二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J2第35節 京都vs水戸

2012-09-23 | 蹴球

京都サンガF.C.○4-1●水戸ホーリーホック
           3'橋本晃司
32'駒井善成
49'黄大城
73'中山博貴
81'宮吉拓実


■ワイドとズーム
 二言目には「狭い局面の…」と京都のサッカーを形容してしまう解説者の皆さんは非常に多い。密集戦術でのワンツーや鳥籠は、この試合でも何度も見せた。それは大きな欠点もあり、焦点をズームしたカメラレンズのように、広い視野を失ってしまう事もある。しかし、今日はみちがえるほど視界がワイドだったのだ。前節は3バックとも4バックともつかない変則4バックで何とか勝ちきったが、今節は完全に3バック。これにより密集戦術ながらも左・黄大城と右・駒井善成という両翼がしっかり固定されたのだ。ズームに寄った場面から黄または駒井を使い、一気に広角ワイドに水戸のサイドを攻め立てる。加えて、長いボールを放り込めば、五分の状態でも快速王サヌがマイボールにしてくれる。序盤こそ水戸が鋭い出足のプレスをかけ続け、電光石火の見事なワンツーから先制点を奪い取ったものの、このズームとワイドの使い分けが効果てき面だった。駒井のゴールは、最近流行りの言い方を借りるなら、ケチャップの蓋を開けたとでも言うべきか。これほど胸がすくまでに猛攻が続いたのも、局面密集パスと両翼ワイドへの変化、密集での遅効とショートカウンターの速さのギャップにある。よく繋がるけどもどかしい、単調なパスサッカーの面影はもうなかった。

■昇格サバイバル
 J2昇格レースは残り7節。どうやら甲府は“当確”なので、自動昇格の1枠とプレーオフの4枠を湘南から栃木までの8クラブで争うことになりそうだ。今節、湘南が岐阜に不覚を取ったように、カギを握るのは残留に向け必死なボトム4。そして直接対決。

湘南…熊本→愛媛→甲府千葉富山鳥取町田 (直1下3甲1)
京都…徳島→栃木富山岐阜→北九→福岡→甲府 (直1下2甲1)
千葉…愛媛→草津→大分湘南山形→松本→徳島 (直3下0甲0)
東緑山形町田→岡山→栃木→徳島→横浜→草津 (直3下1甲0)
大分町田横浜千葉鳥取→福岡→山形→松本 (直3下2甲0)
横浜…福岡→大分→北九→熊本→草津→東緑岐阜 (直2下1甲0)
山形東緑→熊本→岐阜→北九→千葉大分→岡山 (直3下1甲0)
栃木甲府京都→福岡→東緑→松本→岡山→北九 (直2下0甲1)
 
 どこが有利か?と言うことはなく、どこも難敵揃い。あえて言えば、若干横浜FCが相手に恵まれているかもしれない。湘南は特に厳しい相手を残しているかもしれない。また、残り3節の時点で状況が大きく変わっている可能性もある。昇格圏争いも残留争い組も、その時点で脱落組(脱出組)がいればモチベーションは大きく変化するし、甲府も昇格を決めてしまっている可能性が高い。
 京都は“な・ぜ・か”未だに勝てない富山と、今年負けている岐阜とのボトムズ連戦が最大のヤマ。甲府戦を最終節(それもホーム)で残しているのは大きなアドバンテージになりそうなので、ボトムズ連戦までの2戦でしっかりと踏ん張り、ここを乗り切れるかどうか。引いてきて何が何でも勝ち点拾いに来る相手を苦手としているので、今節のようにフットワークよく長短使い分けながら攻めを貫いていくしかない。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …守備機会は少なかったが、しっかり守る。1失点目はどうしようもない。
安藤 6.0 …前半は動きが重かったが、後半よく身体を張って盛り返した。
バヤリッツァ 6.0 …失点は橋本を捕まえきれなかった。終始強さを見せたが、ポカもあり。
福村 6.5 …危なげなく対応。“幼馴染み”星原のスピードもしっかり殺した。
チョンウヨン 6.5 …中盤でのカットが冴え、散らしも良かった。シュートも積極的。
中山 7.0 …ハードワークで危険なスペースを潰し、機を見て上がる。中山博貴の真骨頂を見せた。
駒井 7.5 …先制点だけでなくキレのある高速ドリブルと鋭いクロスを連発。後半は守備にも奮闘した。
工藤 6.5 …何度もバイタルエリアに飛び出してはチャンスを演出。シュート精度だけが足りなかった。
中村 7.0 …攻撃の発火点として味方を使うプレーが目立った。閃きだけでなく、粘り強いプレーも◎。
 黄 7.5 …高い位置で効果的なアタックを連発。クロスも鋭く、攻撃に幅を生んだ。
サヌ 6.5 …ボールをよく引き出しては味方を上手く使った。クロスへのヘッドだけはズレていたが。
---------
宮吉 6.0 …駒井とのコンビの良さを見せてダメ押し点。裏抜けもスペースを作る動きもできていた。
内藤 5.5 …積極的に前に出たが、息が合わずあまりボールに絡めず。
---------
大木監督 6.5 …前節から微調整の末、駒井・黄の配置が見事にハマる。1トップはまだ試行錯誤中?








2012 J2第34節 山形vs京都

2012-09-17 | 蹴球

モンテディオ山形●1-2○京都サンガF.C.
           45'+1工藤浩平
49'石川竜也
           68'中村充孝

■耐えることの大事さ
 耐えること。たぶん人間にとって一番苦しいこと。古今東西、耐えた者が最終的に勝利を掴み、耐えきれなかった者が勝利を逃した例は、山ほどある。今まで結果は出なくとも主導権を握り続けていた京都サンガ。しかしながら山形は桜印の助っ人・ブランキーニョを中心としてしっかりとゲームを組み立て、京都に主導権を渡し続けることはなかった。一進一退。どちらが得点してもおかしくなかった前半は、最後の最後で京都・黄大城のCKを山形DFが跳ね返した所、工藤浩平が絶妙の胸トラップから壮麗なボレーを決めてゲームを動かした。しかし両者に明確な差はなかった。山形が追いついたのは後半立ち上がりからすぐ。守備時には完全に3バックになる京都の守備陣が、ボールサイドに集まった瞬間に山形が左サイド(京都の左サイド)に展開。ボールにチェックをかけていたのは安藤淳であり、そのカバーは誰もいなかった。京都としては、こういう状況が生まれるのは承知でプレスをかけに行っている。ここで目先の状況に気持ちをマイナスにしてしまえば、あるいは崩れていたかもしれない。しかし、今日の京都は耐えた。大木監督も軽々しくカードを切ることなく、耐える姿勢をみせた。耐えることの先にあるのは、決して明るい未来だけではない。ただ、前節が耐えきれずに変えてしまって崩れた訳で、ここで動かない選択をしたというのは、評価したい。

■記録に残らないアシスト
 耐え続けた具体的な部分は、長沢駿だろう。決して前線の起点になりきれず、ボールを持っても失うシーンも散見した。それでもせっかく起用した選手を、大木監督は変えない選択をした。いや、変えようとしたところで「結果」が出たというべきだろうか。60分を過ぎてから長沢の高さがチャンスを生み始め、68分、中村充孝のゴールが生まれる。細かいタッチで山形守備陣がボールに触れていないのに勝手に倒れてしまったように見えるほどの技巧的ドリブル。長沢はその裏深くに走り込み、山形DFの守備陣の視界を横切った。特に前田和哉などは完全に長沢に釣り出されてしまい、「どうぞどうぞ」という具合に中村充孝のシュートコースを空けてしまった。この決勝点における長沢のプレーにはもちろんアシストは付かない。だが、こういう大きな自己犠牲を払うことができれば、エース・中村充孝はもっともっと点を取れるのではないか?別にその役目は長沢でなくても、宮吉でも駒井でも、原でも久保でもいい。各選手が歯車のようになってパスをポンポンつなぐだけでなく、1枚クランクを噛まして横回転を縦回転に変えてしまうような攻撃が今後もできるかどうかが、昇格サバイバルに生き残るカギになりそうだ。



〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …ビッグセーブで1点モノのピンチを阻止。終始安定し守備を盛り立てた。
安藤 6.0 …動きは守備偏重だったが、広い範囲を動いて無難に立ち回った。
バヤリッツァ 6.0 …中央で強さを発揮。前に行ってかわされてピンチを招く場面もあったが…。
福村 5.5 …簡単に裏取られるなどミスも多かったが、前向き守備では早い出足でピンチの芽を摘む。
 黄 6.0 …アウトサイドに張り続け、相手の脅威に。大事なところでのキックミスさえ無くせば。
チョンウヨン 5.0 …単純なパスミスが多く、相変わらずラフ。持つ時間が長くなると不安になった。
中山 6.5 …いい意味で見事な消えっぷり。裏方として最終ラインまで下がりながら守備を支えた。
工藤 6.5 …スルスルっと現れてはボールに絡み、チャンスを作った。先制点はベストゴールに投票したい美ボレー。
中村 6.5 …独特のリズムのステップで山形を翻弄。2点目素晴らしいが、もっとチャンスはあった。
駒井 6.0 …広範囲に献身的にチェックをかけ続ける仕事を90分続けた。イージーなミスは減らしたい。
長沢 5.5 …周囲と噛み合わずパス精度が悪かったが、2点目を生んだフリーランなど特筆すべき場面も。
---------
酒井 5.5 …猟犬のように相手を追い、猟犬のように前に走った。監督の期待した役割を果たす。
宮吉 ――
---------
大木監督 5.5 …軽率に動くことなく、根比べを制した。結論は中村充孝システムか?




2012 J2第33節 大分vs京都

2012-09-14 | 蹴球

大分トリニータ○2-0●京都サンガF.C.
33'為田大貴
79'チェジョンハン

■単調なる猛攻
 両軍お互いが平原に展開して、ガチで平地戦になる関ヶ原のような野戦なんて(日本の)歴史上レアなことで、大概は片方が陣地を高所に築いたりして、好・守がハッキリした戦いになる。極端に引き籠もれば籠城戦になるが、そこまでならないまでも、丘陵を城に見立てた“陣城”で守りを固め、反撃の機会をうかがう。まぁなんといいますか、そんな感じの試合だったのだ、この試合。苛烈に攻め立てるサンガ軍とソフト籠城を試みるトリニータ軍。サンガ軍は大分の陣城目掛けて何度も何度も猛攻を仕掛けるが、いかんせん軽兵。弓、石、鉄砲とさまざまな方法で攻めるも、どれも射程距離は短い。その上攻める方向は大体一方向。守る側からすれば、表、裏、表みたいな攻められ方をすればやりにくいが、同じ攻撃の繰り返しなら案外守りやすい。つまり攻めの手数は多かったが、バリエーションがなかった。そして一番最後の破壊力がなかった。単調で軽いパンチの連打を繰り返したサンガ軍、案の定自らの陣地の守備はお留守になる。トリニータ軍は少ない兵力でも易々と奇襲を成功させるのであった。

■「絶対」に縛られて
 結論から言えば京都は大分のカウンターに沈んだ訳だが、大木監督の「1点とられても2点奪えばいい」というスタンスは、対カウンターの意識は低い。相対的なサッカーをしないからだ。相手によってやり方を変えない「絶対」の世界では、自分たちが攻めを貫徹して相手を上回ることさえできればカウンター対策とか「相対」の立場である必要はない。もちろん、これは理論上の話。そうやっていつもブレないポゼッション&クローズなサッカーを貫いてきた大木監督が、今日はちょっと驚く交代カードを切った。いままで使わなかった長身FW長沢駿の投入だ。クロスを長沢に当てることで、ようやく繰り出すパンチにも強弱がつくようになり、攻撃に幅が生まれる。長もあれば、短ある。空中戦もあれば、地上戦もある。そんな攻撃は明るい結末を期待できるものだった。
 がしかし、大分GK清水圭介の活躍もあり最後の得点だけが奪えなかった。痺れを切らした大木監督は原一樹、宮吉拓実を次々に前線に送り込み、非常に頭でっかちになった布陣に。そんな状態で福村貴幸がつまらぬミスを犯し、逆襲をくらってダメ押しの失点。少ないチャンスをモノにした大分に対し、京都はシュート数17、コーナーキック数16もあったのに無得点。勝てないのはやはり押し込んでいる時間帯に決められないからだ。この絶対的サッカーを続けるならば、それは間違いなく。現状で昇格圏ギリギリ。結構限界も近いような気がした。


〈京右衛門的採点〉
水谷 5.0 …ピンチはしっかり防ぐが、弾きどころが悪く失点。2失点目の対応も軽率。
酒井 5.5 …森島を止めたり数的不利でもスピードを生かしよくブロック。
安藤 5.5 …危機を予測して広い範囲をカバーし続けた。ラインコントロールまで求めるのは酷か。
福村 4.5 …攻守どっちつかずでポジション取りも曖昧。2点目に繋がる凡ミス。
チョンウヨン 5.0 …背後はよくカバーしたが、パスにスピードがなく、テンポ悪かった。
中山 5.5 …低い位置でプレスとビルドアップを続け、黒子役に徹していた。
伊藤 5.0 …終始アグレッシブだったが、単純ミスが多くいい流れを止めてしまった。
工藤 5.5 …2列目からバンバン飛び出してチャンスを山のように築いたが、フィニッシュの精度が×。
 黄 5.5 …高い位置からプレス、チャレンジ、クロスを繰り返す。後ろのカバーも悪くはなかった。
中村 5.5 …守→攻を切り替え、圧倒的な存在感。時間が経つほどにシュート精度と味方との連携にズレが目立つ。
駒井 6.0 …自由に動きまくってボールに絡み続けた。後半の守備的な働きも効果的で運動量も落ちなかった。
---------
長沢 5.5 …ポストの役割を果たし、単調な攻めに変化をつけた。ただ、シュートは枠に飛ばしたかった。
 原 5.0 …個人で打開しようとチャレンジしたが、5バックになった大分の壁には通用しなかった。
宮吉 5.0 …左サイドでまったく存在感なし。持ち前の消える動きを出す前に、消えていた。
---------
大木監督 4.5 …想定プランが崩れ、勝負をかけたカードを切るも、バランス崩壊。得るものなき玉砕だった。





2012天皇杯2回戦 松本vs京都

2012-09-08 | 蹴球

松本山雅FC●1-3○京都サンガF.C.
         4'工藤浩平
         13'駒井善成
64'楠瀬章仁
         83'中山博貴

■大木式0トップ
 ここ数年天皇杯緒戦といえば佐川印刷だったので、何とも天皇杯感がない天皇杯。リーグ戦で苦杯をなめさせられた「反町山雅」だが、立ち上がりは案外すんなりと得点しましまう。得点の基点は中山博貴が駒井善成に入れたパスで、それを駒井は見事なポストをして工藤浩平が決めた。駒井はこの日、ワントップ。だけど、見ていると決してFWの動きではなかった。ある意味、いつもの駒井と一緒。印象としてはちょこまかとよく動く駒井と、キープ力はあるけど動かない中村充孝が2人前線にいるって感じ。いわゆる「0トップ」だ。ユーロでスペインが採用してちょっと話題になったあのシステム。さすがにスペインほど個々がボールを持てるなんてことはないけど、大木式0トップはそれなりに意図は見えた。キープレーヤーはやっぱり駒井で、彼が縦横無尽に動けば、スペースが生まれる。そこに後ろから上がってくればチャンスが生まれる。安藤淳や黄大城というSBが入ってきてもいい。そういう味方を生かすためのフリーランは、いつも宮吉拓実がやってはいるんだけど、監督がそういうプレーを望むならば、純然たるFWは苦しい。そして、交代でFW入れる場面でも、難しくなる。

■駒不足のセンターバック
 秋本倫孝と染谷悠太が怪我で離脱し、苦しい守備事情。バヤリッツァは次のリーグ戦まで出場停止。明らかに駒不足だ。そんなに中で大木監督は酒井隆介をCBとしてチョイスしているが、果たして彼の持ち味は出ているのだろうか?前半の後半からは、山雅の猛攻。京都はそれを受けてしまった。バヤリッツァだけは前から刈り取りに行く守備を見せていたが(それが失点の原因になった訳だが)、他の選手は受けに回る守備ばかり。それで主導権を渡してしまった感は否めない。ペースを相手に握られた時、どうしのぐか?というのは大きな課題。いつでも主審は味方してくれないのだ。何でも跳ね返せるスーパーディフェンダーがいればいいのだが、そんな手駒はいない。理想としては去年の森下俊のようにスピード+読みで機敏にカットできる選手なんだろうけど、酒井隆介にはどうやらそんな繊細さは微塵もない。むしろあの剛胆さはサイドバックで見てみたいのだ。そのうち「機転の利いてアジリティのある」って理由で、駒井をCBで使ったりして。だってCBに駒不足…だから。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …相手押せ押せの時間帯でスーパーセーブでピンチを防ぐ。
安藤 6.0 …高い位置&中にカットインしながら攻撃の核に。後半、守備では穴を作った。
酒井 5.5 …抜かれた時の高速カバーあり、気を抜いてあっさり抜かれる場面あり。ユニ引っ張るのはダメ。
バヤリッツァ 6.0 …圧倒的な強さで危ない所を跳ね返す。前で奪おうとしてかわされた失点場面だけ残念。
 黄 5.5 …積極的に前に出て、高速クロスで2点目をアシスト。後半になると良さが消え悪さが目立った。
チョンウヨン 5.0 …前に仕掛けるプレーはいいけど、背後のカバーがかなりおろそか。そして荒い。
福村 6.0 …バランサーとしては申し分ない動き。ただ、もうすこし黄を助けてやってもよかったかも。
工藤 6.0 …チャンスがあれば必ず顔を出す。先制点以外にも有機的な動きが目に付いた。
中山 6.0 …1点目につながるパスなどビルドアップで活躍。3点目の飛び出しは「博貴の真骨頂」。
中村 6.0 …キープ力と判断力を生かし山雅を翻弄。疲れる時間帯に気を抜く癖さえなくせば…。
駒井 6.5 …持ち前の機動力で左右に動いて全体を活性化。さすがに後半はバテたか。
---------
宮吉 5.5 …ボールの引き出し方はいいのに、ボールが足に付かない感じ。軽いスランプ?
---------
大木監督 5.5 …前半の前半は完璧。相手の攻撃を受けてしまってから有効な対策はできなかった。

2012 J2第32節 京都vs湘南

2012-09-02 | 蹴球

京都サンガF.C.●1-2○湘南ベルマーレ
          33'キリノ
47'工藤浩平
          56'大槻 周平

■チャレンジとミス
 京都サンガ所属のブラジル人はもうGKコーチのアダウトだけになったけど、今年も恒例のサンバDAY。サンバとかサルサとかルンバってジャンルの音楽は、ベースのリズムさえあればそこに即興で伴奏やら踊りを重ねていくものらしい。楽譜アリの型に嵌った音楽とは違う自由さが最大の魅力。太鼓の乱れ打ちはさらなる連打を呼び込み、回りを巻き込んでいく陽気なリズムだ。この日の京都の前半の攻撃は、サンバにも似た連打の連続のリズムがあった。出色だったのは、キレキレのドリブルで仕掛けた駒井善成と、鋭い出足でボールを奪って反転速攻の旗手になったチョンウヨン。“若くてイキのいい”湘南相手にどんどんチャレンジを仕掛けると、黄大城が、工藤浩平が、福村貴幸が、果敢に続く。チャレンジがチャンスを生み、いつ湘南ゴールを割ってもおかしくない試合展開だった。心地良いリズムを刻んでいた「流れ」。それをフイにしてしまったのが、中村充孝の安易な横パスだった。いい流れの中で犯してしまったミス。サッカーはミスを競う競技…なんて言葉もある通り、ミスは即ちピンチに。単純に1失点したことよりも、好事に流れを失ってしまったことに、勝負の分水嶺があった。

■失った流れはなかなか取り戻せない
 後半早々に一度は同点に追いつきながらも、それからゲームの大きな流れを引き戻すことはできなかった。もちろん、酒井隆介があっさり裏取られるところを救おうとし染谷悠太の負傷というアクシデントもあった。ただ、時間を追うごとに流れがどんどん京都よりもさらに若い湘南に移ったのは、わかりやすいところでは運動量の差。たとえば京都側は前半キレまくってた駒井の運動量がガクッと落ちた。けれど大木武監督は、そこをテコ入れせずに原一樹を投入。原はセットプレーのボールを素早くセットしたり、人一倍一生懸命だったのはわかるのだけれども、残念ながら機能しなかった。思い起こせば前半はチャレンジしながら精密機械のようにボールを繋ぎ、奪われてもすぐ奪い返せていたのが、どんどんボールの扱いが雑になり、イチかバチかの“一発狙い”に。選手交代するほどに、自分たちのサッカーを見失っていく京都に対し、年齢は若いはずの湘南のサッカーは実にしたたか。「何をやれば相手が嫌がるか?」を追及したような心憎いばかりのボールの動かし方で、ほとんどミスもなかったんじゃなかろうか。特に高山薫は時間を追うごとに運動量が増していくよう。疲れた時間で踏ん張れる選手がいるチームは、強い。
 そう、一度失ってしまった「流れ」は、なかなか取り戻せないのだ。そして一度失った勝ち点も、もう取り戻せない。独特のリズムで流れを一変させてくれてたブラジル人が開幕後になってからいなくなったのが、返す返す痛かったなぁ、と思う9月でございます。西京極にも、少し秋風が吹いてきました。



〈京右衛門的採点〉
水谷 5.5 …好セーブもあったが、悔しさの残る2失点。
安藤 5.0 …前半、駒井とのコンビで右を制圧したが、後半は裏を取られまくり。
染谷 5.5 …キリノに手を焼き、味方の凡ミスのケツを拭き、損な役回りの末…負傷。
酒井 4.5 …相手の攻撃を受けてしまった時、単純なミスでピンチを招き続けてしまった。
 黄 5.5 …前半はアグレッシブで攻守に効きまくっていた。後半疲れてからは精度がガタ落ち。
チョンウヨン 5.0 …チームの出来を象徴するように、前半は◎、後半は自ら崩れてラフになった。
福村 5.5 …ボランチとしてなかなか守→攻に機能してたが、CBに回ってからは脆かった。
工藤 6.0 …球際ファイターぶりを発揮し、チャンスメイクにも活躍。後半も運動量は落ちなかった。
駒井 6.0 …天晴れなチャレンジで湘南を翻弄。決定機を何度も演出したが、後半はバテバテだった。
中村 4.5 …終始ミスが多く、逆襲の種を蒔いていたようなもの。良かったのはアシストのところだけ。
宮吉 5.5 …地味だが右に左に動きまくってチャンスのスペースを生んでいた。フィニッシュは不完全燃焼。
---------
中山 5.0 …スクランブルで出たが、ゲームの流れに乗れず。ウヨンとの息も合っていない。
 原 4.5 …出場時間は長かったが、ボールに触れる機会も少。周囲との連携も良くない。
サヌ 5.0 …下がってきて触る、サイドに逃げるドリブル。これでは相手は怖くない。
---------
大木監督 4.0 …手術失敗の典型のようなゲーム。メスを入れるごとに容態は悪化した。