私の田舎では、昔から「おしょしょり」という、
冬ならではの遊びがあります。
良く晴れた冬の夜、放射冷却現象による冷え込みで、
降り積もった雪の表面が凍(し)みて硬くなり、
大人が乗っても沈まないほどになることがあります。
そんな日の朝は、子供たちが雪の上に出て、
普段なら歩くことのできない田んぼや畑の上を歩き回り、
ちょっとした冒険気分を味わうのです。
充分な積雪と気象条件がそろわなければ体験することが難しいため、
私が小学生だったころは、そのような日の朝は先生も気を利かせ、
1時限目の授業をやめて「おしょしょり」の時間になったものでした。
最近では、地球温暖化の影響なのか、
「おしょしょり」のできる機会はめっきり減ったと言います。
祖母の葬義のために帰省した翌朝、
先日の日本海側を襲った大雪で降り積もった雪が、
前夜の放射冷却現象で完全に凍(し)みました。
祖母の葬義がなければ、
私が冬のこの時期に帰省することはありません。
たとえ帰省したとしても、
「おしょしょり」ができるような気象条件に恵まれるとは限りません。
だからそれはまさに、私に子供時代を思い出させるための、
亡き祖母からの贈り物のようでした。
一緒に帰省した子供(祖母にとっては曾孫)には、
生まれて初めての貴重な体験です。
そして私も、「おしょしょり」は、小学校のころ以来です。
葬義のために集まった親族には申し訳ないと思いつつ、
子供とふたりでしばらくの間、「おしょしょり」を楽しませてもらいました。
普段は歩けない畑や田んぼの上ですが、
固く凍みた雪原ならどこまでも、どこへでも歩いて行けます。
積雪は約50~60cmといったところでしょうか。(写真をクリックで拡大)
「おしょしょり」は、
ただ凍った雪の上を歩くだけの遊びなのに、
なぜかテンションが上がる不思議な遊びなのです。