二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2013 J2第6節 京都vs徳島

2013-03-31 | 蹴球

京都サンガF.C.●1-2○徳島ヴォルティス
          26'柴崎晃誠
          51'津田知宏
90+2'原一樹(p)

■負の連鎖
「富山戦は(内容は)悪くはなかった。大きくかじを取り直すことはないわけで、修正するところは修正すればいい」大木監督が何をどう評価したのかわからないが、敗戦した前節からスタメン変わらず。ところが始まってみれば、徳島の早い出足に圧倒されてしまう有り様。何度か徳島のカウンターパンチを浴びるうち、気がつけば中山博貴がジリジリと下がっていた。
 いい時の京都ならば、相手ボールホルダーに何人かで駆け寄って囲んでしまう「網」が作れるのだが、今日はまるで穴の開いた網だった。走れていなかったから囲めなかったのか、それとも中山博貴のように後ろのケアに意識が行きがちだったからなのか、ともかくも網に穴が開いてしまった。上手く囲めない→そこを徳島に狙われる→奪われる→逆襲を浴びる→意識がまた後ろに向く…というスパイラル。
 京都のサッカーは良い意味でも悪い意味でも攻守が裏表一体なので、当然攻撃面も負の連鎖がつながっていく。ボールを持っても受ける人が近くにいない→仕方ないから前に蹴る→可能性低い→つながってもフォローがいない→前で孤立、つぶれる…。このあたりの「歯車の回らなさ」は監督が評価したという富山戦よりも随分悪化してたように見えた。

■劣勢を挽回するためには?
 さて、劣勢に立たされた軍勢はいかにして挽回すればよいのだろうか。味方のピンチを見るや一騎当千の武将が颯爽と敵陣深くに斬り込み、鬼神のように槍を振り回し…そんな三国志のような展開が待っているのならば、きっとスカッと胸はすくだろう。だが現実はそんなに甘くない。現実的ではないが、劣勢を挽回するために必要なのは「攻撃の駒」であることは真であると思う。これはサッカーにもあてはまる。
 褒める部分は極めて少なかったゲームではあるが、ポジティブに捉えたいのは途中投入の選手たち。まず横谷繁は高い位置での前向きの基点になった。それまで中山・秋本・工藤浩平のバランスが悪く、低い位置から攻撃を組み立てざるを得なくなってていた状況だったところに、もうひとつ基点ができた。そして三平和司は、レシーバーとしてボールをしっかり収め、斬り込み隊長として鋭く、一気に流れを変えてくれそうな存在感だった。若武者・久保裕也の何が何でも崩さんとする強気な姿勢も悪くなかった。だからこそ口惜しいのだ。一騎当千とはまではいかないが、十分に相手に脅威を与えられる前線の手駒があるにもかかわらず、戦力を上手く運用できていないのは采配ミスと取られても仕方ないこと。敗戦の中で見えた一筋の希望を糧として、今日ガッカリさせた観衆に報うことが総大将の責務だろう。我々は貴重な負けの中から学んでほしいと思う。「悪くなかった」などと言って立ち止まってほしくはない。我々観衆が見放す前に、変わり続けていってほしいのだ。


〈京右衛門的採点〉
 オ 5.5 …2失点は個人ではどうしようもないが、いい所もなし。
安藤 5.0 …奪うつもりが奪われる局面が目立ち、フィードも正確さを欠いた。
染谷 4.5 …2失点目に繋がる致命的なミス。相手の飛び出しへのケアも後手を踏む。
酒井 5.0 …速く激しい寄せを見せていたが、失点につながる連携ミス。
福村 4.5 …相手に抜かれる、相手を離す場面が多く、不安定な要因に。
秋本 5.0 …ふらふらと前に上がるが、攻守に中途半端。プレスも甘かった。
中山 4.5 …意識が後ろ向きだったことで、全体のバランスも下げてしまった。
工藤 5.0 …低い位置からの無理目なパス、判断の遅さが目に付く。
駒井 5.0 …空回り気味。突破は単発攻撃で、成功率も低かった。パスも雑。
宮吉 5.0 …とにかく何もできなかった。つまりいいボールを引き出せなかった。
 原 5.0 …ポストをさせても怖さゼロ。懸命に走ったことが、逆に歯車を狂わせた。
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横谷 6.0 …前にボールを運ぼうという意図を表現できていた。突破も○。
久保 5.5 …ゴールへの意識は強く、身体も張れていたが、シュートまで持ち込めず。
三平 6.0 …ボールを収める部分、仕掛けの部分ともにキレ味あり。良い出来。
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大木監督 4.5 …負けた前節からの「維持」で臨んでいい所なし。一番悪いパターン。



2013 J2第5節 富山vs京都

2013-03-24 | 蹴球

カターレ富山○1-0●京都サンガF.C.
86'ソヨンドク

■安間スカウター
 大木武と安間貴義という師弟対決。共通点はいろいろあるが、人数をかけてボールにアプローチし、奪えば時間をかけずに展開していくという「攻守の切り替え」が一番似ている部分だろうか。この試合、切り替えが速かったのは富山。奪い取れば2、3度ボールを繋いでソヨンドクや朝日大輔が追い越していく。決定的なピンチに至ったのは、後半の55分の朝日の抜け出し。ここはオスンフンが防いで事なきを得たが、同じような形で86分左サイドをソヨンドクに抜けられて、失点を喫してしまう。
 一方の京都は、ボールを奪ってからの展開に迫力がなかった。前線の原一樹に預けたり、宮吉拓実の機動力を生かしたり、いろいろな狙いを試みるも、最後の場面は舩津徹也を中心とする富山守備陣が自由にさせてもらえない。また、京都における「隠れた攻撃の駒」ともいえる安藤淳、福村貴幸へのチェックも激しく、両翼も思うように上がれない。それもこれも、かつて大木監督の下でスカウティングを担当していた安間監督の真骨頂だ。師である大木監督は、そのことをわかっていても正面から受けて立たざるをえない。師の意地として、正々堂々と攻撃を封じられてしまったのだ。

■ダイナミックバージョンへ
 京都の攻撃が散発的で迫力を欠いたのは、もちろん相手のせいだけではない。ひとつ象徴的なのが、この日怪我から復帰を果たした中山博貴。よくボールに絡み、運動量も問題なかったが、彼が“怖さ”を見せたのは工藤浩平のインターセプトに呼応してゴール前に入り、追い越していく工藤に出した35分のシーンだけだった。中山のところでボールは落ち着くのだが、ショートパスが多く、これまで4戦と比べると格段に攻撃のスピード感が失われていた。それはまるで、去年中村充孝が不調だった時の京都サンガ2012バージョン。中山もダイナミックな展開を試みる2013年最新バージョンへとアップデートされてほしいところだが、やはり貴重な勝ち点がかかる試合、中盤のテコ入れが遅きに失した感は否めない。2012バージョンからは単調な回しをブレイクする長いパスや仕掛け、フリーランが追加されている。我々はそれが見たいのだ。相手に粘り強く守られた末の敗戦を糧として、より「見てて楽しい」2013バージョンへ進化してもらわねばならない。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.0 …安定感もあり、1点モノのピンチを防ぐなど活躍。
安藤 5.5 …ソヨンドクらに手を焼き、思い切りのいい攻め上がりもできず。
染谷 6.0 …大きなミスもなく、いいカットや潰しも多かった。安定感あり。
酒井 5.0 …前半はいい出来だったが、失点シーンのポジショニングは中途半端。慌てぶり目立つ。
福村 5.0 …朝日に2度独走突破を許し、失点に繋がった。前でのいい奪いもあっただけに残念。
秋本 5.5 …ボールに対してはよく跳ね返していたが、人を掴まえきれなかった部分も。
中山 5.0 …ボールによく絡んでいたが、パスの距離が短く、テンポを悪くした。
工藤 5.5 …パスカットからのスルーパスなど、常に狙っていたが、動きは重かった。
駒井 5.0 …フリーマンとして機を見て仕掛けたが、チャレンジは成功せず。
宮吉 5.5 …裏狙いや裏で受ける動きの質は良かったが、打開する一撃を繰り出せず。
 原 5.5 …味方に使ってもらう場面では鋭さを見せたが、プレスキック含めキック精度悪。
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三平 5.5 …前線固定では持ち味出せず。裏抜けの一撃は無常のオフサイド。
久保 5.5 …強引な突破や前線への突進など、短いながら局面を打開しようとした。
横谷 ――
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大木監督 5.0 …中盤の構成は2012年ver。前へ遅く、攻撃に怖さがなかった。



2013 J2第4節 京都vs神戸

2013-03-20 | 蹴球

京都サンガF.C.○4-1●ヴィッセル神戸
2'バヤリッツァ
22'原一樹
          45'吉田孝行
52'宮吉拓実
65'原一樹

■サプライズ発動
 「観戦してる人が“エッ?すごいことしよったなー、そういう解決方法もあるや…”というのがサッカーの素晴らしさ。」「想像してないことがピッチの中で起こるのが魅力」、これはサポーターズミーティングで京都サンガの祖母井GMが語った言葉である(詳しくはこちら)。J2屈指の強豪・神戸を相手に回し、なんと京都はこの試合で4得点を挙げた。そのうち2つが、「そういう解決方法もあるんやー」っと観客を驚かせた得点なのであった。
 バヤリッツァが原一樹のCKに見事に合わせた先制パンチは、サプライズではない。2得点目もサプライズではなく、むしろ「これぞ大木サッカー!」を体現したゴールだった。左サイド高い位置で福村貴幸がボールを奪うと、すぐに中に入れ、原がテクニカルに決めてみせたこのゴールは、まさに奪った瞬間から攻撃が始まっるという電光石火なゴール。守→攻の切り替えの早さを象徴した一撃といえるだろう。
 神戸にはエステバンという要塞がいた。後半、そのエステバンの猛烈なプレスを受けた安藤淳が、見せたのは、ヒールパス。「あっ」と驚くべき局面打開の末、駒井善成が抜け出して前へと飛び出す三平和司にスルーパス。三平が折り返して宮吉拓実が3点目を決めるまでの一連の流れは、まさにサプライズだった。4点目もサプライズ。バヤリッツァの前へのフィードがラインアウトしたかに思えたところを諦めず追いすがり、敵陣に単騎突入して原の2得点目をお膳立てした宮吉の走りがサプライズ。今年の京都「驚き」がある。


■主導権
 ゲーム全体を見れば、決して京都が主導権を握り続けた訳でない。相手をハーフコートに追い込むような京都の時間帯もあれば、神戸が中盤を制圧して主導権を握る時間帯もあった。攻める・守るでハッキリ分離される訳ではなく、攻→守/守→攻がまるで血の通う生き物のようにヌルヌルと入れ替わっていく展開は、時間の経つのも忘れてしまうほどに見る者をのめり込ませてくれる。エステバンが要塞となる時間帯は、神戸の主導権だった。だが、相手に主導権を握られた時に京都はよく守ったことと、逆に前出の3点目、4点目のように神戸の主導権を握られている局面から一気に逆襲して得点を奪うことができたこと、この2点が京都と神戸の明暗を分けた。注目の要塞・エステバンだが、京都のハイプレスが機能している時は、いまひとつ能力を発揮しきれていなかったようにも見えた。
 それでも神戸はやはり「強靱」なチームだった。そして京都は「しなやか」。まるで弁慶と牛若丸の対決を見ているようで、やはり今年のJ2はこの牛若丸と弁慶が引っ張っていくことになるのだろう、と感じずにはいられない大一番だった。


■参考までに
 後半からの布陣が随分といい感じだったので、フォーメーション図を。

 最初からこの布陣でやっても面白いとぞ思う。原・三平の攻撃力を両立させようとすれば、これしかない。宮吉と駒井は入れ替えてもいける。いろんなオプションがあるに越したことはない。


〈京右衛門的採点〉
 オ 7.0 …広い守備範囲と好セーブ連発で神戸の反撃を阻む。
安藤 6.5 …粘り強く、局面を前への意識で切り抜け、ゲームを組み立てた。
染谷 6.0 …前で奪い取る守備がよく決まる。ポポにはルックアップの隙を狙われていた。
バヤリッツァ 7.5 …CKを決め、ボールをことごとく跳ね返し、前に突進。鬼神。
福村 6.5 …2得点目のアシストは大木サッカーの理想型。粘り強い守備が光る。
秋本 6.0 …敵の狙いを読みよく効いていたが、リスタートからのミスが残念。
工藤 6.5 …前半はやや高めの位置で操り、後半も絶妙の配球でチャンスの素に。
横谷 5.5 …ポジショニングは抜群に良かったが、パスが合わない場面が多かった。
駒井 6.5 …攻守にチャレンジの姿勢が◎。特に後半のプレスがチームを助けた。
 原 7.0 …相手を引っ張り出す動きでDFを攪乱。2ゴールはさすがのシュート精度。
宮吉 7.5 …縦横無尽に動き、攻守に活躍。ゴールもアシストも、プレスも、全部○。
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三平 6.5 …慣れ親しんだ右ワイドを何度も突破。愚直な動き直しの賜物。
酒井 6.5 …途中から入っても危なげなく、いいカットを見せるなど問題なし。
田森 6.0 …シンプルで落ち着いたプレーを披露。短い時間でも安定感があった。
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大木監督 7.0 …リードしつつも三平を投入し、勝ちきる試合を遂行。会心のゲーム。






2013 J2第3節 福岡vs京都

2013-03-17 | 蹴球

アビスパ福岡●1-2○京都サンガF.C.
19'石津大介
         45'駒井善成
         90+1'三平和司

■人心を掴む指揮官
 まず、アビスパ福岡を賞賛せねばならない。この試合の前半は、完全に福岡のゲームだった。特に優れていたのはサイドを攻める時、さらに大外から誰かが走り込んで京都の守備網を無力化した動き。いわば囮のように大外を周り込む無駄走りは、中央突破をかけられた時には大きなリスクになるにも関わらず、福岡の選手たちに迷いはなかった。京都の左サイド・駒井善成―福村貴幸のラインがこれに手こずり、最初の得点も左を豪快に突破されて折り返された末の失点。今年の福岡が「迷いなく」やっているのは新指揮官、マリヤン・プシュニクの手腕だろう。指示を受ける側が指示を出す側を完全に信頼していて、「この人の言う通りやっていれば、間違いはない」そういう覚悟を植え付けている。そして、がっちりと人心を掴んでいる。プシュニクは京都の強みをパスを繋ぐ点ではなく、囲んで奪うという点だというところまで見抜いていた。そのためのボールの動かし方や大外に人を走り込ませるフリーランのやり方までオーガナイズしていた。一方の京都も原一樹を中心に、何とか攻めの糸口を開こうとするも、細かいミスを連発。前半終了間際には福岡のスローインから駒井が処理を単純ミスして相手にボールを献上し、そこからバヤリッツァがあっさり躱されてクロスを入れられるという万事休すな状況に。相手のミスキックで助かった直後に、駒井の卓越した個人技による同点弾が生まれるのだから、サッカーはわからない。

■奪う人、現る
 福岡に初手を奪われっぱなしだった前半を受け、後半、大木監督が施した修正は適切だった。プレスの位置や網のかけ方の連動を再確認し、高い位置からプレスをかけていくことで、目に見えて中盤の運動量が増えた。特に工藤浩平と横谷繁の動きが「前」を意識しはじめる。ところが工藤のスルーパスから抜け出した原が堤俊輔に倒され、堤一発退場という「事件」がまた流れを複雑にしてしまう。数的不利に陥った福岡は、当然「チャレンジ」よりも「守備を固める」方にシフト。数的優位になることで、京都はまたまた苦手な命題 ~固めた相手を崩すという~ を突きつけられた。大木監督が切ったカードは宮吉拓実、そしてサヌ。相手を押し込み、ときに肝を冷されるようなカウンターを浴びる展開の中にあって、依然として前への推進力になったのは2枚のFWではなく、横谷と工藤、そして安藤淳だっただろうか。福岡の堅陣の前に、なかなか最前線に基点を築けなかったのだ。
 87分に入った三平和司は、それはもう決勝点を奪うために切られたカードだった。「浩平さんがボール持った時に動こうと…」していたという三平。中盤から出てくるボールをゴールに入れるというシンプルな大仕事の背景には、やはり人と人との信頼関係がある。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.0 …前への飛び出しでピンチを救うプレーが目立つ。
安藤 6.0 …右サイドを完全に京都のサイドにしたが、2度の得点機を逸した。
染谷 5.5 …いい対応を見せていたが、パスミスなども多かった。
バヤリッツァ 5.0 …強さと脆さ両面。あわやPK献上なヒヤヒヤな対応もあった。
福村 5.5 …左サイドを上手く使われ、相手の後手を踏む場面が多かった。
秋本 5.5 …攻守ともにポジショニングが中途半端、一歩遅れ気味。
工藤 6.0 …前半は存在感なし。後半、狙いすましたスルー2本で勝負を決める仕事。
横谷 5.5 …よくボールに絡んだが、怖さを発揮できず。後半中央に入って存在感が出た。
駒井 6.0 …ミスが目立ち全体としては不出来だったが、超絶技巧同点弾は値千金。
 原 6.0 …ボールサイドに顔を出し、いい狙いを続けたが、機能したかどうかは疑問。
久保 5.5 …シュートに貪欲だったが、細かいミスを連発。原とのコンビもあまり良くない。
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宮吉 5.5 …横谷が追い越しやすいスペースを作るなど、地味な働きは評価。
サヌ 4.5 …ほとんど何もできず。ボールを受けてからの判断も遅い。
三平 6.5 …ワンチャンスを泥臭く決め決勝点。宮吉と組むと、前線の自在性が増す。
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大木監督 5.5 …前半は不出来。後半の修正対応と最後に切ったカードが運を呼び込んだ。








2013 J2第2節 京都vs東京V

2013-03-11 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△東京ヴェルディ

■長槍装備
 今年も時々歴史ネタを放り込んでいきます。織田信長の軍勢が強かった一因に、「長槍」という武器がある。実はこれが信長史上最大の戦術的革命という見方もあるほどで、相手よりも槍が長いという単純明快な一点において、戦いの局面を有利にしたのである。ズバッと相手の喉元を突く長槍は、スルーパスだ。それはなるべく速く、鋭い一撃でないとならない。
 昨年とにかく白兵接近戦を得意とした京都は、この長槍スルーパスが欠けていた。ところがこの日の前半は、とにかくもう長槍攻勢だったのである。主に中村祐哉をレシーバーとして、安藤淳や工藤浩平から繰り出される長槍攻撃の連続。中村や宮吉拓実は、常に長槍を繰り出すタイミングを狙っている。さらに通したスルーパスからシュートまで迷いがない。奪ってからフィニッシュまでのスピードが速い“長槍”が加わることで、攻撃のバリエーションは格段に増えた。こうして長短織り交ぜながら、東京ヴェルディを圧倒。ついに念願の長槍を装備した2013大木サンガ。新しい武器はこれだけではなかった。

■ツインエンジン
 攻撃の組み立て役という存在がいる。もう少し具体的に言えば、ボールを受け次に繋げていく役目。ただ単に繋げるだけでなく、その先をどうしたいか?という意図を込める。それによって攻撃が組み立てられてゆく。組み立て役を経由すると、一つのイメージがピピピッと電流が走るような、そんな存在。
 京都においてその役目を担うのは工藤だろう。それが、もう一人現れた。山瀬功治?違う。山瀬はどちらかといえば組み立て役よりもっと積極的にフィニッシュまで絡んでいくアタッカーな印象。新しい組み立て役はこの日京都デビューとなった横谷繁だ。彼はボールをに絡めば適切にマイボールとして収め、その瞬間に次の選択肢がひらめくようだ。前線を走らせるか、相手をいなすか、自ら仕掛けるか…。後半に山瀬が退くとその役目がより明確になり、まるで工藤とのツインエンジンのようにゲームを組み立て、それはもうゲームを完全に支配していくのである。

 こうしてゲームとしては京都が「制圧」していたのだが、最後に決め切ることだけができなかった。別にヴェルディがドン引きした訳ではないが、寄せの激しさはさすがに三浦泰年のチームという感じで、去年完敗したAway北九州戦のように身体目掛けての当たりを挑み続けてきた。京都もそれに怯むことはなかったことは大きく評価したいが、決めるべきチャンスも何度かあった。2戦連続で内容は良くて結果は良くなかったということで、その点をポジティブに捉えておきたい。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.5 …守備機会も少なかったがパーフェクト。リスタートのキックも速くて正確。
安藤 6.5 …終盤になるにつれ運動量で相手を圧倒。ピンチの芽を摘みチャンスを作り続けた。
染谷 6.0 …やや不安定な面もあったが高原常盤をよく抑え、ズバッと通す長いフィードも。
酒井 6.5 …素早いカバーリングが冴え、相手の抜け出しにもよく対応した。
福村 5.5 …攻守に健闘したが、前半森に左サイドを使われる場面も目立つ。
秋本 6.5 …ピンチになる前にことごとく相手の攻撃を潰していった。完封の立役者。
工藤 6.5 …チェイシングが冴え、局面を切り替える配球も、フリーランも効果的。
山瀬 5.5 …バランスよく球を捌いていたが、負傷の影響か、突破する場面は少なかった。
横谷 6.5 …前半は黒子役、後半は攻守の大車輪。ミスが少なく、キープ力もあったマエストロ。
宮吉 5.5 …前線で基点になりチャンスメイクはするも、決定的な仕事が不足。
中村 6.0 …卓越した技術と裏狙いで貪欲にゴールに迫った。ゆえに相手の寄せも厳しくなる。
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駒井 5.5 …積極的な姿勢もあり、よくチャンスに絡んだが、チャンスも逸した。
久保 5.5 …ひたすらゴールを目指す姿勢や良し。なれども決めるべき決定機はあった。
 原 5.5 …相変わらずの嗅覚で短い時間で多くのチャンスに絡むも、決めきれず。
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大木監督 5.5 …ゲームプランは完璧だったが、試合を決めるカードは切れなかった。