二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2014 J2第38節 磐田vs京都

2014-10-26 | 蹴球

ジュビロ磐田△2-2△京都サンガF.C.
32'前田遼一
          50'ドウグラス
          (assist石櫃洋祐)
          63'ドウグラス
          (assist山瀬功治)
90'+2駒野友一

■適正外
 レジェンド名波監督に代わったジュビロ磐田。だが監督交代後さほど状態は良くなく、実際この日も前回対戦時に感じた怖さは微塵も感じなかった。京都はそんな磐田に前半圧倒されてしまう訳だが、原因はボランチで起用した横谷繁が置物化していて、中盤がスカスカだったこと。「磐田さん、そこ薄いですから攻めてくださいね」と言っているようなもんで、磐田はノープレッシャーのまま中盤を通り越して易々と京都陣内へと押し込むことに成功。ただ、そんな状況でもなかなか(流れの中では)決定機に持ち込めなかったことに、名波ジュビロのイマイチさを垣間見たのだが。
 適材適所という言葉がある通り、その人が最も力を発揮できる場所や役割ってもんがある。それを上手く見つけて、制約がある中で組み合わせることのできる人が、いい指揮官でありいい上官なのだと思う。この試合の前半は「横谷は運動量も少なくて、短距離スプリントも遅いからボランチには向いてないよねー」ってことを再認識するだけの45分間だった。適正の合わない横谷をボランチに使ったせいで、田森大己は届かない場所にまで足を伸ばさねばならずイエローカードを貰い、福村貴幸はまったく上がれず、攻撃の駒であるはずのドウグラスが戻りの遅い横谷の穴をカバーしに行く始末。横谷だってもっと持ち味を発揮できる場所があろうものを…。とにかく川勝監督は本当に達人である。前半45分を無駄にする達人、だ。

■安全志向で逃した勝ち点2
 後半、コンディション面で控えスタートだった駒井善成を投入すると、京都の出足があらゆる局面で磐田を上回るようになった。中盤の底が安定すれば、前半から時折見せていた「ドウグラスの中央進出」が出しやすくなった。そして中央にドウグラスが入ったタイミングでクロスを送って高さを使って2得点。ドウグラスにしても最も適正があるのは中央最前線だ。ただ守備をがんばれる面、大黒将志の活動域との兼ね合い等があって右サイドに置いていることは理解できる。むしろ右から中央に絞る動きは相手もマークが難しいため、この形が大きな武器になることがよくわかった。ただ、ドウグラスがサイドからクロスを上げている場面ってのはちょっぴりせつない。「クロスを上げる役割じゃなく、合わせるのが本領でしょ」と。
 逆転を果たし、京都ペースで圧倒的優位にゲームを進めたものの、アディショナルタイムに磐瀬剛が白星東の突破をファウルで止めてFKを献上。駒野友一の直接FKで同点に追いつかれ、ベンチはそこで思考停止してしまった。もしもそこで、この日空中戦圧勝だったドウグラスを完全に中央に張らせる指示を送れたら、最後に相手を殴り倒すことができたかもしれない(実際、そのあと2度磐田ゴール前までボールは運べている)。昇格できるチームってのは、土壇場でどんな形であれ奇跡的な一撃を打ち込めるもの。それは偶然ではなく、イチかバチかのチャレンジをしているから。そもそもその前にカードを貰っている田森を下げるという安全策でなく、3点目を奪いに行くという采配だったら2失点目はなかったかもしれない。結局、バランスを崩すことを極端に嫌い、二者択一ならば安全な方を選ぶ監督には、追う立場のチームを勢い付かすことは難しい。勝ち点2を失い、プレーオフ進出は風前の灯火となった。


〈京右衛門的採点〉
杉本 5.0 …広い守備範囲を見せるも、プロらしからぬプレーを2度披露。壁の指示も改善の余地あり。
石櫃 6.0 …積極的に上がってクロス連発し、1アシスト。ゴール内でのシュートブロックも。
酒井 6.0 …2列目の飛び出しに慌てる場面もあったが、流れの中では前田に仕事させず。
バヤリッツァ 6.0 …磐田のアバウトなボールをよくはじき返し、自陣侵入はよく潰したが…。
福村 6.0 …前半は守備に追われたが、逆転弾の起点となった上がりで持ち味発揮。
田森 6.5 …横谷の分まで走り広いエリアを1人でケア。ボールへの寄せが早かった。
横谷 4.0 …適正外のポジションでまったく戦力にならず。足を引っ張っただけ。
ドウグラス 7.0 …動く大砲として頭で2得点。守備のケアも怠らず、どんな仕事もこなす。
工藤 6.5 …前半からよくボールを追い回し、後半は攻守のつなぎ役として躍動。動きもキレキレ。
山瀬 6.0 …失点CKにつながるミスも、逆転弾のアシストは見事。守備でもよく身体を張った。
大黒 6.0 …駆け引きで相手マークを引き付け、ドウグラスの活動域を作る。後半の決定機は決めたかった。
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駒井 6.5 …後半から登場するや、寄せる、奪う、捌くの動きが速く、効きまくった。
磐瀬 5.5 …結果的に同点弾につながるファウル。この経験を糧に次はよりよい対応を。
三平 ――
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川勝監督 4.5 …横谷のミスマッチは前半のうちに手を打てたはず。采配にも積極性がなかった。


2014 J2第37節 京都vs松本

2014-10-19 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△松本山雅FC


■押し込むも正攻法
 お互いに様子見のような序盤は戦線の膠着を予感させたが、徐々に京都が松本を押し込むようになった。1つの要因は工藤浩平や田森大己らが積極果敢にボールに寄せるようになったこと。ボランチ起用だった駒井善成は、序盤守備のポジショニングが怪しかったが、動いているボールに対する反応は俊敏だった。駒井がセカンドボールを回収するようになると、京都の中盤での優位は揺るぎないものに。松本はあっさりと中盤から撤退し、自陣を固め、大黒将志への警備を厳重にして籠城した。松本の目論見通り、京都はどれだけ押し込んでも「最後は大黒」という正攻法に頼ってしまい、そこはこじ開けられず。山瀬功治は遠目から狙ったが、長距離砲の弾道は枠から逸れた。
 内容は良かったのだ。この日は選手間の距離も遠すぎず、短いパスも織り交ぜることによって手慣れたリズムを作り、終始ペースを握り続けた。ピンチらしいピンチは序盤の杉本大地の好セーブのシーンと、後半の杉本のキャッチミスに起因するものくらいで、エリア内での大久保裕樹の明らかなハンドを見落とされる不運もあった。何が足りなかったのか、それは点を取るためのバリエーションの欠如、ということになってくるのだろう。

■使えずじまいの武器
 相手からすれば「攻め口は大黒」というのはわかりきっている。予想される方面から攻められるのなら、籠城側も守りやすいのである。それでも相手のマークを外してバーを叩くシュートまで持っていく大黒はさすがなのだが、大黒以外の攻め手が不足していることは否めない。大黒以外の可能性はないのか?そんなことはない。三平和司とドウグラスは、他のクラブに行けば十分主砲になりえる存在かと思う。
 前半、三平は上手く消えることで中盤を活性化していた。三平が動いてスペースを開けることで、そこに工藤が入り込んで…という影になる役割は、三平の得意とするプレーだ。大分時代がそうだったように、消えた三平が伏兵となって、スルスルっとゴール前に現れて点で合わせるようなプレーが出せれば、大黒以外の有力な攻め手になりうると予感した。ただ、そういう予感が漂っているところで監督はあっさりドウグラスに変えてしまったのだが…。
 ドウグラスに関しては、誰がどうみても高さに強い。この試合でも何度も競り勝ってはボールを落としたが、競った主戦場はトップ下~右サイドの位置。どうしても1点がほしい切羽詰まった戦況ならば、割り切って最前線中央に据え置きするオフションは考えられないか(もちろんドウグラスの守備面を買って使ったこともわかるのだが)。大黒に頼りすぎて、せっかく持っている武器を上手く使えずじまいのまま残り5試合。もはやオプションを構築するには遅きに失するところまで来てしまっている。


〈京右衛門的採点〉
杉本 5.0 …1点モノのビッグセーブも、横からのクロス対応でミス連発。加えてコーチング不足。
石櫃 6.0 …機を見て果敢に上がってはクロスを連発。守備でも球際でよく競った。
酒井 6.5 …スピードを生かした潰しと裏へのカバーが光る。ハイボールの競り合いも無難。
バヤリッツァ 6.5 …一度だけ飯田に競り負けたが、あとは空中戦に完勝。最後まで集中していた。
福村 6.0 …駒井をカバーしながら前に追い越す動きがチャンスに。船山も裏狙いもよくカバー。
田森 6.5 …駒井の動きに合わせるようにバランスを取り、ボールを回収。中盤を引き締めた。
駒井 6.5 …人への対応はともかく、ボールへのアプローチの速さで中盤を制圧。八面六臂の活躍。
三平 6.0 …しっかりと守りながらスペースを作る動き。機を見てエリアに侵入する動きも。
工藤 6.5 …積極守備でボールを奪い、ゲームを組み立てる配球。惜しいシュートもあったが。
山瀬 5.5 …狭い局面をこじ開ける力強さがあり、積極的にミドル狙うも精度を欠く。
大黒 5.5 …厳しいマークを背負いながら前線の基点に。ポスト直撃は枠に飛ばしたかった。
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ドウグラス 5.5 …三平より守備的に入ったが、終盤トップ下で長パスのターゲットに。
磐瀬 ――
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川勝監督 5.5 …先祖返りしたように短パス主体に。ドウグラスの使い方はどうも中途半端。



2014 J2第36節 京都vs熊本

2014-10-11 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△ロアッソ熊本

■安定感。ただし…
 まず最初にこの日の熊本についてしたためておくと、全般的に守備的であまり前に出てこず、かといって厳しい寄せがある訳でもなく、カウンターが鋭い訳でなく、数少ないチャンスもミスでフイにしてしまうような、そんな相手だった。対する京都は前節から布陣を少し変えて田森大己とルーキー磐瀬剛のダブルボランチ。中盤の底+センターバックのところは相手の猛攻に晒された訳でもないので、当然ながら安定感があった。そして攻めまでどっしり安定。リスクを冒しながらオーバーラップすることもなく、安全圏からボールを配球していく程度。まさに現状にあぐらをかいているようでございました。あぐらをかくと安定するんですよ。どっしりと。低い次元で固まってしまって、ハーフタイムに吹き荒ぶ風の寒かったこと、寒かったこと。

■磐瀬GO
 プロ2試合目の磐瀬はよく走った。走行距離をはじき出せば結構な量を走ってるのではなかろうか。ただ、本当に無駄な無駄走りになっている気がしないでもない。「動けば雷電の如く発すれば風雨の如し」という伊藤博文が高杉晋作を評した言葉がある。ただ走り回るのも尊いことだけれども、動いた時に電流が走るようなそんな動きというのは、局面を一気に変える力がある。例えば工藤浩平が動けば、何か起こりそうな気がする(まぁ、この試合の場合はそれに頼りすぎてダメだったのだけれども)。磐瀬は走りの質を磨いて、走りだけでチームを支えるような選手に成長してもらいたいもの。シビアな状況判断が求められる中でのボール扱いも含め、実戦で経験を積んでいくのみ。GO!!!

■ドウしたかった?
 この試合、特筆することもあまりないのだけれど、右サイドにいたドウグラスは終始競り勝っていた。GK杉本大地からのキックを直接落とすようなプレーも何度かあった。がしかし、周囲に味方がいない。見たところ布陣として選手間の距離が遠すぎた。それなのにドウグラスの頭を目がけて蹴る。一体ドウしたかったものか。何となくやろうとすることがチグハグで、それはドウグラスのところだけじゃなくて、ピッチの至る所で人が連携せぬままボールだけが動くシーンが目に付く。チャンスもあったけれども、こっちから外してしまう。枠内にしっかりシュートが飛んでGK畑実を慌てさせた覚えがない。熊本はさぞ守りやすかったであろう、さほど調子が良くなくても相手がこんな調子だったのだから。

 思えば京都が代行監督で臨んだ19節熊本戦は、相手のミスを逃さないしたたかさ、疾走する若い力、そして強烈な攻撃力を見せつけたんだった。そこから監督変えてみて16試合もやってこの程度のサッカー。残り試合で突然変異して強豪に大変身しちゃうなんて安い展開は、、、書いてくれ…ないでしょうね。サッカーの神様は。


〈京右衛門的採点〉
杉本 6.0 …ピンチも少なかったが、守備範囲が広く、鋭い飛び出しで未然に防ぐ。安定感あり。
石櫃 5.0 …トラップミスなど細かいミスが散見。後半になって何度かクロス上げたが。
酒井 5.5 …前で奪うバキの後ろをしっかりカバー。フィードなど雑な部分は雑だったが。
バヤリッツァ 6.0 …放り込みはほぼ跳ね返し、前でもよく奪う。壁として立ちはだかった。
福村 4.5 …序盤のピンチを救う守備は◎。ただしミスパスを連発し前への積極性も欠く。
田森 5.5 …ルーズボールをよく回収。中盤の底から組み立てるボールも配球したが。
磐瀬 5.5 …球際特攻隊としてよくボールに寄せた。ボールを持った時の判断は平凡。
ドウグラス 5.0 …空中戦では圧勝するも、周囲と噛み合わず。突破もしたが、単騎攻撃に。
工藤 5.0 …前目で孤立。下がると怖さが出なくなる。抜群の巧さは見せたが、決定的な仕事できず。
駒井 5.0 …勝負はしてもロストだらけでは意味なし。シュート連発もDFに当てすぎた。
大黒 4.5 …駒井の優しいパスを決められず。ほかにも決定機はあったが、決めきれず。
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山瀬 5.0 …SBに回った駒井と連携して左サイドをやや活性化も、大きく流れは変えられず。
三平 ――
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川勝監督 4.5 …攻撃のコンセプトが曖昧で、結局、工藤・大黒頼みに。バ将と大差なし。






2014 J2第35節 栃木vs京都

2014-10-04 | 蹴球

栃木SC○2-1●京都サンガF.C.
7'杉本真
       19'大黒将志
       (assistドウグラス)
63'杉本真

■些細なこと
 それは些細な出来事が伏線だった。開始から2分、大久保哲哉にチェックに行った内野貴志のプレーに笛が吹かれ、そこでボールをちょーんと蹴り返した酒井隆介に塚田健太主審はイエローカードを提示。判定の是非はともかく、酒井はそれ以降のプレーで積極的な出足を欠くようになった。失点シーンも、一瞬判断が遅れた。大久保と競った内野の不完全なクリアを拾った杉本真へのアプローチは、些細なイエローカードがなければまた対応も違ったのかもしれない。

■緩い緩い
 それにしても中盤のプレスは緩かった。ボールには当たりに行くのだが、ほとんどが単独のディフェンス。田中英雄は相変わらず糸の切れた凧のようにあちこちに出ていき、田森大己は先手を取られて右往左往するセンターバークを援護するために引き気味。ひとり残された中山博貴が中盤でぽつーんと孤立している時間が多かった。栃木はロングボールで攻めたが、回そうと思えば特に阻むものなくボールが回せたのだ。後半からは田中英雄が持ち場をあまり離れなくなったが、単純ミスのボールロストから持ち込まれて失点。いやー、緩い緩い。

■戦術転換失敗
 この試合で目立った(ポジティブな)面は、ドウグラスの強さくらいだろうか。福村貴幸の大きなクロスを頭で落としてからの大黒将志の得点は、彼の強さが武器になった端的なシーンだった。コーナーキックから惜しいヘッドもあった。ところが、田中→三平和司の交代でドウグラスの位置が変わって以降は、その武器にも出番なし。セントラルMFを1人外すだけで元々機能してなかった中盤はさらに構成力を欠き、さらに中山を負傷で失ってからはもはやお手上げ状態。サッカーは選手交代の場面で最も戦術を転換しやすいのだが、ことごとくそれに失敗した。

 主審の頼りない判定とか、主力の出場停止とか、いろいろ条件が向かなかった点があったのは重々承知の上で、それを乗り越えられないその程度のチーム力(監督の采配含む)しか持ち合わせてなかった現実は受け止めなければならない。どうせならこの敗戦でフッ切れる部分はフッ切ってしまえばいいのに。特に積み上げてる大事なモノなんてないんだし。


〈京右衛門的採点〉
オ  5.0 …守備機会は少なかってものの、2失点。1点目はニア閉じられず。
石櫃 4.0 …プレーオン中に主審に文句を付けて攻め込まれた85分の場面で大減点。
酒井 5.0 …早々に警告受け消極プレーから失点。切り替えたのちは積極的に守ったが。
内野 4.5 …大久保に競り負け続け、食いつきすぎて廣瀬や杉本には翻弄され…。
福村 5.5 …得点の起点となるドウグラスへのクロスは絶品。駒井との関係は良かった。
田森 5.5 …崩れゆく最終ラインを援護し立て直す。前へのパスにミドルにいい働き。
田中 4.5 …神出鬼没で動くが、そこに穴。後半安定したと思えば失点につながる軽率ロスト。
中山 5.5 …田中の留守を1人で守ろうと奔走するも、無理。よく身体張ったが自爆負傷。
ドウグラス 6.0 …大黒へのアシストやCKからのヘッドなど、空中戦で持ち味を発揮。
駒井 5.0 …積極的な単騎突破はことごとく止められる。プレーに余裕がなかった。
大黒 5.5 …同点弾はさすがの動き。その後もチャンスは何度かあったが決めきれず。
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三平 5.0 …投入後チームが流れを失い、ボールに絡めず。最後にいいクロスを上げたが。
山瀬 5.0 …守備に追われ、攻撃も単発打開狙う程度。キック精度は相変わらず。
石田 ――
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川勝監督 4.5 …1枚目の交代→布陣変更で流れを失う。交代のたびに状況は悪化した。