二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2011 J2第33節 京都vs湘南

2011-10-29 | 蹴球

京都サンガF.C.○1-0●湘南ベルマーレ

■パルプンテ(韓国製)
 パルプンテ。何が起こるかわからからないというドラクエの呪文。そういう「開けてびっくり」式に毎試合良かったり悪かったりする選手が、京都には結構いるのだが、最も代表的なパルプンテ野郎がチョンウヨンだと思う。プレスキック一つ取っても、鋭くゴールを襲う強烈弾があれば、明後日の方角に旅立つ宇宙開発弾もある。
 さて、今日はどうだったのかと言うと、開けてびっくり素晴らしい出来!4バックにしてから最終ラインへのカバーリングというややこしいタスクが減ったからか、この日は相手のパスコースを消しながら何度もインターセプト。本来は中盤前目の選手だけあって、ボール持てば中村充孝ばりに2タッチで相手を躱してパスを散らしたりする。この出来が毎試合出ればいいんだけれども、そこはパルプンテ。経験を積んでいくしかない。

■パルプンテ(ブラジル製)
 もう一人のパルプンテ、ドゥトラ。久保裕也がタイに行っちゃったのでスタメンで使われているが、なかなか「一発」が出ない。いわゆる“三振かホームラン”なタイプに思われがちだが、ここ2試合見る限り、攻撃のお膳立て役という割と地味な所で結構貢献はしている。サイドに流れながら中を開けて、そこに工藤浩平や中山博貴が入り込んでいくとチャンスになる。実際、今日の得点もそのパターンだった。
 昔はあんなにキレキレだったドリブルの方はさっぱり。シュートもダメ。悪い方のパルプンテ…と言いたいところだが、for the team の視点から見れば割と「計算の立つ」選手。パルプンテはダンの方に譲ることにしよう。


〈京右衛門的採点〉
水谷 7.5 …2点くらい防いだか?4連勝の立役者!
酒井 6.0 …狙われたが、3日前ほどやられなかった。前への意識も◎。
内野 6.0 …前半は田原を完封。後半、ルーカスの対応には手を焼いた。
秋本 6.5 …抜群の読みで決定機を潰しまくり。大ポカもあったけど…。
福村 6.0 …左サイドは破綻なし。アジエルにも負けなかったのはちょっと驚き。
チョンウヨン 7.0 …本文で触れた通り、素晴らしい出来。
中村充 5.5 …攻撃の発火点であったが、守備面が今ひとつ。
工藤 6.5 …攻守ともどこにでも顔を出し、宮吉の得点をアシスト。
中山 6.0 …豊富な運動量で中盤の隙間を埋め、繋ぎ役に。
宮吉 6.0 …得点は良かった。それまではやや積極性を欠いた。
ドゥトラ 5.5 …チャンスはたくさん作ったが、ラストパスとシュートがダメダメ。
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加藤 6.5 …ハードワークで中盤を締め、ボールの動かし方も的確。
駒井 ――

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大木監督 6.5 …4バックがようやく安定。安心して見られたゲーム。



2011 J2第7節(順延分) 湘南vs京都

2011-10-26 | 蹴球

湘南ベルマーレ●0-1○京都サンガF.C.

■大砲
 鉄砲伝来で日本の戦争史が変わったというのが定説だが、火縄銃にそんなに殺傷能力がある訳でもない…って異論もある。むしろ雷鳴のような轟音が戦意を削ぐってのも大きいらしい。「国崩(くにくずし)」と呼ばれた大砲が戦国時代末期に伝わって、飛び道具の役割はより明確になった。とにかく「恐怖を与える兵器」なのだ。
 サッカーで大砲といえば、ゴール前に張ってズドンとヘッド一発でゴールを脅かすFWだ。京都サンガには歴代あまり大きな大砲がいたことがないが、やはりその破壊力(と反面の脆さ)を永く記憶されるのが田原豊だ。湘南ベルマーレの田原豊になっても、その破壊力は変わらなかった。

■制空権
 185センチで抜群の身体能力を持つ田原砲に対して、いかに制空権を握らせないか?今日の興味はそれに尽きた。対する秋本と内野が180センチ。前の試合でフラフラっと前に出ては裏を取られていた秋本は、今日は大砲封じのためどっしり構え、潰しにかかるのは内野という布陣だった。4バックにして以来、相変わらず押し込まれまくったが、中央のところはチョンウヨンを含めてガッチリしていた。制空権を握られた湘南は、何度も何度も田原への放り込みを繰り返したが、ワンパターンだったのでイージーだった。
 この試合で田原砲が唯一完全に制空権を握って火を噴き、強烈な一発を見舞ったのは、湘南ゴールだった―。



〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …危なげなくゴールを守り通した。
酒井 5.5 …ファイトあふれるプレーもイージーなミスが目立った。
内野 6.5 …危険な箇所で弾き返す男と化した。
秋本 6.5 …空中戦の強さで田原を封じ込めた。
福村 6.0 …攻撃には回れなかったが、ピンチを救うプレーを連発。
チョンウヨン 6.5 …秋本・内野と共に中央をガッチリブロック。田原へのアシストも見事。
中村充 5.5 …ハマらなかった日。守備では存在感なし。
工藤 5.5 …守備に追われた。絶好機のシュートミスが残念。
中山 6.0 …味方が苦しい時間にボールに絡んで鼓舞。
宮吉 6.0 …守備面でチームに貢献。シュートはもっと早めに狙ってもよかった。
ドゥトラ 6.0 …ボールを散らす、保持するプレーは○。シュート精度が問題。
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加藤 6.0 …ルーズボールをよく拾って流れを相手に渡さなかった。
駒井 ――

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大木監督 6.0 …前節不安定だった秋本の所をしっかり修正。運も良かった。








2011 J2第32節 大分vs京都

2011-10-23 | 蹴球

大分トリニータ●1-3○京都サンガF.C.

■余裕の持ち方
 切羽詰まってくると、普通の人間は正常な判断力を失い、つまらないミスをしでかしてしまう。それが人間の弱さであり、面白さ。京都サンガは、札幌戦に続き2試合連続で切羽詰まっていた。相手の猛攻に晒され、どうにか凌いでいた。この時、チーム全体がまったく正常な判断力を欠いていた状態。唯一工藤浩平と宮吉拓実だけに落ち着きがあり、その宮吉が厳しいチェックから自ら奪ったボールを25メートルのミドルからズドンと決めてみせた。
 1点先制すると、途端に余裕が生まれた。特に変わったのが中村充孝。別人かのように積極性が出て、前へ前へと押し込んだ。後半は立ち上がりからボールを回し続け、数十本のパスをつなげて酒井隆介のクロスを最後は工藤が流し込み2-0。実に小気味いい展開はまさに余裕のなせる技だった。

■不安定な最終ライン
 4バックに変えてから失点は減っているのだが、むしろ被決定機は増えている印象。特にこの試合は秋本の存在が危険だった。ボランチのチョンウヨンと最終ラインの間(いわゆるバイタルエリア)にボールがある時に、誰がチェックに行くのか曖昧で、秋本はこれを察知できてるがゆえに前に出たところをスルッと裏を取られて大ピンチに。結果的に森島は外し続けてくれたので助かったが、三平にはきれいに決められ2-1に。正直、大分に決定力さえあれば一気に逆転されていただろう。
 不安定な守備に安定をもたらしたのは、攻撃だった。久保裕也の丁寧なスルーに、宮吉がタイミングを測りながらのダイレクトシュート。これで3-1。点差を離せば最終ラインも余裕ができて、安定する。今の好調は結構微妙なバランスの上に成り立っている。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …安定感抜群で頼もしいかぎり。
酒井 5.5 …あっさりかわされてしまう守備はともかく、後半の攻撃姿勢は◎。
内野 6.5 …ピンチに顔を出しては身体を張って潰していった。
秋本 5.0 …守備に大きな穴を空けた。絶妙のクリアもあったが…。
福村 5.0 …相変わらず守備がイマイチ。そして今日は攻撃参加も少なかった。
チョンウヨン 5.5 …不安定な守備の一因。攻撃時の組み立ては見事。
中村充 6.0 …タメたり味方を走らせたり、良い具合のスパイスに。
工藤 7.0 …陰に日向にボールに絡んでは引き出して、素晴らしい出来。
中山 6.5 …攻撃は繋ぎ役に徹し、守備ではハードワーク。
宮吉 7.5 …2つのスーパーゴール以上に、前線のチェックとクサビの動きが◎。
久保 6.0 …宮吉へのスルーは円熟さえ感じた。GKとの1vs1は決めたかった。
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加藤 6.0 …投入後、チームに運動量を加えて逃げ切りに弘堅…もとい貢献。
内藤 ――

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大木監督 6.0 …結果オーライだけど、秋本の所の修正はどうします?



2011 J2第6節(順延分) 京都vs札幌

2011-10-19 | 蹴球

京都サンガF.C.○4-0●コンサドーレ札幌

■Z旗を掲げよ
 この試合もまた明確な目的のある方が圧倒的に試合を支配するという幕開けだった。いや、それも立ち上がりから物凄いプレス。10分間で3~4点奪われてもおかしくないようなコンサドーレ札幌の猛攻を、水谷雄一とクロスバーの活躍によって防ぎまくった。大木監督はこの試合では4バックへと変更したものの、そのおかげで中盤は人数が1人減った訳で、どうもそがスカスカになっていた。
 しかしサッカーとは不思議なもの。完全守勢の京都はチョン・ウヨンが技巧で相手をいなして右サイド→左サイド(宮吉)→右サイド(工藤)→ゴール左隅…というピッチに大きくZを描くようなゴール。
 これまでのような狭い展開でなくピッチを広く使ったゴール。先制してしまえば4人になった中盤が“コツ”をつかんで、面白いように点を重ねていくことになるとは。うーん、サッカーは不思議だ。

■中盤の使い方
 数字上 5 → 4 と京都の中盤は、4バックから3バックへとフォーメーションを変えたことで一人減ったのである。序盤はそれがダイレクトに「数的不利」となった。その時間帯、工藤浩平は消えていた。ところが、人数が少ないということは、使えるスペースが広がっているということ。工藤はそこを使い始めた。1点目もそうだったし、その後は縦横無尽にピッチを走り回る。そうなると、ポジションを固定しないで適宜ズレたりしながらスペースを見つける大木サッカーの訓練が推進力になった。
 中村充孝の前には、特にスペースがあった。これを使うことで、彼は単なる「ボランチ」から「セントラルミッドフィルダー」へと変化。工藤→中山博貴→中村充孝…という感じでスペースの使い方が伝播していくともはや鬼に金棒のような破壊力だった。
 こんなイケイケサッカー、どっかで見た覚えがあると思ったら、2005年の甲府だった。もちろん、監督は大木武で、大敗→大勝を繰り返した挙げ句、柏レイソルに6-2で勝ったりしたあの甲府。


〈京右衛門的採点〉
水谷 7.0 …神!
酒井 5.5 …基本的に不安定。後半はようやくいい攻め上がりが出た。
内野 6.0 …序盤の神クリア含め、ギリギリのところで粘った。
森下 6.5 …個のカバーで猛攻をしのいだ張本人。怪我でリタイア。
福村 5.5 …守備は狙われてたくらい不安定。攻撃面はとても良かった。
チョンウヨン 5.5 …守備はアリバイ。前を向いてのロングフィードは絶品。
中村充 6.5 …攻撃のタクトを振りながら、ゲームを支配する王様プレー。
工藤 6.5 …蟻の一穴をかぎ分けるフリーランニング。巧み。
中山 6.5 …献身的に動き回って、アクセント&潤滑剤に。
宮吉 6.5 …1点目のアシストは極上。ボールの引き出し方、パス出しとも◎。
久保 5.5 …全般的にキレがなかったが、こぼれ球をねじ込むのはさすが。
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加藤 6.5 …急造CBだったが、読みの良さで危なげなし。コンバート?
駒井 6.0 …自らの役割をきっちり遂行するハードワークぶり。
金成勇 ――
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大木監督 6.0 …怪我人続出だが、瓢箪から駒?次が大切。




2011 J2第31節 京都vs徳島

2011-10-16 | 蹴球

京都サンガF.C.●1-2○徳島う゛ゃるティス

■動機づけ
 士気の高さほど戦いの行方を左右するものはない。戦うための動機。つまりモチベーション。昨日、J1で残留争いをするヴァンフォーレ甲府が、明確な目標を失ったセレッソ大阪を圧倒したように、「この一戦」への意気込みがゲームの行方を左右する。秋とはそんな季節なのだ。
 そして徳島ヴォルティスは大混戦の昇格レースに出走中。出走権すら得られなかった京都サンガとは、もう動きそのものが違ったのである。ゲーム開始からボールに厳しく寄せ、「俺たちが点を奪う!」って意志がビンビンに出ていた。対する京都はアライールの“凡”守備など、モチベーションに欠けまくり。モチベーションの違いはセカンドボールの拾い方、拾われ方によく現れるもので、中盤での争いはもう完全に徳島に軍配。目前まで行きながらも「昇格」を逃し続けた美濃部直彦監督、今年こそ悲願達成なるか?


■4バック
 前半あまりにも酷い出来だったのをさすがに士気官も理解していたのか、後半開始からアライールを外して内野を入れ、3バックから4バックに変えた。
 3バックのストロングポイントは、守備時の数的不利と引き替えに中盤に人数を割いて、ポゼッションで優位を保てることなのだが、こういうふうに中盤でキープできない時は、あっさりと4バックにした方がやはり良いみたいだ。本職SBで、3バックではどうもしっくり来ない酒井もようやく良さが戻る。ただし、得点は最終ラインからの縦ポン1発。理想とする「パスワークからの崩し」ではない。守備面では安定したが、攻撃で効果的だったかって言われると、ちょっと微妙だった。戦術ってのはやっぱり長短緩急。長があってこそ短が生きるし、緩から急へ転換するからこそ混乱を呼び起こす。
 結論として、そういう長短緩急のタクトを振るえる選手がいればなぁ…と感じた。中村充孝は独特のタクト振りを見せてくれたが、中盤の底からチーム全体の長短緩急を任せられるタイプでもない。
 ちょうど今日の相手チームに、そういうタイプがいたんだけどな…。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …2失点ともノーチャンス。好セーブ連発で3失点目は許さず。
酒井 5.0 …もっさりと緩い。4バックになった後半は安定。
アライール 4.0 …2失点とも直接の原因。これじゃ使えない。
森下 5.5 …崩れそうギリギリのところでよく守って耐えた。
チョンウヨン 5.0 …正直、守備が苦手では?攻撃はいいんだけど…。
伊藤 5.0 …右サイドをいいように使われ、チャンスではよく引っかかる…。
内藤 4.5 …よく動くんだけど、動くことで穴を広げてた気がする。
中村充 6.0 …一人だけ別世界。ただし、味方からも浮いていた。
福村 5.5 …2失点目に競り負けたが、宮吉の得点へのフィードは極上。
宮吉 5.5 …基本的に出番なかったが、狙い続けて1得点。
久保 5.0 …徳島の屈強DFの前に仕事できず。いいとこなし。
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内野 5.5 …早い潰しとハイボールの対応は安定。
中村太 5.5 …本職の左サイドでチャンスを作る。いい出来。
ドゥトラ ――
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大木監督 5.0 …スタメン選びがとにかく不可解。後半良かっただけに…。