くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「食べモノの道理」

2011-02-26 23:59:59 | 書籍の紹介
「買ってはいけない」や「食べてはいけない」といった、
化学調味料や食品添加物、農薬や化学肥料の使用に警鐘を鳴らす本が多いなか、
その対極にある数少ない本です。


「食べモノの道理」 佐藤達夫 著 / じゃこめてい出版 刊

「量」や「食べ方」の概念を考慮しないで食品を論ずることが、
いかに迷信じみて先入観に満ちあふれたものであるかを考えさせられます。

「買ってはいけない」や「食べてはいけない」などの本に対抗意識があるのか、
これらの本と同様に、ときどき論調が暴走する傾向もありますが、
どちらの主張を支持するかは読者次第です。

その一例を抜粋すると・・・

『牛乳害悪論』
日本では、なぜか数年に一度の割合で「牛乳害悪論」が展開される。
数年前に出版された著名な外科医が書いた本には、
「牛乳はウシの赤ちゃんの食べ物であって、ヒトの食べ物ではない」
というようなことが書かれ、多くの若い母親たちがその影響を受けた。
そもそも「ヒトの食べ物」という定義をするなら、
豚肉やホウレンソウなども、もともと「食品」ではない。
ヒトが勝手に「食品」と決めつけているだけで、どれもこれも「他の生物の死体」である。
初めからヒトの食べ物として存在しているのは、せいぜい「母乳」と「果実」だけである。
牛乳は栄養学からみて、その栄養価は理想に近いと研究で評価されている。
重要なのは栄養の偏りに注意し、正しく摂取することである。

『酒は百薬の長』
「適量の飲酒は死亡率を低くする」という研究報告がある。
これは科学的にも確かな研究結果であるとされているが、
その適量とは、平均して二日に純アルコールで20グラム、
日本酒なら一合弱、ビールなら中ビン一本弱である。
これで我慢できる酒飲みがどれほどいるだろうか。
これに対し、酒が健康に悪いという研究結果は山ほどある。
結局、「酒は百薬の長」というよりも「百害あって一利あり」程度のモノ。

『日本食は体にいい』 
世界で注目される日本食。
日本の長寿地域のお年寄を調査すると、
伝統的な日本食を中心にした粗食であったという研究発表が多い。
しかし、日本食ばかりを食べていた戦前の日本人は、
欧米人に比べて体は小さく、不健康で平均寿命も短かった。
戦後、洋食文化が普及し、急速に日本人の体格が良くなったのは紛れもない事実であり、
それが日本人に体力をつけ、平均寿命をのばしたことと無関係であるとは断言できない。
問題は食事内容の洋風化が行き過ぎていることであり、
伝統的な和食を取り入れて栄養バランスを正しく保つことであり、
和食を食べることが健康になるということではない。

『善玉と悪玉のコレステロール』
「善玉」とされるLDLも「悪玉」とされるHDLも、ヒトの体には大事な栄養素。
コレステロールに「善玉」と「悪玉」があるわけではなく、
コレステロール値を調べる静脈血に残っていれば、
運動不足か食べすぎで使われていないというこである。
正すべきは、コレステロールを取らないことではなく、食べすぎと運動不足である。

『フィンランドショック』
緑黄色野菜が肺ガンのリスクを減らすという研究成果がある。
緑黄色野菜に豊富に含まれるβ-カロチンに予防効果があるとされている。
そこで1985年にフィンランドで喫煙男性3万人を対象に、
β-カロチンを与えた人とそうでなかった人の追跡調査が行われた。
もし、期待通りの結果がえられれば、肺ガンはβ-カロチンの投与で予防できる。
しかし、この調査は計画の6年を待たずに中止された。
なぜなら、β-カロチン投与群のほうが肺ガン発生率が高く、
総死亡率も高くなったからである。
この研究結果は世界中を駆け巡り研究者たちにショックを与えた。
同様の研究が繰り返されたが結果は同じであり、
そこから純粋なβ-カロチンの摂取は、
食物から摂取するの効果と同じではないという結論が導き出された。
このようにサプリメントについては、まだまだわからないことが多く、
過大な期待をすることは禁物である。

『おいしい食べ物は体に悪い』
おいしいものが体に悪いのではなく、
ヒトの舌が体に良いものをおいしく感じるように進化してきただけ。
太古より地球上の生物は食物獲得のために進化してきた。
そのため、ヒトは必要な栄養素を効率よく摂取できる食べ物をおいしく感じ、
また、他のライバルたちより少しでも早く腹の中に収められるよう、
やわらかいものをおいしいと感じるように進化してきた。
体にとって一番大事な栄養素であるタンパク質を豊富に含む肉類が、
植物性タンパク質よりもおいしく感じられ、
その次に重要な脂質と糖質をおいしく感じられるのは当然なのである。
要は、食べ物に困らなくなったにもかかわらず、
おいしいからと摂取し過ぎることが問題なのであり、
肉や砂糖などの食物そのものが体に悪いわけではない。

『ダイエット』
「これを食べればやせる」という食べ物は、この世に存在しない。
体の中に食べ物が入れば、その分だけ体重が増えるのは物の道理である。
それは飲み物、たとえ水であっても同じである。
ただ、食べ物の持つカロリーよりも、
体が消費するカロリーのほうが多い場合にのみ、
一定時間を経て体重が減るだけである。
もし「食べればやせる」というものがあれば、それは食品ではなく薬品である。

・・・などなど、言われてみれば当たり前の道理なのですが、
言われなければ気がつかないことも多いものです。