二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016明治安田生命J2リーグ第5節 札幌vs京都

2016-03-27 | 蹴球

北海道コンサドーレ札幌○3-1京都サンガF.C.
3'都倉賢
 (↑堀米悠斗)
45'+3福森晃斗
 (FK直接)
51'都倉賢
 (PK)
               89'下畠翔吾
                (↑こぼれ←山瀬功治)


[警告・退場]
・札幌
45'+4都倉賢(C1反スポーツ的行為)
71'福森晃斗(C1反スポーツ的行為)
・京都
なし


【全体の印象】
 開始早々京都の最終ラインの乱れを衝いて先制した札幌が、鋭いプレス&回収→速攻で主導権を握る。京都もイヨンジェの突破などでチャンスは作るも、シュート精度を欠いた。前半の終了間際、マセードと競った染谷のファウルで与えたFKから失点。後半も札幌の圧力は衰えず、有田のカウンターを潰され返す刀で放り込まれたところで菅沼が福森を倒してPK献上、3失点目。その後は覇気も活力も失ったが、終盤にアンドレイが運んで山瀬のシュートのこぼれを下畠が蹴り込んで反撃の狼煙…ではなく、焼け石に水。途中からの布陣変更や、後半投入の堀米勇輝も機能せず、ベンチワークもしくじった。


【雑感】
■劣っていたメンタル
 どうもこのチームは技術面・戦術面以上に、意識面の問題を抱えている。開始早々の失点が象徴的で、染谷は中途半端に前にいた前寛之に付きに行ってしまい、本来守るべきゾーンに都倉の侵入を許し、スルーパスを通されてしまった。染谷が出れば絞ってカバーをする本多も後手に回った上に都倉にあっさり躱され、脆くもラインは崩れ去った。連携ミスだ。戦術的にはどう動くべきか理解しているものの、刻一刻と変わる戦況の中で「行くべきか?とどまるべきか?」を徹底しきれない。そのあとも染谷はビルドアップのボールを弱く蹴って奪われたり、メンタル面の混乱を引きずった。本多も思い切って駆け上がるという場面もほとんどなく…。もちろん、後述する札幌のカウンターに備えるという部分もあるだろうが、それにしても気弱すぎた。
「気合いだ!気合いだ!気合いだー!」的なアニマル思考はどうかと思うが、気合いで負けている時点で喧嘩には勝てない。とはいえ気合いを見せ続けていた菅沼は、闘争心余ってPK献上。競った相手を手を使って押すことが闘争心ではない。3失点してからのメンタル面のしょぼくれ具合はすさまじく、ネガティブな精神状態→身体は動かず…という負のスパイラル。当然札幌に走り負け。なぜか終盤にアンドレイが気合いあふれる突破をみせ、そこから下畠のゴールが生まれたりするのだが。とにかく精神面にムラがありすぎである。勝手に自信喪失して、自分たちから崩れてしまっている。

■優れていた札幌のプレス
 前節の長崎同様、札幌にも出足の速い組織的なプレスを浴びせられた。札幌が優れていたのは、プレスの一発目で奪えずとも、次のプレーを予測しながら上手く網を張っていたこと。プレスを受けた方は、体勢不十分なままボールを離す(パスする)ことになる。京都としては、これまでの反省もあって、どうにか下げないでボールを前に送りたい。札幌はそこを狙いすまして奪う。奪ってからの攻撃に入る切り替えも速く、さらにターゲットマンの都倉が染谷に圧勝していたためガンガン強気に前に進出することができた。そして札幌は攻め込まれるとみるや素早く最終ライン5枚+その前にボランチ3枚という堅陣を布き、京都の遅攻を封じた。(それでもイヨンジェあたりは堅陣にクサビを入れられていたのだが…)
 京都はここ数試合、ハイプレスをかけてくる相手への苦慮が続く。ボールに食い付かれた時の逃げ方がハッキリせず、奪われてカウンターを浴びる→ラインが下がる→消極的…という悪循環。ハイプレスはいわばJ2の主流であり、これを苦手にしてしまうのならば未来はない。少しボールの動かし方を見直す必要がある。というより、ボールを動かすことよりも、人が動くことが足りていない。守備時の決まり事に縛られすぎて、フリーランや無駄走りが極端に少ない。このゲームで時折石田が見せていたような、ボールを預けて味方を追い越していくようなプレーを、もっと有効に使いたいのだが。





2016明治安田生命J2リーグ第4節 京都vs長崎

2016-03-21 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△Vファーレン長崎


[警告・退場]
・京都
60'佐藤健太郎(C5遅延行為)
90+2'有田光希(C4繰り返しの違反)
・長崎
34'田中輝希(C2ラフプレー)
90'田中裕人(C1反スポーツ的行為)


【全体の印象】
前半、ペースを握ったのは風下になった京都だったが、狙いを定めて浴びせかかる長崎のプレスの前に決定機が作れず。ビルドアップや繋ぎでのミスも目立った。後半、長崎は永井龍が基点&仕掛けで躍動し、押し込んだが、シュートミスと菅野のファインセーブでゴールは割れず。最後まで集中力が高かった長崎に比べ、京都は終盤ミスが増え、勢いを盛り返せず。悪くはないが良くもない状態が続く。


【雑感】
■迫力のない攻撃
 以前、守→攻の切り替えが遅い、と書いたことがある。切り替えについては意識して修正をはかっているようで、このゲームの特に前半はボールを奪ってから速く前へボールを動かそうという意識は強かった。がしかし、速く切り替えようとするあまりにミスパス、ミスフィードになることが多く、結局相手にボールを渡してしまい、ボールが両陣を行ったり来たりで落ち着かず。もちろん、長崎のプレスが鋭かったという面もある。イヨンジェに入れても、有田に入れても、果ては石櫃が駆け上がっても長崎のプレスに食いつかれ、それをかいくぐれなかった。京都のストロングポイントの消したのは、戦術ボード芸で名を馳せた安達ヘッドコーチのスカウティングの仕業だろうか。
 そんな訳でこの試合でも「奪ってから速い」攻撃は繰り出せず。なかなかトップギアまで入らない。攻めに迫力が出ない。プレーに迷ってる場面も目に付く。48分、石田からの落としをフリーで受けたアンドレイが出し所に迷って奪われたシーンなどが象徴的。戦術とは、究極的に言ってしまえば無数にあるプレーの選択肢を1つにして共有してしまうこと。少なくとも方向が同じ選択ができなければ、いつまでもトップギアには入らない。そこのところの意識付け、擦り合わせには時間がかかる。そういえばあの大木監督の1年目も、前半戦はまったく噛み合わなかった。
 一足飛びに迫力ある攻撃を繰り出そうと思えば、個人技頼みが手っ取り早い。しかしそれをやってしまえば過去2年と同じ轍を踏むだけ。とはいえ、もう少し緩急を付けたり流れに変化を付けられる手駒を上手く使いたい。そういう意味でもエスクデロの怪我は痛い。

■早くも駒井ロス
 前節「受け身に回っている」と酷評した守備面は、かなり改善し、奪い取りに行く守備の意識は戻ってきた(前述の通り奪ってからがマズいのだが)。気になるのはプレスの強度にバラつきがあること。具体的に言えば、前線から追い込む有田の守備は素晴らしい。ただ、これに周囲が上手く連動せず、有田だけがやたらガムシャラなのだ。去年までは、これに宮吉や駒井が同じテンションで呼応していた。
 後半、長崎に押し込まれ気味になった81分、佐藤健太郎が猛然と前プレスを仕掛けた場面があった。単発プレスに終わったがそのあと山瀬が身体を投げ出すスライディングでボールを収める。おそらく彼らは「もっと積極的に行こうぜ!」というメッセージを送ったはずだが、全体がアグレッシブになることはなかった。ここでも駒井がいれば、と思わずにはいられない。多少空回り気味でも喰らい付く駒井の運動量は欠けたままだ。
 良い部分もある。今年は守備に規律がある。4バックから片方のSBがCB化して3バックに可変したり、上がったSBの留守の所へのスライドするボランチの動きもスムーズ。去年までのバキの強靱さ頼みとは少し違う。染谷が単純にスピード負けしたり、本多の調子が後半急変して左サイドを狙い撃ちにされたのは気になるが、守備のベースは整ってきたか。だからこそプレスの強度を揃え、連動性を高めたい。そしてボール奪取から返す刀でカウンターを繰り出したい。そこらへんも駒井がやってた仕事だ。誰でもよい、誰でもよいゆえ駒井ロスを吹き飛ばしておくれー。






2016明治安田生命J2リーグ第3節 岡山vs京都

2016-03-14 | 蹴球

2016明治安田生命J2リーグ第3節 岡山vs京都

ファジアーノ岡山△2-2京都サンガF.C.
            50'イヨンジェ
            (↑こぼれ)
66'伊藤大介
(↑竹田忠嗣)
78'豊川雄太
(↑矢島慎也)
            90'+2石櫃洋祐
            (↑こぼれ←ダニエルロビーニョ)


[警告・退場]
・岡山
63'押谷祐樹(C2ラフプレー)
81'岩政大樹(C1反スポーツ的行為)
88'片山瑛一(C1反スポーツ的行為)
・京都
23'本多勇喜(C2ラフプレー)
68'イヨンジェ(C2ラフプレー)
81'菅沼駿哉(C1反スポーツ的行為)
81'菅沼駿哉(S2乱暴な行為)
86'エスクデロ競飛王(C2ラフプレー)


【全体の印象】
岡山の布陣に合わせ3-4-3で臨んだ京都。ところがマッチアップで常に後手を踏む形となり、前半から窒息状態。後半からは守備にも積極性が生まれ、右を上がった石櫃のクロスから先制点。流れを掴んだかに見えたが、2列目から飛び出した伊藤に裏を取られて失点。さらに中途半端に最終ラインを上げた裏を矢島豊川の五輪コンビに衝かれて逆転を喫したのち、菅沼退場で万事休す。…と思われたが、数的不利でも斬り込んだダニエルロビーニョのシュートのこぼれを詰めていた石櫃が蹴り込んで同点。敗戦必至から起死回生の勝ち点1を得た。

【雑感】
■悪循環
 相手と同じ布陣にして鏡合わせのマッチアップを狙ったのだろうが、しっくりこない3バック→怖いので安全運転→下がり目で対応→受け身に回る→間延びして中盤手薄→岡山のプレーメーカー・矢島を自由にしてしまう…という悪循環に。間延び=近くに味方がいないという状態は、プレッシングサッカーを標榜するチームとしては致命的。たとえボールを保持できても、連携できる味方とは分断されており、岡山の素早いプレスの餌食になるだけだった。前線では3トップの有田・イヨンジェ・エスクデロが流動的にポジションを変えたが、逆に収めどころが無く、攻守ともに活力を失った。敵陣にボールを運べず、守備は受け身で何とも息苦しい前半だった。3バックの布陣での数少ない収穫としては、前目に置くと石櫃の攻撃面が生きる、という点くらいだっただろうか。

■理知的・力業
 両者2ゴールを奪ったが、その内容は対称的。岡山の得点は2つとも京都が「掴まえきれなかった」もの。1つめは押し込まれて5バックになった状態で本多が中に絞りすぎており、その外側から遊撃兵・伊藤大介に走り込まれた。最終ラインに5人もいるのに、中に集中しすぎる余り外をおろそかにしたのは京都のエラーだが、中、中と叩いて、一旦下げて大外から走らせるという岡山の攻めは、意図的であり、理知的。組織で崩す攻撃のお手本のようだった。
 2つ目は石櫃からの攻めが失敗に終わり、岡山が保持したボールを奪うでもなく、守備モードに切り替えるでもなく、中途半端なライン取りをしていたその裏に抜け出した豊川雄太に走り込まれたもの。これもよく見ていた矢島と、狙っていた豊川の連携を褒めるしかないが、スイッチが「守」に切り替わらない時点でのラインの高さ+GKの位置取りは果たしてあれで良かったのかどうか。この日染谷が終始不安定だったのもあるが、戦術面の未成熟ぶりを露呈しているように思えてならない。
 京都も2つのゴールを奪ったが、組織的にボールを動かし、人を走らせて崩した岡山に比べれると、固めたところを力業で叩き壊したような得点。それはそれで個の能力の高さの証明なのかもしれないが、目指しているのはそんなサッカーだっけ?




2016明治安田生命J2リーグ第2節 町田vs京都

2016-03-07 | 蹴球

FC町田ゼルビア△1-1京都サンガF.C.
          71'アンドレイ
          (↑有田光希)
90+1'中島裕希
(↑重松健太郎)

[警告・退場]
・町田
なし
・京都
84'佐藤健太郎(C2ラフプレー)
90+1'本多勇喜(C5遅延行為)


【全体の印象】
町田の統率の取れた守備に手を焼いた京都。攻めあぐねるうちにカウンターも浴びたが、大きな危機には至らず。前半の終盤に山瀬が負傷交代すると、代わったエスクデロの動きが潤滑油となって前線にボールが入るようになり、ビッグチャンスも生まれはじめる。71分、町田のスローインを奪った有田が持ち上がってのクロスをアンドレイがねじ込んで先制。その後は疎漏なく町田の反撃を封じ凌いだが、予想外に長いアディショナルタイムにセットプレーの流れから痛恨の失点。勝ちゲームを落とした格好となったが、内容は決して悲観するようなものではなかった。


■天空の城ヲ攻略セヨ
 天空の城といえば、昨今は兵庫県朝来市の竹田城と相場は決まっているのである。それを果敢にも野津田競技場をして“おいでよ!天空の城”と相馬を決め込んだFC町田ゼルビア。登山の末にそびえる競技場もとい天空の城に陣を張った町田の守備は、実に基本に忠実でタイトだった。そもそも石丸軍曹率いる新生京都軍は、未だ前線の有田・イヨンジェにいい形でボールを供給できないという問題を抱えているのだ。前線への供給源・石櫃も、谷澤にガンガン裏を衝かれて思うように上がれない。それでも時間を追うごとに選手の距離感は改善の兆しを見せ、前半の終盤からは徐々に敵陣でプレーできる時間が増えていった。特に単独キープできるエスクデロ投入後は、敵陣ボール滞留時間が増加。基点が1つ生まれると周囲の動きも改善するもので、54分に有田のポストプレーから石田の縦パス→イヨンジェの落とし→有田のクロスをエスクデロがヘッドでズドン、外してゴールポストをガツン!、のシーンは今季最も素晴らしい連動性あふれる形だった。いやまだ2節目だけども。
 天空の城の攻略は、相手のミスを衝いたもの。この場面は有田の機動力だったが、今まであまり持ち味が出せなかったイヨンジェの強靱な機動力も生きるようになった点は好材料。緒戦では動きが重なることもあった2トップのバランスが良くなり、味方もヨンジェの動き出し方を理解し始めた。さらにアンドレイや本多が敵陣へと駆け上がっていくタイミングもこなれてきて、攻撃面の連携不足は急速に良化しつつある。あと欲しいのは「もう一押し!」の場面でエリア内に侵入してくる遊撃兵。それは若武者・石田の役割だ。パスでボールを動かすだけでなく、自らエリア内に斬り込むフリーランが見てみたい。

■高い授業料
 最後の最後で勝ち点3を取りこぼすことになった失点シーンについては、いくつかの不運と不注意が重なった。染谷が重松のハンドをアピールして一瞬空気も緩んだこともあっただろう。判定の是非は別として、重松に対して2人、3人とアプローチをかけつつも阻止出来なかった点は、人数は揃っていたのに対応しきれなかった前節水戸戦の失点と重なる。実はこのゲームの中にも伏線があって、それは前半19分、町田のCKをイヨンジェ、染谷、イヨンジェと3度もたついてからアンドレイが蹴り出したシーン。どうもエリア内でスクランブルがかかった状態で、人数がいる時の対応がハッキリしない。逆に言えば、問題点は明確なので、それは監督が「高い授業料」と言う通り、今後の糧にすべきこと。流れの中での守備は、両SBが相手を自由にしすぎる部分は気になったが、前線からの守備意識の高さと、両ボランチが網の目を狭めて絡め取るプレスは前節以上にスムースになってきた。ただし、高橋投入3バックの名の元に実質5バックで守りに入ってしまうと、どうしても最終ラインが下がってしまう。ゲーム運びとして「ある程度強気に積極的に行く」のか「リスクを避けて締めにかかる」のか。籠城なら籠城で、奇襲とセットにして相手の背後を脅かしながら、陽動しながら守りきりたい。勝ちきるための用兵術はまだまだ熟成の余地がある。