京都サンガF.C.●1-2○徳島ヴォルティス
26'柴崎晃誠
51'津田知宏
90+2'原一樹(p)
■負の連鎖
「富山戦は(内容は)悪くはなかった。大きくかじを取り直すことはないわけで、修正するところは修正すればいい」大木監督が何をどう評価したのかわからないが、敗戦した前節からスタメン変わらず。ところが始まってみれば、徳島の早い出足に圧倒されてしまう有り様。何度か徳島のカウンターパンチを浴びるうち、気がつけば中山博貴がジリジリと下がっていた。
いい時の京都ならば、相手ボールホルダーに何人かで駆け寄って囲んでしまう「網」が作れるのだが、今日はまるで穴の開いた網だった。走れていなかったから囲めなかったのか、それとも中山博貴のように後ろのケアに意識が行きがちだったからなのか、ともかくも網に穴が開いてしまった。上手く囲めない→そこを徳島に狙われる→奪われる→逆襲を浴びる→意識がまた後ろに向く…というスパイラル。
京都のサッカーは良い意味でも悪い意味でも攻守が裏表一体なので、当然攻撃面も負の連鎖がつながっていく。ボールを持っても受ける人が近くにいない→仕方ないから前に蹴る→可能性低い→つながってもフォローがいない→前で孤立、つぶれる…。このあたりの「歯車の回らなさ」は監督が評価したという富山戦よりも随分悪化してたように見えた。
■劣勢を挽回するためには?
さて、劣勢に立たされた軍勢はいかにして挽回すればよいのだろうか。味方のピンチを見るや一騎当千の武将が颯爽と敵陣深くに斬り込み、鬼神のように槍を振り回し…そんな三国志のような展開が待っているのならば、きっとスカッと胸はすくだろう。だが現実はそんなに甘くない。現実的ではないが、劣勢を挽回するために必要なのは「攻撃の駒」であることは真であると思う。これはサッカーにもあてはまる。
褒める部分は極めて少なかったゲームではあるが、ポジティブに捉えたいのは途中投入の選手たち。まず横谷繁は高い位置での前向きの基点になった。それまで中山・秋本・工藤浩平のバランスが悪く、低い位置から攻撃を組み立てざるを得なくなってていた状況だったところに、もうひとつ基点ができた。そして三平和司は、レシーバーとしてボールをしっかり収め、斬り込み隊長として鋭く、一気に流れを変えてくれそうな存在感だった。若武者・久保裕也の何が何でも崩さんとする強気な姿勢も悪くなかった。だからこそ口惜しいのだ。一騎当千とはまではいかないが、十分に相手に脅威を与えられる前線の手駒があるにもかかわらず、戦力を上手く運用できていないのは采配ミスと取られても仕方ないこと。敗戦の中で見えた一筋の希望を糧として、今日ガッカリさせた観衆に報うことが総大将の責務だろう。我々は貴重な負けの中から学んでほしいと思う。「悪くなかった」などと言って立ち止まってほしくはない。我々観衆が見放す前に、変わり続けていってほしいのだ。
〈京右衛門的採点〉
オ 5.5 …2失点は個人ではどうしようもないが、いい所もなし。
安藤 5.0 …奪うつもりが奪われる局面が目立ち、フィードも正確さを欠いた。
染谷 4.5 …2失点目に繋がる致命的なミス。相手の飛び出しへのケアも後手を踏む。
酒井 5.0 …速く激しい寄せを見せていたが、失点につながる連携ミス。
福村 4.5 …相手に抜かれる、相手を離す場面が多く、不安定な要因に。
秋本 5.0 …ふらふらと前に上がるが、攻守に中途半端。プレスも甘かった。
中山 4.5 …意識が後ろ向きだったことで、全体のバランスも下げてしまった。
工藤 5.0 …低い位置からの無理目なパス、判断の遅さが目に付く。
駒井 5.0 …空回り気味。突破は単発攻撃で、成功率も低かった。パスも雑。
宮吉 5.0 …とにかく何もできなかった。つまりいいボールを引き出せなかった。
原 5.0 …ポストをさせても怖さゼロ。懸命に走ったことが、逆に歯車を狂わせた。
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横谷 6.0 …前にボールを運ぼうという意図を表現できていた。突破も○。
久保 5.5 …ゴールへの意識は強く、身体も張れていたが、シュートまで持ち込めず。
三平 6.0 …ボールを収める部分、仕掛けの部分ともにキレ味あり。良い出来。
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大木監督 4.5 …負けた前節からの「維持」で臨んでいい所なし。一番悪いパターン。