二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

鳳凰がくる

2019-07-16 | 蹴球

 

 2020年の大河ドラマは、明智光秀が主人公の「麒麟がくる」。同じく2020年にこけら落としされる京都府亀岡市の府立京都スタジアム(名称はサンガスタジアム by Kyoceraになる予定)内には「麒麟がくる」の大河ドラマ館が併設される。サッカーなどスポーツイベント開催時以外にも常時集客できる施設が同居する本格的な複合型スタジアムとして期待がかかる。ただ、光秀の生涯において丹波経営に乗り出すのはかなり終盤で、亀山城築城は1577年頃。本能寺の変5年前に過ぎない(1579年には福知山に築城)。ドラマの舞台は美濃と近江(坂本)主体で、丹波や丹後はドラマにほとんど出て来ないんじゃね?という一抹の不安があるものの、マイナー勢力の波多野氏や一色氏を登場させてもらいたいものである。弓木の猛将・一色義定(満信)の話とか見てみたいよねー。

府立京都スタジアム


 脱線した。今回の主題は、「麒麟がくる」の前に「鳳凰がくる」?というお話。京都サンガF.C.のエンブレムに描かれる二羽の鳥は鳳と凰。マスコットのパーサくんも鳳凰。とはいえ公式設定には不死鳥という表記もあり、一体どっちなんだ?そもそも鳳凰と不死鳥の違いは何?など、ややこしいので今回はパーサくん=鳳凰ということにしておく。都合に合わせて随時パーサくんはフェニックスや朱雀になる。いいんだよ、それで。

 そんな鳳凰軍団が2019年7月13日、J2リーグ22節にして首位に立ったのだ!5年ぶりと報じられているが、5年前は開幕戦に1勝しただけの話で、実質7年ぶり。これを祝して今年の7月15日は祝日になったとか(嘘です)。なぜ今「鳳凰がきている」のか?戦術面から詳しく紐解いてみたいとも思ったが、今回は少し力を抜いて「鳳凰がくる」の主要キャストを紹介していくことにしよう。

首位に立った京都サンガF.C.の基本布陣

【GK】
・清水圭介
・加藤順大
開幕直後は最終ラインがバカ高かったため、GKもかなり前に出ていたが、それなりに落ち着いた。自陣でマイボールを持てる時は2人のCBの間に入ってビルドアップに参加したりする。バックパスを受けても安易に前に蹴らないし、極力繋ぐ。理想は攻撃の起点になることだが、まだその域までは到達していない。不動の守護神・清水+天性ムードメーカー・加藤という体制だったが、天皇杯&21節から加藤を正GKに起用中。ビルドアップ能力や守備範囲の広さを考えれば、ナウでヤングな若原に出てきてもらいたくもある。理想を言えばノイアーみたいなウルトラ外国人がほしい。言うだけはタダ。今のところ大河ドラマならば主人公を支える老臣ポジション。光秀でいえば溝尾庄兵衛。


【CB×2】
・安藤淳
・本多勇喜
(・宮城雅史)
(・上夷克典)
守ること以上に最終ラインからの配球が求められている今季の京都。序盤は大卒ルーキー上夷が入っていたが怪我で離脱。現在は安藤&本多が不動の組合せに。安藤は元々中盤の選手でありパス能力は折り紙付き。本多はどちらかといえば身体能力任せの左SBだったが、今やパスも出せて走力と空中戦が身体を張れるCBに。鳳凰軍団の生命線である。大宮・高木監督はここを抑えて叩く作戦をとり、してやられた。次はおくれを取るまいぞ。問題はこの2人以外層が薄いこと。22節では宮城が代役を果たし上夷も実戦復帰しているが…。大河ドラマなら主人公を助ける大物武将の役回り。光秀でいえば細川藤孝。


【CB/3バック時の中央
・田中マルクス闘莉王
(・下畠翔吾)
ゲーム終盤に3バック(5バック)化する時に投入されるCB。守備の切り札的キャスト。シーズン当初から闘莉王にこの役目を与え、ゲームの流れを落ち着かせることに成功。終盤追い上げる相手の放り込みにはさすがの強さを発揮したが、18節琉球戦のように地上戦に出られた際にはアジリティで遅れをとった。闘莉王が目の手術で離脱した後は代役はおらず、この作戦も有効に使えなかったが、21節長崎戦では下畠を起用。なかなか出番のなかった下畠がここにきて渋い仕事を果たす。大河ドラマならキャストロールの最後の方に名前がでてくる存在。光秀なら藤田伝五。


【左SB】
・黒木恭平
(・冨田康平)
序盤は大卒ルーキー冨田も使われたが、ほどなくレフティーの黒木が不動の地位を確保。ボールを保持する際にはビルドアッパーとして配球役になるほか、左WGの内側をスルスルと上がてパス回しやフリーランニングで攻撃に関与する。最近の用語では「偽サイドバック」とか言われる動きを体現する。3節福岡戦で持ち上がって中央の宮吉とワンツーから奪ったゴールがまさにその形。黒木はプレスキックのキッカーとしても欠かせない戦力で、前半戦のMVP候補の一人。去年途中加入しながら大した活躍もしなかった存在だったのに、わからないものである。大河ドラマなら主人公の脇を支える助さん格さんのどっちか。


【右SB】
・石櫃洋祐
・福岡慎平
(・黒木恭平)
(・上夷克典)
10節までは黒木や本職CBの上夷も使われていたが、今年も京都の右SBに収まったのはやっぱり石櫃だった。ただし、駆け上がってクロスというTHE ISHIBITSUな定番プレーはほとんどなく、こちらも左と同様にWBが外にいる場合は中に入るし、中にいれば外を走るなどレーンが渋滞しない判断に基づく動きになっている。あまりクロスは使わないものの、12節横浜戦の大野へのクロスなど得点につながるクロスも武器は武器。相手に応じて本職MFの福岡もここで起用され、対人守備の粘り強さやタフネス、クレバーさを発揮。左同様、単純な走力よりも戦術眼が重視されている。大河ドラマなら助さん格さんのどっちか。えっ?助さん・格さんはドラマが違う?


【アンカー】
・庄司悦大
(・福岡慎平)
ここは庄司の、庄司による、庄司のためのポジションで、「鳳凰がくる」の最重要キャストといえる。J2屈指のボール配球職人として中盤の底から長短のパスを散らしたり、左でボールを持ってる時に庄司を経由して素早く右に局面を動かすようなジャンクションの役目もこなす。たまーに「プレミアリーグかよ!」みたいな超速いロングパスが出たりする時には「ウゥーーーー…」と地鳴りのような感嘆の声を。守備時はCBの位置まで落ちて3バック化したりとか、そういうのはお手の物。ただし庄司がキーマンなのはどのチームもわかってるので大抵は厳しいマークを受ける。庄司が出場停止だった16節東京V戦は福岡が見事な存在感を見せたが、翌節大宮戦はイマイチな出来で庄司の重要性を再認識した。大河ドラマなら主人公の腹心。明智光秀における斎藤利三。


【インサイドハーフ×2】
・重廣卓也
・福岡慎平
・金久保順
(・宮吉拓実)
(・仙頭啓矢)
ちょいちょい組合せは変わるが、現状は福岡+重廣or金久保がファーストチョイス。守備的MFよりも前方でとにかく攻守に身を粉にして走る。チャンスと見ればFWを追い越しエリア内に侵入するが、シーズン序盤は重廣も福岡も「顔は出すが決めきれない」感じだった。最近は金久保が絡む惜しいシーンが目立つ。このポジションが「仕留め役」になれば、ワンランク上のチームになれる。ボールを失ったら素早く奪回すべくプレスを敢行するのも重要な役割。この面で18歳福岡は急成長しており、森保監督は東京五輪◎とメモに記入しとくべき。このポジションは鳳凰軍団の中では比較的地味だが実は曲者という役回り。大河ドラマでいえば主人公に近しい商人みたいなタイプ。光秀でいえば今井宗久?津田宗汲?


【左WG】
・小屋松知哉
左サイドは序盤からほぼ不動で小屋松。それくらいの存在感を見せつけている。外に張ったポジションを取ることで相手を釣り出すor相手の守備ラインを横に広げる役割がある。サイドいるだけでも戦術上の意味がある駒なのだが、今季の小屋松の場合1vs1の勝負に持ち込めばJ2ではほぼ負けることなく突破にかかれるほどの好調ぶり。突破しても基本クロスは上げないためその面での弱点も露呈しない。決定力には難があったが、5月の月間ベストゴールを受賞するなど課題も克服気味。左から敵陣を突き破る一番槍。大河ドラマでいえばとにかく戦場で先頭を駆ける武将。光秀周辺なら細川忠興。


【右WG】
・仙頭啓矢
(・中野克哉)
(・ジュニーニョ)
(・宮吉拓実)
序盤は大卒ルーキー中野やジュニーニョの起用が多かったが、11節徳島戦以降は基本的に仙頭がレギュラー。サイドに張って相手を釣るor相手の布陣を広げるという狙いは左と同じ。左に比べると比較的インサイドハーフ、サイドバックと連携しながらポジションチェンジすることも多く、的を絞らせないようにパスを繋いで相手がズレるのを待つ。仙頭は「元高校選手権得点王」としての得点力も発揮し、5月は月間MVPを受賞。それでもまだ決定機逸はあるのでさらに精度を上げていきたい。ジュニーニョは戦術理解度に難があるが、テンポが違う異物感ゆえにチャンスメイクできたりするし、守備も頑張れるが、仙頭のファーストチョイスは変わらない。大河ドラマならもう一翼の戦場を駆ける武将。光秀における三宅弥平次こと明智左馬助。


【1トップ】
・一美和成
・宮吉拓実
(・エスクデロ競飛王)
(・大野耀平)
1トップには開幕後、宮吉やエスクデロが使われたが、8節栃木戦で2ゴールを挙げた一美が最前線のポジションで存在感を発揮し続ける。今季の京都のFWはラストパスを待ち受ける訳ではなく、相手と駆け引きしながら敵中に陣地を構築するのが大きな役目。一美は単純なポストプレーヤーではなく、相手最終ラインに「面」を作るようにボールの収まり所を作り、周囲を使えるプレーで急成長中。五輪世代では似たタイプが少ない能力を身に付けつつある。クサビを受けてワンツーで落としてゴールを御膳立てするようなプレー(17節大宮戦の仙頭へのアシストなど)も得意で、細かく繋ぐパスサッカーとの相性は抜群。宮吉も悪くはないが一美以上のインパクトは残せていない。点で合わせるタイプの大野、単騎突破型のエスクデロはタイプが別。今のところ一美が外せないほど充実しているが、このポジションの層は厚くはない。大河ドラマでいえば一家の要となる気配り女房。光秀における妻木煕子。


【指揮官】
・中田一三
「鳳凰軍団」を率いる総大将。初めてJクラブを率いていきなり結果を出すその手腕は謎に満ちていたが、チーム作りのプロセスも徐々に明らかになりつつある。基本的には分業制ではなく、新進気鋭のコーチングスタッフとの合議制でチーム作りを進めているとのこと。基本方針を決めればある程度コーチ陣に任せながら、自らは「違う視点」から全体を眺める…なんて話もあり、どことなくイングランドのマネージャーっぽさがある。監督の権限が強すぎると変なこだわりやら一方的な見方やらに偏ることもあるが、今季の京都が大きな不調に陥る前にすぐに立て直せている要因はこのあたりのバランス感覚があるからではなかろうか。ダメだった部分はきちんと課題として、1~2試合で改善するくらいのフレキシブルさがある。だが芯になる方針にブレはない。大河ドラマでいえばもちろん主人公。明智光…あれ?この前監督=「令和の秀吉」って書いたぞ。じゃあ中田監督は羽柴秀吉…あれーっ?物語が根本から変わっちゃうじゃーーん。あれーーーっ?