歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

ものづくり教育と博物館

2006-10-12 20:59:04 | ものづくり・素形材
製造業は現在絶好調ですが、マクロで見ると正社員の雇用は思っているほど伸びていません。もちろんその背景には、派遣労働や請負労働が製造現場で多用されるようになったことが挙げられます。一方、「ものづくりの原点」ともいえる素形材産業は、設備産業の性格が強い反面、熟練技能も重要であるため、人材確保は正社員を中心に考える企業が大半です。仕事の内容も、作業者の創意工夫が生かされる場面が多く、まるで機械の一部になりきらなければならない自動車の組立作業などとは異なり、やりがいは大きいと述べる関係者は少なくありません。
そんな素形材産業ですが、現在多くの受注を抱え多忙を極めているにもかかわらず、人材確保には本当に苦労されています。中小企業が中心であるためどうしても給与面で見劣りする、職場の3K色が強い、という問題がまず背景として指摘されます。しかしそもそも「ものづくり」に対する若者の関心が低い、学校教育で「ものづくり」の魅力が伝えられていない、という問題も挙げられます。

とはいえ、多くの町工場がかつての公害問題によって地方に移転してしまって久しく、学校の先生方も、ものづくりの現場に身近に親しんできた世代が少なくなっています。このため、先生方がものづくりの魅力を生徒に伝えることは難しくなっていると思います。そんな中、地域によってはものづくりの魅力を子供たちに伝えることができる、すばらしい博物館があります。その筆頭に挙げられるのが、名古屋のトヨタテクノミュージアム産業技術記念館です。自動織機から自動車まで、展示品は多く、実際にものづくりが体験できるプログラムも用意されています。大人でも十分楽しめる博物館なので、大都市にしては観光名所が少ない名古屋では、貴重な観光スポットの1つだと思います。
しかし、日本と並ぶ製造業大国のドイツはさすがです。ものづくりをテーマにした驚くような規模の博物館があります。それがミュンヘンにあるドイツ・ミュージアムです。

ドイツ博物館


蒸気機関車の展示コーナー


この博物館では、水車から蒸気機関、ディーゼルエンジン、印刷機械を始めとする産業機械、自動車、鉄道、航空機など、あらゆる分野の機械が広大な館内に展示されており、ドイツ機械産業の栄光の歴史が学べる仕組みとなっています。そんな立派な産業博物館がミュンヘンの街のど真ん中にあります。私がここを訪れたのは土曜日でしたが、家族連れの市民が多く訪れているのが非常に印象的でした。こうした機械産業に対する社会の意識の高さも、ドイツ機械産業の強さを支えているようにも思われます。
こんな大規模な産業博物館が、1つぐらい日本にもあって良いように思います。