二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2015明治安田生命J2リーグ第38節 京都vs大宮

2015-10-26 | 蹴球

京都サンガF.C.△2-2△大宮アルディージャ
8'山瀬功治
(↑駒井善成)
           26'ムルジャ
           (↑カルリーニョス)
55'伊藤優汰
(↑宮吉拓実)
           65' 家長昭博
           (↑CK渡邉大剛)


[警告・退場]
・京都
37'金南一(C1)
・大宮
37'河本裕之(C1)


【全体の印象】
 序盤は大宮優勢だったが、京都がCKの流れから決めて先制。その後も5連続CKなどセットプレーから大宮ゴールに迫ったが、サイドでは泉澤に裏を衝かれ続けており、最終ラインの一瞬の綻びを衝いて裏に抜けたムルジャに豪快な一撃を決められた。後半は終始京都が圧倒。最終ラインを高く保ち、ハイプレス&パスワークで主導権を握り続けたが、得点は伊藤のゴールのみ。大黒投入後はラストパスが雑になり、的の幅が狭まったのは残念。CKからの失点は、クリアがヒットせずに与えたもので、流れてきたボールをうまく掻き出せなかった。全体としては非常に勇敢でアグレッシブ、ハイテンションな戦いぶりだった。


【雑感】
■大宮の加速
 激戦地。もしこの一戦が合戦であるならば、記念碑が建てられるのは間違いなくサイド、大宮の左・泉澤と京都の右・伊藤石櫃のバトル地点だろう。前半、大宮は泉澤のスピードを生かし、そこを突破口に攻撃を仕掛けてくる。対応する石櫃も走力全開で食い下がったが、さすがに分が悪く、狙い通りの“泉澤加速!裏抜け”が炸裂。京都も菅沼が現場に急行。好守互いに機動力をぶつけ合ったサイド~最終ラインのバトルは見応えがあった。
 基本的に高いラインを保ち、裏抜けをオフサイドで封じたかった京都だが、失点シーンは泉澤、そしてワンテンポ遅れて加速してきたムルジャという2段階の飛び出しに対応しきれなかった格好。大宮の加速を警戒し、最終ラインが下がり気味になると、ボランチの後に危険なスペースが生まれてしまう。前半の終盤、その位置を献身的に埋めたのは、この日インサイドハーフで起用されていた駒井善成だった。

■心臓と肺
 後半、京都は陣形は変えていないが、駒井はより高い位置にいた。菅沼とバヤリッツァが強気のラインコントロールでラインを押し上げたため、ボールの奪いとごろも前へ、駒井のポジションも前へ。チーム全体の意識が前を向きはじめ、全ての臓器が活性化したかのように、攻めも守りも能動的になった。
 右サイドでは前半やられ気味だった泉澤を押し込めるようになり、逆サイドは下畠が基点を作りつつ宮吉が積極果敢に敵陣を衝けるようになった。最終ラインからの長いパスが入れば有田が収めにかかるし、たとえ奪われてもハイプレスで回収→反転攻勢…と大宮に攻め手を与えない。活性化したチームの中心にいた“心臓”は、あらゆる局面・球際でアグレッシブだった駒井。そして優れた戦術眼で周囲のプレーの選択肢を増やしていった山瀬は“肺”のようにチーム全体の呼吸を促した。
 ハイプレス、切り替えの速さ、パス回しのコンビネーション、人の流動性、最後尾からのビルドアップ、前での基点のつくり方、サイドからの仕掛け…などなど、首位相手に自分たちの狙いを体現できたこの後半の出来は、今後目指すべき方向性を示している。目先の勝ち点も大事だが、近視眼的になりすぎて見失っていたものを取り戻すきっかけとなりうる一戦だった。(ただし、交代策には改善の余地あり)


2015明治安田生命J2リーグ第37節 横浜FCvs京都

2015-10-19 | 蹴球

横浜FC△0-0△京都サンガF.C.


[警告・退場]
・横浜FC
36'永田拓也(C1)
71'野村直輝(C1)
・京都
77'駒井善成(C1)
79'清水圭介(C1)

【全体の印象】
 前半、京都がボールも陣地も制圧。コンパクトな陣形を布いた京都は、両サイド、中央いずれの局面でも能動的なプレスが機能。前線には攻撃陣が入れ替わり立ち替わり侵入し、横浜の牙城に迫ったが、シュート精度を欠いた。後半、大黒を投入後は攻撃パターンが読まれるようになり、互いにプレー精度を欠いたまま膠着。終わってみれば、両者ともゴール前でミスを重ねてチャンスを潰したスコアレスとなった。

【雑感】
■たくさんの△
 △を8つ重ねたことに注目が集まりがちだが、実はゲームの中にもたくさんの△があった。左サイドには駒井-下畠-原川の三角形、右サイドには伊藤-石櫃-山瀬の三角形、中央には山瀬-原川-金南一の三角形…。前半、京都はあらゆる局面で素早くトライアングルを作り、網を狭めるようにボールを絡め取っていく。奪えば三角形を変形させながらパスを繋ぎボールを前に運ぶ。とりわけ山瀬の動きは好守をつなぐ潤滑油のようで、スムーズな連携から守→攻の素早く切り替えて横浜を圧倒。サイドバックの上がり方も最終ラインコントロールも相当強気だったが、縦を圧縮して陣形をコンパクトに保たねば、この戦術は成立しない。

■ポジティブな失敗
 1トップで起用された宮吉は、三角形の頂点にいることは少なく、柔軟に左右に流れたり、下りてきたり。宮吉の“目立たないことに意味がある”動きは、伊藤や駒井、山瀬、原川が次々に飛び込むスペースを生んだ。どこか大木監督時代を思い出すような“人もボールもよく動くサッカー”。前半の京都は決定機をたくさん作り、同時に技術的なミスもたくさん露呈したが、それは挑んだからこそ起こるポジティブな失敗と割り切りたい。
 後半、決定不足に痺れを切らして大黒を投入したが、宮吉がいた時はみんなで使えていたスペースに蓋をしてしまう格好となり、人の動きもパスコースも激減。予想通り“ボールだけが動くサッカー”になった。それでも好機をモノにさえすればアタリ采配だったのだが、残念ながらビッグチャンスを潰して尻つぼみ。前半の戦術を継続しつつ、1枚目のカードで有田投入で収まり所を構築、という選択肢が見てみたかった。




第95回天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦[71]川崎vs京都

2015-10-15 | 蹴球

川崎フロンターレ○3-0●京都サンガF.C.
22'大久保嘉人
(↑田坂祐介)
82'小宮山尊信
(↑中村憲剛)
90+1'杉本健勇
(↑中野嘉大)


[警告・退場]
・川崎
63'中村憲剛(C1)
・京都
31'菅沼駿哉(C4)
56'磐瀬剛(C2)
59'内田恭兵(C1)


【全体の印象】
 序盤から京都はハイプレスを仕掛け、速い攻撃を繰り出してペースを掴む。次第に川崎が圧力を増すと、ミスを起点に速攻を浴びあっけなく失点。その後は川崎の正確なで長いパス回しに陣形を広げられ、プレスもハマらなくなった。何度も中村憲剛や大島僚太に鋭いラストパスが繰り出されたが、菅沼を中心にどうにか耐えた。攻撃面はチャンスも作れそうだったが微妙なズレやミスが多く、川崎ゴールは脅かせず。菅沼が治療のため不在にしていた隙を衝かれて2点目を決められて勝負あり。格上相手に多少怖じ気づく時間帯もあったが、トータルでみれば勇敢な戦いぶりだった。


【雑感】
■よい兆候
 リーグ戦で思うような結果が出ず、残留争いへの全力参戦を余儀なくされた状況での、ミッドウイークの天皇杯。どう位置づけるか非常に難しいゲームとなったが、結果的には、前節から清水、菅沼、宮吉以外を代えて臨み、力差を見せ付けられて完敗。ただしJ1上位をうかがう格上相手に対して、MF佐々木やDF菅沼、磐瀬など、チャレンジャーズスピリットを見せられたのはよい兆候。石丸体制2試合目のセレッソ戦の頃にみなぎっていた「自分たちは挑戦者だ!」という気持ちを、再びチーム全体で共有していくきっかけになればいいのだが。
 
■お手本
 とはいえ、気力だけではどうもならない力の差はあった。最も大きな差を感じたのは、「隙」を見せてしまうと、すぐに喉元に刃を突きつけられるなうなパスを通されたこと。象徴的なのは2失点目で、足が攣った菅沼が治療のためピッチの外に出た直後、田森が菅沼の位置に下がり、田森がいた位置は曖昧となっていた「隙」を見逃してはくれなかった。その一瞬を衝いて大島僚太→中村憲剛と繋がれ、ズバリ一閃ラストパス。すなわちそれが下位カテゴリーの“甘さ”なのだが、逆にそうやって隙を衝く攻撃姿勢は、いいお手本でもある。単に「力差があったから完敗した」で終わらせては成長はない。
 幕末、薩摩藩がイギリスと戦火を交え、長州藩が英仏米蘭4国連合に大敗して知った「力差」から多くのことを学び、「強い藩」へと飛躍した。敗北から何を学ぶかで、このミッドウイークの中途半端なゲームが意味あるものだったのか、それとも消耗しただけの意味のないゲームに終わるのか、変わってくる。敗戦から得る糧とは、たぶんそういうことだ。






2015明治安田生命J2リーグ第36節 京都vs岐阜

2015-10-11 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△FC岐阜


[警告・退場]
・京都
なし
・岐阜
23'野垣内俊(C1)
24'渡邉将基(C1)
84'レオミネイロ(C1)


【全体の印象】
守備優先で前に出てこない岐阜に対し、京都はボールを保持するものの、攻め手を欠く。岐阜のカウンターを警戒しすぎたのか攻撃時のオフザボールの動きは乏しく、リスクを冒さない安易な攻撃は岐阜の注文通りに封じられた。後半ジウシーニョが前に出てくると岐阜にビッグチャンスが2度訪れたが、いずれもGK清水が防ぐ。結果的にみれば残留を争う他チームも分けたためまずまずだったが、内容をみれば戦術意図が噛み合わない、極めてネガティブな引き分けだった。


【雑感】
■逆戻り
 砦をしっかり守りつつ、攻撃に出るのは難波とレオシルバの2騎だけ。将軍ラモス率いる岐阜の戦術は明確だった。引き分け上等で、隙あらば勝ち点3を持って帰ろうという現実的なアウェイの戦い方。この試合に対して設定した目標を、ほぼ全員が同じ理解の下で戦っていた。後半からもう1騎ジウシーニョを攻撃に出し、狙い通りの形で「まんまと」勝ちきる寸前まで持ち込んだ試合運びもなかなかのものだった。
 一方、京都はこの一戦をどう位置づけていたのだろうか?4-1-4-1の布陣だけみれば攻め重視のはずだが、ボールを保持しても次の一手を引き出す動き、フリーランは少なく、出し所がなく攻撃は停滞。駒井のようにアグレッシブに突破を試みた者から、金南一のように極端にリスクを警戒して攻撃を自重した者まで、意識のバラつきが目に付いた。
 全員が同じ方向を向いていないチームがどう攻めたかといえば、「駒井の単騎突破」「山瀬の遠目からのミドル」「石櫃の低精度クロス」「大黒任せ」…と、和田体制を彷彿させる個頼みサッカーに逆戻り。チームが戦術ロスに陥った時に、人を使うことに長けた原川が有効なパスコースを見つけられず、役目を失ったのがこの試合を象徴していた。


■足枷
 いい形の攻撃もあった。56分、大黒のシュートシーンに至る一連のプロセスで、原川→山瀬→駒井→原川→山瀬→原川→下畠と小気味よくつないでゴールに迫った。下畠のスルーパスを受けた大黒は角度のない所から狙って外したが、エリア中には原川がいた。大黒が周囲お構いなしなのはある意味デフォルトだが、この日は渡邉将基の徹底マークを受け、シュートは枠に飛ばす。飛び出しのタイミングも微妙に早く、精彩を欠いた。そして相手マークを背負ってボールを収められるタイプでもない。なのに大黒目がけてアバウトなボールを入れては収まらず、攻撃が途切れた。どこかで大黒を見切って有田を投入するか、または動きながら基点を作って周囲を活かせる宮吉に1トップを置き換えるべきだった。
 足枷になっているのは、大黒が流れとは関係なく一瞬で得点を奪える「アタリカード」を持っていること。ゆえに時間が経てば経つほど代えにくくなり、指揮官たちはいつか出るかもしれないアタリカードに賭けてしまう。和田前監督は進んでそういう戦術を選択したし、川勝氏もそうだった。石丸監督はそうではなく、チーム全員が走って、守って、攻める、という方針を打ち出したはずだった。やり繰りが厳しいのもわかるが、いつしか全員で戦うということの意味がズレ始め、走らずにアタリカードを待つチームに逆戻り。一旦まとまりかけていたチームは、終盤に向けて再びバラバラになりそうな危険性を孕んでいる。






2015明治安田生命J2リーグ第35節 群馬vs京都

2015-10-05 | 蹴球

ザスパクサツ群馬△1-1△京都サンガF.C.
27'江坂任
(↑CK松下裕樹)
            52'駒井善成
            (↑こぼれ)

[警告・退場]
・群馬
なし
・京都
38'菅沼駿哉(C2)
63'バヤリッツァ(C1)


【全体の印象】
前半風下に立った群馬はプレスが弱めで、次第に京都がボールを保持してペースを掴むも、ゴールを脅かせず。ピリッとしないまま群馬・カイケの突破から献上したCKをこの日キレキレだった江坂に決められ失点。後半、原川が配球役として機能しはじめると原川を起点に伊藤のクロス、大黒のヘッド、こぼれ球を駒井が決めて同点。以降、京都は伊藤らの前線からのチェイシングが効きはじめ攻撃を繰り出すも、エリア内で仕上げられず。互いに守備の緩さを露呈しつつ攻撃面ではプレー精度を欠くという、秋の下位対決にふさわしい、涼しげなゲーム内容だった。


【雑感】
■4-1-4-1は良い良い?
 今までの布陣を変え、アンカー田森の前に原川と山瀬を並べ、ワイドに駒井と伊藤を置く中盤。石丸監督は「しっかりとしたビルドアップから自分たちの狙いをもってやれていました」と語るが、群馬の圧力は終始弱く、ゆったりボールが持てたことも考慮しなければならない。序盤は布陣変更にしっくり来ない部分も目に付き、チャンスを作った主な攻撃ルートはやはり伊藤&駒井の単騎突破。時間が経つにつれ、原川から前を使おうと意識したボールが出てくるようになった。原川の攻撃センスを活かすという点では、インサイドハーフを置く4-1-4-1の布陣は“アリ”。ただしあまりに「使われる選手」だらけで、「使う選手」が原川くらいなのは気になるところ。永島が入ってからは「使う選手」が増え、攻撃の選択肢が増えた気もするが、4-1-4-1は決して良い良いづくしではない。守備面で後方(特にSB)への援護が遅れがちなのは気になる。
 いずれにしろこの程度の内容で「ゲームを組み立てられた」と言うのはさすがにおこがましい。よしんば組み立てられていたとしても、最後のフィニッシュは個頼み(=いい外国人FWを連れて来られるJ1ならよくあるやり方だが)。結局、このゲームも大黒がスーパーな一撃を決めきれていれば勝てていただろうし、そうでなければゴールは奪えない、みたいな。あれ?それって去年と同じじゃん…。