広島と長崎に原爆が投下された8月6日と9日の意味が忘れ去られ、「ふつうの日」になりつつあるのではないか。そんな問いかけを込めた「ふつうの日になったのか原爆の日」ポスター展が5日から、国立市役所1階ロビーなどで開かれる。
企画したのは広告のクリエーティブ・ディレクターを務める神田恭介さん(53)。7月初めにデザイナーや画家9人に「原爆の日について考え、話し合ってもらう」きっかけになるポスターの制作を依頼。国立市と準備を進めてきた。
帽子をかぶった人物がこちらを見つめる作品には「さよならって 言えなかった。さよなら」と記され、燃え上がる炎が描かれたポスターには 「ただいま。」との言葉がある。原爆を直接表現したものではないが、神田さんは「何を表現しているのかを深く考えてもらおうというねらいがある。親子や友 だち同士で見に来てほしい」と話す。
神田さんは小平市の小中学校、国立市の高校に通ったが、父親の転勤で中学時代の1970~72年には返還前の沖縄で過ごした。
軍用道路を走る米軍の戦車や、爆音とともにベトナム戦争の前線へ飛び立つ戦闘機を目のあたりにした。当時、沖縄の人たちが米軍への怒りを爆発させた「コザ暴動」も起きた。「戦争について何も知らなかった自分にとって、頭をがつんと殴られたような衝撃だった」と振り返る。
大手広告会社・電通に勤め、現在はコピーライターやデザイナーを統括する要職にあるが、沖縄での経験が頭を離れず「いつかは広告主との関係を離れ、平和や原爆、沖縄について伝える広告を作りたい」と思い続けていたという。
2009年の毎日広告デザイン賞に初めて「原爆の日」の意味を考える作品を出展し優秀賞を受賞。白い紙に広島と長崎の位置を示す黒い点2 個を配し「歴史の汚点との意味を込めた」。そして「立ち止まって考えることを8と6、8と9は、数字から、文字へ、そしてことばになって願っています」と つづった。
今回のポスター展は19日までで、無料。市役所のほか、くにたち中央図書館や中央児童館など市内9カ所でも1作品ずつ展示する。問い合わせは国立市市民協働推進課(042-576-2111)へ。(清水大輔)
「原爆の日」の意味考えて ポスター展開催
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