ギラヴァンツ北九州○2-0●京都サンガF.C.
51'オウンゴール
75'竹内 涼
■食いつき合い
水槽のピラニアに餌を入れたように、北九州も京都もボールに食いつくのである。お互いに食いつき合い、奪った方が速攻に入るというよく似たタイプのがっぷり四つの戦いだった。ただ、違う部分がある。京都がボールにチャレンジするのに対し、北九州は人にチャレンジするのだ。人にチャレンジ…つまり身体をぶつけて奪うフィジカルサッカー。前半はそれでも京都が優勢だった。ただし、食いつき合いから脱して前に運んだ部分からの攻めのアイデアは貧困だったかもしれない。駒井善成がサイドに流れたり裏で欲しがり、その結果中村充孝が孤立して食いつかれて餌食になったり。工藤浩平や安藤淳がタイミングよく上がっていた20分~30分の時間帯は、2列目から次々に沸き出すような形になっていただけに、惜しいのだ。ガツガツと食いつき合いはやがて消耗戦になる。フィジカルでガンガンやられて何が起こるかといえば、消耗だ。そして体力よりも先に、精神が消耗する。
■致命的なミス
人は焦るとエラーを起こす。人一倍細身の黄大城は、見た目通りフィジカルコンタクトに弱く、随分とプレッシャーを受け続けていたのだろうと思う。あわや2枚目のイエローカードで退場かというタックルを犯し、そのFKの流れから押し込まれてCKを献上。ニアのクロスを前で弾こうとした水谷雄一のパンチングは空を切り、不運にも失点してしまう。「勝たなければいけない」―そんなメッセージを込めて大木監督は宮吉拓実、原一樹という攻撃のカードを切るが、それによって焦りはさらに倍加。前がかりの気持ちを持っていた安藤淳は、ペナルティエリアでボールを受けた時点で顔を上げて最前線を見ていた。最前線を見たまま身体を寄せてくる相手にたいして切り返しをした。奪われた。失点した。嗚呼、焦りが焦りを呼び、落ち着かないまま起こった致命的なミス。1失点した時点で黄大城を宮吉に代えたのは、いい判断だったと思う。ここで一度布陣を変えた。しかし、そこからものの10分で再び原を入れて布陣を変えた判断は、ミスを招く要因を作ったと思わざるをえない。
〈京右衛門的採点〉
水谷 4.5 …飛び出して触れない痛恨のミスで失点。いい所も少なかった。
安藤 4.5 …凡ミスで相手に2点目をプレゼント。それ以外は悪くなかったが、やってはならないミス。
染谷 6.0 …読みのいいカバーリングをみせ、ピンチの芽を摘み続けた。
バヤリッツァ 5.5 …よくパスカットしていたが、相手のスピードに翻弄される場面も。
黄 4.0 …1対1で後手を踏み、裏を取られ、攻撃でも判断が遅く流れを停滞させた。
福村 6.5 …バランスを取りながら機を見て攻め上がるなど、いいプレーを連発した。
チョンウヨン 6.0 …よくボールに絡み、奪うプレーもつなぐプレーも良い出来だった。
中山 5.0 …時間を追うごとに存在感がなくなり、簡単なミスも目立った。
工藤 5.5 …2列目から飛び出すことでチャンスになったが、周囲と合わなかった。
中村 5.0 …ドリブルもパスも精度を欠き、判断も悪く期待に応えられず。
駒井 5.5 …頑張りは人一倍だったが、報われず。中村との距離感が遠かった。
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宮吉 5.0 …何度かあった絶好の決定機はいずれもバーを叩く。力みすぎ。
原 5.0 …パワフルな突破を試みるも、細かいミスで好機を逸するプレーが目立つ。
伊藤 ――
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大木監督 5.0 …ミスで自滅。挽回すべく打った手はほぼ裏目で、お手上げ状態。