二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J2第40節 北九州vs京都

2012-10-28 | 蹴球

ギラヴァンツ北九州○2-0●京都サンガF.C.
51'オウンゴール
75'竹内 涼

■食いつき合い
 水槽のピラニアに餌を入れたように、北九州も京都もボールに食いつくのである。お互いに食いつき合い、奪った方が速攻に入るというよく似たタイプのがっぷり四つの戦いだった。ただ、違う部分がある。京都がボールにチャレンジするのに対し、北九州は人にチャレンジするのだ。人にチャレンジ…つまり身体をぶつけて奪うフィジカルサッカー。前半はそれでも京都が優勢だった。ただし、食いつき合いから脱して前に運んだ部分からの攻めのアイデアは貧困だったかもしれない。駒井善成がサイドに流れたり裏で欲しがり、その結果中村充孝が孤立して食いつかれて餌食になったり。工藤浩平や安藤淳がタイミングよく上がっていた20分~30分の時間帯は、2列目から次々に沸き出すような形になっていただけに、惜しいのだ。ガツガツと食いつき合いはやがて消耗戦になる。フィジカルでガンガンやられて何が起こるかといえば、消耗だ。そして体力よりも先に、精神が消耗する。

■致命的なミス
 人は焦るとエラーを起こす。人一倍細身の黄大城は、見た目通りフィジカルコンタクトに弱く、随分とプレッシャーを受け続けていたのだろうと思う。あわや2枚目のイエローカードで退場かというタックルを犯し、そのFKの流れから押し込まれてCKを献上。ニアのクロスを前で弾こうとした水谷雄一のパンチングは空を切り、不運にも失点してしまう。「勝たなければいけない」―そんなメッセージを込めて大木監督は宮吉拓実、原一樹という攻撃のカードを切るが、それによって焦りはさらに倍加。前がかりの気持ちを持っていた安藤淳は、ペナルティエリアでボールを受けた時点で顔を上げて最前線を見ていた。最前線を見たまま身体を寄せてくる相手にたいして切り返しをした。奪われた。失点した。嗚呼、焦りが焦りを呼び、落ち着かないまま起こった致命的なミス。1失点した時点で黄大城を宮吉に代えたのは、いい判断だったと思う。ここで一度布陣を変えた。しかし、そこからものの10分で再び原を入れて布陣を変えた判断は、ミスを招く要因を作ったと思わざるをえない。


〈京右衛門的採点〉
水谷 4.5 …飛び出して触れない痛恨のミスで失点。いい所も少なかった。
安藤 4.5 …凡ミスで相手に2点目をプレゼント。それ以外は悪くなかったが、やってはならないミス。
染谷 6.0 …読みのいいカバーリングをみせ、ピンチの芽を摘み続けた。
バヤリッツァ 5.5 …よくパスカットしていたが、相手のスピードに翻弄される場面も。
 黄 4.0 …1対1で後手を踏み、裏を取られ、攻撃でも判断が遅く流れを停滞させた。
福村 6.5 …バランスを取りながら機を見て攻め上がるなど、いいプレーを連発した。
チョンウヨン 6.0 …よくボールに絡み、奪うプレーもつなぐプレーも良い出来だった。
中山 5.0 …時間を追うごとに存在感がなくなり、簡単なミスも目立った。
工藤 5.5 …2列目から飛び出すことでチャンスになったが、周囲と合わなかった。
中村 5.0 …ドリブルもパスも精度を欠き、判断も悪く期待に応えられず。
駒井 5.5 …頑張りは人一倍だったが、報われず。中村との距離感が遠かった。
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宮吉 5.0 …何度かあった絶好の決定機はいずれもバーを叩く。力みすぎ。
 原 5.0 …パワフルな突破を試みるも、細かいミスで好機を逸するプレーが目立つ。
伊藤 ――
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大木監督 5.0 …ミスで自滅。挽回すべく打った手はほぼ裏目で、お手上げ状態。




2012 J2第37節(延期分) 徳島vs京都

2012-10-25 | 蹴球

徳島ヴォルティス●2-4○京都サンガF.C.
           11'チョンウヨン
           29'中村充孝(P)
           63'中村充孝
68'ドウグラス
           73'バヤリッツァ
84'橋内優也

■魔のペース
 競馬に“魔のペース”というのがある。気がつけばスローペースになっていて、逃げ馬が脚をためて前で残ってしまうような展開。すなわち自分の土俵に引きずり込んで、まんまとしてやったりという戦い方だ。台風順延で唯一のゲームとなったこの試合の場合は、スローペースではなくハイペースだった。序盤こそ徳島がロングボールを前線に入れて押し込んでいるように見えたが、全体を通して見ると随分ガチャガチャとして速いゲーム。これは京都のペース。速いプレスと速い球離れ、ちょこまかと動きながら攻守を速く切り替える。徳島の方から見れば、京都が最も得意とするリズムに合わせてしまい、慣れないスピードで無理なサッカーをやらされた格好。それにしてもJ2では年に何度も見られないようなスピード感と疾走感のあるゲームの中で、20本近くパスを繋げてみたり、相手を翻弄して突破したりする京都の攻撃は去年の天皇杯の頃を彷彿とした。ただ、2失点目は自ら作り出した魔のハイペースに自ら溺れた格好。徳島のハイペースなパワープレーのラッシュを浴びるだけ浴びて、撃沈。そこは大きな課題だが、反面、このチームの魅力かもしれない。“殴られたら、殴り返せばいい”。

■守りに入らない手綱さばき
 63分と73分で2度の3点のリード。セオリーなら守りに入ってもよかったかもしれない。だけども、最後まで守りに入らずに自らの信じるサッカーを貫徹しようとした姿勢は、評価したい。なぜか?それはこの日、今まで表現しようとしてもなかなか表現できなかった絵が見事に描けていたから。思えば今までのリーグ戦、悔しい試合は守備が頑張ってもあと1点が取れない試合だった。得点力がようやく爆発したのなら、可能な限り継続していい感触を叩き込んでしまえば、おのずと勢いは付く。木曽義仲の蝸牛の計のように、一気呵成に攻めて止まることなくそのまま勝ちを重ねるという意思表明に見えたのだ。
 終盤で逃げる姿勢を見せなかったことで、間違いなく士気は騰がっているだろう。疲労の蓄積以上に欲しかった「勢い」を得る方に賭けた大木監督。2005年甲府時代に、最終節で京都との死闘を制した後、勢いそのままに柏レイソルを連続撃破した手綱捌きを思い出した。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …前半のスーパーセーブ連発がなければ違った流れになったかも。
安藤 6.5 …安定した守備対応。左が疲れた後半には右から攻撃をビルドアップ。
染谷 6.5 …速いカバーで活躍。終盤ゴール前スクランブルでのブロックなど、気合い充実。
バヤリッツァ 5.5 …ロングボールをよくカットしていたがポッカリミスも目立つ。得点は見事。
 黄 6.0 …高いポジションから攻撃の起点に。後半は疲れたか、プレスも弱くなってしまった。
福村 6.0 …ロングボールには有効に対応できなかったが、ウヨンを生かすカバーの動きは○。
チョンウヨン 7.0 …得点、アシスト、プレスキック、潰し、キープなど高次元。エクセレント。
中山 6.5 …圧巻の運動量で前後左右に顔を出し、攻守を牽引。
工藤 6.5 …勘のいい速いプレスが徳島を悩ませた。パス回しの潤滑油のように走った。
中村 7.0 …仕掛けるドリブルも人を使うプレーも素晴らしく、見るだけで楽しいプレーを連発。
駒井 6.5 …その動きの速さは相手を幻惑。こまめに守れて気が利くコマメッシ襲名間近。
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内藤 ――
宮吉 ――
長沢 ――
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大木監督 6.5 …攻撃サッカーを貫徹。選手は「このサッカーは正しい」と奮い立ったはず。



2012 J2第39節 京都vs岐阜

2012-10-21 | 蹴球

京都サンガF.C.○3-1●FC岐阜
15'駒井善成
28'駒井善成
41'安藤淳
           86'樋口寛規

■士気=1cm1mm
 士気の高さは、あらゆる物事を超越してしまうかもしれない。「背水の陣」という言葉がある通り、もうこれ以上引けないから戦うしかないという状況に身を置いてしまえば、弱兵もたちまち強兵に変身する。サッカーでも、まるで催眠術をかけたかのように集団の士気を騰げて、勝利をもぎ取るタイプの指揮官がいる。いわゆるモチベーターと呼ばれる人で、短期決戦には滅法強い。元大分のシャムスカなどが記憶に新しいが、我らが大木武監督は、どちらかといえばモチベーションに頼らないタイプ。競争原理でやる気は喚起しても、士気を一気に騰げてしまうような魔術はない。その大木監督が前節の敗戦を受けてこんなことを言った。「最後に足を出せるか、最後の0コンマ5秒を大切にできるのか、そこの勝負になってくると思います。それができるかできないか。」―確か大木監督が甲府の監督だった時、「1cm1mmの努力」ってキャッチフレーズを使っていたことを思い出した。いくら士気が騰がったからといって、人間が突然強くなったり上手くなったりはしない。だが、1cm1mmの積み重ねが思わぬ力を発揮する。1mmを追い続ける者とあきらめる者との間には、とてつもなく大きな差が横たわっている。
 今日の試合ではそんな小さな努力を実践した者たちがいた。とりわけ、1得点目と2得点目がそうだった。

■奪え!そしてためらうな!
 1得点目を挙げた駒井善成は、相手の処理ミスを掠め取ったチョンウヨンから受け、そのまま一気に1人躱し、また1人躱してゴールを奪い取った。ボールを奪ってからの反転攻撃までのタイムロスは一切なし。そして2点目は、自陣深くで鋭い出足からボールを奪った安藤淳から。まさに相手より等0.5秒早く足を伸ばしてカットすると、迷うことなくサイドを駆け上がり、これまた迷うことなくクロス。駒井がナイストラップで相手を躱して2点目を奪い取った。どちらのゴールの基点も、1cm1mmを相手よりも早く寄せたことから始まっている。他にも中山博貴や染谷悠太の出足は終始鋭く、富山戦とはまるで違う「士気」を感じた。
 最終盤の「負けられない戦い」では、フォーメーションがどうこうより、個人個人がこの気持ちを持ち続けられるかどうか。幸いなことに多くの選手が去年の天皇杯でも同じような体験をしている。メンタル面で引っ張る役目はベテランだ。安藤、中山そして水谷雄一が気合い充分なので、あとは駒井のような若武者がいかに思い切りやれるか。前を向いたらためらうな!そんな士気を持続しつづけることが大事。「苦しい時は私の背中を見なさい」って澤穂希が言うように、精神が肉体を走らせることも、ある。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …何度か果敢に飛び出して決定機を阻止。無難かつ出来。
安藤 7.0 …2点目に繋がる攻め上がりなど、攻守に躍動。飛び出しも目立った。
染谷 7.0 …高いカバーリング能力を披露。奪ってからのビルドアップも○。
バヤリッツァ 5.5 …強さと裏腹に脆さも見せ、失点時を招くミスも。プレーも荒かった。
 黄 5.5 …高い位置から何度もクロスを送ったが、正確性を欠く。守備も危なかしい。
チョンウヨン 5.5 …ボールを奪う、受けるまではいいが、繋ぎや散らしが雑。プレスキックは○。
福村 6.0 …地味だが全体のバランスをとる仕事ぶり。特に後ろのカバーのタイミングが良い。
中山 6.5 …豊富な運動量で縦横無尽に駆け、プレスに、反転攻撃によく顔を出した。
工藤 6.0 …第一プレス者として愚直に戦術をこなす。いい飛び出しも目立った。
中村 5.5 …局面のテクニックは見せたが、決定的に崩す武器は繰り出せず。疲れ気味?
駒井 7.5 …キレキレドリブル以上に強烈なプレスが圧巻。このゲームを決めた男。
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長沢 5.5 …前線で収まらず。チャンスへの抜け出しやクロスでチャンスは作ったが。
内藤 5.5 …守備的な仕事が多く、早い寄せを見せたが、ファウルで止める癖にヒヤヒヤ。
宮吉 ――
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大木監督 6.5 …前節挙げた課題を実践させた手腕を評価。連戦を見据えた交代策?



2012 J2第38節 京都vs富山

2012-10-14 | 蹴球

京都サンガF.C.●0-1○カターレ富山
           86'西川優大

■諸刃の剣
 大木・安間の師弟対決。いつものごとく、似たもの同士対決…だとばかり思っていた。前半は同じ土俵の上で、「ボールサイドで奪い合って、即、攻撃に転じる」というサッカーを両チームとも志向していたようにも見えた。そうなればさすがに京都が一枚上手。ボールを失ったらすぐにプレスをかけて、奪い切ってカウンター…という場面が目立ち、一方的な攻勢に。そんな前半を受けてか、後半になると、安間カターレは今度はどうももう少し現実的なサッカーに舵を切ったように見えた。すなわち京都と同じサッカーをするのではなく、しっかり守ってカウンター…という弱者ののサッカーだ。富山の奇襲は何度かハマりかけた。しかし京都は相変わらずボールサイドに人数をかけて、プレスをかけて奪って、人数をかけながら押し込むという形を見せつける。50~75分くらいまでは、面白いように押し込み続けていた。ただ、ボールを奪い切れた場合は一気にチャンスになるが、奪い切れなかった場合、大ピンチに。中盤で奪ってボールを速く動かされ、数的不利でなんとかボールを止めなければならなくなる場面が増えた。諸刃の剣のような戦いぶりだが、あまりに優勢だったため、「いずれゴールは割れるでしょ」と観客も指揮官も楽観的に思っていたのかもしれない。

■好事魔多し
 シーズン前に祖母井GMが「腕押し相撲」の話を披露した。待ち伏せして一発で押し倒すようなやり方、面白いですか?と。結局、この日の京都はそんなふうに一撃に沈んだ。好事魔多し、ペースを握っている場面での、FKからの一撃ヘッド。ファウルを取られた黄大城の身体の入れ方はまるでファウルには見えなかっただけに、悔やまれる。
 だが、問題の本質は失点をしたことない。これだけ押し込んでいて1点も取れなかった攻撃に問題がある。ボールをちょこまかと動かすのはいいのだが、今日は特に一本調子かつ迂回が多かった。シュートがGK正面に飛ぶのも、DFに枠内クリアされてしまったのも、おそらく相手が守りを固める時間があるから。相手が整える前に崩すスピードが不足していた。タクトを中村充孝に預けすぎると、どうもテンポが遅くなるのだ。結局、失点してから慌てて原一樹を投入したが、今まで丁寧に開こうとしてた包装紙をいきなりビリビリと破いているような無為無策な神頼みになってしまい、実に不格好だったことは否めないのである。(原が悪い訳じゃない。原はよくやっていた、念のため)。
 上位陣で最も得失点差が少ない理由、それすなわち点が取れないこと。確かにゼロトップにして押し込むまではできる。でも押し込んだら奪わないと。押し込んだタイミングでズバッと切り札を出さないと。切り札いないのかねぇ?指揮官はヤングボーイなストライカーを使うでもなく、長身FW使うでもなく。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …特に悪い部分はなかった。失点はあれだけフリーで打たれたらどうしようもない。
安藤 6.0 …攻守に積極果敢で奮闘。右はほぼ完全に制圧していた。
染谷 6.0 …抜群の読みの良さで、危険な場面でカバーに入ったシーンが目立った。
酒井 6.0 …スピードを生かして相手より早く球際に寄せ、強さを見せた。大きなミスもなし。
 黄 6.0 …攻撃に比重を置きながらインターセプト→攻撃という切り替えが速かった。
チョンウヨン 5.5 …セカンドボールをよく拾っていたが、後半バテた。マーク付ききれず失点は痛恨。
中山 5.0 …前半は無難だったが、後半になると中盤で奪い切れず、繋ぎきれない場面が散見。
工藤 5.5 …大きなチャンスに繋がるボールを配球し、シュートまで持ち込むも、打開できず。
中村 5.0 …攻撃の頼みの綱だったが、打てども決まらず、出せども崩せず。ミスも目立った。
駒井 6.0 …やや空回り気味だったが、ボールを奪う、運ぶ動きは出色。ただ、周囲と息が合わなかった。
宮吉 5.5 …相手を腰砕けにするような巧みなトラップを見せていたが、途中交代。不完全燃焼なはず。
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内藤 5.0 …何度かフィニッシュに持ち込んでも阻まれ続ける。ただ、怖さがなかった。
 原 6.0 …キレのある突破で個人で劣勢の打開を試みた。できる限りの最大限は働いたが。
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大木監督 4.5 …終盤に失点→慌てて強引なサッカー→時すでに遅し。時を逸した采配が敗因に。




2012 J2第37節 栃木vs京都

2012-10-07 | 蹴球

栃木SC●1-2○京都サンガF.C.
7'杉本真
      68'内藤洋平
      74'宮吉拓実

■完璧だった栃木の京都対策
 指揮官にはいろいろなタイプがいる。Aタイプは相手をしっかり研究して長所を封じ込めるように布陣する総大将。Bタイプは自分たちの長所を最大に発揮させることを一番に考える総大将。栃木の松田監督は典型的なAタイプ。そして京都の大木監督はBタイプ。松田監督の京都対策はほぼ完璧だった。「鋭い寄せ」「ボールを速く展開する」「ピッチを広く使う」―京都が「やられたらイヤ」なことをことごとく実践し、さらに福村貴幸のアンカー、黄大城、染谷悠太の左サイドが不安定とみるや、そこを攻略の糸口にするしたたかさも持ち合わせていた。もちろん、週刊サッカーマガジンも“異才”として巻頭で紹介するほどのキーマン・中村充孝にはガチガチのマークが付いている。ジャンケンのパーとグーのようなもので、Bタイプの大木監督は、まったく手が出なかったような前半だった。ところがどういう訳か、前半終了と同時に松田監督は審判への異議で退席処分になっちゃった。これもサッカーの神様の悪戯ですかね?

■トランスフォームする京都
 大木監督も、さすがにグーだけじゃ勝てないことをわかっていたのか、ピッチを広く使われて不利な状況を作られていたことの対策として後半からは4バックにしてパーを出した。別に3でも4でもいいのである。大事なのは、今の京都は3バックも4バックも両方戦術として違和感なく使えるということ。いや、去年の終盤~天皇杯も3バックを基本に、途中から4枚にトランスフォームしたりする柔軟性があった。そして変身する時に必要不可欠なピースが、宮吉拓実だ。FWとしてゴールを貪欲に狙う動きだけでなく、サイドに流れても下がってきても仕事をする。スペシャリストとしての強さは物足りないが、大木式トランスフォームの場面でこういう使い勝手のいい手駒がいるかいないかでは大違い。もうひとり、最終ラインが3枚だろうが4枚だろうがきっちり仕事をこなせる安藤淳。この小器用な2人のホットラインで逆転ゴールが生まれたことは、Bタイプな大木監督もさぞかし会心だったのでなかろうか。京都の長所は小気味よいパス交換や中村充孝のテクニックだけではないんだよ、安藤も駆け上がるし宮吉も飛び込むんだよ、と。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …前半は最終ラインと息合わず、混乱気味。4バックになって落ち着いたプレーを見せた。
安藤 6.5 …不安定な守備陣の中カバーリングに奮闘。長駆上がっての逆転ゴールのクロスは見事。
バヤリッツァ 5.5 …強いんだけども、取りに行ってあっさりかわされたり、動けば動くほど穴になりかけていた。
染谷 5.0 …しっかり相手を止められず、前半は左サイドをズタズタにされた。4バックになって落ち着いた。
福村 5.0 …安易なボールロスト、ポジショニングのぎこちなさ、フィードミス…残念な出来。
駒井 5.5 …相手の猛攻の前に後手に回る場面が多かった。飛び出してもトラップミスなどで、機会を逸する。
中山 6.0 …ボランチ福村のサポート役として地味なお仕事。後半になってから、いい潰しが目立つようになった。
工藤 5.5 …相手に走らされていた印象。チャンスもあったが、シュート打たずに流したり積極性不足。
 黄 5.0 …相手に寄せてもプレスがかからず、持ち込んでもクロスは不正確。攻守ともにイマイチ。
中村 6.0 …押し込まれても、基点としてボールをキープ。1点リードを守る場面で大いに役立った。
サヌ 5.5 …栃木の速いプレスで周囲と分断され、孤立気味に。裏狙いも読まれていた。
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宮吉 6.5 …裏狙いも突破狙いも鋭く、前へ前への意識が逆転ゴールを生んだ。前からしっかり追う守備も◎。
内藤 6.5 …値千金の同点FKをねじ込む。それ以外の場面ではあまり目立たなかったが。
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大木監督 6.5 …交代した2人で2得点逆転。4バックにシステム変更したのも適切だった。