二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016明治安田生命J2リーグ第10節 C大阪vs京都

2016-04-30 | 蹴球

セレッソ大阪●0-2京都サンガF.C.
          8'アンドレイ
          (↑CK堀米勇輝)
          48'本多勇喜
          (↑CK堀米勇輝)


[警告・退場]
・C大阪
70'ブルーノメネゲウ(C3異議)
・京都
88'佐藤健太郎(C1反スポーツ的行為)※次節出場停止


【全体の印象】
 風下スタートの京都。序盤のピンチを菅野のセーブで凌ぐと、CKからアンドレイが先制弾。これで動きの良さが加速し、前線からの積極プレスと果敢な守→攻のスイッチングでペースを掴む。セレッソの攻撃は偶発的で、ピンチも守備陣の粘りで切り抜ける。後半早々に再びCKから本多が加点。その後も集中力を保ち運動量も落ちず、守勢ながらもファイティングポーズを取り続け、敵将大熊監督の思うようにはさせず。終盤下畠がPKを与えてしまうが、守護神菅野が見事にストップ。セレッソの力任せの放り込みラッシュも集中して跳ね返し、高い士気のまま会心の勝利を収めた。


【雑感】
■セレッソ=徳川?
 彼我に圧倒的な戦力差がある場合、強い方は緩み、弱い方は緊迫することが多い。緊迫感が怖れになってしまえばひとたまりもないが、「滾(たぎ)らせる」という感情に変えてしまえば、一気に士気が跳ね上がる。例えば徳川の大軍を2度退けた真田昌幸などが滾らせるのが上手い指揮官だろう。
 真田昌幸が徳川との戦いになると目の色が変わるように、どうやら石丸清隆監督はセレッソ戦になると激変するようだ。去年の24節(石丸監督の初勝利)もそうだった。この日も、もう出だしから選手の目の色が違うのだ。今年開幕から首位をひた走っていたセレッソ。ホームでまだ負けていないセレッソ。大きな相手を倒してやろうというチャレンジャーズスピリットは、出足の速さに反映されていた。とにかく球際に寄せるスピードが前節とは桁違いに速い。とりわけ久々の先発となった本多の動きの良さが目立ち、相手のキーマン・関口に常に後手を踏ませた。
 どうも煮え切らなかったこれまでの京都に足りなかったのは、挑戦者の気持ちだった。それはキャプテン・菅野孝憲のコメントが全てを物語る。“「戦おう」とか「もっと走らなきゃ」といったようなレベルの低いコーチングはやめよう、そんなことは当然のこと、プロとして戦う中でスタンダードなことだから” “いい雰囲気で戦える集団になりつつあると実感している。一日一日、一歩一歩前進している。絶対に後退はしていない” “僕たちはチャレンジャーだということ再確認できたことが今日につながったと思う”
 
■多段守備の構え
 大熊監督のコメントで「(京都の)ブロックが引いた」「引いた相手」という言葉が出てくるが、京都がドン引きリトリートをしていた印象はない。セレッソのアバウトな放り込みに対応するためラインは下がったが、5バック、6バックで籠城した訳でもなかった。むしろ目立ったのは積極的に奪う守備。本多が「前の選手がボールを追ってくれるので、しっかり跳ね返すこと、カバーリングをすることで無失点に抑えられた」と言及する通り、前線からの追い込みこそがこのゲームの肝だった。とりわけダニエルロビーニョの守備での貢献度は高く、前で追い込んでそこで奪えずとも、アンドレイあたりが二の矢で奪う多段守備の構えは首尾一貫していた。
 もちろん、セレッソの個頼みでアバウトな放り込みに対しては最終ラインと守護神菅野の活躍に負うところが多いが、相手に満足な組み立てをさせなかったのは、やはり前線からの守備意識の高さのなせるところ。そして「奪った後はここにボールを動かそう」「奪ったらあの選手を走らせよう」という反撃の意図をしっかり込めた守備でもあったのは頼もしい。セレッソがさほどにプレスをかけてくるチームではなかったので、相性が良かったというのも事実だが、堀米やダニロビはしっかり前に運べたし、山瀬の飛び出しも効いていた。欲を言えばイヨンジェや有田には好機をしっかり決めてほしかったが、それでも強い相手に終始攻撃的な姿勢で戦えたことは、いろいろと手応えを得られたのではなかろうか。





2016明治安田生命J2リーグ第9節 京都vs徳島

2016-04-24 | 蹴球

京都サンガF.C.0-1○徳島ヴォルティス
           15'橋内優也
            (↑CK木村祐志)


[警告・退場]
・京都
なし
・徳島
72'福元洋平(C1反スポーツ的行為)
90+2'橋内優也(C5遅延行為)


【全体の印象】
 前節熊本戦が地震の影響で中止になり、2週間ぶりの京都は、風下の中で序盤からペースを掴めず。CKから易々とマークを外されておっさん橋内ゴールで失点。その後5バックに引いた徳島のブロックを攻めあぐねた。後半、有田投入後から徐々に持ち直したが、攻撃モード全開までギアは上がらず。最後のカード本多投入でようやくラスト10分で猛攻に転じたが、イヨンジェが決定機を外すなど時すでに遅し。与シュート1本という珍記録でまんまと逃げ切られた。


【雑感】
■籠城崩し
 完全に籠城モードに入った相手を崩すのは、なかなかに難しい。結論から言えば、石丸監督は籠城崩しという難題の正解を導き出せていた。すなわち本多投入後80分からの形。左サイドでブレーキをかけ続けていた右利き下畠を右に回すことで石櫃とクロス発射砲台を2本に。逆サイドはエスクデロが仕掛ける陸上戦。中央に潰れ役の有田+仕上げ役のイヨンジェ。引いた相手に対して決定機は十分作れていたが、イヨンジェや石櫃が決めきれなかった。采配ミスがあるとすれば、この形をあと10分15分早く整えられなかったこと。あるいは堀米→本多の交代は後半頭くらいからでもよかったかもしれない。
 今の京都は、「戦力が足りないから点が取れない」訳ではない。むしろ攻撃陣の手駒は豊富で、その戦力の組合せにズレが見える。石丸監督は、おそらく勝った山形戦のイメージを引きずっているのだろうが、ガッツリ引いてスペースを無くされた状態では堀米は活きないし、ダニエルロビーニョが狙える「裏」も消されていた。そもそも山形戦ほどルーズにやってくれる相手など少ない。その時々の手駒の調子を見極め、組合せを見直していく臨機応変さも求められる。

■アベコベミクス
 引いた相手を崩し切れなかったこと自体は勝負のアヤで、さほど悲観すべきではないと考える。気になるのはもっと根本的な部分で、「レシーバーの動きが少ない」こと。ボールを持っても受け手が動き出さないため、足元へのパスとなり、相手に読まれて易々と守られる、はたまたミスパスになる…。これは今シーズンずっと起こり続けている問題点だ。記憶が確かならば石丸監督は「走るサッカー」を標榜していたと思うが、フリーランでボールを呼び込むような動きが出るゲームは希で、デフォルトで攻撃が加速していかない。
 そんな中で1人、レシーバーとしてやたらと動く選手がいる。中盤の底でパスの出し手になるべきはずのアンドレイだ。特に前半、アンドレイは機を見て前に出ては受け手として存在感を発揮。いや、発揮しすぎた。一方で不在にした中盤の底での好守の繋ぎ役は佐藤1人となり、組み立て役は圧倒的に不足。堀米が降りてきたりしていたが、いろいろアベコベである。目に見えた効果がわかりにくいアベコベミクスだ。
 周囲はもっとアンドレイのように前への推進力を意識して走らなきゃいけないし、アンドレイは前に走りすぎないで本来の繋ぎ役、組み立て役をこなさなきゃいけない。そもそも本当に「走るサッカー」を目指しているの?ちゃんと走れているの?見ている側にそれが伝わってこない点は、多いに憂慮すべき部分かと存じ奉りまする。



2016明治安田生命J2リーグ第7節 群馬vs京都

2016-04-10 | 蹴球

ザスパクサツ群馬●0-1京都サンガF.C.
            74'有田光希
             (↑CK佐藤健太郎)


[警告・退場]
・群馬
83'瀬川祐輔(C2ラフプレー)
・京都
35'菅沼駿哉(C2ラフプレー)


【全体の印象】
 立ち上がりこそ京都がボールを支配したが、徐々に群馬のサイド攻撃を受ける形に。しかし群馬も精度が低く、お互いに攻撃を組み立てられず。京都はどうにかセットプレーからもぎ取った有田のゴールの後、高橋祐治が頭部を強打して10人となってしまうが、ピンチを集中力に代え、きっちり守り切って勝ちゲームを締めた。


【雑感】
■遠距離射撃
 遠距離から射撃しようと思えば、当然ながら的を射貫く精度は落ちる。この日京都が多用した攻めの形は、最後尾の菅沼・高橋からの遠距離射撃(フィード)で最前線の的(イヨンジェ)を走らせるというもの。組み立てがロングレンジ主体になってしまい、前節芽吹きかけていた「人が動く」「人が人を追い越す」という部分が消えた。攻めの組み立てに参加してこそ持ち味を発揮するダニエルロビーニョや堀米も、あっさりボールが通過してしまえば存在感もなし。どうもこのチームは気を抜くと「ボールだけが動くサッカー」に逆戻りしてしまう。ロングボールを蹴ること自体は否定しないが、しっくり来ない時に、いかに別ルートの攻め手を見つけられるかという適応力はやはり課題。終盤、怪我から復帰したエスクデロがそれまでとまったく違うボールを運び方を見せつけたことを思えば、持ち駒の組み合わせ次第でまだまだ戦術の幅が広がる余地はありそうだが。

■守備両翼の問題
 THEスパッと決めたい場面でシュートミスを連発したものの、主導権を握っていたのは群馬だった。京都は中盤で奪えず、最終ラインでブロックを作って跳ね返すという単純防備の構え。その中で気になったのは京都の守備両翼(下畠/石櫃)と群馬の攻撃的両翼(瀬川/高橋駿・高瀬)のマッチアップだった。まず下畠vs瀬川のところは、個の力で下畠が瀬川に遅れを取ってしまう場面が多く、この綻びから攻めの糸口を作られた。内田の途中投入は左サイドの守備力増強の意図もあったのだろうが、さほどに良くもならず…。アンドレイが前に出ていくため、ボランチのカバーもままならず、攻/守のバランスの取り方がチグハグしていた感は否めない。石櫃vs高橋駿(終盤は高瀬)のところは、いわゆる「石櫃の裏」を衝かれるという問題が起こっていた。これは石櫃の攻撃力とトレードオフになっていると割り切る必要もあるが、「ビツ裏」が相手にとっておいしいスペースになることは去年も散々味わったこと。サイドをいいように使われても中で跳ね返せていたからいいものの、上位チームなら許してくれなかっただろう。
 皮肉なことに、高橋祐治が瀬川との交錯アクシデントでピッチを去って10人になってからの方が、守備に対する目的意識が明確になり、集中力は格段に高まった。手負いになってから一体感が出たことを怪我の功名と言うのは少し酷でもあるが、勝利に対する執念を全員が共有できたことを、「勝負所で踏ん張れない」「勝負弱さ」の克服に繋げていきたい。


2016明治安田生命J2リーグ第6節 京都vs山形

2016-04-04 | 蹴球

   京都サンガF.C.3-2●モンテディオ山形
              2'大黒将志
               (↑ディエゴ)
38'ダニエルロビーニョ
 (↑堀米勇輝)
45+2'イヨンジェ
 (↑ダニエルロビーニョ)
48'堀米勇輝
 (↑イヨンジェ)
              74'林陵平
               (↑こぼれ)


[警告・退場]
・京都
33'アンドレイ(C2ラフプレー)
90'本多勇喜(C1反スポーツ的行為)
・山形
85'アルセウ(C2ラフプレー)
88'渡辺広大(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
 開始直後、堀米がディエゴに奪われ、山形に貸し出し中(という名の構想外)の大黒にゴールを喫して先制を許した京都。その後はボールは持てるが連携が噛み合わない展開が続いたが、好調さが際立つダニエルロビーニョの同点ゴール、前半間際にダニロビの長駆からイヨンジェが決め逆転。後半早々にもダニロビの空振りスルーが堀米の3点目を演出。そこから先は山形が主導権を握るが攻撃は単調で、高橋・菅沼を中心によく跳ね返した。ただし、3バックに変更後にバタついてしまいセットプレーから失点。この日の山形の出来を考えれば、安心して逃げ切る試合運びを見せたかったが、課題も含めて収穫の多いゲームとなった。


【雑感】
■スローイン、ファストイン
 可能性が低いチャレンジは避けセーフティに逃げようとする者と、可能性ある限りチャレンジする姿勢を持つ者。勝負の行方は、ほんの一瞬の意識の差で決してしまうことがある。
 京都の2点目は、提示されたアディショナルタイム2分台のこと。京都陣内からのスローイン。山形のゴールまでは遠い。だがスローワーの石櫃は、「これで前半終了かな」と少し安心していた山形側の隙を逃さず素早く強いロングスローをダニエルロビーニョにイン。そこからイヨンジェ→ダニロビ→ヨンジェという電光石火のカウンターを突き刺した。京都にとっては、時間的にもボールの位置的にも可能性が低い状況。それでも前向きの意識を持ち、3人以上がファストプレーを共有できていた点がこの日の山形との差だった。
 思えば前節、京都は前半のアディショナルタイム(1分提示)の3分台に失点している。自らの失敗から学び、意識面が大きく改善したことを示すシーンだった。


■アンロビが肝
 攻撃でのパスコースの作り方も改善している。人が動けばパスコースが増えていく訳で、そういう意味で傑出していたのが「前に出て行くアンドレイ」「落ちてきたりサイドに流れたりするダニロビ」という2人の動き。アンドレイは攻撃のスイッチを入れる役目となり、布陣全体の意識をプラス方向に動かした。後半、石丸監督が彼に自重を指示してから後ろ重心となったことを思えば、アンドレイの位置取りはゲーム運びの肝心要となりそうだ(ちなみにアンドレイを前に出せたのは、山瀬の影働きあってこそ)。
 得点にアシストに大活躍だったダニエルロビーニョは、繋ぎに入った時にいい位置に顔を出し、前線の潤滑油的な働きをする点も見逃せない。これにより今まで多かった「繋ぎたいけど味方が遠い」という状況が激減。イヨンジェとのコンビネーションも良好で、片方がサイドに流れれば片方は中央に、といういい関係性。このゲームの中で急激に連携が上がった堀米も加え、新しい可能性が見えてきた。
 ただし、この日の山形は今まで対戦してきた相手と比べるとプレスが弱く球際も消極的で、簡単にボールを持たせてくれたというのも事実。今後ハイプレス主体のチームを攻略していくためにも、パスコースを増やす人の動きを進化させていきたい。アンロビを肝にして。