二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J2第16節 京都vs北九州

2012-05-26 | 蹴球

京都サンガF.C.○2-1●ギラヴァンツ北九州
37'中村充孝

■車懸(くるまがかり)
 上杉謙信が得意としたのが、車懸の陣という戦法。密集戦術で、部隊が入れ替わり立ち替わり、相手の正面に当たってはヒット&アウェイを繰り返して行く。
何となく図式化してみると…

 A
D  B
 C
 ↓
 B
A  C
 D
 ↓
 C
B  D
 A

上記の通りで、渦巻くように最前線を入れ替えながら推進力にして突破にかかる。

 大木サッカーも、単純に言えば「車懸」と同じ。だいたい4人くらいがポジションに縛られず前に前に追い越しながら、前線突破を狙う。こういう時は大木サッカーが体現できている証拠。この試合は立ち上がりから何度も決定機を作り出したが、その面々はチョンウヨンであり、宮吉拓実であり、サヌであり、安藤淳であり…。まさに最前線が入れ替り立ち替わっている証拠。ただ、決定機をなかなか決めきれられず、流れを失うことになるか…と思いきや、中村充孝が決めて先制点を奪った。この得点の場面はさほど追い越しはなかったが、福村貴幸→宮吉とつなぎ、こぼれ球を工藤浩平がダイレクトでテンポを変える速いボールを送り、サヌの“落とし”が効いた。散々追い越して掻き回してきたから、こういうオーソドックスな“落とし”も効くというのも、また表裏一体なのである。


■汚れ役
「車懸」とか訳のわからない例えを出してしまったけど、整理すると、ボールを受けた選手を右or左から追い越す選手がいて、そこに出して、また追い越す選手にボールをつないでいく攻撃の連続。それこそ「選手が沸き出すような攻撃」で、前節対戦したファジアーノ岡山の影山監督がそう言及した。これは極めて攻撃的で、相手に受けに回らせて一気に主導権を握ることができる。実際、今日の前半もそうだった。ここで見過ごされがちなのが、最後尾に回って穴を埋める選手。結局、本来の持ち場をブレイクして前に出て行くのだから、誰かがそれを埋めにかからなきゃならいない。最近、その役目を主に担っているのが中山博貴で、前にも出でチャンスをつくるが、危ういピンチを摘んでいくのもやっぱり中山。
 その結果、2枚のイエローカードを受け、退場。いずれも味方がポッカリ開けた穴を埋めようとした“汚れ役”だった。ラフプレーを推奨する気はないが、2度とも突破を許されると大ピンチに瀕してただろう。攻撃面の破壊力機は魅力だが、反面カード覚悟で止めにいかざるをえないほどリスクを背負っているのだ。だからこそ、数多かったチャンスは決め切りたかった。僅差の試合が続くが、2点差3点差をつけて試合を決めてしまうこと。「車懸」をやるなら、決め切らないと自らの首を絞めてしまうことになる。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …大ピンチを回避するセーブを繰り出し、頼もしい仕事っぷり。
安藤 6.5 …高い位置を占め、敵に圧力、味方にクロスを送り続けた。
秋本 6.5 …相変わらずの安定感で売り出し中の渡に仕事させず。
バヤリツァ 6.5 …危険の芽を摘み、終始セーフティ。高さも完勝。
福村 6.0 …積極的に前で勝負し前半は◎。ただ、後半レオナルドには押し込まれ劣勢に。
チョンウヨン 5.5 …奪う動きが相当良かったが、前に出て穴を空けるシーンも散見。
中山 5.5 …攻守に貢献。黄紙×2はプロフェッショナルな汚れ役だが、やはり2枚はもったいない。
工藤 6.5 …シンプルにボールを捌き、自らもいい位置で受けに回り、攻撃を牽引。
中村 6.5 …攻め急ぎ気味な流れに、ゆるやかな変化をつけながら、相手を翻弄。
サヌ 5.5 …マークきつめながら、前線で潰れ役に。決定的場面は決めたかった。
宮吉 6.0 …キレのある裏狙いとトラップで躍動。あとは決めるだけ。
---------
駒井 5.5 …爆発的な寄せの早さなどがあまり活かせず。不完全燃焼気味。
 原 6.0 …不意の数的不利で、チェイシング力や献身的な守備力の方を発揮。
倉貫 ――

---------
大木監督 6.0 …全体的に危なげはなく、中山退場で勝ち点3への道程を明確化した。




2012 J2第15節 岡山vs京都

2012-05-20 | 蹴球

ファジアーノ●1-2○京都サンガF.C.
18'田所諒
         31'サヌ
         69'工藤浩平

■陣地の奪い合い
 野戦とはすなわち陣地の奪い合いだ。よい陣地を確保できれば、戦いはグッと有利になる。もちろん、奪われた方は奪い返そうとする。バトルはそこで起こる。そして芝の上の野戦・フットボールもまた陣地の奪い合いだ。面白いのはゲームによって奪い合う陣地の位置が異なること。例えば今朝未明に行われたヨーロッパ・チャンピオンズリーグ決勝、バイエルンミュンヘンvsチェルシーでは、チェルシーのゴール前近くがそのバトルの主戦場だった。バイエルンは引いて守るチェルシーの陣地までは容易に到達するが、その分厚い陣地は崩せない。ただ、見てる方としてはまことに面白くない。やはり両軍入り乱れて陣地の奪い合いになり、戦況が刻々と動く戦いにこそ、スペクタルはあるのだと、思わずにはいられない。
 そういう意味で、今日の岡山と京都の戦いはまさに「陣地の奪い合い」そのものだった。ボールを失っても引くことなくすぐに奪い返しにかかる。ボールは止まらず、選手の動きも止まらない。また、主審もその流れを止めない。両軍真っ正面からバトルを繰り広げ、結果として勝敗は決したが、実にいい戦いとなった。

■奪い返す、何度でも奪い返す
 今日のゲームの趨勢を分けたのは、いかに失ったボールを奪い返せたかに尽きる。京都は例によって人数をかけて高いポゼッションを志向するが、それゆえに失った瞬間に背後に数的不利なスペースを背負うというリスクを持つ。岡山の先制点がまさにそれで、バヤリッツァがあっさり躱され背後に素早くボールを運ばれた時点で失点は必然だった。それでも指揮官・大木武は「奪われたらすぐに奪い返す」という基本方針を変えなかった。岡山は3バックでサイドが厚めだったが、そこに安藤淳と福村貴幸の両翼が投入され“攻撃は最大の防御”とばかりに一歩も引かず、リスク承知で数的優位をつくりながらボールを奪い返し続けた。奪われてもすぐに奪い返せる状態に入れば「ハマった」状態。連動するパス回しから攻撃をしかけ、跳ね返されてもそれを拾って再び攻撃に入るという「京都のターン」の連続。何度でもチャレンジを繰り返し、個の力が歯車のようにカチッと噛み合った末にゴールが生まれるという、去年終盤の好調時に見た大木サッカーだった。
 サッカーは結果こそすべてで、どんなやり方でも勝ち点3さえ取ればいい、って考え方もある。功利的に考えればその通りだろう。だけど、やっぱり正面から陣地の奪い合いを制して勝ち点3を得る方が圧倒的に爽快なのである。そして忘れてはならないのは、結果的に敗者となった岡山が逃げずにバトルを挑み続けてきたこと。この好勝負はファジアーノ岡山抜きには語れないのだ。岡山にも最大の賛辞を送りたい。


〈京右衛門的採点〉
水谷 5.5 …失点シーンはやや軽率か。その後は守備機会も少なかったが安定。
安藤 6.5 …ガンガン上がって、ガンガンボールに絡んで、金民均に後手を踏ませた。
秋本 7.0 …終盤押し込まれても、抜群の読みと強靱さで単独でピンチを跳ね返す。
バヤリツァ 6.0 …前であっさり躱され失点の場面以外は◎。絶対的な強さを見せた。
福村 6.0 …攻守に積極性があり運動量も豊富。細かいミスさえなければ。
チョンウヨン 6.5 …最終ラインのカバーと、ミドルレンジシュートで攻守のバランスを支える。
中山 6.5 …豊富な運動量が特に守備面で光った。先制点につながった速いパスも見事。
工藤 6.5 …オフザボールの動きが多く、パスサッカーの潤滑油に。そして逆転ゴール。
中村 6.5 …鋭いパスと切れ込みで再三岡山守備陣を脅かす。サヌとのコンビも良。
サヌ 6.5 …球離れがよく、チーム全体の攻撃スピードを加速させた。もはや欠かせない存在。
宮吉 6.0 …前半、ややズレが目立った。後半はらしさを取り戻して裏狙いに躍動。
---------
駒井 5.5 …慣れないトップの位置でボールを追い回したが、やや収めきれなかったか。
倉貫 6.0 …相手をサイドに追いやるなど、落ち着いた働きで逃げ切りに貢献。
 原 ――

---------
大木監督 6.5 …先に失点しても慌てず、終始コンパクトな布陣で理想的なサッカーを遂行。



2012 J2第14節 京都vs徳島

2012-05-13 | 蹴球

京都サンガF.C.○2-1●徳島ヴォルティス
56'中村充孝
71'秋本倫孝
          77'ドウグラス

■ハイプレスサッカーの具現者
 今、Jで一番走るサッカーを見せているクラブはどこか?と問われるならば、即座に「サガン、鳥っ栖!」と答えたい。あんまり熱い試合を繰り広げているので、J1のカードで優先的に鳥栖の試合を選んで見る習慣が付いた。奴らはとにかく走る、走る。鳥栖は現在J2で主流となりつつあるハイプレスサッカーの最高の具現者であり、ハイプレスの扉を開いた先覚者とも言える。さすがは兄貴・オブ・J2。
 鳥栖のサッカーの特徴はハイプレスに加え、球際の厳しさ、思い切りのよさ、どんな相手でも怯まない姿勢、どんな状況でもあきらめない姿勢。ロングスローでも何でも使える武器は何でも使う…まぁ、何でもアリだ。そんな死に物狂いな鳥栖に、既存J1チームは手を焼いている。戦国大名が一揆勢力には手を焼いているようなものか。昨日は大宮相手に最後の最後で追いついて、タイムアップと同時にほぼ全員がピッチに倒れ込んだ。なぜなら彼らは、リミットを越えて走っているのだから。そういう姿が観ている人間の心を震わせる。サッカーって、結構単純だなぁ。

■鳥栖への挑戦状
 さて、京都-徳島戦。吉田寿光主審のタイムアップの笛と同時に、西日に溶けるようにしてチョンウヨンと安藤淳が倒れ込んだ。宮吉拓実も動けない。彼らがこの試合、いかに走ったかの証明だ。ウヨンは安藤が上がった穴を埋めたかと思えば最前線で相手をチェイスしたり、壮絶なる運動量だった(それでいてミスも少なかった!)。もう右も左も全部守備範囲にしてる中山博貴などに代表されるように、京都も「走り」をチーム力の基礎に据えている。対してこの日の徳島のプレスは、パンツのゴムならもう捨てることを考えねばならぬほどに緩い状態。小林サッカーはもはや時代遅れのJ2サッカーなのか。こんな相手ならば、ハイプレス&ショートパスで天下を狙う京都はまるで役不足だ。
 運動量の差に加え、ゲームの趨勢を分けたのは「ボールへの執念」。1点目の起点となった宮吉。下がってきてチェックして、ボール奪い取る。奪い返されそうになるもボールを離さず前に前に進み中山に開いた折り返しから中村充孝のゴールは生まれた。運動量や球際の執念を備えてこそのハイプレスは機能する。早く鳥栖との「ハイプレス合戦」を見てみたい。とりあえず挑戦状を書いて、尹晶煥宛に送っておこう。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …全体的に安心できる出来。最終ラインからのコーチングで鼓舞。
安藤 5.5 …よく走って奮闘。ただ、びっくりするようなミスパスも何度か。
秋本 6.0 …鋭く強く奪う守りが頼もしい。吉田主審の流しジャッジに助けられた気もするが。
バヤリツァ 7.0 …空中戦も地上戦も制圧。「またバキかっ!」(いい意味で)
福村 6.5 …常に高い位置で勝負し、左サイドを押し込んだ。
チョンウヨン 7.0 …運動量とテクニック、パスセンス。攻守どちらも大黒柱だった。
中山 6.5 …走りの量が多いのは当たり前、量+質で勝負して負けなかった。
工藤 6.5 …ボールに絡めば攻撃が回り出す感じ。最後バテたが守備面も貢献。
中村 6.5 …違いを見せた男。サヌ不在で推進力を一身に担い、先制点で体現。
久保 5.0 …ボールの受け方は悪くないのだが、チャンスの潰しっぷりも豪快。
宮吉 6.5 …ボールを受けること生かすことに懸命で、その仕事ぶりに脱帽。
---------
駒井 6.0 …積極的にプレスに動き回ったが、動きすぎて穴を作った感も。
長沢 5.5 …駒井と同じく、よく追い回したがちょっと動きすぎた。終盤でも狙う姿勢は◎。

---------
大木監督 6.0 …相手の出方を見てプレスの位置を高くし、主導権を奪う。けど、もっと楽に勝てたかも。






2012 J2第13節 甲府vs京都

2012-05-06 | 蹴球

ヴァンフォーレ甲府●0-3○京都サンガF.C.
            04'サヌ
            50'中山博貴
            68'宮吉拓実

■必要だったカード
 大型連休あるいはゴールデンウィークのため、Jは連戦。4/22から中4日、中2日、中2日、中2日でこの13節。当然ながら疲労もMAX。甲府は、前節AWAY湘南戦が首位を争う重要な一戦とあって、勝者死力を尽くすような壮絶なゲームだった。片や京都は不調を抜けようとターンオーバー。死力を尽くしてドローに終わった甲府と、ターンオーバーした新戦力が活躍して辛勝した京都、この「前節」がこのゲームの大きな伏線となった。
 大木監督は、どうやら久保を諦め、サヌと宮吉拓実の2トップをチョィスした。この2人のコンビネーションによる崩しは実に効果的で、いきなりサヌワンタッチ→中村充孝ワンタッチ→宮吉裏抜け→サヌの豪快なダイレクトシュートという形になって結実した。すっかり忘れ去ってしまったかと思っていた流れるようなパスワークも戻ってきた。そこにサヌという個がアクセントになっていることは疑いがない。短いパスをつなげるために、ドゥトラの掻き回しが必要だったように、ようやく足りなかったカードが見つかった。

■スタミナ配分の妙
 この試合、大木監督は3バックを敷いてきた。安藤淳は昨年3バックで強みを出していたし、福村貴幸は今シーズンセンターを務めており、2人とも実にバランスが良かった。バヤリッツァは3バック中央が天職じゃないかと思うほど落ち着き払い、黙々と相手のチャンスを潰してゆく。
 ただ、相手の甲府の状態も良くはなかったことは多少差し引かねばならない。前節・湘南戦の素晴らしすぎるほど素晴らしかった死闘が確実に影響し、後半はもはや動けなくなるほどに消耗していた。逆に京都のプレスの速さは止まらない。出足の早さで相手を前で前で潰していき、プレッシング優勢となると駒井善成あたりはもはや水を得た魚。この1試合だけでなく、連休連戦のスタミナ配分の差がモノを言った。
 疾(はや)きこと風の如く…京都
 其の徐(しず)かなること林の如く…甲府
 侵掠すること火の如く…京都
 動かざること山の如し…大木監督
といったゲームに、さすがに甲府サポーターはガックリきたのではなかろうか。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …ほぼ守備機会なし。ピンチになりかけもいいパンチング。
安藤 6.5 …機動力と察知力で安定感のある守備。3点目宮吉へのフィードはさすが。
バヤリツァ 7.0 …危ないところは長い手足で完全防備。高さも完勝。
福村 6.5 …チェックの早さだけでなく、攻撃にも顔を出す。危なっかしい部分もあったけど。
チョンウヨン 6.0 …3バックの前の防備壁として機能。配球も安定していた。
中山 6.5 …中央から右へ左へ顔を出し、攻撃を潤滑化。2点目見事。
工藤 6.0 …奪って即攻撃の動きにキレあり。時間が経つほどにミスが目立ったが。
中村 6.0 …独特のリズムで変化を与える。1点目につながるワンタッチプレーは白眉。
駒井 6.0 …前半は消え気味だったが、後半ドリブルで相手を翻弄。
サヌ 6.5 …味方を上手く使い、自分も上手く生かした。チーム全体を活性化。
宮吉 7.0 …愚直に裏を狙い続けて風林火山をズタズタに切り裂く。
---------
 黄 6.0 …得意の左上がり目で前向きに勝負を繰り返し、1アシスト。
 原 5.5 …ミスが目立ったが、何本かシュートに持ち込んみ試合を終わらせる動き。
---------
大木監督 6.5 …既存メンバーと前節のメンバーを上手く融合。古巣甲府を圧倒した。





2012 J2第12節 京都vs栃木

2012-05-03 | 蹴球

京都サンガF.C.○1-0●栃木SC
89'伊藤優汰

■何かを変えよう
 今、サッカー界で話題をかっさらっている存在といえば、川崎フロンターレの新監督・風間八宏氏。ヤッヒーはどうも「非常識」であることにこだわっているようで、「今日の常識は明日の非常識」を掲げ、常識では考えられない戦い方で緒戦は広島相手に玉砕した。風間監督のやり方はともかく、常識をぶち破ろうって気概はよくわかる。停滞しているものを変化させる時、得てして常識は邪魔になるってことも。
 停滞しているチームを変えようとする時、最もポピュラーなやり方は選手の入れ替えだろう。●●△で3試合勝ちのない京都サンガ大木監督も、ようやくスタメンに手を入れてきた。とりわけ新加入のサヌと出番が極端に減っていた駒井善成という2人はともに「個」で勝負できるタイプ。おかげて細かいパスワークはほぼ機能しなくなっていたが、ボールは前に運べるようになった。高い位置で勝負できると、ゴールには近づく。それでも、前半のシュート数は安藤淳のシュートわずか1本だった…。

■チャレンジこそが肝
 サッカーには流れがあり、まるで生き物のようにヌメリヌメリと動いていく。そう、「流れ」の動きは遅い。遅いけれども手放すとヌルっとどっかに行ってしまう。それはまるでウナギのようだ。
 前半、ペースを掴んでいたのはサヌと駒井が攻勢をかけた京都の方だったはずだ。ただ、今日も久保裕也がサイドブレーキを引いたままで、シュートまで持っていけないうちに栃木のカウンターに晒されてしまった。後半になって、久保を宮吉拓実に代えると再び流れは京都へ。前節から引き続きキレを感じられない工藤浩平を伊藤優汰に変えることで確実に流れは戻ってきた。
 けれどウナギを捕獲するのはなかなか難しい。サヌが最も効いていたのに、原一樹に変えてしまってからはペースがつかめなくなった。理由は簡単で、ボールが前に運べないから。原は最後の一撃を刺すフィニッシャーとしては優秀だが、周囲との連携はイマイチ。サヌがいなくなったことで不思議なコンビネーションを見せていた駒井も輝かなくなり、ゲームは停滞した。
 ゲームを決したのは伊藤の「思いきり」だった。サッカーとはゴールに向かって、ボールを入れるゲームなんだ!と叫ぶかのように、カットインからの左足を振り抜いた。物事を変えようとするとき、理論やらいろいろ小難しい事を並べるよりももっと簡単なことは、チャレンジなのだと気づかされた一撃。逆を言えば、チャレンジしなくなっていたから、停滞していたのではなかろうか。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …サビア強烈弾を神セーブ。守備機会は少なかったが存在感抜群。
安藤 5.5 …スコンスコン抜かれていたが、攻撃に絡んでチャンスを作る。
秋本 5.5 …まずまずだが、サビアには結構やられ、ピンチを招くフィードミスも。
バヤリツァ 6.5 …球際の強さを遺憾なく発揮。頼もしさがユニフォームを着ていた。
福村 6.5 …前で勝負する守備意識が高く、上がりのタイミングも良かった。
倉貫 6.5 …局面ではパウリーニョに仕事をさせず、巨視的で視野の広い動きを披露。
中山 5.5 …ボールに当たりに行く中盤の潰し屋を全う。細かいミスが残念。
工藤 5.5 …上手くサヌや駒井を使ったものの、今日もミスパスやシュートミスが目立つ。
駒井 6.5 …速い寄せと積極果敢なドリブルで風穴を開け続けた。
サヌ 6.5 …ゴール目がけるプレーと周囲を使うプレーの緩急で、脅威であり続けた。
久保 4.0 …消極的で判断も遅く、加速を止めるブレーキの役目をそつなくこなす。
---------
宮吉 6.0 …ボールに上手く絡んで、シュートまで行き、流れを変えた。
伊藤 6.5 …前向きなプレーが変化を生み、思い切りの良さが決勝点を生んだ。
 原 5.5 …スムーズにゲームに入れず変化した流れを停滞させたが、最後にアシスト。
---------
大木監督 5.5 …結果オーライではあるが、サヌを代えたのは勿体なかった。次、久保どうする?