二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J2第21節 水戸vs京都

2012-06-24 | 蹴球

水戸ホーリーホック○3-1●京都サンガF.C.
13'キムヨンギ
38'鈴木隆行(p)
            40'久保裕也
47'橋本晃司(p)

■下手な15ゲーム
 15ゲームというパズルがある。1つマスを抜いているのを動かして数字を揃えるアレだ。上手い人は盤面を淀みなく動かしながらパズルを解いていくが、下手な人は数字を固定してしまって、数字を動かせなくなる。今の京都サンガは、数字を動かせなくなった15ゲームだ。ボールは持てるのに、動きが少ないから停滞する。調子のいい時は淀みなく流動し、スペースを空ける動きがあるからそこに入り込む動きが生まれて、「選手が次から次に湧いてくる」ような状態になる。
 今は本当に動かない。もちろん、最前線から降りてきて数的優位を生んでくれる宮吉の不在も大きいのだが、後ろから追い越して行くことが少ないのが気になった。前半、追い越す動きが目についたのは中山博貴くらい。後半幾分改善して、チョンウヨンや安藤、福村が追い越して行ったか、そういう時にあっさりボールを奪われて逆襲をくらい、大ピンチに陥るという有り様。
 自ら難しいパズルにしてしまっている。

■苦笑い
 人は嬉しい時に笑う。喜ぶ時に笑う。だけど、その男はどうしようもない感情によって笑っていた。後半立ち上がり早々のバヤリッツァだ。PKを取られた判定に対しての、いわゆる苦笑。もう笑うしかないという情況。この日の岡部拓人主審は厳しいコンタクトプレーを流したかと思えば、しっかりボールに行っているプレーに対して笛を吹いて止めるという不安定さを見せていた。それを誰よりも早く理解し、“利用”したのが百戦錬磨の鈴木隆行だった。ターゲットは秋本倫孝。背後からのチャージを繰り返し、早々にイエローカードを受けていた秋本を狙いうちにし、実に巧みな駆け引きで岡部主審から最初のPK宣言を引き出した。
 この駆け引きもまたサッカーなのだ。水戸のやり方は単純で、ボールを奪いにかかる出足を速くして奪ったら即FWに預けるというもの。そこに名人・鈴木がいた。唯一バヤリッツァだけは挑発に乗らず、粛々とボールを潰していたのだが、主審による2度目のPK宣告という仕打ち。そりゃ苦笑いするしかないさ。水戸が決して大人なサッカーだった訳ではないが、鈴木は誰よりも大人で、秋本も福村もイラついて平常心を失っていた。
 しかし、敗戦は判定のせいではない。不条理であろうがなかろうが、あらゆる状況に対応しなければ、物事は前に進まない。そのために、指揮官は不安な要素(例えば秋本の2枚目のイエローの恐れとか)を取り払うことができたのではないか?と思わずにはいられないのだ。


〈京右衛門的採点〉
水谷 5.0 …PKで姑息な駆け引きするも失敗。90分通じて特に良い場面もなかった。
安藤 5.5 …インターセプトからのロングランは良かったが、パスミスも多かった。
秋本 4.0 …出足が遅く、危ないファウルを連発。老獪な鈴木隆行の餌食に。
バヤリッツァ 5.5 …強靱さと上手さを見せつけたが、不運なPK判定に苦笑い。
福村 4.5 …球際で競りきれず劣勢の状況を生む。1失点目の競り方もいただけない。
チョンウヨン 5.5 …よくボールを拾っていたものの、展開にアイデア不足。プレスキック×。
中山 5.5 …フリーランで押し上げ、攻守に良く動いたものの、結果につながらず。
工藤 5.0 …久保へのアシストは見事だが、パスミスが目立ち、プレスもイマイチだった。
中村 4.5 …ボールを持って仕掛けたが、反面でチャンスを潰しまくった。ボールロストも多い。
駒井 5.5 …仕掛けにスピード感はあったが、空回り。最低限の宮吉役は果たしたが…。
久保 6.0 …ボールへの絡み方が良く、ついに初ゴール。その後吹っ切れて思い切りもよくなった。
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三根 6.0 …身体の強さを見せ、クサビの動きが出色。今後が期待できる出来。

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大木監督 5.0 …交代枠2を残す現状維持の采配で尻つぼみに。三根の投入は評価。



2012 J2第20節 京都vs草津

2012-06-17 | 蹴球

京都サンガF.C.●0-1○ザスパ草津
          21'遠藤敬佑

■試される総合力
 サッカーの1試合は90分だが、1シーズンは(今年のJ2の場合)8ヶ月。その間に出場停止もあれば、怪我もある。調子のいい時もあれば、悪いこともある。シーズン通しての結果を左右するのは長期にわたるマネジメントなのだ。
 そういう意味で、このチームの最も欠けざるピース・宮吉拓実と、それに準ずるピース・チョンウヨンを欠いてしまったこの試合は、チームの今シーズンの総合力を占う試金石になると思って、キックオフの時間を待った。実を言えば、割と期待していた。がしかし、その二人の存在の大きさを身につまされるのである。
 前節に続き今節もまた、選手間の距離は遠かった。ただし、前節よりもさらに悪いことには、原一樹という「フェルナンド(=大木監督曰くの“点獲りマシーン”)」がいるがゆえ、前線に待機しながら一発を狙うフェルナンドめがけての一発狙いのパスに終始し、それがゆえにチームのバランスを崩してしまったことだ。ショートパスを連続させた場面(たとえば、工藤浩平→安藤淳の突破)とは異なり、原狙いになってしまうと、原が“最終兵器フェルナンド”ゆえに、その先はもうない。おまけに相方になっている長沢はほぼスルー状態だ。後半になって幾分長沢が絡むようになったが、監督は原を残して長沢を下げた。いや、長沢は下げられておかしくないほど機能していなかった。がしかし、それはチームとして長沢を歯車の一つとして機能させられず、原というちょっぴり特異な才能を持つフィニッシャー頼みになってしまったということでもある。


■球際で勝負しないことには
 後半になって投入されたのは、駒井、伊藤という去年ユースから昇格した2人。この2人は、「このボールどっちかな?」というイーブンのルーズボールを激しく追い、相手より一瞬でも速くボールに触れて何とかしようという気概が見えた。逆に言えば、途中投入された2人以外はそういった「球際」の意識が欠けていたということになる。
 もう、戦術云々ではない。中盤より前でしっかり球際で勝負にいく選手がいなければ、このサッカーは成り立たないのだ。宮吉がいる時は、宮吉がそれをやってくれていた。だけども今日は、イーブンな球際をモノにできないから、中盤で走り負けてセカンドボールを拾われ、主導権を握られる。その根源的な原因は選手間の距離の遠さかもしれないが、ごく単純に相手よりも一秒でも速く足を伸ばす意識なのだということを、駒井や伊藤、この日いなかった宮吉が教えてくれた。
 高い位置でキープできない、ボールを持っても味方を追い越していく動きがすくないから、次の攻撃への選択肢が限られてミスパスを犯す…。全ては負のスパイラルから相手に主導権を握られただけ。攻撃の時間が短ければ、守りはそりゃ破綻するさ。きれいな青空の絵を描こうとする時に、絶対必要な青の絵の具がない時に、どうやって絵を描けばいいのか?大木監督は今、そういう岐路に立たされているのかもしれない。


〈京右衛門的採点〉
水谷 5.5 …それほど活躍の場はなかったが…。失点シーンの弾き方を責めるのは酷か。
安藤 5.5 …あまり前に出れなかったが、いいシュートもあった。
秋本 5.5 …大過はなく無難に対応したものの、一抹の物足りなさも。
バヤリッツァ 6.0 …終始落ち着いてはね返し、最後は攻撃にも出た。
福村 6.0 …守備に安定感あり、攻撃にも積極的だった。
中山 5.5 …アンカーとして奮闘するも、攻撃的な「良さ」はあまり出せなかった。
内藤 4.5 …ミスパスが目立った上に運動量も積極性も足りなかった。
工藤 5.5 …数少ないチャンスを演出したが、こちらも運動量が少なかった。
中村 5.0 …動きが少なく、追い越す場面もわずか。イチかバチかのパスだけでは…。
長沢 5.0 …前半はボールに関与できず、後半は絡みはじめたところで交代。存在感なし。
 原 5.0 …独力でチャンスを生んでは潰す。その存在感はチーム全体を狂わせた。
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駒井 6.0 …ボールへの執念をみせ、局面を打開しようと「宮吉役」を演じてみせた。
伊藤 5.5 …チャレンジの姿勢は◎。ただし、草津は伊藤をしっかり対策していた。

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大木監督 4.5 …苦しい台所事情だが、目指すべきサッカーからブレているのでは?




2012 J2第19節 愛媛vs京都

2012-06-14 | 蹴球

愛媛FC○2-1●京都サンガF.C.
54'東浩史
58'内田健太
      81'宮吉拓実

■完敗
 カンパーイ!ヤケ酒という、気を紛らすための文化的かつ豊かな現実逃避を行使してみたのだが、目を背けたところで現実は何も変わらないので、この試合の「何がダメだったのか?」を列挙しておく。
 ダメだった所はもうわかりやすいほど明確で、選手間の距離が遠かった。遠いと何が起こるかと言えば、連動するプレスがかからない。仕方ないので単独でボールを奪いに行く。それをスルッとかわされてしまえば、守備陣形にポコポコと穴が開いていく。穴を埋めようと人がどんどん下がっていく…。繰り広げられる負のスパイラル。打開しようと反撃しようと思っても、選手間の距離が遠いといつものようにショートパスが繋がらない。仕方ないので長めのボールを入れて一発狙い。そんなイチかバチかな攻めで崩せるほどJ2は甘くはありませんよ…と。
 じゃあそもそも何故選手間の距離が広かったのよ?という疑問。連戦のミッドウイーク開催のせいなのかどうか、要するに各々が走れてなかった。“大木サッカー”が各自の走力を前提にしている以上、走れなければ成立しないよね…っと。


■物足りない攻撃陣
 それでも、得点を奪うチャンスが皆無だった訳ではない。けれど、久保裕也も原一樹もGKとの1対1のビッグチャンスをモノにはできなかった。対する愛媛はよく走っていた分の報酬としてチャンスの回数を多く作り、多少無理目かと思われても半ば強引に鍵のかかった門を突破にかかることができた。先制点の場面なんかがまさにそう。1度目が阻まれても人数をかけて走り込めば、2度目のチャンスが来て、また阻まれても3度目のボールが転がってくる。運を引き寄せるのは、よく走る者、愚直に走る者なのだ。
 基本的に攻撃はトライアル&エラーでいい。チャレンジの結果がエラーであっても、トライアルを重ねていくうちにいつかサクセスを呼び込める。愛媛がそうだった。だけれども、久保も原も散発的で、次の展開、次の可能性を生まなかった。唯一の例外は宮吉拓実で、エラーをどれだけ重ねても相手の最終ラインと駆け引きを続けた結果、原のキックをDFが弾いたボールを見事なトラップから自分のものにし、ゴールを決めてみせた。だがその際足首を強打したようで、その後はまともに走ることすらできなかった…。もし、次節以降に影響する負傷ならば、これは相当に痛い。
 もし、あのシュートは下手だけど強引なドリブルで仕掛けて何度も何度も鍵のかかった門に突撃してくれるブラジル人がいれば…なんて思うけれど、いないものはいない。覆水は盆に帰ってこない。…おっと、今EUROでデンマークvsポルトガルの解説してるあの選手とか代わりにどうよ?…ダメだ。やっぱり思考が現実逃避モードになってしまう。とにかく攻撃陣が物足りないって話。



〈京右衛門的採点〉
水谷 5.5 …2失点目みたいなFK、久々に見せた弱点。
安藤 5.0 …持ち味の攻撃参加できなかったのが、チーム不振のバロメーター。
秋本 4.5 …飛び込んでかわされ、ハンドでFKを献上し、2失点を演出。
福村 6.0 …いいカバーといいフィードで相当頼もしかった。
 黄 5.0 …前半はガタガタ。後半から喝が入ったか、別人のように攻撃的に。
チョンウヨン 6.0 …崩れ気味の中盤を支えるべく攻守に身体を張っていたが…。
中山 5.0 …戦うべき位置が随分と低く、悪い奪われ方も目立った。
工藤 5.0 …後手を踏むことが多く、持ち味の神出鬼没ぶりも陰をひそめた。
中村 5.0 …運動量を欠き、サーカスのようなドリブルと安易な長パスで博打をうつのみ。
久保 4.5 …判断が遅く、全てが中途半端。ストライクできないストライカー。
宮吉 6.5 …前線で孤軍奮闘のファイター。足を引きずりながら戦う姿は感動的。
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 原 4.5 …前から激しく追い回すのは良かったが、少ないチャンスをことごとく潰す。
倉貫 5.0 …途中から入ってプレスをかけられず、ウヨンとの差ばかり目立った。
伊藤 5.5 …果敢なチャレンジはチャンスを生んだが、時すでに遅し。

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大木監督 4.0 …過密日程でも結果的に走れない面々を選んだ。4節鳥取戦●の繰り返し。






2012 J2第18節 京都vs山形

2012-06-09 | 蹴球

京都サンガF.C.△2-2△モンテディオ山形
09'宮吉拓実
          45'中島裕希
56'宮吉拓実
          88'石川竜也

■右を制圧してたものの
 ザックジャパンの最終予選にユーロ2012開幕…代表戦花盛りでもJ2に中断はない。そして推定1億3千万人が大注目したとの噂もあるJ2首位攻防戦。“サイドを使いたい”首位山形と“逆サイドを使わせたくない”2位京都。握りたい主導権の在処が対照的な両チームの対決だったが、序盤は京都の方がペースを掴めていた。イニシアチブを生んだのは右サイドの安藤淳で、前に前に圧力をかけることで右を攻撃の足がかりにした。
 となると、当然京都の左は手薄になる。宮吉拓実の珍しいヘディングゴールで先制を許した山形が狙う「オイシイ場所」はここだった。長いボールを最終ラインの左裏めがけて放り込み、右に体重を乗せている京都をスコンと足払いして倒しにかかる。おまけに左SB黄大城の対応も不安定。これは左から崩れちゃいそう…という雰囲気に漂う前半終了間際、崩れたのは左でなく右からだった。何人かが横断歩道を渡る園児のようにオフサイドをアピールして手を挙げた隙を衝くかのように山形の「人が沸き出す」ボールへの連続アタック。首位にいるチームの執念と2位に甘んじるチームの脆さを見た。


■生死を分ける場面
 風雲急を告げるように、あがっていた雨が再び降り注ぎ始めた後半は、両チームが主導権を激しく争い攻守を目まぐるしく入れ替える激戦になった。お互いに隙あらば相手の懐に入って刃を突きつけていくようなスリリングな展開。宮吉が“忍び”のようにスルスルっと裏を抜けて追加点を決めたものの、京都は「ゲーム」を自分たちの手中に収めることができなかった。勝ち越しによって攻撃への積極性を失われ、相手を受ける側に回ってしまい、このゲームのバランスを大きく変えてしまったのだ。山形のチャンスはギリギリの所で守護神・水谷雄一やCB福村貴幸が食い止めていたが、こういう情況で“やるかやられるか”というのが、生死を分けるものなのだろう。
 セットプレーからの一刺し。いつか見た、いや、いつも見てきたその風景。精神的にも肉体的にもギリギリの状態にありながら、リフレクトしたボールをしっかり足にミートした山形の石川竜也を褒めるべきだろう。あれは並の選手なら力んで枠を外していたに違いない。山形が首位にいる理由がよくわかるシーンだった。
 勝ち越しても一歩も引かず、攻撃的な姿勢を保ち続けられなければ、勝利の美酒にはありつけない。これが、W杯アジア最終予選やユーロよりも厳しく辛いと噂されるイバラのJ2戦線なのだ。立ち止まっては、ならない。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …大ピンチを救うセーブを連発。最終ラインとの連携は課題。
安藤 6.0 …攻守によく効き、右サイドを京都の主戦場にした。
秋本 5.0 …セルフジャッジで足を止めたり、あっさり裏を取られたり…。
福村 6.0 …左サイドまで含めて、カバーリングを引き受けた。
 黄 4.5 …終始左を破り続けられ、ボールへの寄せも甘かった。
チョンウヨン 5.5 …アシストや絶妙なカットなど躍動するも、ズルズル下がる場面も。
駒井 5.5 …とにかくよくボールを追い回し、チャレンジする姿勢は見せたが。
工藤 5.5 …劣勢の左で守備に追われ気味だったが、ボールに絡めばチャンスを生んだ。
中村 5.5 …前へボールを運んだものの、残念なパスミスも目立つ。
久保 5.5 …チャンスは多く作れた。あとは決定機をモノにできるかどうか。
宮吉 6.5 …終始闘志を見せ、2得点に顔面ブロックに大活躍。
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内藤 5.5 …よく走ってボールを拾ったが、その先につながらなかった。
長沢 5.0 …ボールを収めきれず、ゲームに上手く入れなかった。
 原 ――

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大木監督 5.0 …長沢の投入→交代など采配は迷走。戦局の掌握に失敗した。




2012 J2第17節 富山vs京都

2012-06-02 | 蹴球

カターレ富山△1-1△京都サンガF.C.
10'黒部光昭
         43'中村充孝(P)

■似たもの同士
 大木武と安間貴義。ヴァンフォーレ甲府時代に監督とコーチという師弟関係であり、どちらもマルセロ・ビエルサの“マニア”だという似たもの同士。志向するサッカーも相通ずるものがあり、フォーメーションの配置こそ違うが、ボールサイドに密集して、人数をかけてボールを囲み、奪ったら即攻撃に転じるという哲学はまったく同じ。この試合の前半、その「囲い込み」で優位に立ったのは安間の方だった。
 ところで安間氏、甲府時代は大木監督の下でスカウティングを担当していた。2005年の最終節で、京都のリカルドのボールの持ち方を暴き、リカルドからボールを奪いまくり、まんまと当時J2最強だった柱谷京都をハメてしまって入替戦に進出したのを思い出す。今回、安間が導き出したのは“福村封じ”。ここ最近の京都の連勝の隠れた立役者になっていた福村貴幸が上がろうすれば囲い込み、その推進力を寸断する。右の安藤淳についても同様で、サイド側からのプレスは特に入念に、京都の攻め手を奪ってみせた。結果、プレスは富山が常に先手を打ち、黒部光昭がミスを逃さず先制点を奪い、終始富山ペースかと思われた前半。最後の最後に、その流れを断ち切ったのは右の安藤淳だった。

■サッカーに判定はない
 ずっと後手を踏んでいた右サイド・安藤淳が相手の前に出るや、局面は一気に打開した。安藤の攻め上がりから“違いをつくる男”中村充孝のPK獲得を生み、後半になると終始右を崩し、右から攻め、右からチャンスを生んだ。後半になるとあれだけ機能していた富山の「密集しての囲み」も効かなくなってしまい、もはや彼我の差は歴然といった具合。もしもサッカーが判定競技なら、京都のTKO勝ちだ。しかし、最後に決めきれない。ゲームの流れを手にし、ボールをポゼッションし、シュートまで容易に持ち込める。それでも決まらない。こぼれ球をひろって再度攻撃に入れる。それでも決まらない…。サッカーに判定の要素はないのだから、ゴールが決まらないならばもう仕方ない。富山がそれだけ最後のところで踏ん張ったとも言えるし、京都の決定力不足とも言える。
 負傷によりサヌがどうやら戦線離脱濃厚になってしまった今、最後にゴールを決めきる人の出現が待たれる。例えばそれを、不調をかこっている18歳の若者に託すのは少し酷かもしれない。「だったら俺が決めてやる」って長身FWが名乗り出てもいい。苦しい時に救世主を生み出す土壌があるかどうかは、チームの総合力だ。決して運ではない。

〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …終了間際の富山決定的場面を抑えるプレーは神降臨モード。
安藤 6.0 …押し込まれていたが、果敢に上がって形勢逆転。ゲームのキーマンになった。
秋本 5.0 …安易なパスが失点の起点に。不安定なプレーが多かった。
バヤリツァ 7.0 …どれだけ入れられても安心安全の鉄壁っぷり。
福村 5.5 …サイドで後手を踏み、攻撃に参加する場面少なく持ち味発揮できず。
倉貫 5.5 …失点につながるミス。ウヨンとのコンビもイマイチで軽い碇になってしまった。
チョンウヨン 5.5 …ボールは持てるのに相手に脅威なプレーできず。プレスキックの精度も×。
工藤 6.5 …陰に日向に走って、後半は猛攻の発火点となる働きぶり。
中村 6.5 …独自のリズムがいい意味での異分子に。彼のキレの良さをもっと生かしたかった。
サヌ 5.5 …終始持ち味が消され気味な中、孤軍奮闘したが、負傷交代…。無念。
宮吉 5.0 …チャンスの場面でミスを連発。肝心な所でブレーキになってしまった。
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 原 6.0 …思い切りの良さでゴールを脅かす。単騎突破の怖さはあった。
駒井 5.5 …期待された宮吉の役割は果たせず。惜しいシュートもあったが。
内藤 6.0 …短い時間でも持ち味を出し、チャンスを生み出した。もっと長く見たかった。

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大木監督 5.5 …ゲーム全体の出来は悪くなかったが、勝ち点があと2つ足りなかった結果が全て。