二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2014 J2第15節 京都vs群馬

2014-05-24 | 蹴球

京都サンガF.C.●0-3○ザスパクサツ群馬
          66'小林竜樹
          71'青木孝太
          77'ダニエルロビーニョ

■動きは少なく、アイデアは乏しく
 5月も下旬となるとデーゲームは暑い。それゆえに前半、京都は動きの量が少なかった。そう、これは暑さのせいなのだ。全部暑さが悪いんだ!…そんな訳はない。群馬はチーム全員がしっかり走り、攻めでも守りでも2人目のフォローがあって、人海戦術でボールを支配した。前半、京都でボールをキープできたのは三平和司くらい。ある程度三平が持てたので、そこに後ろから石櫃洋祐が上がってくればいいのだが、回数は少なかった。結局、石櫃が上がらないとこのチームはチャンスは極端に減る。一方、左サイドは山瀬功治が個人で打開しようとするだけ。あと大黒将志目掛けての安易なロングボール。動きが少ない上に攻撃のアイデアが枯渇していた前半の方が、派手に煮え湯を飲まされた後半よりもある意味問題かもしれない。このメンバーでスタートして、一体どういうサッカーがやりたかったのかが、見えてこなかったからである。

■弱さを誤魔化せず
 それでも後半、チームは良くなった。負傷の三平に代わって入った駒井善成はキレがあり、グイグイと陣地を押し込む。駒井に釣られるように石櫃も上がってアーリークロス。攻撃パターンの1つが成り立った。ただし、大黒が決めないと点が取れない。後半は戦況としては京都が優勢だったものの、局面のバトル(石櫃のところ)で敗れてしまい、右サイドを破られ痛恨の失点。さらに2つの目の失点も局面のバトルで工藤浩平がボールをロストしてから。1つの局面で負けて奪われて突破されて失点するのは、もう原因がハッキリしている。弱いのだ。弱いのを誤魔化すためには、そうなる前に点を獲ってしまうしかない。
 しかし得点パターンは少ない。石櫃のクロス、大黒様…。前節の前半までは横谷繁がいて、いろいろ可能性は広がっていた気もするのだが、指揮官は結局横谷を外してしまった。グラサンの老紳士はその他の可能性は試そうともしない。もどかしさというか、閉塞感というか…。無力な私たちの心は早くも梅雨入りでございます。


〈京右衛門的採点〉
オ  5.5 …好セーブも多かったが、止めたボールをこぼす。間合いの取り方がちょっと気になる。
石櫃 5.0 …攻撃ではアーリークロスをよく入れたが、守備は軽々と突破され先制失点の原因に。
酒井 5.0 …スピード勝負でダニエルロビーニョに敗北。3バックと相性悪く、最後は左SBに流浪。
バヤリッツァ 5.5 …攻め込まれてもいい対応を見せ、攻め上がりもキレがあった。前節とは別人。
比嘉 5.5 …前半は守備専。後半はワンツーで追い越しながら前に出てチャンスを作ったが。
ジャイロ 4.5 …ボール捌きのところで相手に奪われる場面多し。最終局面で止めきず失点につながる。
工藤 4.5 …奪われて2失点目の起点になった場面など、球際の勝負で弱さを露呈。
中山 5.0 …サイドチェンジの球捌きが多かったが、見たいのは危険なエリアに侵入するプレー。
三平 6.0 …前半は唯一の前線の基点になれた。よく身体を張ったが、張りすぎて負傷交代。
山瀬 4.5 …単独でシュートには行くが、相変わらず上手く周囲を使えていない。去年を思えば物足りない。
大黒 4.5 …何度かあったチャンスをモノにできず。動き出しはさすがだが、ボールロスト多し。
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駒井 6.0 …とにかくボールを前に運び、ガンガン仕掛け、視野も広かった。一人気概見せる。
有田 5.0 …チームプランとしてどう使われるのか曖昧な中で奮闘するも、使い方が間違っているような…。
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バドゥ監督 3.5 …スタートの時点から思惑が外れ、失点以降は前節同様の失敗を重ねる。


2014 J2第14節 水戸vs京都

2014-05-18 | 蹴球

水戸ホーリーホック○5-1●京都サンガF.C.
             7'三平和司
             (assist比嘉祐介)
32'馬場賢治
36'三島康平
79'吉田眞紀人
85'三島康平
90'+1内田航平


■ゲームを壊した人
 先制しながら5失点を浴びての大敗。それこそ前半30分くらいまでは京都のワンサイドゲームだった。工藤浩平、中山博貴、ジャイロを中心としたプレスは矢のように速く、そこに三平和司や大黒将志の追い込みまで加わって、水戸にサッカーをさせなかった。比嘉祐介のフィード一発に逆サイドまで走り抜けた三平の先制点も見事だった。だが好事魔多し。暗転の伏線は結構早い時点、ゲーム開始3分に現れていた。
 こんなプレーだった。水戸の何でもないフィードに対して前に出て競ったバヤリッツァのヘッドば空を切り、バウンドしたボールの処理を緩慢に見送ってしまって水戸の速攻を受け、内田航平のシュートを杉本大地がナイスセーブするという場面。バヤリッツァはこの時点からゲームに集中できていなかった。32分オフサイドを取り損ねた失点は致し方ない部分もあったが、36分に浴びた逆転ゴールは、前で奪いに行ったバヤリッツァが奪いきれずそのまま攻勢を浴びた末のもの。このシーンで彼は帰陣することなく、ゆったりと歩いたままだった。集中力を欠き緩慢なバヤリッツァを前半で下げてしまう決断ができていたら、また違ったゲームになっただろう。

■無惨な無統制
 後半、水戸は守備が劇的に良くなった。特に上手く守っていたと思えるのが大黒のところで、一歩間違えば大黒にエリア内で前を向かれるリスクを背負いながらも大黒にボールを集めた瞬間のところで奪ってエースを封じた。京都はチーム全体がカッとなって、焦りまくった状態。ベンチワークも非常にまずく、カードを切るたびに布陣はいびつになり、フォーメーションなど無視して各自好き勝手に攻めにかかるような無統制状態に。元々大した決まり事がなく、「選手間による話し合い」によって何とかバランスを保っていたバドゥサッカーは、ただのアドリブ集団になった。それでも73分、工藤のロングフィードを有田光希がポストで落として大黒のボレーシュートという攻撃は非常にいい形だった。水戸側からみれば、この時のGK本間幸司の好セーブが試合を決めたプレーだった。
 その直後、バヤリッツァがクイックリスタートをしようとして相手にパスしてしまったところから速攻を浴び、3点目を奪われる。ここで完全にゲームは壊れてしまった。その後バヤリッツァが前線に旅立ち、酒井とジャイロだけになった2バックから水戸がさらに2点追加するのはイージーだった。自分で自分の首を締めてしまった無惨で愚かなゲームとして記憶されるべき一戦になった。


〈京右衛門的採点〉
杉本 4.5 …どうしようもないものもあったが5失点。最終ラインとの連携は不出来。
石櫃 5.0 …裏を狙われた場面でよく駆け戻り何度か危機を救う。攻撃面は水戸の厳しい守りに苦慮。
酒井 5.0 …個人とてしはスピードを生かして奮闘するも、バキとの関係性が悪すぎた。
バヤリッツァ 3.5 …緩慢で集中できていない守備が失点を重ねる要因に。闘志も希薄だった。
比嘉 5.5 …攻めも守りもいい場面で顔を出せていて、個人としてはまったく悪くない出来。
ジャイロ 5.5 …全体的に動きはよく、中盤でもCBでも効いていたが…。さすがに2バックは酷。
工藤 5.0 …ロングパスで事態の打開を狙ったがやや単調。前半はよく機能していた。
中山 5.0 …効きまくっていたプレスが、事態とともに空回り。ワンタッチパスの狙いは○も精度は△。
三平 5.5 …ゴール以外でもよく前線の起点になっていた。布陣が崩れるとともに埋没。
大黒 5.0 …厳しいマークに遭ってボールロストが目立つ。好機はあったが、本間に阻まれる。
横谷 5.5 …ボールを落ち着かせリズムを作る役目で悪い出来ではなかった。横谷を下げて迷走。
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山瀬 5.0 …エリア内でチャンスの種は作ったものの、中に入りすぎてバランスは崩れた。
有田 5.5 …ポストプレーの役目は果たし、チャンスも御膳立てしたが、チームとして生きず。
駒井 5.0 …単騎突破も見せたが石櫃とプレーエリアが混線し、結局守備に追われる羽目に。
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バドゥ監督 4.0 …HTで問題点を修正できず。カードを切って混乱に拍車をかける。ある意味自由。



2014 J2第13節 京都vs長崎

2014-05-11 | 蹴球

京都サンガF.C.○2-0●V・ファーレン長崎
46'三平和司
(assist――)
85'大黒将志
(PK)

■速さに後手
 火山灰混じりの強風の風下という悪条件の前半、京都はまったくいいところがなかった。天候以上に苦しめられたのが長崎の好守の切り替えの速さ。ボールを奪えばよどみなく速く展開されるがままになってしまうのは、ちょうど10節の湘南戦と同じ構図。速い相手に対して主導権を簡単に渡してしまうのは理由があって、そこはスピードやアジリティに欠けるジャイロに原因があるとしか言いようがない。ジャイロがどうしても遅れを取るところをフォローしようと工藤浩平や中山博貴が守備に引っ張られがちになり、中盤の攻撃面で圧倒的に人数が足りなくなっている。なおかつ中盤に落ちてきて攻撃を繋ぐはずの横谷繁もスピードはなく、長崎にいいように回された一因に。今の陣形は非常にバランスはいいのだが、相手にガチャガチャとした速い展開を仕掛けられると、どうしても後手を踏んでしまう。これは今後の大きな課題。ただ、湘南戦のことを思えば、速いサッカーに対して何とか踏ん張りが利くようになったところに、成長は見て取れる。対策としてはジャイロより速いアンカーを見つけることだが…そういえばシーズン前は伊藤優汰のボランチとか試してたっけ?

■機転で先手
 前節第12節のトリックFKを決めた男として、ユナイテッドキングダムを始め全世界から注目された男・石櫃洋祐。後半立ち上がりに猛然とボールを奪い取ってからスピードに乗ったままのアーリークロスを入れ、三平和司の先制点に繋げたプレーがこのゲームを決めたと言っても過言ではない。重要なのは相手の陣形が整う前に速いクロスを放り込んだことであり、そういった先手を討つ一撃が相手を慌てさせ、堅守・長崎を突き崩した。同じように相手が陣形を固める前に前線にボールを送ることを意識していたのが中山博貴で、跳ね返されたものの、65分に速くエリア内に配球したシーンなどは相手を慌てさせるのに十分だった。結局、対陣ゲームにおいては相手の陣形が整う前に何かアクションを起こすことが重要で、それは時に雑な攻めになってしまうが、この日は石櫃、中山、そして途中出場の山瀬功治などベテラン勢が前に速い機転あふれる揺さぶりを繰り出した。極めつけは工藤浩平から大黒将志への84分の縦ポン。割と繋いで崩そうとしていた接近戦を見せつつ、一発長い攻撃を繰り出した緩急の差が大黒のPK奪取に繋がった。もちろんこの場面では大黒の個の上手さも際立っていたのだが、長崎が散々縦ポンを繰り返しながらもアイデアを欠き、京都CB陣が上手く守っていたのとは、あまりにも対照的だった。
 開幕前にバドゥ監督がインタビューで語っていた“チョット速ク”が、ようやく表現できるようになった感がある。ベテラン勢がチョット機転の利かせて、劣勢からでも先手を奪える術(すべ)を手にいれつつある。


〈京右衛門的採点〉
 オ 7.0 …抜群の安定感でクロスをことごとくキャッチ。長崎のロングボール作戦を封じた。
石櫃 7.0 …奪い取って鋭いクロスから先制点の御膳立て。攻めの糸口を生み出した功績は大。
酒井 6.5 …縦に速い長崎の攻撃をよくパトロール。クロスへの対応もよく身体を張った。
バヤリッツァ 7.0 …灰が降っても集中力を切らすことなく水際で防ぐプレーを連発。
比嘉 6.5 …試合を追うごとに守備へのバランスが良くなった。後半危ないシーンによく対応。
ジャイロ 5.5 …前半は長崎のスピードに対応できず。局面での守備は良いが、ミスパスが目立ちすぎ。
工藤 6.0 …前半はプレスがかからず。相手が間延びするや効果的なパスを入れ、大黒のPK奪取を演出。
中山 6.5 …守備面で球際によく顔を出したファイター。後半は攻撃にもよく参加できるようになった。
三平 6.5 …見事な先制ボレー。大黒の衛星役+好守の繋ぎ役の働きも地味ながら良。
大黒 6.5 …苦しい時間帯も単独で駆け引きしながら攻撃の起点に。山瀬からのどフリー外した後にPK奪取。
横谷 5.5 …前半は運動力の乏しさが目立つ。後半は起点になりかけたが、細かいミス目立つ。
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山瀬 6.0 …長崎が間延びしたスペースを上手く使う。球捌きにもキレがあり、途中投入に活路あり。
駒井 ――
有田 ――
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バドゥ監督 6.0 …前半は押しまくられたが、後半から目に見えて良化。横谷→山瀬の交代は適切。




2014 J2第12節 横浜FCvs京都

2014-05-06 | 蹴球

横浜FC●0-2○京都サンガF.C.
       14'大黒将志
       (assist――)
       45'石櫃洋祐
       (assist横谷繁)

■攻撃の幅を広げる三平和司
 ニューバージョンは、右から三平和司、大黒将志、横谷繁の3トップである。時間帯によっては三平と大黒の2トップになり、横谷はトップ下に潜り込む。ちょっと大黒の動き出しの質が異次元すぎてそちらばかり目立ってしまうのだが、この布陣になって以来、三平もなかなかイキイキとしている。彼の場合、大木時代には1トップとしてポストを求められたり、たまに右アウトサイドに貼り付くことを求められたり、なかなか自分にしっくりくる活動域が現れなかった。今は、右~中央という彼本来の力を発揮できるエリアがあって、三平の動きをしっかり理解する横谷と工藤浩平が活動域への球出しを狙っている。新しい布陣になっていろいろポジティブな変化が起こっているが、今まで大黒頼みの1本だったラストパスの選択肢が増えた点も大きな部分。ようやく三平が攻撃に有効に絡めるようになって、攻撃の幅が広がった…という感覚だが、これで三平自身がバッチリ決めてくれれば言う事はない。71分、横谷のラストパスを収めてGKと1対1になった場面、決めなきゃ。試合終了後の大黒曰く「3点目取れていれば終わってたゲーム」。

■攻勢浴びるも守りに安定感
 前半まったくいいところのなかった横浜FCが60分前後から変化して、京都は攻め込まれる時間帯が増えた。横浜FCがボールを速く動かすようになったというか、中盤省略してサイドにスッ飛ばすようになったというか。工藤と中山博貴による2人の運動量でペースを掴んでいたところ、彼らがボールに触れなくなるとともに、横浜FCのペースになった。引き気味になったジャイロはよくカットするも、カットした後にボールを機能しなくなった中盤のところで上手く前に運べないために、すぐまた攻勢を浴びるという我慢の時間帯。ここを酒井隆介とバヤリッツァ中心にしっかり凌げたのは、去年のPO準決勝長崎戦あたりの経験もしっかり生きていたか。こういう我慢の時間帯でも前線からボールを虎視眈々と狙っているのが大黒で、相手からかっさらってチャンス作ってみたり、何なんすかね、この人。敵じゃなくて本当に良かった。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.5 …後半になりようやく守備機会が訪れ、クロスを掴んで零封。出て触れない場面はヒヤッ。
石櫃 6.5 …右から三平を追い越す攻め上がり。トリックFKの〆としてきっちり蹴りこんだ。腰を打って交代。
酒井 7.0 …圧倒的な機動力で広いエリアを封じ、狭い所を通すスルーにもよく反応。
バヤリッツァ 6.5 …終始落ち着きがあり、適切に跳ね返し続けた。ジャイロが落ちてきた時の間合いがもっと良くなれば。
比嘉 6.5 …驚異的な運動量で好守によく顔を出す。後半右に入り背後狙われるも、よく粘った。
ジャイロ 6.5 …安定感ある守りが工藤中山の躍動を支える。後半、相手が中盤省略すると下がりすぎたが、強い。
工藤 7.0 …走りまくってプレスをかけ、カットすれば前に配球。工藤の活動量が多い時間は圧倒できた。
中山 6.5 …猟犬のようにボールを追い、工藤のプレスに連動してよく奪う。攻撃ではミスも目立ったのは残念。
三平 6.0 …前線からいいプレスを見せ、高い位置で起点になった。71分のチャンスを外したのは痛恨。
大黒 7.5 …ボールを引き出す動きは超絶。厳しいマークを外してゴール前に入る動き、J2レベル超越。
横谷 6.5 …中に入ってきてチャンスを作り、最終ラインまでカバー。トリックFKの話し合いを主導するなど戦術眼を発揮。
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福村 5.0 …前で奪いきれず背後を衝かれた場面など、フワフワとしていた。時間が経って何とか落ち着いたが。
駒井 5.5 …相手ペースの中投入。求められた守備面はまずまず。攻撃はキレがあり、2人目を抜こうとして、…奪われた。
有田 5.5 …ゴール前までよく戻って守備で活躍。柔軟な姿勢で、大黒に活かされる術もちょっと見せた。
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バドゥ監督 6.0 …前節の良かった部分をそのまま出せた。相手の戦術変更に対して特に何もしなかったが、凌いだ。



2014 J2第11節 京都vs讃岐

2014-05-04 | 蹴球

京都サンガF.C.○4-1●カマタマーレ讃岐
19'大黒将志
(assist工藤浩平)
22'三平和司
(assist石櫃洋祐)
54'大黒将志
(PK)
59'三平和司
(assist――)
          90+1'岡村和哉


■首途(かどで)
1週間で2試合を行うGW過密日程。J2の中でも選手層が飛び抜けて薄いカマタマーレ讃岐は、この試合5人をターンオーバー。この試合は捨てて、次節に必勝を期す…つまりまぁ、そんな相手だった。個人技術も連携面でもガクンと落ちる相手に、京都は前節の手痛い大敗を受けて、人も布陣も変革して出直しの構え。大きく変わった部分はジャイロ(アンカー)―中山博貴(セントラルMF)―工藤浩平(セントラルMF)という中盤のところで、このトライアングルの距離感は、おそらく中山や工藤がよく慣れているだろうコンパクトさがあり、奪う→球出しまでが実に順調だった。さらには相手のプレッシャーも弱いため、パス配球を吟味する余裕があった。この中盤を核として横谷繁や石櫃洋祐が絡みながら攻撃を組み立てて、最後のにフィニッシャーとして大黒将志と三平和司が待ち構えるというのが、サンガ変革バージョンの姿である。変革バージョンというより、昔よく観た形だなーと思える回帰バージョンかもしれない。
 ただ、やはり相手が相手だっただけに、これが本当に芯のある相手にも有効なのかどうかは次節が試金石。新バージョンの首途の戦いとして、自信をたっぷり付けられる相手に巡り会えたのは幸運であった。


■戦術の犠牲力・横谷繁
新バージョンを語る上で欠かせないのが、チャラい風貌の彼だ。一見、周りに貢がせておいしい所をサクっとゲットする、そんな王様っぽさも漂わせるのだが、ピッチの上にいる横谷は、とにかく痛い思いをすることを好み、ユニフォームを泥だらけにすることを好む。敵が嫌がる場所に現れては、ボールを保持し、倒されるまで粘りつづける。横谷は他人のために身を捧げることが好きで好きでたまらないらしい。どんな組織であれ、こういった犠牲になれる者が一人いれば、周囲は随分楽になる。横谷が戦術のためにあえて潰されに行って橋頭堡を築くのは、去年の大木サッカーの屋台骨でもあった。
今までのバドゥサッカーでは横谷のような形で犠牲になれる者を構想外としており、攻めは単調化・偶発化していた。周囲の穴を埋めるために犠牲となっていたという意味では山瀬功治が戦術の犠牲者なのだが、意味合いはまったく逆。横谷は潰されれば潰されるほどチームが活性化し、ひいては自らの力を最大限に発揮できる。去年まで大きな武器だったこの横谷の犠牲力を活かす方向に切り替えたのが、選手たちの意見なのか、コーチなのか、監督の判断なのかはうかがい知れないが、ようやく「今いる選手の持ち味を活かす」という方向に変化したことはポジティブな変化。横谷自身思うところもたくさんあったのだと思うし、自負もあっただろう。その自負を全部吐きだしたようなゲームだった。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.5 …シュートを未然に防ぐ抜群の飛び出し。チーム全体の気が抜けた時間帯に失点。
石櫃 6.0 …三平1点目のクロスは真骨頂の精度とスピード。守備面ではやや精彩を欠く面も。
酒井 6.5 …スピード勝負でアンドレアに負けず。急造のジャイロとのコンビも良かったが、最後タルんだ。
バヤリッツァ 6.0 …讃岐攻撃陣では歯が立たない壁となったが、一瞬の隙を作ってしまう場面も。
比嘉 6.5 …球際では競り負けることなく、終盤も続く運動量とスピード。いいクロスはなし。
ジャイロ 7.0 …散らしを含めたアンカーとして出色の出来の上、CBも本職相応の落ち着きと安定感。
工藤 6.5 …豊富な運動量でバランスを取り続ける。奪って即ラストパスの先制点アシストは去年を彷彿。
中山 6.5 …工藤と気心の知れたコンビネーションで中盤を支配。気の利いたプレーがアクセントになった。
三平 7.0 …点で合わせる強みをようやく発揮。右サイドから中に入り込むやり方はまさに水を得た魚。
大黒 7.0 …相手を手玉に取るような動き出しで讃岐DFを混乱の渦中に。1点目のループは感覚の成せる技。
横谷 7.0 …相手と競ることを厭わず、潰されながらチャンスを広げる献身性はチームを一歩前進させた。
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山瀬 5.5 …走るプレーはともかく、パスやシュートがイメージとは違う方向に飛ぶあたり、まだもう少し。
下畠 6.0 …守備では石櫃以上の粘り強さを見せたが、攻撃面ではあまりインパクトを残せず。
宮吉 5.5 …相手と競り合いながらチャンスを狙ったが、シュートを決めることはできず。
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バドゥ監督 6.0 …人も布陣も代えて大勝。相手関係が変わる次節に真価が問われる。