京都サンガF.C.○2-1●ギラヴァンツ北九州
37'中村充孝
■車懸(くるまがかり)
上杉謙信が得意としたのが、車懸の陣という戦法。密集戦術で、部隊が入れ替わり立ち替わり、相手の正面に当たってはヒット&アウェイを繰り返して行く。
何となく図式化してみると…
A
D B
C
↓
B
A C
D
↓
C
B D
A
上記の通りで、渦巻くように最前線を入れ替えながら推進力にして突破にかかる。
大木サッカーも、単純に言えば「車懸」と同じ。だいたい4人くらいがポジションに縛られず前に前に追い越しながら、前線突破を狙う。こういう時は大木サッカーが体現できている証拠。この試合は立ち上がりから何度も決定機を作り出したが、その面々はチョンウヨンであり、宮吉拓実であり、サヌであり、安藤淳であり…。まさに最前線が入れ替り立ち替わっている証拠。ただ、決定機をなかなか決めきれられず、流れを失うことになるか…と思いきや、中村充孝が決めて先制点を奪った。この得点の場面はさほど追い越しはなかったが、福村貴幸→宮吉とつなぎ、こぼれ球を工藤浩平がダイレクトでテンポを変える速いボールを送り、サヌの“落とし”が効いた。散々追い越して掻き回してきたから、こういうオーソドックスな“落とし”も効くというのも、また表裏一体なのである。
■汚れ役
「車懸」とか訳のわからない例えを出してしまったけど、整理すると、ボールを受けた選手を右or左から追い越す選手がいて、そこに出して、また追い越す選手にボールをつないでいく攻撃の連続。それこそ「選手が沸き出すような攻撃」で、前節対戦したファジアーノ岡山の影山監督がそう言及した。これは極めて攻撃的で、相手に受けに回らせて一気に主導権を握ることができる。実際、今日の前半もそうだった。ここで見過ごされがちなのが、最後尾に回って穴を埋める選手。結局、本来の持ち場をブレイクして前に出て行くのだから、誰かがそれを埋めにかからなきゃならいない。最近、その役目を主に担っているのが中山博貴で、前にも出でチャンスをつくるが、危ういピンチを摘んでいくのもやっぱり中山。
その結果、2枚のイエローカードを受け、退場。いずれも味方がポッカリ開けた穴を埋めようとした“汚れ役”だった。ラフプレーを推奨する気はないが、2度とも突破を許されると大ピンチに瀕してただろう。攻撃面の破壊力機は魅力だが、反面カード覚悟で止めにいかざるをえないほどリスクを背負っているのだ。だからこそ、数多かったチャンスは決め切りたかった。僅差の試合が続くが、2点差3点差をつけて試合を決めてしまうこと。「車懸」をやるなら、決め切らないと自らの首を絞めてしまうことになる。
〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …大ピンチを回避するセーブを繰り出し、頼もしい仕事っぷり。
安藤 6.5 …高い位置を占め、敵に圧力、味方にクロスを送り続けた。
秋本 6.5 …相変わらずの安定感で売り出し中の渡に仕事させず。
バヤリツァ 6.5 …危険の芽を摘み、終始セーフティ。高さも完勝。
福村 6.0 …積極的に前で勝負し前半は◎。ただ、後半レオナルドには押し込まれ劣勢に。
チョンウヨン 5.5 …奪う動きが相当良かったが、前に出て穴を空けるシーンも散見。
中山 5.5 …攻守に貢献。黄紙×2はプロフェッショナルな汚れ役だが、やはり2枚はもったいない。
工藤 6.5 …シンプルにボールを捌き、自らもいい位置で受けに回り、攻撃を牽引。
中村 6.5 …攻め急ぎ気味な流れに、ゆるやかな変化をつけながら、相手を翻弄。
サヌ 5.5 …マークきつめながら、前線で潰れ役に。決定的場面は決めたかった。
宮吉 6.0 …キレのある裏狙いとトラップで躍動。あとは決めるだけ。
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駒井 5.5 …爆発的な寄せの早さなどがあまり活かせず。不完全燃焼気味。
原 6.0 …不意の数的不利で、チェイシング力や献身的な守備力の方を発揮。
倉貫 ――
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大木監督 6.0 …全体的に危なげはなく、中山退場で勝ち点3への道程を明確化した。