歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

大手町で桜が咲いていました

2007-01-31 23:44:27 | 日常
東京は1月末とは思えない暖かい日が続いています。今日の夕方に大手町方面へ外出したところ、驚いたことに神田橋の近くに植えられた桜の木が花を咲かせていました。一昨日ポーランドに住む友人からメールをもらいましたが、この季節にはありえない程の暴風雨だったのだそうです。明らかに日本に限らず世界的に気候がおかしくなっています。
そういえば、アメリカのブッシュ大統領が、1月23日の年頭一般教書演説の中で温暖化問題を取り上げるという、まるで民主党議員のような演説をしていましたね(米大統領一般教書演説 脱石油で温暖化防止 CO2強制削減には反対 FujiSankei Business i. 2007/1/25)。泥沼のイラク問題から世論の矛先をそらしたいという思惑があっての発言のような気もしますし、どれほど彼が本気であるのかわかりません。しかし、京都議定書から離脱した、世界最大のCO2排出国家において温暖化対策への関心が盛り上がるきっかけになるのであれば、これは大いに結構なことだと思います。

容易ではない技能のデジタル化

2007-01-30 23:54:34 | ものづくり・素形材
「ものづくり・IT融合化推進技術(デジタル・マイスタープロジェクト)」という国のプロジェクトが平成13年度から4年間かけて実施され、昨年度に終了しました。プロジェクトの概要は以下の通りです。

(以下引用)
これまで日本の製造業は、熟練技能者の技能を活用することで、国際競争力を維持してきました。しかしその技能は体系化がなされていないため、技能者の高齢化の進展に伴い技能が喪失し、国際競争力の大幅な低下につながると危惧されています。そこで、情報技術(IT)を活用して個人に特化した「技能」の客観化を図るとともに、IT により再現性ある「デジタル技術」に可能な限り置き換えることによって、日本の製造業の根幹となる中小製造業の支援を目的に加工全般にわたる技能の技術化に関する研究開発、設計・製造アプリケーションのためのプラットフォームの研究開発を行います。また、その成果の公開を目指します。
(引用終わり)

このプロジェクトに参加した、ある金属プレスメーカーの社長のお話をうかがいました。この会社ではベテランの技能を9割近くもデジタル化することができ、これにより若手の教育に必要な時間は大幅に短縮され、ベテランもデジタル化できない技能の伝承に専念できるようになったそうです。
これはデジタル・マイスタープロジェクトの成功例だなあ、と思ったのですが、お話を聞いているうちに実際はそう単純ではないことがわかりました。鋼板、金型、プレス機械に係る技術はどんどん進歩しており、データベース化した熟練技能をうまく機能させるために、その都度この金属プレスメーカーではパラメーターを修正しなければなりません。そのための体力がかなりかかる、と社長はおっしゃいました。

何百年にもわたって同じ材料、同じ製法にこだわる伝統工芸品とは異なり、大量生産の工業製品に係る技術は日々進歩しています。経営環境の変化に対応し続けなければならない、大量生産品のものづくりの技能のデジタル化は、思ったよりも難しいということを実感しました。

NHKスペシャル インドの衝撃

2007-01-29 23:26:32 | 海外ものづくり事情
昨夜のNHKスペシャル インドの衝撃は、タイトル通り、衝撃的なドキュメンタリーでした。
数学に優れたインド人はソフトウェア開発に強い、IT産業がインドの経済成長を牽引している、マイクロソフトやインテルなど名だたるIT企業はインド人の頭脳なしにはありえない、といった話は、これまでも身近な新聞や雑誌でも多く取り上げられてきた話題でもあり、映像を見ても「なるほど」程度の感想でした。しかし、インドでも貧困層の多いビハール州にある、大学進学を目指す若者向けの数学教室「ラマヌジャン数学アカデミー」の授業風景と、この教室で最難関のインド工科大学(IIT)への入学を目指して1日16時間も勉強に励む農村出身の青年の姿は、かなり衝撃的でした。

インドが生んだ天才数学者の名を冠した「ラマヌジャン数学アカデミー」は、一流大学への抜群の合格率を誇る数学教室ですが、授業料は格安であり、学生の多くは貧困層の出身者たちです。自ら熱のこもった講義を行う校長がインタビューされていましたが、彼は、イギリスへの留学の切符を手にしながら貧困のために断念せざるを得なかった、というかつての自らの辛い経験から、貧しくとも優秀な若者に大学進学のチャンスを与えたい、という思いを抱いてこの数学教室を開いたのだそうです。本当に高い志だと思います。
授業料が格安なだけに、教室の設備は粗末なものです。片方に壁がない吹きさらしの教室で、雨が降ると壁がない列に座る学生には容赦なく雨だれが降り注ぎます。ノートを雨から守るため、傘をさしながら必死に講義を受ける様子が非常に印象に残りました。

「ラマヌジャン数学アカデミー」で学ぶ学生は何人いるのか説明されなかったと思うのですが、それでも広い教室を学生たちが埋め尽くす様子から判断するに、300人以上はいると思います。その中で特に成績優秀で「スーパー30」として選ばれた30人の学生たちは、夕方にIITへの進学を目指す特別授業を受けます。この特別授業は無料です。インド中の秀才が受験するIITは、倍率は60倍という狭き門なのですが、「スーパー30」の30人中28人がIITに合格するというのですから、いかに秀才ぞろいであるかがわかります。
カメラはこの「スーパー30」に選ばれた1人、クマール青年を追います。彼はIIT受験前に故郷の農村を訪れます。貧しい村には電気も水道も引かれておらず、学校は小学校しかありません。実家は小作農で年収は5万円に過ぎません。帰郷したクマール青年を家族だけでなく多くの村人たちが迎えます。村の期待を彼は一身に負っていることがわかります。彼は「自分のためだけでなく、家族のため、村のためにIITに進学したい。卒業して豊かになったら村の子供たちのために中学校を建ててやりたい。」と語ります。これもまた高い志です。

そんなクマール青年が目指すIITは、前述のように最難関の理工系大学で卒業生は世界的なIT企業から引く手あまたです。授業の内容は学生たちに徹底的に考えること求めるというもので、それは経営者としての素質を磨くのにも適しており、このため卒業生には経営者として成功する者も少なくないのだそうです。番組では卒業生たちの会合の模様も紹介されましたが、彼らは選ばれた者としての自覚を持ち、インドをより良くしていこうという志を持っていることがうかがえました。

高い志を持つ優秀な若者が、同じく高い志を持つ者に支援されて大学に入学し、厳しい知的訓練を受けて卒業し、技術者や経営者として成功して得た富を故郷に還元する、そんな見事なサイクルが出来上がっていることを、この番組は示してくれました。インドには依然として膨大な貧困層が存在し、非人道的な差別も根強く残っているなど、手放しで礼賛することはできませんが、未来が明るい国であることは間違いないと言えるでしょう。

シカクいアタマをマルくする

2007-01-28 00:56:11 | Weblog
シカクいアタマをマルくするという、中学受験の問題を紹介する進学塾の広告を電車の中で良く見ます。こんなのを小学生が解くの?という難問もありますが、なかなか良い問題だな、と感心するものもあります。
さて、あるロシアのジョークサイトにこんな算数の問題?が掲載されているのを見つけました。シカクいアタマの私は「?」と思って紙と鉛筆を出して計算してしまいました。。。

金型図面の流出がもたらしたしっぺ返し

2007-01-27 23:33:46 | ものづくり・素形材
あるCADソフトベンダーの方のお話を聞く機会がありました。

大量生産のための工具である金型。精度の高い金型を作るには高度なノウハウが必要であり、そのための設計図面はノウハウの塊です。
金型メーカーがユーザーに金型を納品すると、メンテナンスに必要だからとユーザーは金型図面の提供を要求する。言われるがままに提供すると、ユーザーはその図面を中国メーカーに渡し、2台目以降の金型を安く作らせる。貴重なノウハウをライバルに譲り渡されてしまった下請けの金型メーカーは、ユーザーに文句を言えずに泣き寝入り。。。
という、実に不適切な商取引は、今年に入ってからマスコミでも大きく取り上げられたこともあり、かなり減少したようです。しかし、まだそういった事例は少なくないのだそうです。

こうした金型図面の流出に手を染めていた大企業の中に、ある有名なOA機器メーカーがありました。この会社は、コピー機のトナーケースを成形する金型の図面を、日本の金型メーカーから召し上げ、それを中国メーカーに渡して2台目以降の金型製作のコストダウンを図りました。
しかし、日本の金型メーカーの図面を中国メーカーに渡したことで、OA機器メーカーは思わぬ出来事に直面します。ケースは本物そのもの、中身の粉は粗悪品、という偽トナーが中国市場に大量に出回り、本物だと思って購入したユーザーからクレームが殺到したのだそうです。

金型図面の流出は、金型業界に大きな不利益をもたらすだけでなく、自らもいずれしっぺ返しを受けかねない、ということをユーザーは認識すべきですし、経団連に所属する大企業は、率先して中小企業との不適切な取引慣行の見直しを進めるべきでしょう。

早稲田大学材料技術研究所に行きました

2007-01-25 22:53:42 | ものづくり・素形材
早稲田大学の材料技術研究所に行ってきました。戦前に建てられた古めかしい研究所ですが、伝統の重みを感じる建物です。
ここはかつて鋳物研究所という名称で、通称「早稲田のイモ研」といえば日本の鋳物研究のメッカともいうべき存在でした。優秀な鋳造技術者を多数輩出しており、鋳物メーカーの経営者にも若い時分にここで修行した方が少なくありません。
日本では鋳造について研究する大学が絶滅寸前になっています。早稲田大学には今後の素形材産業の発展のためにもなんとか頑張って欲しいと思います。

BRICsの次に来るもの

2007-01-24 23:53:32 | 海外ものづくり事情
BRICsという言葉は、すでに説明する必要がないまでに世間に定着したと思います。これから日米欧と肩を並べる巨大な経済グループになる、それがブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国なのだそうです。しかし単に人口規模が大きい国を並べただけのような気もします。10%近い経済成長を続ける中国と、3%程度に過ぎないブラジルや、WTOにも加盟できないでいるロシアを一緒にするのは、少々乱暴なグルーピングです。
とはいえ、BRICsという言葉が日米欧の投資家の心理を刺激し、これらの国々への直接投資が増え、住民の生活が豊かな方向に進むきっかけとなっているのであれば、この流行語を作ったアメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスはこれらの国々の住民から感謝されてしかるべきでしょう。
また、BRICsという言葉は、コンサルタントやシンクタンクの業界にちょっとした特需をもたらしたという点でも、ゴールドマン・サックスの貢献は大きいと思います。書店の経済コーナーに行けば、コンサルタントやシンクタンクが著したBRICsという文字が表紙に踊る書籍が目立ちます。当然のことかもしれませんが、この手の書籍はBRICsの国々のネガティブな点についてあまり触れていないのが特徴です。

しかし、BRICsという言葉も広く行き渡り、新鮮味がなくなったためなのか、「BRICsの次」が売り出されています。それは「VISTA」なのだそうです。てっきりトヨタの車か、Windowsの新しいOSかと思ったら、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン、の5カ国の頭文字をからとった言葉とのこと。これら5カ国が本当にこれからの投資先として有望なのかという議論はさておき、「VISTA」という言葉は英語で「眺望」という意味もあるそうで、なかなかうまいネーミングだな、と思いました。

それでは私も今からVISTAについて情報収集しよう、というのでは芸がないので、私も1つ「BRICsの次」を考えてみました。
それは「NICs」です。Newly Industriarized Countriesではありません。北朝鮮(North Korea)、イラン(Iran)、キューバ(Cuba)の3カ国のことです。なぜこの3カ国かというと、理由は、(1)これ以上は悪くなりようがない(変化があるとしたら良くなるしかない)、(2)とはいえ国内に深刻な民族紛争、宗教対立を抱えていない、(3)国民の知的水準が高い、(4)大きな経済圏に近い、または当該国自体の潜在的市場規模が大きい、(5)魅力的な資源がある、の5点です。

まず(1)ですが、北朝鮮、キューバは間違いなく該当するでしょう。アメリカとの戦争、という最悪のシナリオもないでもない、という見方もあるかもしれませんが、イラクで痛い目にあったアメリカが再び同じようなことを行うとは思えません。それと、産油国のイランについては原油高で潤っていることから、経済は「これ以上は悪くなりようがない」状況ではありませんが、人口が急増している中、効率の悪い国営企業中心の体制のままではいずれ経済は破綻すると思います。

(2)は3国のいずれも問題なさそうです。

(3)の知的水準ですが、北朝鮮、イランは核兵器を開発した(しようとしている)国ですし、キューバは医学、薬学の分野では世界から高い評価を得ています。超精巧な偽ドル札も作る北朝鮮は、ものづくりには向いているでしょうね。

(4)の条件については、日本、韓国、中国に隣接する北朝鮮、アメリカと目と鼻の先にあるキューバは合格です。イランは日米欧から遠いですが、人口規模が約7,000万人と大きく、また若年者が占める割合が高いので、潜在的な市場は大きいといえます。

(5)の魅力的な資源は、イランは言うまでもなく石油です。キューバはリゾートとしての豊かな観光資源がありますし、自然環境も豊かなのでバイオ産業の立地にも適しているかもしれません。また、意外に知られていませんが、特殊鋼の生産に不可欠なニッケルの埋蔵量も豊富です。例外は北朝鮮ですが、独裁者のために披露される一糸乱れぬマスゲームの映像をみると、国民を正しく訓練し直せば労働集約型の生産現場で非常に優秀な成績をあげる労働者になる気がします。あの国はそんな労働力こそが資源と言えます。

世界最悪の人権侵害国家を含む3国は、現状では問題があまりに多く、多くの企業にとって投資先として考えることは論外でしょう。政治体制や経済の仕組みが、世界と協調できるような形に変革されることが、投資の大前提であることは言うまでもありません。
ベルリンの壁が崩壊することを30年前に予見した人がどれほどいたでしょうか。ベルリンの壁を崩壊に導いたのはテレビの電波だと言われていますが、当時に比べると現在は遥かに情報化が進展しており、昔のように独裁者が国民を外部の情報から遮断することは難しくなっています。これら「悪の枢軸」と呼ばれる「NICs」の3国が変貌するのは意外に早いのではないか、という気がしますし、そうあって欲しいと考えます。

「MONODZUKURI展」に行ってきました(その3)

2007-01-23 21:31:43 | ものづくり・素形材
写真は地下会場に展示されていたロボットです。子供たちの人気を集めていました。

「MONODZUKURI展」は、鋳物や金型など素形材という地味な産業にスポットライトをあて、その重要性、技術の高さを、ものづくりとは縁のない一般市民にアピールするという、画期的な展示会だと思います。
しかし、何点か課題も指摘したいと思います。
まず第一に、会場が狭く、しかも国立科学博物館の中で分散しているということです。スペースの関係上やむを得ないのは理解できますが、できればもっと広い会場で分散せずに集中して開催して欲しかったと思います。
第二に、展示された素形材を、もっとビジュアルにわかりやすく紹介する工夫が欲しかった、ということです。普通の人は複雑形状の精密な素形材を見て、その造形美に感心するかもしれませんが、いかに重要な部材であるのか、いかに高い技術であるのか、説明書きを読んだ参観者がどの程度理解してくれているのか、やや疑問に思う展示もありました。
第三は、第二の課題と関連するのですが、実際に素形材を作る模様をもっと紹介して欲しかった、ということです。JIMTOFのように、工作機械やプレス機械を設置して、目の前で実際に加工して見せることができれば良いのでしょうけれど、予算やスペースの問題で難しいでしょうし、キュポラやダイカストマシンとなると博物館での設置、稼働など論外でしょう。ビデオで製造の模様も紹介しているところもありましたが、いかんせん小さなモニターでは迫力が伝わってきません。できれば大画面のスクリーンで、素形材づくりの現場を紹介する仕組みを用意できればよかったと思います。
とはいえ、前に述べたように素形材産業にとって画期的な展示会であったことは間違いありません。今後も継続して、できれば規模を拡大して「MONODZUKURI展」が開催されることを期待します。


新横浜駅の南側

2007-01-22 07:48:33 | 日常
今日は朝から刈谷出張です。
新横浜駅の南側は何年たっても変わらないような気がします。とても「のぞみ」が停車する駅とは思えない光景のままです。オフィスビルなどの需要はあるでしょうに、なぜ開発されないのか、いろいろ事情があるのでしょうね。