積み上げ、第8節松本戦のようなエクセレントな内容のゲームも見せたことは、それなりに選手のポテンシャルは高かったのだと思うのです。まぁ、固定起用やら主力/サブ分離の練習などにより、ポテンシャルを存分に発揮できぬ烏合の衆になってしまったんですけどね。

 解任に踏み切った判断もタイミング(6月末)も、間違ってはいなかったと思います。この時点で残り24試合。自動昇格圏の2位磐田との勝ち点差は11、3位松本との勝ち点差は8で、6位大分との勝ち点差は3。挽回も十分可能だった数字です。監督選びさえ間違わなければ。


■なんでこんな監督連れてきたんだ?
 結論から先に言うと、「なんでこんな監督連れてきたんだ?」。森下監督代行2試合(1勝1分)を挟んだのち、報じられた後任監督の名を見て唖然としたのです。川勝良一氏がこれまで監督としてどの程度の成績を残し、どんなチーム作りをしてきて、いかなる手法でチームを率いたか、(ちょっと長くJリーグを見てる者なら)素人でも知っていることだったので。「何を期待して連れて来たの?」という部分がまるでクリアにならず、そして「設計図なんてなかった」ことを突きつけられた気がしたのです(今季の設計図を引いた人が全否定された、という見方も含め)。

 あらかじめ断っておきますと、拙者は川勝氏の手腕を非難するつもりは毛頭ないのです。過去の実績に照らせば「定評通り」であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。問題は、一介の素人でも予測できたであろう近未来をプロクラブの強化担当がなぜ想像しえなかったのかということなのです。

 監督交代後にチームが掲げた大義名分は「昇格に向け勝ち点を積む」ことでした。けれども、川勝氏が勝ち点を積める監督かどうかは、過去の実績をみれば想像できることで…。3クラブやってパッとしなかったものが、4クラブ目で化ける夢物語なんてないのです。結局はチームが監督交代後に進むべき設計図がなかったと言わざるをえないのです(ある意味、設計図もなしにチーム作りを丸投げされた川勝氏には同情します)。

 まだまだ挽回可能だった7月の段階で、どこに向かって軌道修正を図るかという戦略さえあれば、違う未来を描けたはずだったのではないか? 以下、監督交代後の不可解な点、失策かと思しき点を書き散らします。


◆アクションサッカーの放棄
 2011年の祖母井GM就任以来、このチームは「自分たちから仕掛けるサッカー」を掲げてスタイルを築いてきました。バドゥも、(ノープランだったけども)能動的に自ら仕掛けるサッカーであり、同じ方向を向いていたと言えます。ところが、川勝氏はアクションサッカーにつきまとうリスクを恐れ、これを否定(あるいは破壊)することから手を付けました。“チャレンジする”や“仕掛ける”というサッカーの魅力を削ぎ落とし、結果、ゲームの前半を様子見のために費やして得点が奪えず、活力を欠く弱腰のサッカーに。かといって、完全に守備的に受けて立つほどのリアクションサッカーでもない。実に中途半端なサッカースタイルになりました。川勝氏は悪くないです。連れてきた人が悪いのです。


◆走力不足→走力不足
 バドゥは選手を上手く走らせられなかった監督でした。それは決してキャンプで身体づくりができていなかったという訳ではなく、「何をすればいいのかわからない」から判断が遅れ、走れていなかった。極端な話、後任監督は走る道筋を示すだけでも、走力に関しては大幅な改善が見込めたのではないかと思うのです。ところが監督交代後も「走る」という点についても低調でした。「球際、球際」というフレーズがよく出てきたけども、多くの場合は「相手に対応するための球際」。要するに火消しのための走りで、ボールホルダーを追い越していくフリーランとか、ボールを引き出すための無駄走りではありませんでした。ヘトヘトになるまで出し切った、走り切ったといえるゲームは数えるほどで、結局持てる走力を限界まで発揮できたかどうかは甚だ疑問です。川勝氏は悪くありません。連れてきた人が悪いのです。


◆奔放→規律
 自由奔放がスーツ着てグラサンかけて歩いているようなバドゥのサッカーから、一転して規律を求める指揮官にチェンジ。規律といえば聞こえはいいけれど、逆の表現をすれば柔軟性がないってこと。4-5-1を主体にポジションを縛って、リスクを消したいあまりトップ下に置いた中山博貴を守備の役割に使う…とか、何ていうか「そこまで怖いの?」みたいな。去年まではむしろポジションを崩しても走ることに強みを持っていたチームだった訳で、まったくの正反対。川勝体制では常に窮屈で柔軟性に欠け、なおかつ臆病なサッカーをやっていた印象です(川勝氏が去年までの屋台骨を壊すためにやってきた使者というなら話はわかるのですが)。この点ではバドゥ以上に「素材(土台)」と「シェフ」の相性がマッチしていませんでした。川勝氏がとうこうではなく、連れてきた人が悪いのです。


◆放任→カミナリ
「前半寝ていたので、特殊な方法を使って目を覚まさせた」―これは川勝氏がJリーグアフターゲームショーで言い放った東京V時代の名言。怒鳴って組織を引き締めるタイプの上官であることは有名で、京都では就任3試合目にして「ソフトなカミナリで寝ている人を起こしてあげました」と。鞭で叩いて発奮させる手法の存在は否定しないけれども、個人的にはとても嫌いです。そもそもこのクラブの普及部には『「叱らない」育て方』の池上正氏がいて、サッカーの魅力をホームタウンの子ども達に伝導している訳で、クラブ全体としてブレてるというか何というか。「勝利至上主義だ!プロなら厳しくて当たり前!」という主張もわかるのですが、叱ることで勝ち点積み上げられた訳でもなく…。評論家のように冷めた目線客観的な視点を持つ川勝氏ですから、結局は鬼軍曹までなりきれず、ただのカミナリオヤジ止まりなんですよね。人心掌握の手法は、このチームには合っていなかったと思います。川勝氏は悪くありません。連れてきた人が悪いのです。


◆大黒頼みからの脱却
 大黒将志という日本屈指の“点獲り職人”がいたため、バドゥ体制は極端な大黒頼みに陥りました【⇒全得点中の大黒率45.8%。川勝氏はこの点を見抜いており、就任早々に指摘したのはさすがでした。「大黒依存からの脱却」に言及し、過去3年なされなかった夏の補強によりドウグラスを獲得。けれども、結局最後まで大黒依存からは脱却できず【⇒大黒率42.9%(41節まで)】。不調に陥るたびに「やり方を変えないといけない」との部外者のようなメッセージを発し続け、得点パターンは〈石櫃洋祐のクロス〉〈大黒頼み〉の2通りに落ち着きました。あ、バドゥと一緒ですね。ちなみに総得点数と平均得点は【バドゥ18試合24得点・1試合平均1.33得点【川勝21試合28得点・1試合平均1.33得点となっており、あらまぁ同程度。蛇足ながら【大木3年目=42試合68得点・1試合平均1.62得点/トップスコアラー(原一樹)依存率17.7%でした。川勝氏が悪いのではなく、連れてきた人が悪いのです。


◆フィルター付きの選手起用
 練習の段階からメンバーを固定するという極端なことをやったバドゥに比べれば、川勝氏は至って正常でした。前任者が意味不明すぎたため、「若手を積極的に起用した!」という錯覚もありますが、駒井善成以外でスタメンを掴めた若手はゼロ。選手起用にもちょっとフィルターをかけてしまう指揮官のようで、闘争心を表に見せるタイプがお好みでした。大きな声でコーチングが目立つ田中英雄を偏愛したのもこのあたりでしょうか。とりわけのお気に入りは駒井で、怪我人続出で緊急的に回されたはずのSBで使い続けました。駒井に埋もれたのが、闘争心があまり表に出てこない福村貴幸で、レギュラーを掴むのは終盤の33節から。ちょうどそのあたりからようやく工藤浩平を攻撃の中心に据えて現在に至りますが、最適解を見つけるのに13節を費やしました。また、怪我人がかつてないほど続出したのも川勝体制の特徴。練習との因果関係は不明ですが、フィジカルコーチを連れてきても、さほどフィジカルが強化された印象もなく。最後の方でオスンフンと何やらあったっぽいのは、非常に残念な出来事でした。それで杉本大地が経験を積んだことを喜ぶべきか、どうなのか。川勝氏はそういう監督です。連れてきた人が悪いんです。


◆モチベーター能力の欠如
 バドゥはちゃらんぽらんでしたが、盛り上げる・その気にさせるという点では稀有な魅力を持ち合わせていました(ただ、選手に重要な判断の負担を強いていたのでプラマイゼロです)。川勝氏はおよそ真逆のキャラクター。会社の上司なんかでも同じですが、部下たちのヤル気をいかに引き出すかというのが、上司・上官・指揮官の重要な役割です。川勝氏は前出の「カミナリ」に代表されるように“圧”をかけて闘争心を引き出すタイプでした。例えば「走らない選手は使わない」(月刊J2マガジン11月号)などと宣言したそうですが、そうではなく「走る選手から順番に使う」と言えば受け止める方の印象も変わるはずなのです。傍から見てもヤル気を引き出すモチベーターとしての資質を欠いていたことが、ここ一番での勝負弱さ、勝ち運のなさとして現れた気がします。ポジティブなヤル気は、苦しい時に踏ん張る底力に相関するはずなので。少なくとも追いかける立場のチームが連れて来るべき人ではありませんでした。連れてきた人が悪いのです。


◆素材とシェフのミスマッチ
 さまざまな点においてズレがあったことは、結局の所、用意していた食材と連れてきたシェフが合っていなかったということに尽きるのです。「大木印」の素材をグラサンのシェフが放たらかしにして半分腐らせ、なぜだかわからないけど呼んできた川勝料理長は「使いたい食材が少ないんだけど、これで何作れっていうんだ!?」みたいな。それでもドウグラスと田中を調達してきてもらいましたけどね。去年までの3年間は夏のウインドーで1度も補強しなかったことを思えば、この夏に何やらクラブ内部に地殻変動が起こったことは想像にかたくありません。世の中には冷蔵庫の余りものでもそれなりの料理を作ってしまうタイプ(徳島の小林さんとか)もいるのですが、川勝氏は割と理想を掲げ、自らの理想のフォーメーションを組んで選手を当てはめていくタイプでした。理想はバランス重視のイタリアっぽい何かでしたかね。残念ながら適合する素材がいなかったのは川勝氏には不運でした……ではなくて、どうしてこの監督呼んできた?


◆コメントと振る舞い
 川勝氏のいい部分も挙げておきましょう。試合後に出すコメントがいたって客観的で的確でした。しかし、そこで発見していたはずの問題点を糧にしてチームを作れていたかどうかは、「結果」を見ればわかること。今まで率いたチームでも「そこそこ」の成績しか残せてないのも、反省が能書きがにしかなってないあたりに原因がありそうです。もうひとつ気になるのは、やたらと「気持ち」を強調したりカミナリを落としたりする割に、立ち居振る舞いからパッションを感じなかったこと。チームに闘争心を要求するならば、いいか悪いかは別にして、指揮官自らが気持ちを前面に出すやり方だってあります。たとえば福岡のプシュニクはややオーバーアクションが過ぎましたが、誇り高くクラブの旗を高々と掲げていた点では好感の持てる監督の一人です。バドゥもそうした面では魅力のある監督でした(本当に旗振ってたのは別にして)。川勝氏は、常に客観的で達観した素振りで、地元出身だからといってそれを押し出す訳でもなく、一歩引いてとても評論家然としておりました。川勝氏が悪いのではありません。評論家を連れてきた人が悪いのです。


■これにて終わりです
 以上素人の戯れ言を長々とお目汚し申し訳ございませんでした。ひとつだけ確実に言えることは、チームの将来像をきちんと描くことがいかに大事かということです。10年後どんなチームにしたいのか。それを目指すためにはどんなスタイルのサッカーをすべきなのか。それはトップチームだけじゃなくて、ユース年代~ジュニア年代、地域との関わり、ファンサービス、全てを包括するグランドデザインです。目指すべきサッカーは、グランドデザインから抽出していけば簡単に弾き出せるはずなのです。設計図がなければ、砂上の楼閣と同じ。方向性すら示せないまま適当に見繕っただけの監督を呼んで来たとしても、それはまたしてもその場しのぎになるだけですよ?
 今季の大失敗でさすがにみんな呆れて、もう「すぐに昇格しろ!」なんて言わなくなった今だからこそ、しっかりと足元を見つめ直してもらいたいものです。








【おまけ・森下氏について】
 J2を席巻したのは、シンプルな道筋をなりふり構わず迷わず爆走した湘南でした。一方京都は、バドゥ体制でも川勝体制でもスピード感を欠き、もたもたと遅いサッカーでした。結果論ですが、今年の京都で最もスピード感があって推進力があったのは森下仁志監督代行の2試合。もし森下氏に経験豊富なヘッドコーチを付ける形で後半戦を戦っていれば、今より良い成績を残せたはずです、たぶん。なぜならば、森下氏はアクションサッカーを掲げ、選手の距離感が近く、前へのフリーランを促すスタイルだったから。それが去年までのサッカー、今年用意していた素材に一番適していたと思われるから。若手を積極的に抜擢・起用したのも森下氏ですね。ただ、森下氏はヘッドコーチとしてはバドゥとも川勝氏とも折り合っていなかったように感じます。バドゥ体制末期には指揮権が半ば森下氏に移譲していたらしき話もありますが、川勝体制でも37節松本戦あたりから森下氏の権限が大きくなった印象です。あくまでも推測ですが、サッカー観の違う二人が妥協しながら足並みの揃わない戦術でやってたような…。せめて残り10試合の段階(32節山形戦の敗戦後)で川勝氏から森下氏にスパッと変えてしまう決断があれば最終節をもっと違う形で迎えられていたのではないか、と一介の素人は思うのであります。


2014 J2第41節 長崎vs京都

2014-11-15 | 蹴球

Vファーレン長崎●0-1○京都サンガF.C.
            12'大黒将志
            (PK)
 
■特筆することなし
 遠目から長いボールを放り込むだけで、長崎のペナルティエリア内に入ることすらままならなかった京都。指揮官殿は「1%の可能性がある限り、賭けていく」と発言していたが、何を賭けたのだろうか、と。個々の頑張りは認めないでもないが、攻撃についての意図が仲間内でシンクロせず、連携もくそもへったくれもない状態。11分バヤリッツァの大きなクリアに呼応した大黒将志が倒され、獲得したPKを大黒が落ち着いて決めてスコアが動いた、というだけ。ボールをエリア内まで運んでシュートを打てたのは、後半52分の酒井隆介が初めてだっただろうか。シュート数は前半3本(PK含)、後半2本、何とコーナーキックは0。攻撃で唯一可能性を感じたのは相手を置き去りにする伊藤優汰の突破だったが、クロスに合わせる者はおらず。攻撃面で特筆することが何もない、ただ勝っただけ、という凡戦にござりました。

■凡戦の連環
 長崎のモチベーションも全体的に低く、中盤は田森大己と駒井善成、それに工藤浩平の早いプレスが効いていた。ただし、奪ってから攻撃への切り替えはすこぶる遅く、せっかくマイボールにしても出し所に迷う→長崎が帰陣して守備を整える→仕方なくロングボール…という凡戦の連環。または、塩試合スパイラル。守備面で特筆することといえば、バヤリッツァの集中力の低さ。ラインコントロールのところでバランスを無視して突破口を広げてみたり、緩慢なジョギングで追わなかったり。「流しプレー」でもそこそこ強かったのは評価の難しいところだが。
 昇格が絶たれた件については、近日中に拙者の思うところをぶつけてみたいと思いまする。


〈京右衛門的採点〉
杉本 6.0 …連携ミスやファンブルもあったが、それ以外は無難。際どいシュートも飛んでなかったが。
石櫃 6.5 …クロス精度はテキトーだったが、意外にも守備面で奮闘。競り合いで存在感。
酒井 6.0 …相手のロングボールのこぼれをよくカバー。やたら長いフィードを送ったが、精度悪。
バヤリッツァ 5.0 …気の抜けたプレーで守りのシャッターを開放。流しても強かったが。
福村 6.0 …中盤のプレスと連動し、最終ラインでの奮闘も光る。伊藤と重り攻撃の持ち味出せず。
田森 6.0 …早い寄せと予測でルーズボールを回収。安全安心の出来だったが、組み立ては消極的。
駒井 6.5 …豊富な運動量で人とスペースを潰し回る。効果的な攻撃参加はできず。終盤にチャレンジ。
ドウグラス 5.0 …競っても周囲と連動せず。セットプレーの守備では高さが生きた。
工藤 5.5 …中盤のプレスや前線からのチェイスで目立ったが、ゲームメイク能力は発揮できず。
伊藤 5.5 …仕掛けては止められるの繰り返し。後半、長い突破で左を切り裂いたが。
大黒 5.5 …PKを奪いPKを決めた。それだけ。ラストパスも引き出せず、しっかり収まらず。
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比嘉 5.5 …いきなり裏を取られてクロスを上げられたが、それなりに無難な出来。
山瀬 ―― (芝に足をとられて負傷交代)
横谷 ――
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川勝監督 5.0 …勝っただけ。チームにまとまりはなく、攻撃面の意思はバラバラだった。


2014 J2第40節 京都vs富山

2014-11-09 | 蹴球

京都サンガF.C.△1-1△カターレ富山
83'山瀬功治
(assist駒井善成)
           88'秋本倫孝

■アンバランス
 勝つしかない、点を獲るしかないという切羽詰まった状態が続く京都。試合開始から左の伊藤優汰が積極的な仕掛けを見せ、早々に主導権を握って富山を敵陣に押し込んだ。J3降格の決まった富山がどう出るかと思いきや、5枚引いた上で攻撃にも出てこないという籠城戦の構え。そういう相手を崩すのは確かに難しいのだが、京都はもう四の五の言ってる状況でもなく、前節岡山戦で見せた「火の玉アタック」を仕掛けていかねばならなかった。しかし、鬼気迫るような迫力は感じらず、圧倒的にボールを保持してもどこかチグハグした印象を受けた。
 それはまるで左右で別々のサッカーをやっているようだった。左サイドは伊藤を中心に福村貴幸・駒井善成が狭いエリアでボールを繋いでいくスタイル、右サイドは石櫃洋祐がクロスを上げるだけのアバウトな攻撃。左右でやってるサッカーのテンポも空間の使い方も微妙なズレがあり、ちょうど伊藤の髪型のようにアンバランスだった。ドウグラスの高さも上手く使えず、左の福村から右のドウグラスへと左右横断するような攻めは前半30分ごろに1度あった程度だろうか。

■去年までの…
 富山がドン引きしたことで、京都はいつもよりも一段下の田森大己の位置がゲームの組み立てポジションになっていた。攻撃を操ることに長けた工藤浩平が使われる側に回りなかなか組み立てに関与できなかったことも、前半の迫力不足の要因だろうか。後半、三平和司を投入した時点でようやく工藤が組み立て役に回ったが、相変わらずエース大黒将志は消され、ドウグラスと三平のシュートは枠に飛ばず。焦りからか丁寧なパス回しよりも裏のスペースもないのに裏狙いや、石櫃経由のイチかバチかクロス(あるいはCK狙い)という短絡的な攻めが目立つように。前節、劇的に勝ったために目立たなかったが、こういう雑さ(=不格好さ)は相変わらずで、これなら富山も守り所が絞りやすい。
 3バックにして右ウイングバックとして山瀬功治を投入した時点で、前節同様「破れかぶれモード」のスイッチを入れたのだろう。それにしても山瀬が駒井のパスに呼応して奪った先制ゴールは見事だった。ロングボール主体の攻めで崩せなかったところを、狭い局面を切り裂く一撃。去年まで培った連携が生んだ貴重なゴールだったが、わずか5分後、去年まで京都にいた秋本倫孝に同点ヘッドをねじ込まれて万事休す。惜しむらくは、得点後に畳み掛けるような猛攻を見せてもらいたかった。最後のカードが「横谷繁のアンカー」というのは前節同様だったが、攻めきるとも逃げるとも付かない中途半端な采配に映った。


〈京右衛門的採点〉
オ  6.5 …終始安定した守りでラインの裏もケア。ドフリーでの失点は致し方なし
石櫃 5.5 …クロスマシーンと化して上げ続けるもアバウト。守備は相変わらず不安定。
酒井 5.5 …終始難の無い守備を見せていたが、秋本のマークを外して痛恨の失点献上。
バヤリッツァ 6.5 …圧巻の強さでことごとく跳ね返す。長いフィードもよく通した。
福村 6.0 …伊藤・駒井との連携で小気味良い攻撃の組み立て。1vs1の守備の対応も良。
田森 6.0 …危なげなく確実にボールを回収、奪取も、攻撃面は平凡。戦術的な理由で交代。
駒井 6.5 …右へ左へよく動き、積極的にミドルも狙う。山瀬へのアシストも素晴らしかった。
ドウグラス 5.0 …戦術的に浮いた存在に。後半シュートチャンスも増えたが、枠を捉えられず。
工藤 6.0 …前半はボールの受け手側。後半からは攻守の繋ぎ役として躍動もブレイクしきれず。
伊藤 6.0 …仕掛ける姿勢はアクセントになったが、アクセント止まり。いいクロスも多かったが。
大黒 5.5 …駆け引きスペースまで消されて苦闘。どうにかチャンスを広げようともがく。
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三平 5.0 …前線に早めに入っても収まらず、チャンスも決めきれず。プレーに焦りがみえた。
山瀬 6.5 …右WBからゲームの流れを見極め、駒井とのコンビから見事な先制ゴール。
横谷 5.0 …プレス圧力が弱く、抜けられた相手に対して、結果的に失点につながるファウル。
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川勝監督 5.0 …パワー全開での発進に失敗。横谷投入はメッセージとしてどっちつかず。





2014 J2第39節 岡山vs京都

2014-11-01 | 蹴球

ファジアーノ岡山●2-3○京都サンガF.C.
            8'福村貴幸
            (assist大黒将志)
15'田所諒
33'押谷祐樹
            89'大黒将志
            (assist三平和司)
            90'+2大黒将志
            (assistドウグラス)

■終始背水の陣
 崖っぷちに追い込まれ、もはや1つの勝ち点すら落とせなくなった京都。しかも守備を支えていた酒井隆介と田森大己が出場停止。それならば、と背水の陣で「守りよりも攻め」をゲーム開始から貫いた。序盤岡山の動きが鈍かったこともあり、前から前から奪っては押し込み、大黒将志のヘディングシュートの跳ね返りを、その攻撃の起点になった福村貴幸が押し込んで先制。そのあとも攻めの姿勢を崩すことなく、攻勢をかけた。
 田所諒の同点弾は、内野貴志の足、石櫃洋祐の足に連続して当たってコースが変わるという京都にとってはアンラッキーなものだったが、その後岡山は適切な修正を施し、やたらと高い京都のディフェンスラインの裏に早くボールを入れて崩しにかかりはじめる。33分、福村の弱いクリアを拾った澤口雅彦が即座にラインの裏にクロスを送り込み、押谷祐樹が決めた形は狙い通り。ただ、ビハインドになっても京都はブレなかった。「点を奪うしかない、攻めるしかない」という背水の陣でラインを高く保ち続け、リスクを冒してでも攻勢に出続けるのだが、急ぎすぎて攻撃に緩急がなく一本調子でもあり、岡山からすればある意味凌ぎやすかったのかもしれない。

■不格好ながら
 後半から岡山は、今日の京都の出方をさらによく見極め、奪い所を定めて出足の速さを回復。球際を抑えることに成功する。即座に京都は伊藤優汰を投入し、ドウグラスと大黒の2トップに。これまで川勝監督は選手交代をしても布陣を変えることが少なかったため、少々意外な感じがしたが、結果的にこれはあまり効果的ではなかった。大黒の駆け引きするスペースにドウグラス目がけてロングボールを入れるもんだから、攻撃の組み立ては雑に。さらに立て続けに三平和司を入れて工藤浩平を中盤の底に下げたことで組み立てが長距離パス主体になり、攻撃の不格好さは際だった。
 それでも攻撃の姿勢を崩さなかったことに価値があった。内野・バヤリッツァは失点を恐れず高いラインを保つ。そこを衝かれて岡山に決定機を作られても致し方ないと割り切っていた。今までリスクを懸けることを極端に嫌っていた川勝サンガはリスクを抱えながらも虚仮の一念で不格好な攻撃を継続。たまらず岡山は自陣に引いたが、引きながらもカウンターを繰り出し、片山瑛一に2度3度と大きな決定機が訪れたり。
 そういうビビって怯みそうな展開でも京都は最終ラインを馬鹿みたいに高く保ち、どんな形でも良いから岡山ゴールへと迫った。同点弾は伊藤が奪ったCKから。一旦跳ね返されても工藤がとにかく中へと放り込み、三平が競って、大黒が決めた。守勢に回った岡山が逃げ切れるほど、サッカーは甘くなかった。

■劇的逆転ゴール
 アディショナルタイムの劇的逆転ゴールもやはりCKから。その前のCKを奪ったプレーは今季屈指のスピード感だった。石櫃がクリアしたボールを中盤で駒井が身体を上手く使って収めると、横谷との瞬間的なパス交換から前線を走る三平へ。三平がダイレクトで落としたボールは、駆け上がってきた伊藤がそのまま速いクロスへと変換し、三平が身体を投げ出すダイビングヘッド。これを岡山GK中林洋次が神がかり的なスーパーセーブで弾き出す。この一連のプレーには今年なかなか見ることのできなかった疾走感とスムーズな連携があり「奪い取る!攻め落とす!」という強い意志と、そのためのイメージの共有に満ちたものだった。それを左手一本で止めた中林も素晴らしい。ボールには絡まなかったが、一番前まで攻め上がっていた工藤も動きも秀逸だった。
 決着はそのプレーのCKから。この日終始競り勝っていたドウグラスが頭で落としたところを、獲物を狙って感覚を研ぎ澄ませていた大黒がゲット。このゲームで見せ続けてくれた青臭いまでの攻撃的な姿勢、気迫、リスクを恐れない勇気が、もう何試合か早く出せたならば、と思う。バランスを取りながら相手のミスを待つ安全運転で微笑むほど勝利の女神はお人好しじゃない。いずれにしろ、追いかける者は攻めるしかない。天運に見放されるまでは。


〈京右衛門的採点〉
オ  6.5 …2失点とも止めるのは難しい。クロスへの安定感があり、高いラインの裏もよくカバー。
石櫃 6.0 …とにかくクロスを上げ続ける。田所+押谷に負け気味だったが、どうにか奮闘。
内野 6.5 …高い位置で奪う、止める守備で一歩も退かず。細かいミスは帳消しにできる働き。
バヤリッツァ 6.5 …極端なまでに前で奪う守備を貫徹。裏は空けても長い足で何度もカット。
福村 6.0 …前への意識が先制点を生んだ。高い戦術眼を見せていたが、甘いクリアが失点に。
田中 5.5 …自重気味で動きは少なく穴は開けなかったが、凡ミスでのロストが目立った。
駒井 6.5 …CBのカバーからラストパス、敵陣での仕掛けまで攻守に大車輪の働き。挑む勇気はミスより尊し。
ドウグラス 6.5 …圧倒的な強さで制空権を握り、存在自体が脅威に。いびつな布陣で消えかけたが、最後に大仕事。
工藤 6.5 …運動量豊富なフリーランで攻撃の起点に。中盤の底に下がってもカバーにパスに存在感。
山瀬 6.0 …福村・工藤との連携でいい抜け出しを見せる。攻守に出来は悪くなく、交代は戦術的なもの。
大黒 7.0 …集中マークに遭って好機をモノにできなかったが、最後にわずかな隙を狙い撃つ2発。
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伊藤 6.0 …割と無理目のドリブルを仕掛けつつ、CKをたくさん奪う。CK奪った三平へのクロスは絶妙。
三平 6.5 …中に入って競るプレーを続け、1アシスト+逆転弾を生むダイビングヘッド。いい捨て石ぶり。
横谷 ――
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川勝監督 6.5 …終始攻勢を続けブレずに90分戦い通す。なりふり構わぬ布陣変更も、今までと別人のよう。