京都サンガF.C.△0-0△ザスパクサツ群馬
[警告・退場]
・京都
62'石櫃洋祐(C1反スポーツ的行為)
79'佐藤健太郎(C1反スポーツ的行為)
・群馬
85'松下裕樹(C1反スポーツ的行為)
【全体の印象】
キックオフからそのまま群馬ゴールを脅かした京都は、立て続けにチャンスを作るも決まらず。攻勢は続くも、次第に群馬のカウンターも許すようになると決定機も与えたが、菅野が立ちはだかる。すっかりテンションが落ちた京都は後半もシュートミスを連発。クロスから点で合わせにきた群馬の決定機を再び菅野が防ぎ反撃を待つも、火が付いたのは終盤になってから。エスクデロの強引な突破を足掛かりに猛攻に転じたが、結局シュートは枠内に飛ばず。自らチャンスを潰して焦って首を絞めるような痛恨のドローとなった。
【雑感】
■奇妙な均衡
ゲームの趨勢を決めるターニングポイントは、あまりにも早く、突然だった。それは開始わずか10秒、キックオフ→堀米とエスクデロによる見事な連携からのクロスをフリーで飛び込んだ有田が外してしまった場面。このシーンで外したことが、ゲームを意外な方向に転がした。立て続けに山瀬の突破があり、さらにはこの日キレを見せていた堀米のクロスから山瀬のシュートがポスト直撃。序盤は技術面も精神面も京都が群馬を圧倒し、5位vs21位という順位そのままの力差があった。
「いつか点を取れるだろう」―そんな思いが観衆にもあったし、選手(堀米の談話)にもあった。一方、命拾いした格好の群馬はこの力差をどう受け止めただろう。おそらく「気合いを入れ直さなければ、ズタズタにやられてしまう」という強い警戒心だったに違いない。こうして京都のテンションが下がりはじめ、群馬のテンションが上がりはじめることで「力差」は次第に埋まってゆき、奇妙な均衡が生まれた。
後半になると「いつかは点を取れる」が「あれれ?取れないぞ?」になり、「ヤバい、点、奪わなきゃ…」とチーム全体が焦りはじめる様子が手に取るようにわかった。焦りから拙速なパスやクロスを蹴るようになり、丁寧さや安定感が消えた。そういえばユーロの決勝でフランスも似たような展開でチャンスを決めきれず、延長でポルトガルの一撃に沈んだ。ただ、フランスのように相手の好守に阻まれているのならまだしも、自分たちで外しているのでは、どうしようもない。
■心のネジ
サッカーには、「いつかは取れるだろう」という揺るんだ心のネジを巻き直すタイミングが何度か用意されている。ひとつはハーフタイム。だが後半になってみても前半序盤に見せたような熱量はなく、全体的にフワッとしたまま。まるでピッチ脇に浮いていたざっくぅの風船のように。もうひとつネジを締め直せるタイミングは、3回の選手交代のタイミング。64分に前線の基点役の有田をダニエルロビーニョに代えたが、この交代から明確な意図が感じられず、ダニロビの存在自体が浮いてしまっていた。
このゲームでは技術面はともかく、戦術面にさほどのエラーはなく、問題はテンションの低下や停滞する空気感だった。選手交代はすなわち援軍。苦しい時に現れる援軍に士気が奮い立つような、そんな交代カードの切り方を期待したものの、石丸監督はカードを切る順番もタイミングも、効果的ではなかった。去年最終戦で中山博貴を投入してスタジアム全体の空気を変えたような、ああいう手も打てるはずなのだが。
下がったテンションを自力で引き揚げたのは、75分のエスクデロの単騎突破。ただ、その直後に良い出来だった堀米に代えて内田を投入したのも、手としてはやや疑問。最終的には再び熱量を取り戻して群馬ゴールに襲いかかったが、何人かはもうプレーに焦りも出て、足並みは揃っていなかった。唯一の救いはこういうゲームを披露したのが、シーズン終盤ではなくてよかった、ということ。出てきた課題は、乗り越えるしかない。乗り越えられないなら、そこまでだ。