茶語花香

人生は旅なり。
中国茶をはじめ、花のある暮らし、読書、旅などを中心に、日常の出来事を綴ります。

土曜の午後是好日

2015-05-31 17:20:13 | 茶会・茶勉強会

今から『日日是好日』の著者森下典子先生にお目にかかると思うだけで、
港の見える丘公園の坂道を急いで登りあがった。
辿りついた大仏次郎記念館の和室の窓辺に、瑞々しい緑の間から渡ってくる風は、実にかぐわしく、清々しかった。

床の間に、菖蒲とともに飾られた泰山木(たいざんぼく)は、今でもパカッと開きそうで、めいっぱいふっくらとしていた。
掛けられた掛け軸は、「喫茶去」。
着物姿で水屋から物静かに出てこられた典子先生は、可憐なお方。
あえて「喫茶去」を選んだ理由を話してくださった。

どのような時こそ「喫茶去」するか、
今日、新しい「景色」の「喫茶去」が目に映った。
確かに、お茶ですら飲む気にならない日もあるはず。
心の持ち方一つに、今日は最初に一服のご馳走を頂いた。

『日々是好日』にも登場する愛知美濃忠の初かつおをはじめ、
清らかな川と川底の石コロをイメージした神保町ささまの「玉川」、
蛤の貝の中に琥珀羹を詰め、さらに琥珀羹の中に浜納豆が一粒入れられているという、なんとも風情のある京都亀屋則克の「浜土産(はまづと)」等々。

心を揺さぶる芸術品の数々を、この日のために、厳選してくださった。
隣り席のお三方と、それぞれ違う和菓子をチョイスし、幸せの口福を分かち合った。
どなたの顔にも笑みがこぼれていた。

野の花如く、典子先生が生けてくださった茶花たち。
日本の茶道を通して広がった幸せの世界は、中国茶にも通用する。

見慣れていたはずの文字、お花の表情、いつもの五感。
ある日、突如うまれてくる新たな感性が、なんとも感動的なもの。
生き生きと話す典子先生の目は、輝いていた。
『日日是好日』が教えてくれたしあわせと重なった。

三十九年間の茶歴をもつ先生は、真の大人の余裕を見せる。
そんな人生の大先輩に見習い、今足元にある小さな幸せを無理せず拾い、ただただ今日一日を愉しもうと改めて思った土曜の午後だった。

森下先生を紹介してくださった青柳先生をはじめ、この回を企画して頂いた麗香茶課のちょし先生、多都子先生、そしてご一緒の方々、ありがとうございました。
今日は新たなエネルギーを頂きました。

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スペシャルな敷板

2015-05-22 14:20:46 | 日常

娘が学校の泊まり旅行中に創作したプレート。

削り、焼き、仕上げまでやったらしい。
張本人は、そのとき書き上げた字も絵も、幼稚すぎると後悔していた。

「ママ、処分しといて」と言われた。

満足のいかない「作品」だけど自分では捨てがたいグレーゾーンの作品たち。
決断から逃れようというか、甘えたいというか、そんな娘のことがじれったく思う時もある(苦笑)。
判断が委ねられた私。いつの間にか、ひそかに思い出グッズのダンボールにしまっておくことにした。
ダンボールがすぐに二つや三つへ増えていた。
次の誕生日までに、「処分係り」から降りることも考えた。

とりあえず、今日はプレートを手にとってみた。
平らな板で、感じのいい焦げ目。材木本来の木目は、焼きによって、そこそこキレイにできている。


ひもも金具も外してみた。

敷板として十分使えることを確認し、帰ってきた本人に

使えそうよ!必要なとき、貸してくれる?♡

と言ってみた。

いいよー

とあっさり承諾してもらえた。


値のついたどの敷板よりも、自分だけの宝は意外と身近に存在する。

いっそのこと、施された字も絵も隠さずに表に出し、今日の茶飲み空間は、童心の趣に溢れていた。

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蘭貴人

2015-05-06 20:14:29 | 中国茶・世界のお茶

BBQの後、お茶を飲もうという流れになった。
飲んでいたお茶の中に、写真の蘭貴人(lan2 gui4 ren2)があった。

蘭貴人と言えば、あの西太后のことではないかとふと思った。
陰湿極まりの西太后は、中国でも嫌われものの代名詞。お茶とのつながりとは?!


開けてみたら、一度上海のお茶屋さんで試飲した覚えのある石ころのような人参烏龍茶。

台湾産のものは、西洋人参(アメリカ・カナダ産人参)の粉末を烏龍茶に練り込んだもの。

健康志向の台湾と大陸では、いかにありそうな健康茶の一つ。

原産は台湾だけど、今日頂いたものは、海南特産と書かれていた。

海南のお茶と西太后の関連性について調べてみた。
西太后の時代に、海南の五指山で採れた緑茶が献上茶として指定されていた記述があった。


このお茶に使われる茶葉は、特に箱に明記されていなかった。

石ころのような硬さなので、一度洗茶してみた。
二煎目に茶葉がようやく開いてくれた。肝心な茶殻を撮り損なった(汗)
茶葉の大きさは青心烏龍のような大きさ。
海南は亜熱帯気候地域、五指山で採れた緑茶の葉も大きいのではないかと推測できそう。
茶葉の表面に、人参の粉末だと思われる粒のザラザラ感が確認できる。

台湾の人参烏龍茶をヒントに、海南の五指山で採れた緑茶に人参の粉末を練り込んだ案ではないかな。
長生不老の薬を求めていた西太后と連想させ、蘭貴人の名をつけたとか。

ビジネス戦略としてちょっと面白いお茶だった。

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竹林に囲まれた野点茶会

2015-05-01 19:32:54 | 茶会・茶勉強会

                                 写真 うらりんさん
竹の葉が風で摩擦しながら立てた音に、思わず耳を傾け、
ここが東京都であることすら忘れてしまいそう。
この敷地に踏み入った瞬間から、カメラを持参しなかったことに後悔しました。


写真 うらりんさん
自然との調和。竹林七賢が訪れそうな場所に、誰しも腰を掛けて茶飲みしてみたくなります。

のちに、しびれた足で立とうとした時、思わず手で支えようとしたのは、自分の身長よりも高い筍でした(笑)
この日の面々は、知的な俳茶居さん、もの知りで東洋文化が大好きなロバさん、勤勉かつ聡明なルハンさん、そしてこの場にぴったりの雰囲気をもつうらりん先生。

                                写真 うらりんさん
茶譜の数々は、ロバさんが中国のお茶研究所の先生から譲ってもらった大変貴重のお茶はがりです。うらりん先生が一つ一つ丁寧に淹れてくださりました。
これまで頂いたことのあるお茶は一つもなく、名前を知っていたのも、こちらの莫干黄芽だけでした。
野山で採れた紫筍茶は、もっと野性っぽいかと思ったけれど、繊細な緑茶でした。
最後に頂いた白芽紅茶(妙喜)は、大変美味のラプサンスーチョンだと思わせてくれました。
大変ご馳走になりました。

中国茶席の間に、表千家の抹茶席にもお邪魔しました。
竹の水差しは、茶人自らこちらの竹林から選び抜き、手作りのものだそうです。流れのあるお点前に、ただ見とれていました。

同席しましたのは、このお家のお孫さん達です。先ほどまで、竹林で駆け回っていた普通の少年達が、茶席に入ると、大人顔負けの行儀に、それもまた感心しました。

表千家の茶人達は、俳句の達人でもあります。その日に知った「竹の秋」という季語に、興味津津でした。

招待してくださったO家の方々、誘ってくださったうらりん先生、そしてご一緒の皆さま、春に最高の野点でした。
ありがとうございました。
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