二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

さまよえる戦略 ―迷走京都サンガの現状―

2015-06-22 | 蹴球
■戦略的撤退の重要性
 物事は時に思い通りには運ばないものです。どんなに準備を重ねようとも、状況が一変してしまい、立てていた戦略の見直しを迫られる時だってあります。
 戦国武将の中で、とりわけ退く判断が冴えていたのは織田信長でしょうか。仲間入りを拒む越前朝倉氏を攻めていた最中、完全に身内と思っていた浅井長政に反旗を翻されますが、信長は即座に身ひとつでの撤退の判断を下し、敦賀から京に逃げ帰ります(金ヶ崎の退き口)。すぐさま戦略を立て直し、まずは浅井を潰しにかかって、天下に覇を唱えていきました。信長はその他何度も逃亡劇を演じています。
 一方、退く判断を誤った代表例が大友宗麟。島津氏に敗れた日向の伊東氏の要請に「おう!まかせとけ」と大軍を動かしますが、島津方の高城の包囲が長引いたあげく、島津勢の急襲を浴びて大敗(耳川の合戦)。実は大友家はこの時、キリスト教に対する考え方の違いから家中はバラバラで、命令を聞かない家臣がいたほど。その後大友氏は衰退の一途をたどります。
 サッカークラブも、勝ち上がるために、生き抜くために、それぞれが戦略を立てて日本全国に割拠しています。特にJ2はまさに戦国乱世の縮図のようで、必ずしも富める者が強者ではなく、貧しき者でも下剋上を遂げられる戦国時代。当然、シーズン前に立てていた戦略がハマるクラブもあれば、あてが外れてしまうクラブもあるのです。
 アテが外れてしまった時、大事なのはいかに上手く「戦略的撤退」に踏み切れるか。信長だって金ヶでの撤退戦略を誤れば、THE ENDだったはず。ヤバいな、と気づいた時点で戦略を練り直さないとなりません。

■野口発言にみる戦略ミス
 42節中19節を終え、京都サンガは勝点19で17位(入替戦圏の21位と勝点差3/プレーオフ圏の6位まで勝点差12)と、クラブ史上最低順位の低空飛行のまま低迷しています。単純に順位が下というだけでだけでなく、内容も伴っていないのが痛いところです。
 低迷の原因ですが、「長いシーズンをどう戦うのか?」という段階での戦略ミスにあるのと思わざるをえません。戦略性の乏しさは、昨年12月のサポーターズミーティングで野口強化部長の話【※参考資料】を聞いた段階で予知できたことでした。もはやツッコミどころの玉手箱のようです。
 最初にまずにツッコミを入れたいのは、目指すサッカーの具体性のなさ。「攻守においてバランスの取れたサッカー」「シンプルに、バランスを取ってチャレンジ」。それっぽい言葉を並べるだけで何ら具体性がありません。そこがぼんやり・ふんわりしてる以上、よほど確固たる“哲学”を持ってる監督を連れて来ない限り「個人能力頼み」にしか仕上がらないのは自明でした。
 曖昧な設計図しか描けていないまま「戦術家よりモチベーター」としてなぜかタイから和田監督を連れて来たのは、もはや「じぇじぇじぇ!」と言いたくなりそうなコメディドラマのよう。選手を上手く乗せてる場面も、得点者が監督に抱き付きに行くシーンも記憶にございません。オリベイラ…?言うだけはタダですね。モチベーターを舐めてはいけません。
 野口氏曰くの「ダニエルロビーニョで大黒のマークを分散させる」という目論見は完全に机上の空論でした。ダニロビがどうこうより、ちょっと大黒の持つ特性への理解不足かと。大黒は自らが生きるスペースが必要な選手なので、ストライカータイプとは干渉し合うし、そもそも相手は大黒みたいなデンジャラスな存在を、(ダニロビがいるからといって)野放しにはしません。ダニロビについては、“ごく平凡なアタッカー”のまま半年が過ぎました。身体のキレも上がらず、大黒との相性も良くないまま…。
「セットプレーのキッカー」とは、黄辰成を指しているかと思いますが、ベルギー2部で6試合しか出てなかった時点で稼働率が低いor実力不足であろうことはかなりの人が予見できたことですね。実力があったとしても、初めて日本でプレーする外国人は、環境順応性でアタリハズレもある訳で。金南一も今のJ2のスピードには対応しきれているとは言えず、(必要なタイプではあるけれども)格の違いを見せ付けるほどでありません。「ベテランだし怪我が心配」という多くの民衆の懸念通り、怪我で離脱してしまいました。


■誰が戦略を立てたのか?
 ただ、今年のチーム戦略、チーム編成を新人の野口氏が立てたとは到底思えないのです。補強選手(特に外国人)を、さほどコネも持ってなさげな野口氏が連れてきたとも思えず。何といいますか、まず補強選手の名前がありきで、強化ポイントを後付けしたようにも思えます(セットプレーのキッカーあたりは特に)。
 じゃあ誰が今年のチーム戦略を立てたのか?誰が監督や外国人を連れてきたのか?ってことになります。和田監督に関してはイヤーブックにも明記されてる通り、今井社長が熱心に口説いた、ということになっています。オファーをもらったのは和田氏曰く「去年の夏過ぎぐらい」。(ちなみに野口氏への就任の話は「昨秋ごろ」だそうですので、野口氏よりも先だったと思われます)
※KBS京都開幕特番より
 でもね…親会社からの出向でサッカー素人のはずの今井社長が、数あるS級ライセンス保持者の中からわざわざタイにいた和田監督をピックアップするでしょうか?それもまだ任期の途中に話を持ちかけてまで…。(スタジアムの件で神戸関係とは少しは接点があるにしても)ある意味素人人事じゃない。おそらく、どこの誰だか知らないけれど、社長やフロントにアドバイスをしている“関係者”がいらっしゃるのでしょう。昨オフ、移籍情報がポロポロとメディアにリークされいていたあたりを含めても、その筋の方が背後にいて…と考えるのはただのネガティブ妄想でしょうか?
 かつてチーム名がパープルサンガだった時代、とりあえず元日本代表とか名前が通っているけどピークを過ぎた選手をかき集めていた時代がありました。チームとして進むべきベクトルもなく、漫然と“出たとこ勝負”のサッカーを繰り広げていたあの暗黒時代に、今のチームがどこか似ていると思うのは思い過ごしでしょうか。思い過ごしだと、いいなぁ…。


■誤った戦略を捨てる勇気を
 競争相手のいるところで戦っている訳ですから、誤った戦略(または戦略なしの状態)で臨んでしまうと、有り難いことに、結果が「あんたら間違えてるんじゃないの?」教えてくれます。「おかしいなぁ…」「こんなはずでは…」と思っていいのは最初の2ヶ月くらいでしょうか。半年経ってお粗末な内容で結果も出ないのならば、それすなわち戦略ミスで間違った道を進んでいることに気づくべきなのです。
 甘い状況判断のまま“理想郷実現”の名の元にズンズンと前に進んで破滅していった宗麟の道を歩むのか、1度退いて状況を整理し、目指すべき標的を定め直して再スタートをきった信長の道を歩めるのか。生死は、立ち戻る戦略…撤退戦略をいかに描くかで決まります。まずはよくわからない戦略(とそれを立案した存在)を捨て去る勇気を。そしてクラブの近未来(1年後とか2年後)の姿を「地に足を着いた目標」として設定し、そこに至るまでの具体的なプラン(=目指すべきサッカー像→選手構成)を描けるプロフェッショナルを連れて来ること。GM職でも、またはGM的に働ける監督でも。ひとつ例を挙げれば、北九州の柱谷幸一監督は、新スタジアムの出来る2017年に大目標を設定し、逆算してチーム作りを積み重ねています。
 以下、2015シーズンスローガンより。
〈何事においても、結果を真摯に受け止めることから、成長の第一歩は始まると考えております。〉〈成長の歩みを進めるために、勇気をもって「改め、新しくする。」この真摯な姿勢こそが、今のサンガに最も必要な考え方であり、姿勢〉
 結果を真摯に受け止めて勇気をもって改めるという素晴らしいお題目じゃないですか。今こそそれを実行する時ですね。それにしても真摯というワードを使いすぎです。せっかくいい言葉なのに、真摯がインフレーションを起こして言葉の価値も目減りしま
す。もっともらしく当たり触りのいい言葉を並べて具体的なことをぼやかすのは、決して「真摯」ではありませんことよ。


※参考資料

2015-06-22 | 蹴球
以下、野口強化部長がシーズン前に語ったお話。今年のチーム状況を考える上で、非常に参考になる発言です。いろんな意味で。
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■野口氏、曰く…
まず、今シーズンの反省を私なりに振り返ると、大きく5つ問題があったと思っています。
1)監督の問題
2)守備の問題
3)攻撃の問題
4)セットプレーの問題
5)外国人の問題


■監督の問題
 監督の点ですが、私自身いろんな監督と出会ってきました。解説者ともいろんな人と話す機会がありました。素晴らしい実績を持った人たちと話す中で、これは私の持論なんですけども「監督っていうのは、モチベーターな人がいいんじゃないかな」というふうに思っています。
 というのも、すごい戦術を持った方でも、それを結局やるのは選手たちです。それを伝えて、ピッチでやらせることができなかったら、すごいいい戦術を持った監督でも宝の持ち腐れなんじゃないか、と思っています。
 そういう意味では、監督というのは乗せるのが上手い、モチベーターがいいと思っています。鹿島アントラーズで3連覇したオリベイラ監督は、いろんな人の話を聞きますと、練習なんかは日本人の監督がやっている練習とほとんど変わらないと聞きます。でも試合に向けたモチベーションですとか、選手の乗せ方ですとか、そういうのに長けていると聞いています。そういうことをすべて踏まえた上で、和田新監督がいいんじゃないかと思いました。
 神戸時代も見てましたし、今年率いたタイのチョンブリの試合も何試合か見させてもらいました。得点した選手が必ず監督のところに抱き付きに行ってます。「あ、この監督はすごい選手に信頼されているんだな」「チームに団結力をもたらしてくれるんだな」と、すごく感じました。「ああ、こういう選手とサポーターと会社と、一体感のあるチームになってくれたらな」と、すごく感じました。そういう意味で、和田新監督を選びました。
 和田新監督はJ1の監督しか経験がありません。そういうところでOBでもある、J2を知り尽くした石丸コーチに来ていただくことになりました。今後も育成のところはすごく大事にしていきたいところなので、ジュニアユース、ユースで監督経験のある川勝コーチ、平井GKコーチに来ていただくことになりました。


■守備の問題
 2番目の守備の問題なんですけども、52失点はここ何年間かで一番失点が多いと思います。優勝した湘南さんは25失点。約倍近く失点しています。もちろん、守備陣だけの問題じゃないですし、全員の問題なんどすけども、例えば1試合で1失点してしまうと、2得点しなければいけない訳で、この守備の部分はどうしても改善したいと思っています。
 新しい和田監督にも、決して守備的なサッカー…堅守速攻とか、そういうのは望んでないんですけども、「守備の強いチームを作ってほしい。失点を減らしてほしい」という要望はしております。いろんな契約の問題もあるんですが、補強も考えて行きながら、守備の部分はしっかりと考えています。


■攻撃の問題
 攻撃のところなんですけども、今年は大黒選手がすごく好調で、どうしても大黒選手に頼ってしまう部分がありました。(獲得の)発表があったと思いますが、ダニエル・ロビーニョ選手を獲って、マークを分散させたい。もちろん2人中心にやっていくとは思うんですけども、他の選手もしっかり交えながらいろんなバリエーションのある攻撃を新監督の下でやっていただけたらな、と思っています。
 先ほど守備のところでいい忘れたんですけども、僕も選手やってたのでわかるんですが、守備が安定してくると必ず攻撃はよくなってきます。安心して攻撃できます。そういう意味でも守備のところはしっかりやっていきたいな、と思っています。


■セットプレーの問題
 4番目のセットプレーの問題なんですけども、やはりここ数年セットプレーというのは課題でした。好守において課題があったと思っています。特に攻撃面は、僕の中ではキッカーというのがかなりの役割を占めると思っています。「キッカーさえいいボールを蹴ったら、あとは合わせるだけ」というようなイメージを持っています。そういう意味では、キッカーのところは補強を視野に入れながら現在動いている最中です。


■外国人の問題
 5番目の外国人の問題なんですけども、今年は助っ人として違いを見せる外国人選手を獲得できなかったというのが正直なところです。これはもちろん、スカウトであった私の問題でもありました。来シーズンはそこをしっかり踏まえて、新監督・新スタッフと相談しながらサンガのコンセプトに合った外国人を今補強したいと考えております。


■クラブとしてのビジョン
 これからのクラブとしてのビジョンなんですけども、「継続」「安定」「一貫」というのをキーワードにやっていきたいな、と思っています。
 質問では大木さんに関する質問がすごくあったんですけども、私自身大木さんのサッカーはリスペクトしていますし、すごい大好きでした。ただ、大木さんのあの独特なサッカーは、大木さんよりもいい監督は日本中探してもいないと思っています。あのサッカーは大木さんが一番だと思っています。継続性や安定性を考えた時に、(人が去っても京都サンガというクラブは続いていくので)継続性を考えた時にちょっと難しいのかな、と正直思いました。
 私自身の考えでは、攻撃的とか守備的とか、そういうのはなくてですね、攻守においてバランスの取れたサッカーというのを目指してやっていきたいな、と思っています。
 もちろん、我々が今までやってきたポゼッションサッカーは我々のクラブの財産ですし、そういう良さを残しながら、シンプルに、バランスを取ってチャレンジして行く。シンプルにつないで、その時にリスクマネジメントしながらバランスを取って、最後の部分は1対1、時には数的不利な時でもチャレンジしてゴールを狙っていく。そういうサッカーができればと思っています。そこから和田新監督の下で色付け、和田さんのカラーを出していただければと思っています。


■目標
 身近な目標は、来シーズンはJ1昇格というのが目標になってくると思うんですけども、2018年シーズンから新スタジアムが使えるということですので、そのスタジアムが出来上がるシーズンに第1段階のピークみたいなものを持っていけたらな、と思っています。そこで育成出身・生え抜き中心に、外国人と他チームからピックアップした補強(を加えたチーム)というのを考えています。
 駒井選手ですとか育成出身の選手は、正直まだまだ一人前じゃないと思っています。そう考えた時に、ベテラン選手ですとか、決定力のある選手、外国人選手などを補強して、力を借りながら、2018年に育成出身の選手たちが25~26歳になると思うんですけども、そこでJ1で中心になっていけたらな、と。そういうチーム作りにしていけたらな、と思っています。
 その後は、それを継続・安定・一貫していければな、というふうに考えています。



2015明治安田生命J2リーグ第19節 京都vs栃木

2015-06-22 | 蹴球

   京都サンガF.C.●1-2○栃木SC
49'大黒将志
(↑こぼれ←駒井善成)
           80'中美慶哉
           (↑廣瀬浩二)
           90+5'中美慶哉
           (直接FK)


[警告・退場]
・京都
なし

・栃木
なし


【全体の印象】
前半は田んぼ状態でサッカーとして体を成さず。山瀬、大黒らベテランは悪いピッチにもよく対応したが、内田、磐瀬、原川ら若手が苦戦。後半ボールが転がるようになると、内田のシュートから大黒、さらに駒井が混戦に飛び込み、大黒が押し込んで先制。しかしCB山口負傷交代後は栃木が主導権を握り、セットプレーの流れから内田が空け続けていた左サイドから切り崩され同点に。その後京都は中盤でボール奪われるとすぐに撤退し、栃木攻撃陣にバイタルエリアを明け渡す。ラストプレーのFKを中美に決められ、下位対決で苦杯を舐めた。

■悪条件に順応した栃木
・悪コンディション。京都のベテラン勢は個々に対応してさすが。
・逆に経験の少ない若手は四苦八苦。チーム内で対応にバラつき。
・栃木はチームとしてボールの動かし方に慣れはじめ、浮き球クロスでペースを掴む。
・後半ピッチはボールが転がる方に変化。栃木は順応にしばらく時間がかかる。
・終盤栃木は後半のピッチに順応し、チーム全体でボールの動かし方をオーガナイズ。
・悪条件を個で御そうとした京都、時間は要したがチーム全体で克服した栃木。

■奪われても奪い返さない守備
・終盤栃木にペースを握り続けさせた要因は、京都の腰の引けた守備意識。
・中盤で奪われると、奪い返しに行かず最終ラインでブロックを作りに戻る。
・栃木は容易にバイタルエリアまで押し込める。セカンドボールも拾える。
・原川はプレス意識が甘く、磐瀬は最終ラインに吸収されすぎて自由を与える。
・バヤリッツァのように前で奪おうとする意識の選手は不在。
・自陣深くに撤退したところで堅固なブロックが築ける訳でもなく…。DFとDFの間に入られまくり。
・守ってるつもり、戦ってるつもり、勝とうとしてるつもり。つもりつもって30失点。


【本日のひと言】
いつから梅雨入りしたんだっけ?