二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

もうすぐ完成!府立京都スタジアム(サンガスタジアムbyKyocera)

2019-10-29 | 蹴球

 

 京都スタジアム工事進捗状況の空撮動画(令和元年9月26日現在)

 

 完成まであと1ヶ月あまり。府立京都スタジアムのオープンが間近に迫ってきた。名称はネーミングライツにより「サンガスタジアムbyKyocera」と命名されることとなり、12月に竣工の予定。2020年1月11日の「麒麟がくる 京都大河ドラマ館」オープンを以て稼働することになる…はず←正式発表された。スタジアム本体としては「サッカー」でのこけら落としが明言されており、それがプレシーズンマッチになるのか、リーグ開幕戦になるのか…。個人的にはプレシーズンマッチを開催して、シーズン開幕に向けてに運営上の問題点を洗い出すのがよいと思う。

 

■ハード面は現時点の最高クラス
 まずはサンガスタジアムbyKyocera(以下サンガスタ)のスペックをおさらい。球技専用(ピッチサイズ126m×84m)で収容人数は21,600人。既存の専スタならば松本のサンプロアルウィンやユアテックスタジアム仙台などと同様の2万人規模に該当。ここ10年にできた専用スタジアム(J2基準以上)は、小型(長野U・約1万5千/2015年)→大型(パナスタ・約4万/2016年)→小型(ミクスタ・1万5千規模/2017年)だったので、ひさしぶりの中型(2~3万規模)スタジアムとなる。今後、広島、長崎、沖縄、甲府など各地で計画されている専用スタジアムのほとんどが中型規模に該当し、サンガスタはそれらの先行事例モデルとなる。
 当然といえば当然だが、サンガスタは現時点で国内最新の専用スタジアム。今現在求められる必須スペックはほぼだいたい投入れさている。

・全面屋根
屋根は最前列よりも張り出し、全席を完全に覆う。よほどの横殴りの雨でない限り濡れない(と思う)。もう紫のポンチョも必要ない!でも選手は濡れる。監督も濡れるので監督用ポンチョは必要。

・VIPルーム
パナスタやミクスタあたりから標準装備になってきたハイクラス観戦ゾーンはメインスタンド2階と3階に設置。一般席も全席背もたれ付きで、「座れればいい」という時代はもう過去のものに。


・複合施設
スポーツ以外でにぎわいを生む施設は、今後の新設スタジアムではカギになる。バックスタンド~北スタンド下はテナント区画となっており、当面は大河ドラマ館+おみやげショップに。ついでに西日本最大級の屋内クライミングウォールを設置。もひとつついでにeスポーツ専用施設もできるとのこと。



 その他ハード面では、大型映像装置2基、帯状映像装置LED照明太陽光発電パネルピッチへの通風設計自動散水システム防災備蓄倉庫足湯など、令和の時代に求められるスペックはだいたい装備。トイレまわりや託児室の有無などは内覧会でチェックしたいところ。さすがに冷暖房とかはないが、現時点では最高クラスのハードを備えており、中型スタジアムのフラッグシップモデルとなるだろう。ジャパネットによる長崎の計画がこの上を行く超ハイスペックになるだろうけど。

 

 一方でマイナスポイントも。500m先に棲息する希少生物のため日陰を作らない配慮から建物自体の高さが取れず、座席の斜度はやや緩めに。“天空視点族”からすれば残念な点。見やすさではパナスタやミクスタに劣る。同じ理由で音を漏らさないために密閉性は上がっているので、ほどよいコンパクトさとあいまって音響面はかなり迫力が出る模様。これもこけら落としのお楽しみ。



■駅近アクセス、期待と課題
 ハード面を上回るサンガスタの“最強”ポイントは、
・駅近立地
に他ならない。国内で最も駅に近い専スタ「駅前スタジアム(鳥栖)」よりも定規で測るとわずかに近い。京都駅方面から電車でアクセスすると、スタジアムの真横を通ってそのまま駅のホームに滑り込む感覚に胸が躍る。改札を出れば正面にスタジアムが、どーん。(↓2019年9月撮影)

駅の北口を降りてからスタジアムを約半周時計回りに歩く感じになるが、それでも早足で3分、ゆっくりでも5分。ここで人の流れを整理してみよう。

・駅からスタジアムまでのルートは基本1通り

・亀岡駅の北口の階段(エスカレーター)を下り、そのまま道路をまっすぐ150mほど歩く。右に曲がれば100mほどで入口
→【参考】西京極で例えれば、阪急西京極駅から橋を渡って公園に入った地点からSバックの入口(auゲート)くらいと同じ。Sメインの入口~フレンズスクエアよりも近い。

・道幅は広いし、試合開催時は自動車進入禁止にして歩行者オンリーでてぎるはず(してほしい。安全のためにも)

・道路右手に広場が整備され、試合開催時には「かめおかマルシェ」が開かれ、飲食・物販等の出店がある

・「マルシェ」の運営は地元自治体(亀岡市観光協会)で、場内のスタグルとは別。出店も地元事業者限定。食材の宝庫・丹波の底力に期待

明智かめまるは毎試合常駐かしら?

・スタジアムの場外のスペースは北側と東側にあるが、だいぶ狭い。待機列やイベントのスペースをどこに設定するのか不明



・運営側のスタグルやグッズ等物販はおそらくコンコース内およびスタジアム2階デッキ上



・席に着いてから駅前のマルシェで飲食してイベント楽しんで再入場みたいなことが可能(なはず)
 →駅北口~スタジアムが一体化しているお祭り空間が作れれば最高。

 メリットだらけの「駅近」は、試合終了後には一転してデメリットにもなりうる。駅への人の流れは原則1方向なのでどうしても人がたまってしまう。8割方鉄道を利用するとして1万人入れば8千人。8千人が一気に亀岡駅に入ろうとすると、間違いなく人が渋滞し、駅に入るだけでも相応の時間を要することになる。後述するが駅と路線の能力は決して高くない。(ちなみに東側から保津橋へ大回りして線路渡って駅南口に回れば徒歩15分程度)

つまり、
・試合後の人をどう捌くか?
がこのスタジアムの最大の課題点となる。

考え得る対策としては
①試合後もスタジアム内に滞留させるアイデア
②スタジアム周辺で滞留させるアイデア

を充実させて「すぐ帰る勢」を減らして「しばらく残る勢」を増やすこと。
①は、せっかくeスポーツの施設があって映像装置がたくさんあるんだから、DAZNの協力を得てそこで他のスタジアムの中継を見せることはできないだろうか?たとえば16時に試合終了した後に15時キックオフの他会場のゲームの後半を見て帰る、みたいなパターン。

②はかつて神戸が開催していたミサキガーデンのように試合後場外飲食スペースを充実させる…などの工夫。金沢は夏場に試合後にバーを開いたりステージイベントを催したりしている。サンガスタの場合、マルシェスペースと駅への滞留スペースはかなり近接しているが、さてはて。

 ちなみにスタジアム→駅の間は人を滞留させるスペースは十分にある【京都府の試算では3万8千人滞留可のだが、どうしても「待つ」時間はストレスが溜まるもの。もし天候が雨だと野晒しにもなる。観戦はポンチョいらずなのに。さらに危惧するのが「駅と路線の貧弱さ」、だ。


■京都~亀岡間は意外と近いし早い…けど
 亀岡駅への路線は嵯峨野線といい、今はあまり山陰本線とは呼ばない。京都駅からは快速で20分、普通で28分。市内中心部からなら二条駅の使用も便利。実際に乗ってみると特に遠さは感じない。車窓の風景も市街地の眺めに時々寺院の甍が出てきたり、東映撮影所があったり割と面白いし。途中トンネルに入って峡谷を越えるあたりは「ん?ん?ん?」と思うけれども。ヤンマースタジアムのある長居駅は梅田駅から地下鉄で22分とかなので、ターミナル駅からかかる時間は大して変わらないのだ。

(↓たとえば11月2日13:00到着の条件でジョルダンで検索・比較してみると…)


 ただし、本数が圧倒的に違う。梅田→長居が1時間に16本ほどある(さらに地下鉄以外に環状線+阪和線など別のルートもある)のに比べ、嵯峨野線は1時間にたった4本+特急1本。鉄道の別ルートもない。通常は4両編成。しかも途中に嵯峨嵐山駅という観光客利用がめちゃくちゃ多い駅があり、路線の乗客数は結構多い。外国人も目立つ、そんな路線。夏場のナイトゲームなら観光客とのバッティングの心配はさほどないが、秋シーズンのデーゲームの場合などかなりしんどいぞ…と。それでも「往き」はまあいい。問題は試合終了後「復路」の輸送力である。


■嵯峨野線の輸送能力への疑問符
 京都府は以下のように試算している。
「JR嵯峨野線の亀岡駅は、4線2ホームの構造となっており、通勤の時間帯(午前7時台)には、特急・快速を含め10便が運行している。現状ホームは8両が停車できる長さがあり、土日の試合終了後の2時間(21時~22時)に運行している4本(4両連結)を同駅で1本あたり4両増結すること、1時間あたり4本(8両連結)の臨時列車の増発を行えば京都駅方面で約22,400人、園部方面(同時間帯で7本運行増結なし)で約7,800人の観客が輸送できる。京都スタジアムの収容人員(約21,500人)を考えれば、試合後2時間以内に、鉄道だけでも観客を輸送することが可能と考えられる」(京都スタジアム(仮称)整備事業に係る環境への影響について/平成29年5月)

 確かに通勤時間帯は特急1本+京都行9本のダイヤが組まれている。開催のたびに同様の運用が可能なのかどうか。運行されている列車・221系の定員は1両140くらいなので、8両編成で1度で輸送できる定員は1120人程度。通勤時間帯のように1時間9本に増発かつ8両連結できれば確かに1時間1万人/h程度の輸送力(乗車率150%なら1万5000人)はあるが、仮に2本の増発(6本/h)×8両連結なら7000人/h程度の輸送量に過ぎない(乗車率150%で1万ちょい)。ロングシートの車両を回して乗車率200%のギュウギュウ詰めで運行すれば1万5000人/hが可能かもしないが、当然春・秋は嵯峨嵐山から乗る観光客も多い訳で、JR西日本はこの路線の生活客+サッカー客+観光客を上手く輸送できるのだろうか?どれくらい協力してもらえるのだろうか?と。ちなみに嵯峨野線は京都駅構内にある単線区間が解消できてないないため柔軟な運用が難しいとか何とか。このスタジアムのアクセスの生命線はあくまでも「鉄道」なので、この心配が杞憂に終わればいいのだが。


221系と建設途中のスタジアム(2018年12月撮影)

 ちなみに亀岡駅は駅舎自体も大きくはない。ホームも広くない。規模的にはヤンマースタジアム最寄りの阪和線鶴ヶ丘駅と同じくらい。改札外で人が溜まれるスペースも広くないので、入場制限のかけ方を工夫するしかないが、上手くいくだろうか。プレシーズンマッチで集客が見込めるチーム(関西のJ1クラブ)をマッチメイクして試すべき。いや、試さない手はない。


■駐車場?そんなものはない
 鉄道以外の交通手段としては一応「バス」もある。試合開催日には阪急沿線の桂駅(or西京極駅)とか西山天王山駅あたりから京都縦貫道を経由する路線ができるのだと思う…たぶん。帰りはバスが案外スムーズかもしれない。

 

がしかし、高速道路(ルート的に最寄りは篠IC.)までの道路事情はかなり脆弱。市外からの「自家用車」が多く流入してしまうと交通の血管が詰まり、住民生活に悪影響(&悪感情)を及ぼしてしまうのは火を見るよりも明らかだ。
 当初の計画段階では約660台の駐車場併設も予定されていたが、途中で用地を駅の近くに変更したため、本体に付随する駐車場は消え、関係者用の駐車場(100台)しかなくなった。つまりサンガスタは「車では来るな」というスタジアムであるということ。「公共交通機関を使え」ということ。このことは、運営側(クラブ側)が強く打ち出しておくべき。自家用車はあくまでも「非公共」な手段なのである。どうしても自家用車を使いたい人向けには、離れた場所(亀岡IC近くの亀岡運動公園)に無料駐車場を確保し、パークアンドライドに誘導すること。昨今はJクラブの練習場やスタジアム周辺・近隣商業施設などへの自分勝手な違法駐車が社会問題化していると聞く。マナー違反を起こさないようなルール作りと明確なアナウンスを徹底しないとクラブの信用はすぐに失墜する。「サッカーが悪い」という話になる。せっかく地域の期待がかかる新スタジアム。「駐車場?そんなものはない」というスタンスでOK牧場。

 ちなみにちなみに交通手段としては他にも「徒歩」と「自転車」がある。自宅から徒歩はおいといて、「自転車」でのアクセスは西京極では結構多かったと思う。3月ごろ、ひさしぶりに亀岡まで自転車で行ってみたところ、西京極総合運動公園からサンガスタまでざっと1時間程度だった。途中の峠越え(老ノ坂越え)は登り坂よりも交通量の多さとビュンビュン飛ばす大型車両に閉口。京都縦貫できてからマシになったとはいえ、やっぱりこのルートは怖い。事故のリスクも高いルートだと思う。山越え大好き健脚サイクリストの方以外は、大人しく鉄道かバスを使うようにしよう。でも個人的には一度は自転車で行きたい。

 老ノ坂は、路肩狭い・交通量多い・登り(下り)の三重苦。トンネル近辺だけがオアシス(2019年3月撮影)