二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016明治安田生命J2リーグ第35節 千葉vs京都

2016-10-09 | 蹴球

ジェフユナイテッド千葉●0-3京都サンガF.C.
               2'堀米勇輝
               (↑エスクデロ競飛王)
               24'イヨンジェ
               (――)
               65'ダニエルロビーニョ
               (PK)


[警告・退場]
・千葉
19'エウトン(C4繰り返しの違反)
64'イジュヨン(C1反スポーツ的行為)
71'菅嶋弘希(C2ラフプレー)
・京都
11'アンドレイ(C2ラフプレー)
67'イヨンジェ(C4繰り返しの違反)
71'菅沼駿哉(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
 深刻な得点力不足に陥っていた京都は、前節から大きくメンバーを入れ替え、立ち上がりから前への積極性を見せる。高橋が相手スローインをカットすると、吉野→イヨンジェ→エスクデロと素早く前線にボール動かして堀米が先制。その後も前向きに奪う守備→素早い展開という守攻の切り替えの速さで千葉を圧倒。イヨンジェがアランダのバックパスへのチャレンジから追加点を奪い、後半にはエスクデロが得たPKをダニエルロビーニョが決めて3得点。守備面もアグレッシブで、高さ勝負や球際勝負にも怯まず、特に相手に後手を踏ませ続けたたボランチ2枚の動きは出色だった。攻守に畳みかけるように調子を手繰り寄せ、停滞感を払拭する完勝となった。


【雑感】
■先んずれば制す
 千葉の視点からみれば「3得点とも自分たちのミスや甘さを衝かれたつまらない失点」ということになるだろう。しかしそれらのミスや混乱を引き起こしたのは、京都が前へのチャレンジを怠らなかったからに他ならない。石丸監督が「今日はミスもあったけれど前への推進力もありました。それが上手く得点に結びついたのは良かった」と語る通り、前節まで失われていた前への推進力が段違いに向上した。実は戦術的には何も難しいことはしておらず、全力でボール奪いにかかって、奪ったら迷う前に前線に動かしイヨンジェorエスクデロを走らせるというだけ。いつになく速めのタイミングでボールを動かしたため、パスはミスになることもあったが、アバウトなボールでもイヨンジェが長槍のように敵陣に突っ込むことで千葉の守備陣は(ポジションも意識も)下がり気味になった。多少粗はあってもとにかく相手より先手先手を京都が打ち、後手に回った千葉は余裕をなくしてエラーを起こし、それを衝いた、という兵法書のお手本になりそうな展開。あんなに噛み合わなかった歯車が、あっさりと元に戻った。

■再船出
 イヨンジェが槍のような突破・裏狙いで相手を退かせる嚆矢(こうし)となると、それに呼応して後ろから布陣全体を前に前に押し上げたのが新たなボランチコンビ、アンドレイ&吉野だった。これまで片方が前目、片方が後ろ目ということの多かったボランチ2枚が、ハンドルを握る両手のように揃ったまま強気な位置取りを保つ。さらにその後ろ(高橋、菅沼)も強気に最終ラインをコントロールし、コンパクトな陣形を保持。侵入してくる敵を絡め取る絶妙な距離感を維持した。ちょうどそれは、天皇杯2回戦でセレッソを凌駕した時のコンパクトな守備網の再現のようだった。
 前節の戦評で「チームが4節あたりまで逆戻りした」と酷評したが、わずか1週間でチームが最も良い出来にあった天皇杯2回戦のところまで戻してきた。これまで積み重ねたものが無駄ではなかったという安堵とともに、ここにきてアンドレイ&吉野という新しい可能性が登場したことは素直に喜びたい。特に吉野の走力と危機察知能力、パス展開力、判断力の速さ、そしてある種の大胆さはこれまでになかった武器。吉野がここまでできるのなら、アンドレイも無理して上がることもなく、潰し能力を発揮しやすい。つまり「相棒」として相性が抜群に良い。右サイドで起用したダニエルロビーニョの守備面での献身性も含め、“新たな発見”を得て、この内容を目指すべき針路とし、石丸丸は再び航海へと船出する。…って、石丸丸って語呂が悪いなぁ。