二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

京都サンガF.C. 2017陣容 など

2017-01-20 | 蹴球
今季の新体制が発表されたので、その陣容について。そして今季のチームについて思うことをつれづれなるままに。長文注意。

             
ゴールキーパー

  【1】菅野孝憲
  【21】清水圭介
☆新【29】永井建成

昨年J2上位陣を牽引した守護神たちが軒並みJ1へ行く中(楢崎はJ2に降臨するが)、菅野+清水がそのまま残留。間違いなくJ2ナンバーワンのクオリティ。ただ、折角の菅野の守備範囲の広さが生きる最終ラインになるのかは見通せず。3rdの永井はムードメーカー的な役割が期待されるが、山田元気(→山口)よりもさらに実績が乏しく、3rdまで含めればやや戦力ダウンか。昨年清水エスパルスが陥ったようなGK非常事態にならなければいいが。


             
センターバック

  【3】高橋祐治
☆新【4】田中マルクス闘莉王
  【15】染谷悠太
  【17】牟田雄祐
☆昇【25】麻田将吾

守備の主軸だった菅沼が山形へ移籍。菅沼はカード累積による出場停止以外はほぼフル出場していた選手で、穴は小さくない。加入するのは新体制発表会で「今更プレースタイルを説明する必要がないでしょ」と言い放った闘莉王。ピッチに立てば強烈なリーダーシップを発揮するのは間違いないが、問題はどれだけピッチに立てるのか?(立たせるつもりか)。年齢的にも菅沼のように年間通して出続けるようにも思えないため、むしろ主軸を考えるならば昨年怪我で出場0分に終わった牟田の方か。ただ、高橋・染谷を含めて“非常に怪我が多い、体力面も不安のある”陣容。最終的には結局下畠がCBで身体張ってたりするんじゃなかろうか…。何だかんだで下畠・吉野・本多の3バックとかになってたりして。


             
サイドバック

☆新【2】湯澤聖人
  【6】本多勇喜
  【24】内田恭兵
  【26】下畠翔吾
  【30】石櫃洋祐

布部ラインで柏から湯澤が期限付き移籍加入。絶対的な主力だった石櫃とポジションがかぶるため、あるいは石櫃を前目で使うプランなども考えられる。左は昨年同様本多の独壇場。逆に言えば本多しかいない。前述の通り下畠は昨年同様SBよりもCBで使われる機会が増えそう。守備に難のある内田は層の薄いサイドMFでの出番を狙いたいところ。ともかくも湯澤が戦力として計算できるのならば、かなりオプションは増える。


             
ディフェンシブハーフ

  【5】吉野恭平
☆新【8】ハ ソンミン
☆新【18】望月嶺臣

昨年の主軸アンドレイがシャペコエンセに移籍し、3人を戦力外に。吉野が登録ポジションをMFに変えたが、それでも本職はたった3人。吉野と、潰し屋タイプとの触れ込みの新外国人・ハソンミンが中心になりそうだが、このポジションは極端に手薄。望月は昨年山口でもさほど出番を掴めてた訳でもなく、やや前目のボランチという印象でもあり、戦力になるかは成長次第。後述するが「サポカンで発表した☆印の選手」を獲り逃がしたフシもあり、アンドレイに代わるような主力級がもう1人ほしいところ。スポーツ紙では「闘莉王ボランチ起用」なんて話もあったが、これは走力面で厳しいと思う。


             
オフェンシブハーフ

  【7】田村亮介
☆大【14】仙頭啓矢
☆新【20】伊東俊
☆新【22】小屋松知哉
☆昇【23】島村拓弥

昨年の絶対的主軸・堀米が甲府に移籍し、頼れるベテラン・山瀬は戦力外(→福岡)。昨季終盤MFで活躍したダニエルロビーニョもいなくなった。穴を埋めるのはサイドから仕掛けるドリブラー型・伊東と大卒新人の仙頭になるだろうが、スケールダウンは否めない。小屋松はMF登録だが本質的にエリア内に入っていくことで力を発揮するアタッカー。こちらも登録上MFとなった田村同様、サイドMFとしては守備面に不安が残る。人数はいるように見えるが、ゲームを組み立てていくタイプが見当たらず、バランスは悪い。これ以上の補強がないならば、“パス・クロス配球型”として石櫃や内田をMFに置く方が現実的かもしれない。


             
フォワード

☆新【9】ケヴィン オリス
  【10】エスクデロ競飛王
☆高【13】岩崎悠人
  【16】イ ヨンジェ
☆大【19】大野耀平
☆復【31】大黒将志

有田ら5人を放出し4人が加入。昨年の主力・イヨンジェ+エスクデロにハイタワー形のケヴィンオリス、出戻り点獲り職人・大黒とクセの強い面々をどう融合させていくのかは監督の手腕次第。新人離れしたフィジカルとシュート精度を持つ岩崎は即戦力と考えてよいが、5~6月はU-20W杯のためほぼ不在濃厚。大卒CF大野は、どこかルーキーの頃の黒部光昭の雰囲気が漂う。小屋松も本質的にはこのポジションで、ハイタワーの衛星役として力を発揮しそうなのだが…。とまぁ多士済々で火力は高そうだが、起用法次第では当然出られない選手も出てくる訳で、そこらあたりでバラバラになりそうな火種を抱える火薬庫とも言える。エリア内のスペースを自分のものとして使いたい大黒と、そこに入って行きたいセルや岩崎や小屋松は共存できるのだろうか?そもそもFWへのパスの供給源が足りないので、そこは誰がやるんだろうか?セル?うーん…偏りがキツくてハテナマークがたくさん浮かぶ。


             
コーチングスタッフ

コーチングスタッフ
☆新【監督】布部陽功
  【ヘッドコーチ】大嶽直人
  【コーチ】佐藤尽
☆新【GKコーチ】吉田宗弘
☆新【テクニカルコーディネーター】渡辺修

クセの強い選手が多く、年齢構成もポジションも決してバランスが良いとはいえないチームを束ねる大役を任されたのは、これがプロでの初監督となる布部氏。この陣容をみる限り率直に「猛獣使いに長けたベテラン監督の方が良いんじゃね?」という気分。指導者としては名将ネルシーニョの流れを汲むが、実際にひとクセのふたクセもある百戦錬磨の兵を使いこなせるか(厳しく統率できるか)どうかは未知数。逆に若手中心のチーム構成でその手腕を思う存分に振るってもらうのならば面白そうなのだが、監督以上にカリスマ性のありそうな選手がいる点はファンも不安。GKコーチはセレッソ時代にベストイレブンをびっくり受賞した吉田氏。監督との繋がり的には柏シフトなのか福岡シフトなのか。テクニカルコーディネーターの渡辺氏(福岡繋がり)は今のところ謎。格として重量級が揃う選手構成に対して、どうしてもコーチングスタッフの軽量感は否めない。まぁ、昨年J1では主力選手が監督に造反したチームがチャンピオンになったりしたんだけど。そんなところまで鹿島を見習う?

             
○以下個人的見解
去年そこそこ上手く行ってたチームを解体してまで編成した新チームは、蓋を開けてみるととてつもなく「いびつ」な編成になった。パワー系センターフォワードとか、フィニッシュワーク特化型ストライカーとか、重戦車ドリブラーとか、強烈すぎる闘将とか…。とにかく突出した個の能力を集めたものの、巨大部品をつなぎあわせる潤滑油的な存在がほとんど見当たらない。メンバーを眺めて、「誰が献身的に走ることになるんだろう…」と。J2はガンバや神戸がいた2013年を境に、以降は走力や組織力を持つクラブが勝ち抜ける傾向が強まり続けており、個の能力に重きを置いたこの編成で戦い抜けるかどうかはなはだ疑問なのであーる。

山中社長はサポーターズカンファレンスで補強戦力について☆印を打った布陣図を示し「ボールを奪い、縦に正確なスルーパスを出せる選手」(を狙っている)と語ったていたが、どうもそのタイプが見当たらない。おそらく京都新聞で「獲得できず」と報じられた名古屋の田口だったのかな、と。最も重要なはずのセントラルミッドフィルダーの補強の失敗が、いびつ感に拍車をかける。センターバックも、怪我人と出場停止が重なればニッチもサッチも行かなくなりそうだ。このバランスの悪い極振り戦力を運用していく布部監督は相当大変だと思う。全てが上手くハマれば強い勝ち方をするかもしれないが、リスク管理に失敗すればチームが空中分解しかねない危うさも孕む。

「鹿島のようになりたい」と理想を掲げるクラブが今オフ最重要視したのは、「精神的な支柱」の存在だったのだろう。そこで闘莉王を獲得した。果たして彼を加えることで本当に勝負強いチームに生まれ変われるのだろうか。そもそもほんの2年前、野口強化部長は同じようなことを言って、金南一と山口智という実績のあるベテランを獲得したことは記憶に新しい。とっかえひっかえ余所から精神的支柱を輸入しようとする姿勢は、もはやギャンブル依存症のような印象すら受ける。どんなクラブもそりゃ勝負強くありたいと思う。そのためにいろいろ知恵を絞ってクラブの哲学を作ろうとしてる訳だが、今の強化部の考え方はあまりにも短絡的すぎやしないだろうか。「東の鹿島、西の京都」と言われるようなブレないクラブを目指すと社長は豪語する(※議事録2ページ目)が、去年はチョウキジェ監督を招聘しようとして今年は闘莉王、とか、大黒への処遇、とか、目指してる世界像がピンボケしてるように思えてならない。

・山田元気(→山口)
・齊藤隆成(→水戸)
・石田雅俊(→群馬)
・磐瀬 剛(→岐阜)
・大西勇輝(→奈良)
・永島悠史(→岐阜)
・沼 大希(→鳥取)
・荻野広大(→讃岐)

上記は今季レンタルで外に出した若手たち。2013年以降に加入した高卒年代の新人10人のうち、田村亮介を除く9人が現在クラブにいない状態となった(奥川雅也は海外移籍)。ちょっと正常な状態とは言えない。

どうしてこんな極端な編成にしているのだろうか。サポカンで山中社長はこんな発言をしている。「今季は赤字決算になる見込みです。(中略)でも来季も赤字で臨もうと、そうでないと勝てない。ただし、それでだめなら、若手育成型に戻して、やるしかない(議事録3ページ目)」
ここから読み解くと、今季はお金をかけて戦力を獲って、昇格をめざすというプラン。これを仮に【プランA】としよう。一方で今季昇格できなければ、育成クラブに戻さざるをえないと言う。これを【プランB】とする。

DAZNマネー投入により今季からJ1の賞金額が大幅にアップする中、何とか乗り遅れないようJ1昇格を目指すため、博打をうつ格好で京都サンガは【プランA】に打って出た。成功すればさらなる大型補強路線を継続するのだろうが、失敗すればここ2年の補強戦力を清算し、今季の新人+上記レンタル選手を呼び戻す形で【プランB】の道を歩むことになる。一応博打に負けた時のリスクヘッジとして【プランB】まで視野に入れているため、やや【プランA】としても中途半端な戦力になったような気がしないでもない。最も不可解なのは布部監督のことで、どうみても【プランB】向きの監督なのではないかと思う。猛獣のような戦力を新人監督に託すというのもまた、伸るか反るかの大博打。1年での昇格というミッションを与えられた布部監督は「選手の特徴を生かしたい」と表明しており、組織の構築に時間を費やすよりも個の強さを生かすチームに仕上げる覚悟か。個人的な思いとしては「勝てば何でもよい」チームにはあまり興味が湧かない。いやまだ海のものとも山のものともわからないのだけど。

戦評?今季はやんないよ。たぶん。