正しいクレームのつけ方【発言編】
その13.本当はこちらからお願いしたいくらいなのです
巷のクレーム対応本には、「クレームは宝の山」などと書かれています。
でもそれは、真っ当なクレームを真っ当な方法で訴えてこそ言えることです。
また、多くのクレーム対応本では、
悪質クレーマーにうまく対応して継続顧客に変えたとか、
自社製品のファンに転向させた、などといった事例が紹介されています。
でもそれは、クレーム対応本を執筆できるような、
類まれなる対人能力を持っている著者だからできたことです。
普通の人には、そんな神業のような真似はとてもできませんし、
精神力も維持できません。
「もうこんな店には二度と来ない」
「あなたのところの製品は、もう絶対に買わない」
そう言われると、クレーム対応担当者はあわてて、
「そんなことをおっしゃらずに」とか
「精一杯の対応をさせていただきますから、またご利用をお願いします」
などと言ってとりなします。
本当に「もう来ない」「買わない」と決意している人は、
わざわざそのような宣言はしません。
それを宣言するからには、
「客が一人減るぞ」「売上が一人分落ちるぞ」といった、
心理的圧力をかける意図が読み取れます。
したがってこういったセリフもまた、
悪質クレーマーの判断根拠とされてしまうのです。
クレーマー対応本にあるように、
悪質クレーマーを優良顧客に変えることができれば、
それに越したことはありません。
でも実際には、たった一人の行過ぎた悪質クレーマーよりも、
たくさんの普通の消費者に重きを置くというのが現実なのです。