茶語花香

人生は旅なり。
中国茶をはじめ、花のある暮らし、読書、旅などを中心に、日常の出来事を綴ります。

司空図 『詩品二十四則』の「典雅」

2016-10-28 09:27:30 | 茶語・茶ノ史

玉壺買春
賞雨茅屋
坐中佳士
左右修竹
白雲初晴
幽鳥相逐
眠琴緑陰
上有飛滝
落花無言
人澹如菊
書之歳華
其曰可読
   
【唐】司空図 『詩品二十四則』の「典雅」

春には玉の壺で新茶を買い
雨の日にはかやぶき小屋で雨を愉しむ
隣りに心の寄り合う友がいて
小屋の周りにある竹林に囲まれる
雨が通り過ぎ、青空に白い雲が現われ
林に鳥達が追いかけっこ
琴を弾く人は、木蔭で居眠り
頭上には飛瀑がある。
花が落ちても無言
人は、菊のように淡々にいよう。
読書して歳を重ねるにつれ
本に書かれた事を読み取れるようになる。

最後の四句が大好きです。

花所望

2015-09-07 15:27:39 | 茶語・茶ノ史

連日の雨の後、玄関先の鉢植えから救った小さな命。弱っているはずなのに、薄暗い部屋に明かりを点してくれました。不思議なパワーをもつ天使です。

茶の湯の世界に、花所望(はなしょもう)という言葉がある。それを知り、色々と思いを巡らせました。

亭主が客に所望して、茶花を生けてもらうことだといいます。

最も季節感を味わえる作法の一つ、茶花を生けること。その楽しみを茶室にいらっしゃる客に譲り、花を通して客をもてなします。

なんて素敵な発想だと感心しました。

そこには、主人が客の花生けの腕を認め、客への敬意を払う意味もあるのではないかな。

文字「花所望hua1 suo3 wang4」は、中国語的な構成のようにもみえます。響きがとても美しく、気に入りました。

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落花無言 人澹如菊

2014-11-05 11:05:42 | 茶語・茶ノ史

スーパーに食用菊が並ぶこの季節に、
つい手を伸ばしました。

中国の食文化では、菊花茶はありますけれど、
料理の食材として使うのは、日本独自かもしれません。

東北青森を訪れた時、菊の花びらをふんだんに使った菊鍋の美しさに感動し、
南部方言と思われる「おぐらみ」という言葉に、心が響きます。

中国古典文学の世界では、
菊を称賛し詠む歌が非常に多いです。

妖艶すぎず
華やかすぎず
淡泊な香りを放ちつづ、品格が漂う

中国の古典にある菊のイメージ。

台湾茶人李曙韻氏の言葉の数々に、しっくりくるものが多いのです。
李氏が台湾活動の拠点もこの「人澹如菊(ren2 dan4 ru2 ju2)」と名づけています。
茶人のあるべき姿を物語っている気がいたします。

言葉の出処は、唐の詩人司空図『詩品二十四則』の「典雅」から。
その言葉の前半と合わせますと、こうなります。

落花無言 人澹如菊
luo4 hua1 wu2 yan2 ren2 dan4 ru2 ju2

昔の文人は、
咲き終わる花の命を
惜しむような感性の持ち主が多いかもしれません。

そのような時代に生きた司空図氏は、
落花に嘆くように悲しんだりしないように
一輪の菊のように淡々と生きよ

と詠いました。

食用菊を調理する前に、
一つ好きな言葉を思い出しました。

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心若不動,風又奈何

2014-08-20 15:46:49 | 茶語・茶ノ史

夏休みも後半に差し掛かり、出かけるペースを落としてきた私。

ゆっくり家で夏休みの写真や思い出を整理し、今日は久々に読書しようと。
その時、たまたま目に止まったのは、「心若不動,風又奈何」という中国語のページ。

心さえ揺れなければ、波風をたてぬ

といった意味の言葉です。

自分の心に響いた素敵な禅の言葉の数々、どなたかとシェアしたくなります。

拙い訳文ですが、一部を訳してみました。共感して頂ければ嬉しいです。

古い茶壺に 三月の新緑を淹れ
流れる雲や水のような生涯 年月の炭火にかけ
日々は 茶の中に生き
波乱万丈されど穏やかである
君には言わなかったけれども
僕の飲杯に入っているのは
実はいつも無味な白湯

人生は少しの甘みがあり 苦味があり
少しの良いところもあり 悪いところもあり
茶の如く
それゆえ 余韻がより 悠久になる


<原文>*文字化けの場合、言語設定に中国語が設定されていない可能性があります。
一把陳壺 泡上三月的新緑
歳月的炭火 烹煮雲水生涯
日子在茶中 過得波瀾不驚
我未告訴你(イ尓)
我的飲杯里
流着的永遠是一杯無味的白水

人生有一点点甜
也有一点点苦
有一点点好
也有一点点壊
人生如茶 所以更余韻悠久


リクエストを頂きまして、中国語の原文を追加で載せました。
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茶丿史-《僮約》

2014-05-08 12:00:29 | 茶語・茶ノ史

杭州西湖 曲院風荷の茶館にて(2014.4月写真)

杭州(こうしゅう)と並び、昔から茶館文化が盛んだ街は、四川省(しせん)の成都(せいと)。

歴史上、西漢の時代(世紀前206年-9年)に、巴蜀(はしょく)茶業は、すでに盛んでいた。巴蜀とは、四川省の旧称。

その時代に残された面白い文献がある。

地主の王氏と男性の召使いの間に、結ばれた契約書『僮約(どうやく)』の記載が残されていた。

召使いは、契約書に書かれる以外のことは、一切やらないと言い出す。仕方なく、詩人でもある地主の王氏は、召使いのなすべき家事を細かく文書にした。

中に、このような項目が書かれている。

烹茶尽具

武陽買茶

この八文字から、当時豪族の家庭では、すでにお茶を調理する慣習があり、お茶を飲むための茶道具も、すでに存在したと言われている。

言葉にある武陽は、市場の名と推測され、その時代に、すでにビジネスとしてのお茶市場ができたことの証明になる。

茶聖と言われる陸羽の『茶経』は、それより800年後のことであるが、『僮約』は、お茶の飲用と購買を触れた、最古の文献資料として知られている。

茶杯の中の美味しさから始まるお茶の世界、気がつけば、古文献の面白さも教えてくれたきっかけになった。


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注)
巴蜀(ハショク)-「巴ba1」は現在の重慶を指す。「蜀shu3」は現在の成都を指す。四川省の二大都市を指すことで、「巴蜀」は四川省の代名詞になる。

僮約(ドウヤク)-「約yue1」は「契約」の略。「僮tong2」とは、未成年の召使いのこと。
            
未成年の若さであるゆえ、家主さんに向かって、契約書以外のことを一切やらないと言えたのではないでしょうか(笑)