二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016明治安田生命J2リーグ第25節 山口vs京都

2016-07-25 | 蹴球

  レノファ山口FC△1-1京都サンガF.C.
63'小池龍太
 (↑福満隆貴)
             68'有田光希
              (↑エスクデロ競飛王)


[警告・退場]
・山口
なし
・京都
24'本多勇喜(C1反スポーツ的行為)
30'アンドレイ(C2ラフプレー)※次節出場停止


【全体の印象】
 徐々に攻勢を強める山口に対し、京都はそれを正面から受け止める格好となった前半。やや動きの重かった京都のチャンスは、セットプレー。ほぼ競り勝ってはいたものの枠に飛ばず。後半は早々からエスクデロのチャンスなど、京都も攻めに出たが、左サイドから人数をかけてゴールに迫った惜しい場面から逆襲を浴びて失点。しかし投入した有田の抜け出しからすかさず同点すると京都が攻勢を強めたが、追加点が奪えないままオープンな展開に。終盤は互いによく攻め、よく防ぐスリリングな展開だったが、雌雄は決しなかった。


【雑感】
■長州サッカーの長所
 前回対戦時にも書いた通り、レノファ山口はスイッチが入ってから全速力でゴールに迫る電光石火の“長州サッカー”。守→攻を切り替える発動点は明確で、ボールを奪った瞬間。京都でも大木監督時代に奪った瞬間にスイッチを切り替えるサッカーを繰り広げたが、守りの考え方が違うのと、ボールの持ち出し方がかなり違う。縦に速く持ち出していく山口のやり方は、2014年の湘南キジェスタイルが近い。前回対戦時にはある程度封じられていた、そんな山口のサッカーの長所が炸裂した。いや、炸裂させてしまった。
 守る側から見ると、ボールを相手に渡してしまった瞬間から、怖れ知らずの山口の攻撃に晒される。それなのに、ボールをみすみす相手に渡す「ミス」が多発。最終ラインからのミスフィードだったり(=菅沼)、中盤の底から弱いパスを奪われたり(=アンドレイ)、横パスや後ろ向きのパスをプレゼントしたり(=國領)…。パスの受け手の動きを含め、夏場の3連戦の最後ということで少し丁寧さや集中力を欠いた。あとは前節で4位に浮上したことで、少々慢心もあっただろうか。「自分たちは挑戦者」という気持ちを忘れてはいけない。


■大打ち合い
 それでも後半失点後すぐに同点に追いついてからは、京都がペースを奪い返した。前半から飛ばし気味だった山口はここで運動量も落ちた…かように見えた。ところがどっこい、山口は終盤に再びペースを握り返して走る、走る。問題があったとすれば、京都がゲーム運びをコントロールできなかった点。山口の仕掛けるテンポの速いサッカーに付き合う形になり、中盤を素通りして互いにゴール前にせわしなくボールを送り合う“打ち合い上等”の展開になった。これはある意味山口が望んでいた展開で、実は前回対戦時には京都はそれに乗らなかった。が、今回は乗ってしまった(まんまと乗せられてしまった)。大きな打ち合いになった。山口だけに大打ち氏。そんな展開になってしまった理由はたぶん、最後の選手交代がカギを握っている。


■最後のカード
 石丸監督が切った最後のカードは、MF堀米を下げて、FW矢島を入れる交代。布陣はこれで4-3-3(時々5-2-3)となり、前線を1枚増やす代わりに中盤は1枚薄くなった。打ち合いモードになったのはこの交代以降。点を奪いに行く交代だったのだろうが、結果的には、中盤を素通りする忙しいテンポを生み出す一因になってしまった。
 山口は電光石火のハイテンポ攻撃を繰り出す一方で、守備面には穴があった。1つはSBが馬鹿高いため生まれるCBの両脇の穴。交代したダニエルロビーニョはここを上手く使っていた。もうひとつは最終ラインの高さ面の迫力不足。有田、矢島という交代カードは、後者の弱点をパワーで押しつぶす狙いもあっただろう。
 がしかし残念ながらそこにボールを放り込んで競らせるという場面も少なく、結局エスクデロに預けて陸上戦からの突破狙いに終始。そうなると似たようなキャラクターの有田も矢島も、存在感を発揮できない。明らかなキャラ被り。ここにさらに195cmキロス(どうみてもパワー型)が加入するのだが、本当に役に立つのかどうか…。
 今の京都で終盤にゲームを動かせる切り札になり得るのは、スペースを見つけて裏に抜けて行ったり、セルの周囲を衛星のように動いてサポートするタイプ・柔軟系の方のような気がする。まぁでも現状では堀米しかいないのだけれども。チームの土台は整ってきているので、いろいろ試してみると、ラッキーボーイが出現するかもよ。



2016明治安田生命J2リーグ第24節 京都vs讃岐

2016-07-21 | 蹴球

  京都サンガF.C.1-0●カマタマーレ讃岐
59'エスクデロ競飛王
 (PK)


[警告・退場]
・京都
68'石櫃洋祐(C5遅延行為)※次節出場停止
90+3'本多勇喜(C2ラフプレー)
・讃岐
85'仲間隼斗(C2ラフプレー)


【全体の印象】
 3バック→5バックを柔軟に可変させる讃岐に対し、京都はなかなか攻め込めず。エスクデロや内田の飛び出しからチャンスを作るも、有田は封じられた。讃岐は奪い所を定め、カウンターを狙い、前半の終わりと後半の始めに決定機もあったが、精度を欠いた。後半から有田が基点を作りはじめ、有田の突破からPKを獲得し、先制。その後完全に京都がゲームを掌握したが、追加点は奪えず。終わってみれば内容としては圧倒したが、一瞬の緩みが命取りになりかねない最少得点差の勝利だった。


【雑感】
■CB我那覇
 試合開始前2時間前に発表された讃岐のメンバー表には、「DF 9 我那覇 和樹」の文字。まさかと蓋を開けてみれば、まごうことなきCB起用。さらにサンガユース出身のゲームメーカー・永田亮太もCB。讃岐は出場停止と怪我人続出で、本職のDFが2人しかいない緊急事態だった。戦力的に不安を抱える讃岐が取った戦術は、戦力の集中。からの、即席速攻。具体的には、京都が中盤底あたりで持ったところで急にプレスをかけ、奪えればウイングバックを上げてカウンターに走った。だが、プレスもカウンターも深追いすることなく、一撃繰り出して勝ち目がなければあっさり鉾を収めてしまう。撤退して5バックで守りに入る時間帯は、何ともゆったりとしたペースでのらりくらりと守りに入った。
 京都は前半、この讃岐がつくり出す「魔のうどんペース」にハマっていた。ボールは保持できても、保持するだけ。ボールを動かせるスペースは少なく、重戦車エスクデロの突破も警戒され、前線の有田は(またしても)消えていた。それでも内田の駆け上がりなどチャンスが作れる気配もあったが、知将北野の繰り出す省エネカウンターを警戒したこともあり、そこまでリスクも賭けず。監督は「そこは前半からもう少しリスクを懸けながらやってほしかった」と言うが、さてはて。

■MF堀米
 塩試合の気配漂うイマイチパッとしなかった前半だったが、堀米勇輝は今日も別格の動きを見せていた。ボールに絡んでは攻撃のスイッチを入れるパスを配球し、スペースを見つけてはレシーバーとなるべく走る。守備も責任を持って追う。ここ最近ずっと好調を維持しているが、おそらくプレーに対してもやっているサッカーに対しても確たる自信があるのだろう。いよいよ“石丸監督がどうしても欲しかったカワイイMF”“石丸監督を慕ってやって来たイケメンMF”が戦術の核となった印象だ。
 PKでのエスクデロの得点後、堀米がピッチを退くまでのおよそ20分間は、完全に京都がゲームを掌握した。守備のプレスもハマるようになり、堀米を経由するボールは明確なメッセージが付いた攻撃のボールとなって敵陣を面白いように回る。そして、この時間帯にきっちり2点目3点目を奪っていれば、楽に勝てたゲームだった。微妙な判定などツイてない面もあったが、ここ数試合続いている「決めるべき時に決める」という課題はまだまだクリアしたとは言いがたい。チャンスは作れている。あとは自信を持って堂々とプレーできる、第2、第3の堀米の登場を待ちたい(堀米自身のフィニッシュの精度も、まだこんなもんじゃないはず)。




2016明治安田生命J2リーグ第23節 徳島vs京都

2016-07-18 | 蹴球

徳島ヴォルティス○2-1京都サンガF.C.
27'佐藤晃大
 (↑内田裕斗)
33'広瀬陸斗
 (↑内田裕斗)
            64' 堀米勇輝
             (↑ダニエルロビーニョ)

[警告・退場]
・徳島
69'広瀬陸斗(C2ラフプレー)
・京都
60'佐藤健太郎(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
 マッチアップで先手を打つ形になった徳島がボールを支配。サイドから佐藤晃大をターゲットにした狙い通りの形で先制。京都は堀米とエスクデロで崩しにかかったが、前懸かりになったところをカウンターを浴び再失点。後半から徳島が引いたこともあり京都が攻勢に出たが、シュートがきっちり枠に飛んだのは堀米の追撃弾くらい。終盤は猛攻するも、エスクデロの中央突破頼みで、途中出場の有田、矢島も活きなかった。戦術的な完敗で、徳島の思い通りのゲームになった。

【雑感】
■伏線
 シュートを外しまくって無得点だった前節・群馬戦を受け、攻撃陣は「何としても点を取りたい」と意気込んでいたはずだ。エスクデロ、ダニエルロビーニョは点を取りたいがために前線に貼り付く時間が多かった。これがこのゲームの重要な伏線となった。
 石丸監督の敗因の分析は的確で、「前線からのプレッシャーをほぼかけることができず、ズルズルと下がっていくという、あってはならないことが起こった」と語る。その原因は双方の布陣のズレ。特に中盤の中央と両サイドのマッチアップだった。


基本布陣では徳島は2シャドーと2ボランチがいるところに京都はアンドレイと佐藤の2人。数が足りないところを山瀬あたりは絞ってどうにかしようとしていたものの、FWが前述通り攻撃への意識が強すぎたため守備に入ることが少なく、中盤中央は完全に徳島が制圧した。一方でサイドでは京都が数的優位なはずなのだが、ここも上手くいかなかった。


徳島のシャドーがサイドに流れると、数的有利はなくなる。同数ならば先手を奪われた側が不利。しかも石櫃(本多)と堀米(山瀬)の距離が開きすぎ、内田(広瀬)が受けるスペースを与えることも多かった。徳島にはパス出しの名手・カルリーニョスがおり、彼が左右に散らすことで京都はズバズバと先手を打たれることになった。


京都はいい時は前線からの能動的な守備を見せるが、プレスがハマらない時は次の手段として4-4のブロック(上図)を布く。この一時撤退モードに切り替えられる点は、今まで失点数を減らせてきた理由でもあるのだが、このゲームでは「キーマンのカルリーニョスを自由にしてしまう」という大きなマイナスを背負った。ここでも「FWが前線から守備をすれば…」という話になる。ダニエルロビーニョも決して守備をしない選手ではないが、やはり前節の結果に対する反動が彼を前線に貼り付かせすぎた(エスクデロについては攻撃の駒として割り切らなければならない)。結果、徳島が戦術的優位を保ち、狙っていた形から思い通りの得点を挙げ、カウンターから追加点というお誂え向きの展開となった。石丸監督の言う通りで、「前半が全て」だった。


■強引
 ハマらない戦いになった中でも、堀米とエスクデロだけは通用していた。チーム全体が機能しない中で、2人だけが突出していたため、当然攻め手は偏る。後半になるとそこにアンドレイも絡むようになり、2度チャンスを作ったが、2度ともアンドレイは好機を逸した。前節同様「ここで決めておけば」という場面が多かったが、アンドレイの好機の場面は複数が絡む流れも良かっただけに悔やまれる。
 ようやく機能しはじめたダニロビの守備から堀米が個の能力で得点を挙げるが、そのダニロビが下がったあとは、一層攻撃の強引さが増した。丁寧につなぐよりは一撃狙いだったり、無理目の裏狙いだったり。「もう全部エスクデロに預けちゃえ!」だったり。強引にでも決定機まで持ち込めてはいたが、結局前半に振り回されたのが響き、終盤は消耗。元気がいいはずの途中出場組(有田・矢島)も生かせなかった。
 相手に戦術的優位を奪われ、強引に奪い返そうとしたこのゲームによく似たゲームがあった。前半戦で最も出来の悪かった第3節岡山戦だ。この時は数的不利から石櫃が起死回生の同点弾をねじ込めた。今回も石櫃が2度ゴールを狙ったが、再現はならず。「何が何でも奪う」という気持ちも大事だが、それがゆえに凝り固まり、全体のバランスを崩しては元も子もない。勝てなくなったからこそ、少し余裕を持つことも大事なのではなかろうか。






2016明治安田生命J2リーグ第22節 京都vs群馬

2016-07-11 | 蹴球

京都サンガF.C.0-0△ザスパクサツ群馬


[警告・退場]
・京都
62'石櫃洋祐(C1反スポーツ的行為)
79'佐藤健太郎(C1反スポーツ的行為)
・群馬
85'松下裕樹(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
 キックオフからそのまま群馬ゴールを脅かした京都は、立て続けにチャンスを作るも決まらず。攻勢は続くも、次第に群馬のカウンターも許すようになると決定機も与えたが、菅野が立ちはだかる。すっかりテンションが落ちた京都は後半もシュートミスを連発。クロスから点で合わせにきた群馬の決定機を再び菅野が防ぎ反撃を待つも、火が付いたのは終盤になってから。エスクデロの強引な突破を足掛かりに猛攻に転じたが、結局シュートは枠内に飛ばず。自らチャンスを潰して焦って首を絞めるような痛恨のドローとなった。


【雑感】
■奇妙な均衡
 ゲームの趨勢を決めるターニングポイントは、あまりにも早く、突然だった。それは開始わずか10秒、キックオフ→堀米とエスクデロによる見事な連携からのクロスをフリーで飛び込んだ有田が外してしまった場面。このシーンで外したことが、ゲームを意外な方向に転がした。立て続けに山瀬の突破があり、さらにはこの日キレを見せていた堀米のクロスから山瀬のシュートがポスト直撃。序盤は技術面も精神面も京都が群馬を圧倒し、5位vs21位という順位そのままの力差があった。
「いつか点を取れるだろう」―そんな思いが観衆にもあったし、選手(堀米の談話)にもあった。一方、命拾いした格好の群馬はこの力差をどう受け止めただろう。おそらく「気合いを入れ直さなければ、ズタズタにやられてしまう」という強い警戒心だったに違いない。こうして京都のテンションが下がりはじめ、群馬のテンションが上がりはじめることで「力差」は次第に埋まってゆき、奇妙な均衡が生まれた。
 後半になると「いつかは点を取れる」が「あれれ?取れないぞ?」になり、「ヤバい、点、奪わなきゃ…」とチーム全体が焦りはじめる様子が手に取るようにわかった。焦りから拙速なパスやクロスを蹴るようになり、丁寧さや安定感が消えた。そういえばユーロの決勝でフランスも似たような展開でチャンスを決めきれず、延長でポルトガルの一撃に沈んだ。ただ、フランスのように相手の好守に阻まれているのならまだしも、自分たちで外しているのでは、どうしようもない。

■心のネジ
 サッカーには、「いつかは取れるだろう」という揺るんだ心のネジを巻き直すタイミングが何度か用意されている。ひとつはハーフタイム。だが後半になってみても前半序盤に見せたような熱量はなく、全体的にフワッとしたまま。まるでピッチ脇に浮いていたざっくぅの風船のように。もうひとつネジを締め直せるタイミングは、3回の選手交代のタイミング。64分に前線の基点役の有田をダニエルロビーニョに代えたが、この交代から明確な意図が感じられず、ダニロビの存在自体が浮いてしまっていた。ざっくぅの風船のように。
 このゲームでは技術面はともかく、戦術面にさほどのエラーはなく、問題はテンションの低下や停滞する空気感だった。選手交代はすなわち援軍。苦しい時に現れる援軍に士気が奮い立つような、そんな交代カードの切り方を期待したものの、石丸監督はカードを切る順番もタイミングも、効果的ではなかった。去年最終戦で中山博貴を投入してスタジアム全体の空気を変えたような、ああいう手も打てるはずなのだが。
 下がったテンションを自力で引き揚げたのは、75分のエスクデロの単騎突破。ただ、その直後に良い出来だった堀米に代えて内田を投入したのも、手としてはやや疑問。最終的には再び熱量を取り戻して群馬ゴールに襲いかかったが、何人かはもうプレーに焦りも出て、足並みは揃っていなかった。唯一の救いはこういうゲームを披露したのが、シーズン終盤ではなくてよかった、ということ。出てきた課題は、乗り越えるしかない。乗り越えられないなら、そこまでだ。




2016明治安田生命J2リーグ第21節 岐阜vs京都

2016-07-04 | 蹴球

FC岐阜●0-1京都サンガF.C.
       63'ダニエルロビーニョ
        (↑エスクデロ競飛王)


[警告・退場]
・岐阜
21'瀧谷亮(C2ラフプレー)
・京都
42'染谷悠太(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
 試合開始前のゲリラ豪雨の影響で、ピッチは水含みでボールが転がらず。このため前半は互いに長い浮き球を蹴って陣地を進める競技に。後半から京都はダニエルロビーニョを投入し、比較的ボールが転がるようになったメイン側(右サイド)にエスクデロを配置。ここを足掛かりに陸上戦を仕掛けると、エスクデロのスルーパスに抜け出したロビーニョが決め先制。岐阜も反撃を試みるが、攻め手は長い浮き球から瀧谷、レオミネイロを狙う空中戦ばかりで、京都の守備陣は集中して対応。粘りきった。不確定要素だらけの難しいコンディションの中でも、じれることのなかったゲーム運びは、ゴールラッシュとはまた違う形の「快勝」だった。


【雑感】
■難題
 人間の身体は暑さに徐々に慣れていくもので、急に暑くなりはじめる時期はとても疲労がたまりやすいという。そんな時期に、ミッドウィークに延期試合が挟まり、中2日で戦った熊本戦から中3日という過密日程(岐阜は通常の日程)。さらに豪雨の影響で水が溜まり、ボールの転がり方も跳ね方も予測できない重馬場。京都にとっては「これでもか!」と言わんばかりの難題が積み重なっていた。
 この状況で石丸監督が導き出したのは、徹底したリスク回避。途中でボールが止まるような不確実なグラウンダーのパスは蹴らず、相手の攻撃を跳ね返す際にも、すぐに外に蹴り出す。こうして意図的にゲームの組み立てを放棄したことは、極めて現実的な判断だった。
 このゲームが、前半戦のラスト。前半戦のうち何試合かは、「大事なところで集中力を欠く」「幼稚な試合運び」で勝ち点を落としてきた。そうした課題がまとめて出題されたような難題に、チーム全員の共通理解の元、粘り強く向き合えたことは、とても価値があると考える。前半戦の最後で、チーム、あるいは石丸監督が成長していることを実感する。

■面目躍如
 田植えの時期のような長良川競技場のピッチは、バックスタンド側がよりたっぷりと水を含み、メインスタンド側は比較的ましなコンディションだった。前半ゲームの組み立てを放棄した石丸監督は、後半からこのメインスタンド側のピッチにエスクデロ競飛王を配置転換。左からはキック精度のいい堀米に蹴らせて悪ピッチを飛び越して前方のターゲット・有田(矢島)を狙い、右は自らボールを運べるエスクデロ+前にダニエルロビーニョという陸上機動部隊を編成。岐阜が終始悪ピッチ仕様のロングボール大作戦だったことを思えば、この陸上戦への「仕掛け」は、ゲームの流れを大きく変える一手であり、守備陣に「耐える」「ストレスのたまる」戦い方を強いてきた指揮官・石丸清隆の面目躍如たる戦術転換だった。
 1点を奪ってあとは京都もかなり能動的にボールを動かしたが、岐阜にロングボール放り込みでエアバトルを仕掛けられる点は変わらない。そこはブレることなくセーフティに跳ね返し、ピッチ状態(や前線で動きのいいダニロビ)を見ながら繋ぐボールを前線にフィードするようなクレバーさも見せた。そして集中力高く耐える守備陣を最後尾から鼓舞したのが、守護神・菅野孝憲。最終ラインが常にセーフティにプレーする中、菅野はいつにも増してアグレッシブに掴みに行き、弾き、飛び出した。守勢を強いられる展開だからこそ、GKが勇敢であることは何よりも心強いのだ。