二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016 J1昇格プレーオフ準決勝 C大阪vs京都

2016-11-28 | 蹴球

 セレッソ大阪△1-1京都サンガF.C.
13'柿谷曜一朗
 (↑こぼれ)
           90'有田光希
            (↑菅沼駿哉)


[警告・退場]
・C大阪
なし
・京都
42'アンドレイ(C1反スポーツ的行為)
77'吉野恭平(C2ラフプレー)

スカパー!ハイライト


【全体の印象】
 雨中の決戦、慎重に入ろうとした京都に対し、セレッソは出だしから猛然とハイプレス。セレッソに両サイドで基点を作られると京都の両サイドも守備に追われるうちにラインはズルズルと下がり、中盤が空いてきたところでソウザがミドルズドン!こぼれ球を抜け目なく狙っていた柿谷に押し込まれて失点。後半から堀米を投入し、サイドも積極的に前に出るとセレッソをじわりじわりと追い詰めたが、守勢モードに入った桜の壁を崩しきれず、返す刀の鋭いカウンターにも肝を冷やす。勝ち上がるために2点が必要な残り15分強でキロス大空中作戦に出るとセレッソがバタついたことありチャンスを作れたが、むしろ最大の決定機は地上戦からのエスクデロの一撃。しかしこれもキムジンヒョンに阻まれた。最終盤のスクランブル状態で放り込みから菅沼が落としたところから有田が決めて同点に追いつき、なおも放り込みラッシュに出たが、同点のままタイムアップ。様々な要因でプランが崩れ、一時持ち直したものの最終的には大味なサッカーで、2016シーズンの幕切れを迎えた。


【雑感】
■地の利
 勝負を左右する天の時、地の利、人の和。両者に大きく差が付いたのは地の利だった。前半、京都のDFがつなごうとしたグラウンダーのパスが雨含みにピッチで減速し、柿谷曜一朗や杉本健勇にカットされてそのままカウンターを浴びるというシーンは一度や二度ではなかった。一方で使い慣れたホームの芝状態を熟知するセレッソは、雨でも正確にボールを繋いでゆく。柿谷などはヒールでしっかり味方に落とす。もちろん、選手個々の技術の差でもあった。
 慣れないアウェイで雨という状況は、不確定要素の塊。石丸監督は雨の21節岐阜戦がそうだったように、不確定要素がある状況では手堅く行くタイプ。慎重にゲームに入ろうとしたのは誤った判断ではなかったが、大熊監督が今までみたことのないような積極プレスを浴びせて機先を制したのは正直驚いた。セレッソは本当にイレギュラーなチームで、当たるたびにやってるサッカーの質が違う。それが悪い方に転ぶ場合もあるが、この日の大熊采配は見事だった。特に清原翔平と澤上竜二の前線からの追い込みは猛烈で、京都の両CBはまともにビルドアップすらできない状態に。それはまさしく、石丸監督が常々言っていた「相手の判断を奪うサッカー」だった。

■戦術と魂
 後半から投入した堀米勇輝は効いていた。果敢なドリブルで陣地を奪いはじめると最終ラインも押し上がり、本来やりたかった前へと能動的なサッカーを展開。日本代表・山口蛍に行く手を阻まれた堀米を吉野恭平が援護し、2人のパス交換で左サイドを突破した場面などは、今まで重ねてきた連携の良さが垣間見れたシーンだった。一方で時間の経過とともに「どうしても点が必要」という思いが個での打開優先になってゆき、最終的な勝負のカードは、巨人兵キロスを立てるパワープレー。投入直後はセレッソが慌ててくれたため、いい形にもなりかけたが、この日もキロスの落としから得点というパターンは成就せず(セレッソ守備陣もしばらくするとキロスとの間合いに慣れた)。シーズン中に一度も成功してない作戦がここ一番で都合良く発動するほど現実は甘くはない。
 もちろん、勝てれば何でもいい試合だった。だけど個人的な思いとしては、堀米、ダニエルロビーニョが両サイドから突破を仕掛けて押し込んでいた形を、もう少し長く見たかった。堀米の突破に対応するためソウザが釣り出され、バイタルエリアが空いている場面もたくさんあった。まったく別のサッカーに切り替えるのは、もったいない状況だった。石丸監督は、残念ながら勝負師ではない。ならば手塩をかけて構築してきた一番自信のある戦術でセレッソを追い詰め続けてほしかった。得点を奪いたい、2失点目は死守したいという選手たちの闘志は伝わった。“魂”でサッカーをしていた。いや、“魂=気持ち”だけでサッカーをしてしまった。最後の最後で今まで積み上げてきた戦術をなげうって、“魂”勝負に出たことは、今年の“石丸サンガ”が好きだっただけに、やはり残念なのである。










昇格プレーオフ プレビュー~大阪冬の陣~

2016-11-23 | 蹴球
■今季の対戦成績と寸評

第10節 C大阪●0-2○京都(主審・井上知大)
【スカパー!ハイライト】
寸評:滾る気迫!守護神・菅野はすげぇの!

第26節 京都△3-3△C大阪(主審・柿沼享)
【スカパー!ハイライト】
寸評:3-0は危険なスコア!うーん互いに脆い!

天皇杯2回戦 C大阪○2(1ex0)1●京都(主審・今村義朗)
寸評:組織力の高さ→1人欠き魂揺さぶる奮戦!

 改めて読み返してみれば、弊ブログのセレッソ戦における「真田丸率」の高さよ…。時勢柄、いたし方ない。だって大坂夏の陣、冬の陣ってそのものズバリなんだもん。地理的に。
 上記3戦の中で一番内容が良かったのは、延長負けとなった天皇杯。それはもう闘志剥き出しで、敗戦後に拍手が鳴り止まないほど彼らは勇敢だった。AWAYの10節もそれまでと目の色が違う気迫があったし、キンチョウスタジアムには京都を奮起させる何かあるんだよ、たぶん。まぁ、去年はキンチョウでフォルランにハットトリックくらって為す術もなく敗れましたけどね。和田体制とはなんだったのか?
 今季の対戦をもう少し詳しくみれば、セレッソが5得点、京都が6得点。得点パターンだけを大雑把に抜き出すと…
セレッソは…CK、杉本ズドン、セットプレーの流れ、PK、ソウザ反転ドン。
京都は…CK、CK、CK、カウンター、カウンター、右サイドからの崩し。
あー…これは(続く)

■カギは京都の先制点
 プレーオフは「ドローなら上位勝ち抜け」つまりセレッソが最初から0.5点持ってるというレギュレーションなので、下位側(京都)が先に得点を奪うかどうかが重要。ちなみに今季は3戦全てで京都が先制点を奪っているのであります。さらにはキンチョウでのゲームはいずれも前半のうちに先制点を奪取中。キンチョウだーいすき!
 さっき挙げた今季の得点パターンをみれば、やはり注目すべきはCK×3のところ。監督・コーチ陣もここはしっかりと分析してるのでしょう(なお、セレッソ戦以外はさほどCKから奪えてない模様)。カウンター×2については、そもそもセレッソ自体がカウンターからの失点が多いチームで…。京都は今、カウンターの精度もぐんぐん上がってきているので、先制できるチャンスは必ずあると、…断言はしないけど…たぶんあるでしょう。あるんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。

■セレッソ攻略法
 そんなの千葉に聞けばいいと思うよ(←)。まぁ、今現在やっているサッカーをそのままセレッソにぶつければ、それがそのまま攻略法なのかなー、と。桜様はとにかく前線からガンガンプレスをかけてるチームに手を焼いているご様子なので、まずそこはしっかりと。あとはセレッソは例の3-3馬鹿試合となった京都HOMEの26節から3バックになって、こないだの最終節で4バックに戻した。3バックならば堀米勇輝とダニエルロビーニョの両翼が最終ラインの脇の幅を衝いていけば先手を取れるだろうし、4バックならセレッソの最終ラインもそんなに揃わないだろうしあとはソウザがよくお留守になるのでそこらあたりのスペースを使っていけば…。まぁ素人考えですけどね。やっぱり3-0で圧勝した千葉先輩に聞けばいいんじゃないかな!

■大熊采配脅威論
 なんやかんやでこうしてシーズン最後まで指揮を執り続けた敵将・大熊監督。いざプレーオフへ出陣!という最終節後の挨拶で大ブーイングを受けたり相変わらずサポーターの心を掴めてないご様子。サポだけじゃなく、山○蛍あたりも采配への疑問を口にすることを憚らない大熊采配だけれども、京都的には実はこれが結構厄介だったり。弊ブログでは大熊監督について“「捨て身の攻撃」の達人”とか、弊Twitterでは“パルプンテ”などと書いたことがありますが、とにかく当たれば強烈。戦術的タスクを課すよりもその場任せの状態にして最大限に能力を発揮できてるのが杉本健勇で、ハマれば「流れとは関係なく叩き込」んでくる。こわーい。
 持ち場を離れて前に出てくるソウザも京都戦では目立っていて、(大熊監督のチーム以外ではあまり考えられない)イレギュラー上等なフリーダムな動きは、やっぱり怖い。ここは誰かしっかり見張っとこう。あとはスイスリーグで活躍して凱旋帰国したヨウイチロウ・カキタニね。もうね、常人ではありえないプレーを瞬時に選択できるジーニアスだからね。大熊監督はそんな彼らを小っぽけな戦術などで縛らず、あえて放し飼いにして才能を輝かせているからね。京都としてはラインを高く保って、放し飼いの天才たちの活動域を狭めたいよね。まぁやられる時はやられるだろうけど、鄭大世&大前元紀に比べればマシだろう。

■京都のキーマンは?
 セレッソ側のキーマンはソウザ。たぶんソウザだけは京都への苦手意識はない(と思う)。天皇杯の時は1人減ってからソウザを自由にさせてしまったけど、今度はそうはいかないからな!あの時はまだ加入直後だった吉野恭平もフィットしたぞ!あと、ソウザはどういう訳かエスクデロと仲がいい。出るかどうかわからんけど、リカルドサントスも京都的には嫌な選手。ところでベサルト・アブドゥラヒミってどうしてますかね?
 京都側のキーマンは堀米…と言いたいところだけど、あえての染谷悠太。前回対戦では退場してしまい、思うところもあるはず。現状はサブなので、試合には出ないかもしれない。出ないかもしれないけど、この緊張感の高まるゲームを前にチームをまとめるという大役を果たせるのは、気配り上手の染谷をおいて右に出る者はない(はず)。さらにはセレッソというクラブを熟知してるし、直近のプレーオフの経験者でもある。厳密にいえば昨年のプレーオフは怪我で直接は関われなかったけど。京都時代には2度プレーオフを経験。5回目のプレーオフで4回目の参戦って個人最多記録じゃね? ともかくも、こういう特殊な戦いにどう臨むべきかを、たぶん監督やコーチ陣よりもよく知ってる。染谷は聡明やから、それを言葉にして伝えられるはず。何かもうね、染谷はセレッソに勝つために帰ってきたんじゃんじゃないかと思うのですよ。

―・――・―・―・―・―・―・―・―
 つらつらと為にならないことばかり書きましたが、チャレンジャーの気持ちを持って、今持てる力の全て発揮すれば、その先へと続く道は開けるはず。いざ!





2016明治安田生命J2リーグ第42節 長崎vs京都

2016-11-21 | 蹴球

Vファーレン長崎●0-2京都サンガF.C.
            21'山瀬功治
            (↑TI石櫃洋祐)
            57'イヨンジェ
            (↑GKこぼれ←エスクデロ競飛王)

[警告・退場]
・長崎
37'李栄直(C2ラフプレー)
85'中村慶太(C3異議)
・京都
なし


【全体の印象】
 序盤から積極的にボールを支配した京都は縦へのロングボールを主体に長崎の最終ラインの裏を衝く。ペースを握った時間帯で、石櫃のロングスローがアンドレイの頭を越えたところに山瀬が入り、ヘッドで押し込み先制。ここから京都はコンパクトな陣形を保ちながら、人とボールがよく連動するサッカーで長崎を圧倒。後半も京都は手を緩めることなく速攻と遅攻を繰り返しチャンス作る。追加点は最終ラインからボールを速く動かす組み立てから、ダニエルロビーニョの抜け出し・シュート→こぼれ球をエスクデロシュート→そのこぼれをイヨンジェが詰める速さと厚みのある攻撃。長崎も反撃に出るが、京都守備陣は総じて落ち着いて対応。87分畑のシュートがポストに救われる幸運もあったが、終盤下畠を投入する逃げ切りモードもテストしつつ完封勝利。チーム自体の気合い乗りの良さも、選手個々の好調さも、そして運の良さ(←重要)も目立ち、プレーオフに向け視界良好といえる快勝となった。


【雑感】
■充実一途
 前節、石丸監督が「何も残らないようなゲーム」と評した敗戦が危機感を植え付けのか、再び闘志に火が付いた。「個でもチームとしても力の差を感じた。試合に入った時にかなり相手が強いなという感じがあって」と長崎の神崎大輔が語る通り、京都は立ち上がりからきっちりと本気モード。攻守に能動的で、最終ラインは強気に押し上げて陣形をコンパクトに、奪えば縦に早く動かしアタッカーたちはどんどんとスペースへと動き出した。攻撃的といってもただ闇雲に敵陣に殺到するのではなく、落ち着いてキープしたり、回しながら相手を動かしていく余裕もあり。惜しくも得点には至らなかったが複数人数が連動して生んだ決定機も多く(38分イヨンジェの突破&クロスの場面とか)、さらにはパスの出し手と受け手の関係性だけで作った決定機(31分本多勇喜→エスクデロ競飛王滑るや64分のセル→ダニエルロビーニョGKに蹴られるとか)、自陣の守備を転じて一気に敵陣を陥れようとしたカウンター(46分ダニロビ→セル→ヨンジェ→山瀬功治)など、「好機到来!」のタイミングで発動する攻撃意識に躊躇はなかった。
 攻撃の良化のベースには、セルが「京都の守備は本当に強いと思うし、得点さえ取ることができれば確実に勝てるという自信がある」と信頼を寄せる守備の安定がある。強気にラインをコントロールしたCBはもちろん、このゲームでは特に両SB・本多と石櫃洋祐の守備での奮闘ぶりも目立った。ボール奪取の肝といえるアンドレイと吉野恭平の心臓部はもう長年コンビを組んでいるかのようにバランスがいい。さらには本職はFW・ダニロビの守備面での働きも出色。愛媛戦でつまづいたことを糧として消化し、チームは今、充実の一途を辿っている。

■臨戦
 プレーオフの相手は“望み通り”セレッソ大阪となった。今季対戦は1勝1分1敗(1敗は延長分)で、6得点5失点(うち1失点は延長分)。昨年も石丸体制での初勝利を挙げており、嫌な相手というイメージはない。リーグでの勝点差は9もあるが、(条件付きで)全部チャラになった。ラッキーである。儲けものである。プレーオフとはそういう上位に不条理なシステムであることは、プレーオフ進出回数最多を誇る我々と盟友千葉は痛いほど知っている。
 上位側は、どうしても「負けられない」という追われる立場の気持ちになるが、下位側は「サッカーの神様が与えてくれたチャンス」とポジティブに受け止めればいい。セレッソはもちろん強力な個を持つ難敵。しかし京都は現時点で最強の清水エスパルスを手玉に取れる(※前半のみ)ほどの組織力を持つ。自分たちの力に自信を持っていい。現状そういうピークのチーム状態まで持ってこられている。思えば前年度17位のチームだ。そこから、この長崎戦をみてもわかる通り石丸監督は本当に素晴らしいチームを作り上げてきた。選手はそんな監督の手腕を信じていいし、監督は選手を信じていい。攻撃陣は守備陣を信じ、守備陣は攻撃陣を信じて思い切りプレーすればいい。もちろん相手を分析することも大事だけれども、39節清水戦の前半や40節熊本戦、そしてこの長崎戦のサッカーができれば、おのずと結果は付いてくるはず。まずは自分たちの力を存分に発揮するために、臨戦態勢を整えたい。





2016明治安田生命J2リーグ第41節 京都vs愛媛

2016-11-13 | 蹴球

京都サンガF.C.0-1○愛媛FC
           69'瀬沼優司
            (↑表原玄太)

[警告・退場]
・京都
4'石櫃洋祐(C2ラフプレー)
79'エスクデロ競飛王(C3異議)
・愛媛
なし


【全体の印象】
 立ち上がりから両者気合い乗りがなく、ゆったりペース。次第に愛媛の積極性か増し、京都陣内は表原にドリブルで切り裂かれるようになった。京都も30分前後からようやく球際の激しさが出るようになったが、愛媛の精度の低さにも助けられた。後半、京都は奪って速いカウンターも繰り出したり、細かいパスを敵陣で回すシーンもあったものの、決定機は作れず。60分ごろからは再三林堂にクロスをあげられるなど完全な愛媛ペースとなり、表原のスルーパスを瀬沼に決められ失点。京都は出番の少ない戦力(有田・国領・矢島)を投入するテストモードに切り替えたが、運動量も闘志も衰えたまま、最後までチャンスらしいチャンスも作れず。ぽかぽか陽気にぴったりのゆる~いホーム最終戦だったが、逆にいい薬になったと考えるようにしよう。


【雑感】
■薬
「何も残らないようなゲームをしてしまい、本当に申し訳ない気持ち」という監督のコメントの通りで、このゲームについて特筆するようなことはない。激戦のJ2、上位3チームや下の方3~4チームが胃が痛くなるようなギリギリの戦いを繰り広げている中、京都は前節プレーオフ進出が確定。長いシーズン戦ってきてようやくひと息付くような格好となり、一度緊張感がほどけてしまうのも致し方ない。建前では「プロならば全試合、全力!全身全霊!」なのだろうけど、建前は建前である。より高い集中力を得るためには、緩めることにだって効果はある。
 今のチームは、得点ランキング上位の点取屋もいなければ、「残念そこは○○だ!」と叫びたいような屈強なCBもいない。攻守ともにある程度献身性や運動量を補完し合って成り立っている部分がある。そういうチームなのに、気合いがオフになって積極性が担保できない状態になれば、当然ながらチーム力は激減するのだ。「気を抜けばこうなるぞ!」というのを思い知って、再び気を引き締めて前に進むための“薬”としたい。

■よみがえる不死鳥
 昇格プレーオフがきわめて不条理な大会方式であることは、身を以て知っている。年間通じて培った総合力があるチームが勝てる訳でもないし、強いチームが勝ち抜ける訳でもない。たった2試合、ほんの2週間、その時点で最も状態のいいチームに仕上げることができれば、(たとえ実力が一枚落ちていても)“下剋上”を巻き起こすことができる。それを理解した上で考えれば、どこでチームのピークを持ってくることが大事なのかはおのずと見えてくる。
 すなわち準決勝の11月27日。ここに持てる力の全てを集中させることがプレーオフを勝ち抜く唯一無二の戦略。そのためには、最終節・長崎戦が持つ意味合いは大きい。ここできっちり気合いを乗せ、勢いを付けられれば、それがそのまま「ピーク」に向けた助走となる。さらに逆算していけば、この愛媛戦の敗北は一度緊張を解いて気持ちをリフレッシュし、チームをもう一度引き締めるという意味でプラスにとらえることもできる。いずれにしろ大切なのは次節。ここでプレーオフに視界が開けるような気持ちの入ったゲームができれば、今節の不甲斐ない試合内容にも意味があったことになるし、そうでなければ本当に「何も残らないようなゲーム」になる。失敗から学んでこそ、より高く飛び立てるのだ。…そう。よみがえる不死鳥なのだから(不死鳥と書いてサンガと読む、とのこと)



2016明治安田生命J2リーグ第40節 熊本vs京都

2016-11-07 | 蹴球

  ロアッソ熊本●1-2京都サンガF.C.
            12'イヨンジェ
             (↑堀米勇輝)
            14'山瀬功治
             (↑こぼれ…イヨンジェ←堀米勇輝)
86'齋藤恵太
 (↑GKこぼれ←清武功暉)


[警告・退場]
・熊本
なし
・京都
72'石櫃洋祐(C1反スポーツ的行為)
77'エスクデロ競飛王(C2ラフプレー)


【全体の印象】
 序盤から立て続けにチャンスを作る京都。特にセカンドボールへの反応が早く、先制ゴールはルーズボールにアンドレイが競り勝ち、堀米が素早くイヨンジェに入れるショートカウンターから。2分後には高橋~本多のビルドアップから堀米が左サイドを長駆突破し、クロスにイヨンジェが潰れて山瀬が合わせた。その後もオフサイドとなった幻の3点目など熊本に決定機すら与えないほどに圧倒。途中熊本が4-4-2に布陣を変えたことで対応がルーズになる場面もあったが、前半のうちに持ち直した。後半、熊本はロングボール主体の力押しモードに。京都はこれを落ち着いて跳ね返しつつ、時折カウンターを繰り出す。86分、熊本に巻へのパワープレーから清武がアクロバチックなシュート、GK清水が弾いたボールを齋藤に詰められ失点を喫したが、以降は冷静に対応。終了間際にアンドレイが無人のゴールにロングシュートを放つシーンなどもあったが、1-2で逃げ切り。5位に浮上し、プレーオフ進出が確定した。


【雑感】
■京都の“型”
 毎度書いているが、今節も千葉戦以降継続する「陣形をコンパクトに保ち、しっかりプレスをかけ、奪ったらボールを早く前線に送り、人もボールも積極的に動くサッカー」を展開。熊本の出足が鈍かったこともあり、「奪う」という場面で常に優位に立ち、少し大袈裟な表現をすると、熊本を“蹂躙”した。
 堀米勇輝がパスの出し手、突破役として持てる力を存分に発揮した2つの得点シーンも素晴らしかったが、面白かったのは26分の3点目(ただしオフサイド)のシーン。およそ1分半、相手にボールを触れさせないままパスを29本繋ぎ、最後はエスクデロ競飛王のシュートのこぼれを詰めた本多勇喜がオフサイドだった。一連のパスでは頻繁に後ろに下げては出し所を探っている。一旦右サイドで作ろうとするが、下げてすぐに左サイドの堀米へ。そこから素早く中→右へと動かして石櫃洋祐のクロスが29本目のパス。ボールを動かすことで相手のズレを作り、隙間に人が入り込むという攻撃意図がよくわかる。「速い攻撃と厚みのある攻撃は、今取り組んでる部分なので、ペナルティボックスに入っていく意識は高まってきている」(石丸監督)というこの形こそ、今現在のストロングポイント、いわば京都の“型”で、その精度は試合を重ねるごとに磨かれつつある。

■判断を奪う
 後半パワープレーに出てきた熊本への対応はまずまずだったが、結果的には総じて受け身に回る格好になった。堀米のコメントは「後半も相手に主導権を渡さずに圧倒できれば、チームとしてもっと上に行けると思う」。理想論としては、まったくその通り。がしかし、プライドを賭けて勇敢に勝負に出たてきている相手をさらに圧倒するとなると、それ相応の運動量を注ぎ込む必要がある。中2日のアウェイ連戦だったことを考えれば、きっちりブロックを布いてロングボール跳ね返す迎撃モードになったことはベターな選択だったかと。失点場面は巻誠一郎の高さと清武功暉の巧さが噛み合った見事なもので、これは相手を褒めるしかない。と同時に、相手がパワープレーモードでガンガン放り込んできた時にどう対処すべきか、という課題も明確になった。
 もちろん理想としては、90分ゲームの主導権を握りたい。でもそれは無理だし、相手が「強硬手段」に出てきた場合には特に柔軟な対応が求められる。プレーオフの1回戦で当たりそうなピンク組チームは、前線への放り込みからの個の打開を得意としている。大事な大一番になった時には、この熊本戦よりもいい手を打っていきたいところ。堀米は言う。「全員が良いポジションを取りながら、相手の判断を奪えるようなサッカーができることが理想」。実は押し込まれる時はピンチであると同時に《守→攻》の切り替えで相手の判断を一瞬にして奪えるチャンスでもある。相手に主導権を渡しても、一気に切り替えてしまえるカウンターだ。この試合でもCKの守備から國領-石櫃-内田のカウンターや、エスクデロの単騎突破などがあった。さらに精度を高め、敵をぶった切れる鋭さを持つ伝家の宝刀「大熊切」を手にしたい。あ、大熊って言っちゃったね。