二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J1昇格プレーオフ準決勝 京都vs大分

2012-11-18 | 蹴球

京都サンガF.C.●0-4○大分トリニータ
          17'森島康仁
          33'森島康仁
          61'森島康仁(Pen)
          90'森島康仁

■2つの差
 大差が付いた。では、どこで差が付いたか?大分が優れていた部分はたくさんあったが、大きく2つある。1つめは大分の京都対策の的確さ。とにかく駒井善成、中村充孝へのクサビを徹底的に潰し、(大分の)自陣では京都がボールを回せないように追い込んだ。一人工藤浩平だけがボールを前に運ぼうとしたが、そこから先はまるでシャッターが閉じられているかのようで、実に水際だったプレスだった。特に阪田章裕の出足の良さが鋭く、駒井はまるで仕事をさせてもらえなかった。
 2点目は大分に「デカモリシ」こと森島康仁がいて、京都にはいなかったこと。彼は生まれながらのストライカーだ。strike=打つ。strikerは打つ人。打つ人はどんな体勢でも貪欲にゴールを狙い、そして打つ。紆余曲折を経てリーグ戦終盤で「ゼロトップ」に至った京都は、ストライカーを捨て、軽兵の強みを生かすことを選択したのだが、「サッカーには打つ人が必要でしょ?」といわんばかりにデカモリシはゴールを奪っていった。もちろん、リーグ戦終盤で好調だった自信もあったのだろう。一方で京都サンガの「奪う人」・原一樹は、最後に奪ったのが4月の大分戦。得点感覚は最後の最後まで戻らなかった。


■天運
 蒙古襲来しかり、桶狭間の合戦しかり、劣勢と思われる側が優位側を破る時には、風が吹く。この日の西京極陸上競技場兼球技場にも風が吹いた。キックオフまで好天だった空は試合開始直後からかき曇り、細かな雨を伴いながら北風が吹き抜けていった。京都の追い風で、大分には向かい風だ。そんな中で森島の1点目のフリーキックが生まれた。急激に巻き込むように落ちたのはおそらく風も影響しただろう。そして後半、濡れたピッチに染谷悠太が足を滑らせて処理をミスし、取り返そうとして一発レッドをくらってしまったのも、通り雨は無関係ではない。これらを気象の影響によるマイナス=運が悪かった…で片付けるつもりはさらさらない。ただ、天運が味方してくれるのは、常にゴールを奪おうと狙っている人や、球際に激しく寄せていく人なのだ、と。
 ひるがえって京都は自分たちのサッカーができただろうか?パスを連続してつなぐシーンはほとんどなく、人が沸き出すように追い越していくシーンも少なかった。そして大木監督は後半アタマに中山博貴を代えてしまった。パスを回すことよりも、サヌと原の「一発」に賭けたのだろう。負けることがわかりきっていた賭けである。

 こういう大差のついた“完敗”の先に、何か明るい未来はあるのだろうか。あってほしい。心がボキッと折れるような試合でも悔しさを表に出してくれた選手は、きっとかけがえのない戦力だ。試合終了を告げるホイッスルが鳴ったあとピッチに倒れ込んでしばらく起き上がれなかったのは3人。安藤淳、工藤浩平、チョンウヨン。それにピッチを周回するとき涙顔だった駒井善成。もちろん、他にもいるだろう。悔しさを闘争心に変える日が来ることを信じなきゃ、やっていけない。


〈京右衛門的採点〉
水谷 5.5 …1点目2点目は何とか弾きたかった。後半は孤軍奮闘したが…。
安藤 5.5 …いいカットからの攻勢もあったが、2失点目はその攻めの裏を突かれた。
染谷 4.0 …よくやっていたが、処理ミスからPK献上&レッド。ゲームを壊してしまった。
バヤリッツァ 5.5 …奪って攻め上がってみたり、数的不利になってからはチームを鼓舞。
福村 4.5 …時間を追うごとに元気がなくなり、左に穴を空けた。メンタルが折れたか。
中山 5.0 …ボールの収まり所がないせいかいい形でボールに絡めず。
チョンウヨン 5.0 …比較的よくキープしたが、圧力をかけられるとすぐにミスパスに。
工藤 5.5 …相手のプレスをかいくぐり、前線に飛び出す。染谷退場後はボランチに。
 黄 5.5 …機を見て攻撃に参加し、守備にも奮闘したが、中村とのコンビは悪かった。
中村 4.5 …厳しいマークに遭い何もさせてもらえなかった。
駒井 5.5 …前線でまったく収まらず。後半は独力ドリブルで見せ場をつくる。
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サヌ 5.5 …うまく基点になり、相手を置き去りにするスピードでチャンスは作ったが。
 原 5.0 …一発だけ枠に飛ばしたがセーブされる。それ以外は枠外。チャンスはあったが。
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大木監督 4.5 …狂ったゲームプランを修正できず。チームの持ち味の半分も出せていない。




昇格プレーオフ前夜

2012-11-17 | 蹴球
 明日はJ1昇格プレーオフ準決勝。3位京都の相手は、6位大分。大木体制になってから大分(これも同じ時期に田坂体制になった)と4回戦って2勝(…ともに去年)、2敗(…ともに今年)。実際、どんな戦いだったのだろう?ようやく忘備録としてこのブログを書きためてきたのが役に立ちそうなので、自分なりに大分戦を回顧してみた。


2011 J2第16節 京都サンガF.C.○2-0●大分トリニータ/主審・廣瀬格

 あー、久保が活躍した試合だ。で、秋本とか水谷とかベテランが頑張った、と。大分の出来も良くなかった。うむ。われながらなかなか簡潔でわかりやすい。


2011 J2第32節 大分トリニータ●1-3○京都サンガF.C./主審・松村和彦
 ふむふむ、内容的には大分に押されてた。ただ宮吉の活躍によって点が奪えた、と。森島が外し続けた…ああ、確かにそうだった。三平の機動力にはやられたなぁ。


2012 J2第10節 京都サンガF.C.●1-2○大分トリニータ/主審・廣瀬格
 早々にポコポコと2点取られて自慢のパスサッカーが雑になった、と。この試合は本当に可能性の低い裏狙いに終始した。この形になると、大木サッカーは死んでしまう。


2012 J2第33節 大分トリニータ○2-0●京都サンガF.C./主審・村上伸次
 大分が“籠城”した試合だ、と。大分のカウンター狙いに見事にハマった一戦だった。大分GK清水が当たってたなぁ。大木采配が取り散らかったことに言及してる。


 ただ、直近に当たった2012年9月のAWAY戦は、連敗になってどん底感あふれてたけど「内容は悪くなかった」と監督・選手が口々に語り、その後水戸戦の大勝の伏線になった試合。ざっと自分の忘備録を読み返してみて思うのは、「焦らす大分・焦らされる京都」という構図。これは戦術的に大分・田坂監督が意図的に京都の長所を消しに出てきているからで、これはまぁどんなチームでもやること。問題は「焦らされた」時に、京都の方がどう対応できたかによって結果が変わっている点。得点が取れないからって安直に裏狙いに走ったり、FWばっかり投入してみても、文字通り埒が開いてない。逆に緩急のスピード感をつけて人が激しく動く攻撃できれば、大分の壁は破れている。
 いくら大事な一戦だからって、普段やらないようなこと、上手くいった試しがないことに賭けて成功することはまずない、と考えよう。例えば大木サンガでいえば、「放り込み」や「縦ポン」の一発狙い。結局、どんなことでも積み重ねてきたものしか出てこない。それを粘り強く体現できるかどうか。おそらく中盤でバランスを取るであろう中山博貴に課せられた役目だ。そして一年を通じて「安藤が好調ならチームも好調、安藤が不調ならチームも不調、安藤が上がり気味ならチームも攻撃的、安藤が下がり気味ならチームも守備的」というキーマンであった安藤淳に注目する。どうしても点が欲しい展開になったのなら、宮吉拓実だ。今年の新戦力として「一発」が魅力の原一樹やサヌもいいけど、宮吉にはこのチームで積み重ねてきたコンビネーションとここ一番での勝負強さがある。さて、どんな展開になりますやら。


2012 J2第42節 京都vs甲府

2012-11-11 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△ヴァンフォーレ甲府

■崩せない堅陣
 甲府の城福浩監督は、FC東京時代は理想家という印象が強かったが、この日にみせた甲府のサッカーはリアリスト以外の何者でもなかった。守備陣形は最初から最後まで崩れない。リスクを冒さない。その上で京都がボールホルダーになった瞬間に厳しくチェックを入れる。こうして構築した「堅陣」だが、京都が突破できるチャンスは幾度かあった。しかし時間だけが経過してゆく。こうして京都にとって今シーズンずっとつきまとってきた課題が突きつけられたのだ。すなわち「崩せない相手から何とか1点をもぎ取る」という課題。拙評でも散々ダメ出しをしてきたつもりの「あと1点が奪えない」という最大の課題だ。
 理想家・大木武監督が突き詰めて作り上げたこのチームは、自分たちのペースの流れで点が取れれば倍加速的に魅力的なサッカーを現出する。だけども、どうしても1点欲しい場面、特に相手が堅陣を構築してしまっている時に、一撃必殺のような武器がない。イビチャ・オシムが「エクストラキッカー」と呼んでいたような組織からハミ出すスパイシーな選手がいないのだ。去年までは、いた。相手を崩せない時に単騎突撃しかけて風穴を開けるドゥトラがいた。その存在に一番近いのが原一樹なのだが、原はなぜか点を取れなくなってしまった。序盤はある意味「異物」であった故の独特さが得点に繋がっていたような気もするが、原がチームに溶け込むほどに得点力が失われたのは皮肉なことだ。
 城福甲府が構築したJ2最強の堅陣が、最後の最後まで崩れないことを目の当たりにした時、降り続く雨が急に冷たくなった気がした。熱い理想家よりも、冷たいリアリストが正義なのか…。そんな世知辛い現実が降り注ぐ。ともあれ、課題をクリアできなければ「この世界からの卒業」は叶わない。卒業は追試に委ねられることになった。


■そして追試へ
 追試は記念すべき第1回の昇格プレーオフ。初回に参加できるということは、昇格&降格のプロとしての面目躍如か…(苦笑)。リーグ戦3位となったことで最も有利なアドバンテージを手にしたが、正直なところまったく楽観視できない。なぜかといえば、こういうノックアウト方式では「どんな形であれ勝てばいい」と割り切れるチームが絶対に強いから。大木サンガは、残ってるチームの中では一番内容にこだわってしまうチーム。さらに京都は、アドバンテージであるはずの「引き分け」が極端に少ない。単純化すれば、勝つか負けるかのチーム。相手としてはとてもやりやすいチームなのであるが、大分はビハインドを持っているために「点を取らねばならない」という天の配剤。その最初の1点をめぐる駆け引きが全て。果たしてどちらが最初に積極的に奪いにかかるのだろうか。
 そもそも今の京都は「受け」のサッカーをできないチーム。守ろうとして張れる堅陣も戦術も持ち合わせていない。結局は自ら主導権を奪って相手に襲いかかって後手を踏ませるいつのもサッカーしかないだろう。ただ、どうしても奪えない時に点を奪うための別パターンが是が非でもほしいところ。どうせなら苦手な問題を回答して、追試をクリアしたい。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …序盤のピンチをしのぎ、なんとか無失点完封。枠内被決定機も少なかったが。
安藤 6.5 …前に出れば推進力がチャンスを生んだ。攻守に闘志を見せた。
染谷 6.5 …ボールをよく防ぎ、奪取し、素早く展開。大木サッカーの良き体現者。
バヤリッツァ 5.0 …前に出て奪いきれない→危険プレーの悪い形散見。ヒヤヒヤもの。
福村 6.0 …粘り強くフェルを抑え、奪って前に出る場面も。ただ、攻撃はチクハグ。
中山 5.5 …守備でのカバーが目立つ。ただ前に駆け上がる場面少く持ち味出せず。
チョンウヨン 6.0 …力強いカバーリングに惜しいシュート。見せ場は多かった。
工藤 5.5 …飛び出し不発。ボールによく絡んだが、シュートは枠内を捉えず。
内藤 5.0 …攻守で周囲とあまり噛み合わず、左サイドの活力不足を生んだ。
中村 5.5 …決定機も決められず。球際でのコントロールミスなど単純なミス目立つ。
駒井 5.5 …前半の惜しいヘッドなどもあったが、抑え込まれ基点になれず。
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宮吉 4.5 …裏を狙うも効かず。原投入後左サイドに移ると存在感もなくなった。
 原 5.5 …受け手に出し手、いろいろチャレンジしたが不発。すっかり器用貧乏に。
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大木監督 5.5 …全体の内容は悪くないが、1点を奪い取るための戦略が枯渇。





2012 J2第41節 福岡vs京都

2012-11-04 | 蹴球

アビスパ福岡●0-2○京都サンガF.C.
          23'駒井善成
          46'中村充孝

■原点
 大木武監督が京都サンガを率いて2年。昇格レースクライマックスに差し掛かったこの場面だからこそ、思うことがあるのである。それは、このチームが最も得意とする戦い方とは何だろう?ということ。ある意味、2年間の集大成のような「ラスト2節」には、ぜひとも最大の持ち味を発揮してほしいと思うからだ。
 京都のサッカーはよく「パスサッカー」という言葉で単純化される。だが、果たしてそれは核心を突いているのだろうか?パスを繋ぐことよりももっと大きな特徴を見落としてないだろうか?と。答えは「否」。ボールの奪い方と、奪ってからのスピードこそが、このサッカーの最大の持ち味だと、拙者は思ってやまないのである。奪い方とは、とにかく高い位置からプレスをかける。一度を奪いきれなくても、次の人間が予測して奪う。ボールサイドに人数をかけるのも、全てはこのプレスのため。奪ってからのスピードとは、せっかく奪う時に人数をかけているのだから、そこで細かく小刻みに繋いでいけばテンポが上がる。奪う→攻めるが一体化したこの反転速攻にこそ大木サッカーの原点があるのだと、強く思うのだ。パス交換はそれを具現化する手段にすぎない。
 既にリーグ戦の目標を失い、遅きに失した監督解任まで行ったアビスパ福岡とのこの試合で奪った2ゴールは、この「原点の輝き」が満ち溢れていた。とにかくプレスが速く、1人、2人と連動してボールを奪う。奪ったらそのまま攻撃に転じる。1点目は工藤浩平が奪ったボールのこぼれ球を即座にチョンウヨンが展開し、中山博貴がヒールで繋いで、中村充孝が駒井善成にラストパス。4人を経由して駒井に渡るまでほんの数秒しかかかっていない。もちろん、駒井の落ち着いたドリブル&シュートも見事だが、この奪ってからのスピードにこそ最大の強みがあった。2点目は安藤淳の前向き鋭いインターセプトから。安藤のスルーに工藤が抜け出してシュート、弾かれても中村がしっかり詰めていた。これもスピード感に満ちていた一撃である。
 ざっくりまとめてみると、
 ・人数をかけるプレッシング(奪えなくても次で奪う)
 ・奪ってからのスピード(人が追い越す、沸き出す)
 ・(結果的に)攻撃は最大の防御

この3つの“原点”は、ブレていないと再認識。どんな形でも勝てればいいのだけれど、自分たちの強みを表現して勝てたことは、きっと次への自信に繋がるだろう。


■次節、決勝戦
 2012年、京都サンガは「決勝戦」から始まった。1月1日に天皇杯決勝でFC東京に敗れ、2位。それから11ヶ月、長かったようで短かったリーグ戦の末に、次節再び大一番を迎えることになった。それは、昇格レースの「決勝戦」。勝てば昇格、負ければアウト。そういうトーナメントのファイナルと同等のゲームが何の因果か再び巡ってきたのである。直接戦う相手はヴァンフオーレ甲府だが、別に甲府と決勝を争う訳でないのが悩ましい。だがこの際、湘南以下の他チームの動向はどうでもいいだろう。「試金石」という言葉がある通り、甲府に勝てるか勝てないかは、来シーズンJ1で戦える価値があるチームかそうでないかの試金石。奇しくも大木監督にとって古巣であり、城福監督とは同じ富士通の元同僚。お互いによく特徴を知る選手も多く、2005年にも最終節で当たり甲府の初昇格に繋がったなど本当に因縁も深い。
 甲府と城福監督は、エースダヴィを欠くものの“J1チーム”にふさわしい真っ向勝負をしてくれるだろう。対する京都も「原点」を信じて戦い抜いてくれることだろう。お互いに逃げることなく、強みをぶつけ合って、2012年J2の最高峰の戦いが繰り広げられることを、切に願う。
 こいねがわくば、元日国立で掴みきれなかった「決勝戦」に、美しい虹がかからんことを。



〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …守備機会は少なかったがピンチは好セーブで最後列からチームを鼓舞。
安藤 7.0 …速い出足、鬼気迫るプレス、前への推進力は圧巻。
染谷 6.5 …素晴らしいカバーで堅守を支えるも、肩を負傷し途中交代。
バヤリッツァ 6.5 …高さに滅法強く、完封。ただ、前に出てでかわされる場面も…。
福村 6.5 …守備に徹しカバーリング能力の高さを発揮。前線へのフィードもよかった。
中山 7.0 …中盤の底で相手ボールを絡め取り、ピンチの芽を摘み続けた。
チョンウヨン 6.5 …広い範囲でのボール奪取が目立ち、前への展開も適切。
工藤 6.5 …素晴らしい前線への飛び出しで攻撃を牽引。あとは決定力さえあれば…。
内藤 6.0 …鋭いプレスと一瞬の抜け出しが光る。チャンスを生かしきなかったのは残念。
中村 6.0 …独特のセンスを発揮して1アシスト1得点。強さも目立ったが、ボールロストも。
駒井 6.5 …得点も見事だが、クサビの動きも存在感抜群。ガス欠することなく走りきった。
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酒井 6.5 …急な出番も落ち着いた対応が目立つ。ミスなく完封ミッションを遂行した。
宮吉 ――
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大木監督 6.5 …選手が終始自信あふれるプレーを遂行できたことが、評価の全て。